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ブレイクオンスルー  作者: カレーライスと福神漬(ふくじんづけ)
17/40

17 続・死神の使い

「いくらなんでも、これはやりぎだぜ、火鳥ひどりさん!」

 猪瀬いのせは、

 くろ三角頭巾さんかくずきんを、はぎ取ると、

 床にたたきつけた。

「オレは、りる!」

 

 

 火鳥は、猪瀬を見おろして、

 じっと・・・凝視ぎょうし・・・する。


 火鳥ひどりの、白目しろめが、

 不自然ふしぜんなまでに、

 光沢こうたくを、

 増幅ぞうふくさせた。

 くろひとみが、

 しずみこんでいくように、

 うすくなっていく。

 

 猪瀬の内面ないめんに、恐怖きょうふが、わきがる。

 子供こどものころ、

 はじめて、

 歯医者はいしゃへ行ったとき、

 虫歯むしば治療ちりょうを受ける、

 直前ちょくぜんの、

 あのコワいかんじが、よみがえってきた。

 

 まるで死神しにがみ視線しせん

 

 生きていることの、

 偶然性ぐうぜんせい、 

 たよりなさを、

 強制認識きょうせいにんしきさせ、

 隷属れいぞくを、せまってくる

 が・・・すくむ・・・

  

 マズいことに、

 黒頭巾三人組くろずきんさんにんぐみの、

 猪瀬いのせ蜂谷はちや鹿間しかまは、

 盗撮とうさつの、うごかざる証拠しょうこを、にぎられていた。

 

 頭が切れ、嗅覚きゅうかくが鋭く、

 同時に、胆力たんりょくもある、

 火鳥は、

 盗撮とうさつの証拠をしめし、

 三人組にせまり、恫喝どうかつした。

 そうしてた、

 自供じきょうを、録画ろくがして、証文しょうもんを取り、

 役角寺えんかくじ顧問弁護士こもんべんごしに、あずけていた。

 

 どのみち、一蓮托生いちれんたくしょうなのだ。

 

 猪瀬は、ぬかるみにハマるような気分きぶんで、

 黒の三角頭巾さんかくずきんを、

 今一度いまいちどかぶった。

 

 火鳥は、視線しせんを、被害者ひがいしゃに、もどした。

 部屋へやの、カベぎわで、

 小動物しょうどうぶつのように、

 おびえ、

 うずくまっている、優希ゆきを見る。

 

 火鳥は、ニッコリ笑うと、

 その美しいはなすじをめがけ、キックを見舞みまった。

 

 ピキッ!

 という音がして、鼻骨びこつが、れた。

 

 猪瀬に指示しじをあたえ、

 まみれの優希を、

 鉄製てつせいのベッドまではこぶ。

 

 おびえきった優希の、

 瞳孔どうこうは、大きくひらかれ、

 身体を、ガクガク、ふるわせている。

 両手りょうてを、

 いのるように、にぎりしめ、

 しゃくりあげながら、

 意味不明いみふめい言葉ことばを、

 念仏ねんぶつのように、

 はっつづけていた。

  

 極力きょくりょく

 彼女を見ないように、見ないようにする・・・猪瀬いのせ


 ベッドのうえへ、

 あお向けにした優希を、

 四つの手錠てじょうで、

 だいに、固定こていした。

 

 どの瞬間しゅんかんといえども、

 細大さいだいらさず、

 魅入みいられたように、

 キャメラで記録きろくしていく、鹿間しかま

 

 ミス・水晶学園すいしょうがくえんの、

 あわれな姿に、

 こころいためながらも、

 彼女をらし出す、

 ライト係の蜂谷はちや

 

 火鳥はベッドへあがり、

 優希の腹部ふくぶの上に、

 こしかせて、またがった。

 

 そして、三人の黒頭巾くろずきんに向かって、ニヤリと笑いかける。

「さあ、世紀せいきのショーの開幕かいまくだ!」

 

 にまみれ、あざだらけ、

 高熱こうねつはっした幼子おさなごのように、

 悪寒おかんに、ふるえている、優希ゆき

 

 彼女の、片方かたほうほおは、

 内出血ないしゅっけつを、こして、

 ひどく、れており、

 はなよりも高く、

 甘食あましょくのように、

 円錐形えんすいけいに、ふくれがっていた。

 

 目を、そむける猪瀬いのせ

 彼女を見たり、目をそらしたりの蜂谷はちや

 催眠術さいみんじゅつにかけられたように、

 ひたすら映像をりつづける、鹿間しかま

 

 火鳥はベッドの、スキに、

 手をし入れ、

 サバイバルナイフを取り出した。

 

 かわのカバーのホックを、

 パチン!とはずし、

 ナイフをく。

 

 刃渡はわたり20センチの、

 が、

 あやしい光沢こうたくを、はなつ。

 

 火鳥は、

 ミス・水晶学園すいしょうがくえんの、

 アゴに手をかけ、

 自分のほうに、ける。

 

 うつろな、彼女の視線しせんを、

 つかまえ、

 むすびつけ、

 そして、たずねた。

犬城優希けんじょうゆきのこすことは?」

 

 黒頭巾三人組くろずきんさんにんぐみに、

「まさか!」

 の思いが、

 めぐる。

 

 優希のひとみが、

 一瞬いっしゅんひかりを取りもどした。

 うわごとも、ピタリと、んだ。

「ペッ!」

 最期さいごの力を、りしぼり、

 ツバをいた。

 

 じったツバが、

 火鳥ひどり顔面がんめんの、

 中心部ちゅうしんぶに、

 命中めいちゅうした。

 

 かわいた、

 神経症しんけいしょうてきな笑い声を、たてる火鳥。

 

 優希の、夏用なつよう制服せいふくを、

 き、

 しろむねを、

 露出ろしゅつさせた。

 

 かわいた笑いごえを、たてたまま、

 ナイフの鋭いさきを、

 ターゲットの心臓しんぞうめがけて、

 て、

 全体重ぜんたいじゅうをグイ!とかけていく。


 しろ柔肌やわはだに、

 ナイフのが、

 しずんでいった。

 

 優希は、手錠てじょうくさりゆるすかぎり、

 右手みぎてを、

 真上まうえばした。


智子ともこォーっ!」

「ト・モ・子・ォーッ!!」

「ト・・・モ・・・子・・ォー・・・!!」


 断末魔だんまつまが、室内しつないに、ひびきわたった。

 

 

 ナイフは、

 正確無比せいかくむひに、

 優希の心臓しんぞうを、

 し、ふかくえぐった。

 ナイフをくと、

 が、断続的だんぞくてきに、

 ゴボゴボ、きあがった。


 

『ラ‘メリカ』がリピートされ、くり返し流されている。




 国体こくたい選抜せんばつメンバーの一人として、

 智子は、

 レギュラーのを、めざすべく、

 合同ごうどう練習に、参加さんかしていた。

 

 さすがに、東京の高校の、りすぐりが、

 あつまっているだけのことはあり、 

 レべルの高い、スキルの応酬おうしゅうが、見られた。

 

 智子は、自己紹介じこしょうかいの意味をこめて、

 ほか選抜せんばつメンバーの前で、

 まずは、流れるようなランニングシュートを、

 連続れんぞくで決めてみせた。

 

 みんなのあつ視線しせんが集まる。

「へっ、へっ、へっ、どんなもんだい」

 

 おつぎはとばかり、ロングシュートをはなつ。

 ボールは、リングのうえを、

 玉乗たまのりのように、つたい、

 移動いどうすること、半周はんしゅう

 最後に、ネット内へ、ポトリと落ちた。 

 

 偶然ぐうぜんではない事を、

 証明しょうめいするために、

 二度、三度とかえした。

 

 まわりの代表選手たちが、息をのむ。

 

「さてさて、とどめに」

 

 智子はドリブルをしながら、疾走しっそうする。

 ゴール前で、高くジャンプ。

 頭上ずじょうにボールをかかえあげ、

 ダンクシュートにチャレンジ!

 しかし、

 もう一息ひといき

 いや、二息ふたいきほど、

 ジャンプが、りなかった。

 バランスをくずし・・・あえなく失敗しっぱい

 

 バスケットボールのゴールは・・・<3メートル5センチ>。

 やっぱり高いのである。

 ダンクシュートは、

 身長178センチの智子にとっては、くもうえ

 一種いっしゅの、奇蹟きせきなのだ。

 

 失敗し、

 コケた水晶学園すいしょうがくえん主将しゅしょうを見て、

 ほかのメンバーが笑った。

 それはけっして、バカにした笑い、ではなかった。

 天真爛漫てんしんらんまんな、

 彼女のパーソナリティーを、

 受け入れてくれた、あかしであった。

 

 本人は気づいていないが、

 彼女の失敗しっぱいには・・・はながあった。

 失敗が、鬱々(うつうつ)しずみこまず、

 陽気ようき浮上ふじょうするのだ。

 

 赤いフレームのメガネ姿の、智子は、

 大げさに頭をかき、れてみせる。

 なにげなく、バスケットシューズに目をやると、

 右足の、くつヒモがれていた。

 

 おかしいな?ついこのあいだ、えて、なじんできたヒモなのに・・・。

 


 完全かんぜんに、ことれた優希を、見おろし、

 火鳥は、酷薄こくはくな笑いを、浮かべた。

 

 ムゴたらしい姿の・・・もとミス・水晶学園。

 

 火鳥の残虐ざんぎゃくきわまりないやりくちに、

 猪瀬・蜂谷・鹿間の三人はをもよおした。

 

 キャメラをまわしていた鹿間しかまは、ほんとうにいてしまった。

 しかし、画面がめんは、ブレない、

 という職人芸しょくにんげいを、発揮はっきしてみせた。


 おびただしい血の、生臭なまぐさいニオイと、

 吐瀉物としゃぶつの、っぱいニオイが、

 ざり合い、

 室内は、異様いよう臭気しゅうきに、たされていた。


 火鳥は、よるち、

 三人に、命令めいれいして、

 死体を、とある場所に、遺棄いきした。


 

 

 けた・・・

 惨劇さんげきおこなわれた部屋には・・・

 だれもいない・・・

 

 クリルが、ベッドの下から、小さな姿をあらわした。

 おびえた様子ようすで、あたりをうかがう。

 やがて、ベッドの上に、とびった。

 

 

 シーツのにおいを、クンクンぎ、

 ぬしむねから、

 ながれ出た、

 あとを見つけると、

 ピチャピチャ音をたてて、

 めはじめた。


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