タイム・スキップと春の夢
リハビリ目的で取り敢えず文章を書きたかっただけなので、お見苦しい文章である上に設定もメチャクチャですが、ご容赦ください。
このお話ばかりは自由度MAXです(笑)
これは青くない春のお話。
かもしれないし。
これは暁に沈む夢のお話。
かもしれない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
15歳、4月、今日は入学式。
しかし僕の心は沈みに沈んでいた。酷く憂鬱だった。
僕は昔から――と言ってもまだ十代なのだが、形式的に昔から――自分から話しかけたりするのが苦手な少年で、それは今も変わらない。
しかも、中学の頃には少なくないくらいの友達はいた。
だが高校選びをミスしてしまった。
少しばかり偏差値の高い高校に進学してしまったが為に、周りの友達は誰一人として同じ高校に進学することはなかったのだ。
所謂ボッチである。
「……はぁ、行きたくないなぁ」
騒音を掻き鳴らす目覚まし時計を尻目に、未だベッドから立ち上がってすらいない癖に、驚くほど弱気な発言をしてしまう。
これから三年間通うであろう高校は進学校である。
だから春休みで堕落する生徒が出ないように、入学前から宿題を課され、挙げ句の果てには入学式の翌日からテストがあったりする。
これはきっとアレだ。地獄ってやつだ。
なんて、ネガティブな気分を晴らすかのように、少し八つ当たり気味に目覚まし時計を黙らせる。
「いてっ」
やっとの思いでベッドから起き上がって、さぁ行こう、という時に何かを踏んでしまった。
朝からツイていない。まるでこれからの学園生活を暗示するかのように。
……まだ気分を切り替えられていないらしい。
しかし、はて、僕は床に物を煩雑に置いたりしない、どころか寧ろ潔癖性と言ってもいいくらいなのに、一体何を踏んでしまったと言うのだろう。
角張ったものではなかったらしく、先程の「いてっ」というのも条件反射のようなものだった。
ゲームで自分が操作しているキャラがダメージを負ったら言ってしまう感じ。
全く痛くなかったし、当たった感覚すらなかったようにも思えるが、しかし何故だか、何かを踏んだということはわかった。
「で、何だ?」
見ると、拡声器に付いているハンドマイクのような物――それでもわかりにくければ、聴力検査の時に耳に当てるやつみたいなの。それでも尚わかりにくいか――と、一枚の手紙が丁寧に置かれていた。
そして手紙の上には黒のボールペン。どうやらこれを踏んでしまったらしい。
おかしいな、クリスマスはとっくに終わったと思っていたのだが、まさか世間はイエス・キリストの誕生日を三ヶ月半ほど遅らせたのだろうか。
だとしたら僕は世間の波に乗れていない。
それは辛いなぁ。
「っと、こんなことをしている場合じゃない」
特にこれといった意味はなかったが、そのままにしておくのも何だか嫌だったので、マイクと手紙を持ってリビングへと向かう。
朝の支度がてら、手紙を読んでみようではないか。
『この手紙を見ているということは、貴方は恐らく人生に退屈しているのでしょう』
いや、退屈はしていない。
それは見当違いだ。
朝食のパンを片手に元から強かった警戒心を更に強める。
『退屈な人生を改善することは、残念ながら私達には不可能です。もし人生を華やかに彩りたいのであれば、それは貴方ご自身の力でなさってください。そうなさるのであれば、私達一同は、貴方の努力を精一杯応援させていただく所存でございます』
何だよ、応援するだけかよ。
それならチアリーダーとかを派遣して欲しかったな。
その方が頑張れる気がする。
歯を磨きながら鼻の下を伸ばしてたら、母親に見られてとても怪訝な顔をされてしまった。
……続きを読もう。
『しかし、自分ではどうにも出来ない、どうもしたくない、何もしたくない、面倒だ、という方に朗報です』
急に商売臭くなったな。
変な壺とか買わされたりしないよな。
僕はセールスには耳を傾けないぞ。
顔を洗って、今日初めて袖を通す制服を手に取る。
『そんな退屈な人生から逃げてみませんか?』
人生から、逃げる?
つまり、自殺を促しているのか?
自殺教唆とかって犯罪じゃなかったっけ?
通報すればいいのか?
いや、通報するのは最後まで読んでからでも良いか。
電話口に行きかけたが、思い直して着替えを始める。
『面倒なことからは逃げましょう。辛いことからは逃げましょう。悲しいことからは逃げましょう。私達はそれを責めません。寧ろ推奨します。この手紙と共に同梱されているハンドマイクを手に取ってみてください』
共に無造作に置かれていただけのように思えるが、あれを同梱というものなのだろうか。
今日から高校生の僕にはわからない語彙問題だった。
さすがに着替えながらではマイクを手に取れないので、そこは無視して手紙の続きを読む。
『……本当に手に取りましたか?』
な、何だと。
行動が読まれている……。
だがここで折れたら負けな気がしたので、敢えて更に無視して続きを――。
『そろそろ手に取りましょうよ』
何でわかるの?
エスパーなの?
ていうか、しつこいな。
仕方ない、負けてやろう。
丁度着替えも終わったことだし、鞄を持って登校がてら最後まで読んでやろうじゃないか。
「母さん、行ってきます」
「ちゃんと全部持ったの?」
「たぶんね」
家から学校までは自転車で5分ちょっと、なのだが、手紙を読む予定だし、時間も結構余裕があるし、特に急ぐ理由がなかったので歩いていくことにした。
どうせ歩いたって10分くらいだろう。
で、何だっけ。
あぁ、マイクか。
『ようやく手に取っていただけたようですね。ありがとうございます。そのマイクは『タイム・スキッパー』というものです』
いくら成り立て高校生とはいえ、そのくらいの英語はわかった。
そもそもタイムもスキップも会話の中で使われることがあるので、知らない人はまずいないだろう。
『使い方は簡単。ボタンを押しながら時間を唱えるだけ。それだけでその唱えた時間だけ貴方の時間が進みます。進める時間は一秒から百年までです。ただし注意してください。仮に百年と唱えて、貴方が百年後に生きていなかった場合、貴方はその時点で死亡いたします。尚、貴方にしか使えない仕様にしていますので、他人に所有権を譲渡した場合、即座に爆発するようになっております』
……話が唐突過ぎだ。
まったく、近頃のサンタさんのイタズラは度を超している。
誰がこんなものを信じようか。
……まぁでも、試しにちょっと使ってみようか。
いや、信じてないよ?
信じてないけど、やってみてからでも良いじゃないか。
いやぁ、ホントに信じてな――
「いだっ」
「きゃっ」
思考に呑まれて注意力が散漫になっていた。
おかげで人とぶつかってしまったではないか。
声からして女子かな……。
まさか、これが世間で流行っているラブコメ展開というやつですか。
僕の彼女いない歴15年に終止符が打たれるのか……!
「あ、あのっ、すみません、大丈夫ですか?」
「いえ、こちらこそ……」
俯き気味の少女は、僕がこれから通う高校の制服を身に纏っていた。更に言うと眼鏡をかけていた。
僕が以前友達に借りた少女漫画と全く同じ展開だ!
期待大! 極大! というか最大!
「怪我っ、し、してないですか……?」
テンパりすぎて舌が上手く回らない。
落ち着くんだ。
期待するな。そんな上手くいく訳あるか。
眼鏡少女に手を差し伸べて、ふと気付く。
いくら僕が考え事をしていたとはいえ、正面衝突なんてするだろうか。
いや、この言い方だと少し語弊があるか。
気を付けていなければ正面衝突をすることくらいはあるだろうが、それでも同じ学校に、つまり同じ方向に向かっている人間と正面衝突をすることはまずないだろう。
「怪我はしてないですけど……」
可能性その一、忘れ物をして取りに帰っていた。
一番オーソドックスかつあり得る理由だ。
可能性その二、野良猫を追いかけていた。
まぁ、これもあるだろう。……あるか?
可能性その三、わざとぶつかって慰謝料を要求する。
無いだろう。というか、あってほしくない。願望。
そろそろ真面目に、可能性その四――。
「道を教えていただきたいのですが……」
「かまいませんか?」
ありがとう神様。
このままこの子ルートを突き進みます。
なんちゃって。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
結局。
眼鏡少女と共に学校に来たのだけれども、正直何を喋ったのかなんてこれっぽっちも憶えていない。
残念なことに、僕のアガり具合と言えば尋常ではなく、はっきり言って、しっかり歩くことが出来ていたかも怪しい。
女子とのコミュニケーションなんて、果たして何年振りだっただろうか。
さすがに中学の頃にも女子といくらか会話をすることはあったが、眼鏡美少女と登校するのは初めてだったのだ。
あぁ、緊張した。
「――です。趣味は、読書です……。一年間、よろしくお願いします」
五つ前の暗そうな男子生徒が自己紹介を終えて席につく。
あの後、入学式も上の空のまま過ごしてしまい、気付けばクラスで自己紹介の時間に入っていた。
因みに、美少女は僕と同じクラスだった。超ラッキー。
ここまででわかっているかもしれないが、僕は人前で喋ったりするのが苦手だ。
人前でなくても決して得意ではないのだが。
「――です。スポーツをするのが好きです。中学の頃はサッカー部でした」
四つ前の人当たりの良さそうな男子生徒が自己紹介をしている間に考える。
何を言おうか。
やはりファーストインプレッション、第一印象というものは重要だ。
ここでこのクラスでの一年間の僕のキャラが決まってくると言っても過言ではない。
ユニークなことを言えば面白いキャラに、小さい声でボソボソと喋れば根暗なキャラに、必要なことだけをしっかりと言えば真面目なキャラに。
「――っす。○○中から来ました。よろしくでーす」
三つ前のチャラそうな男子生徒が自己紹介を終えた頃から、思考のベクトルの向きが変わり始める。
ここで失敗するわけにはいかない。
しかしとてつもなく面倒だ。
どうにかして避けられないものだろうか。
今から保健室にでも行こうか。
……いや、ダメだ。
そんなことをすれば、僕の一年間のアダ名が"保健室"になってしまう。
何か他に、上手い逃げ方が……。
「――です! 好きな言葉は"努力"です! お願いします!」
二つ前のとても暑苦しい男子生徒が自己紹介をしている最中に、思い出した。
逃げという単語から、連想が働いた。
学生鞄から例の物を取り出す。
タイム・スキッパー。
……信じちゃいないけど。いないけれども。
それでも戯れとして。お試しとして。
やってみるのも悪くないのでは……。
いやいやいやいや。
冷静になれって。
「――です。え、えっと、よろしく、お、お願いします」
目の前のオドオドしている男子生徒が自己紹介を……!
ええい、ままよ!
やってみるだけだ!
確か、ボタンを押しながら時間を唱えるんだっけ。
えっと、じゃあ……。
「さ、三分」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「――です。よろしくお願いします」
三分間、世界が進んでいた。
本当にきっちり三分間だったのかなんて確認にしようはないけど、それでも確かに、時計の分針がおよそ18度ほど回転していた。
まぁ、角度が正確なのかは確認のしようはないけれど。
それでも一番確かなのは、僕の自己紹介の番が飛んで、四つ次の女子生徒の自己紹介の番となっていたことだ。
「タイム……スキッパー……」
誰にも聞こえないように口に出す。
もしかしたら前の席の彼に聞かれていたかもしれないが、別に聞かれたからといって何が起きるわけでもあるまい。
恐ろしい、まずそう思った。
こんなSFじみた機械がこの世に存在するということが、高校一年生になったばかりの僕としては、興味や好奇心より先に恐怖が来たのだった。
(これ以上はやめとこう……)
他人の自己紹介を聞くのも確かに面倒だが、取り敢えず今は何もしないでおこう。
家に帰って冷静になってから考えれば良い。
そんなことを考えていると、件の眼鏡少女の順番となっていた。
「い、一年間、よろしくお願いします」
今まで眼鏡少女と呼んでいた彼女の本名を、何だかんだでたった今初めて知った。
一緒に登校なんてしておいて、名前の一つも訊いていない僕、さすがだなぁ。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
ショートホームルーム――中学校まででいう、帰りの会のようなものという印象。以下SHR――が終わったあと、昼前には下校という、本当に入学式の為だけに来たのだなあ、と思わされるような日程をこなして帰宅してから、僕は昼ご飯すら食べずに自分の部屋に駆け込んだ。
たった数時間居なかっただけなのに、まるで何日かぶりに入ったかのような気がした。
「ちょっとー! お昼食べないのー?」
「気分が悪いから要らないー!」
と、何の躊躇いもなく母に嘘をついてしまったが、別に後悔はない。
一刻も早くタイム・スキッパーについて調べたい、という欲求に駆られていた。
数時間前までは冷静になってからとか何とか言っていたが、やはり僕もまだ中学生男子が抜けきっていないらしく、実際にアクションに起こそうという段階に至ると、非常にドキドキしてきているのだった。
「さて……と」
机の上に例のボタンを置いてじっくりと監察する。
だが結局、ボタン以外は何もなかった。
どうやら電池の取り換えは出来ないようになっているらしい。
そもそも電池で動いているのかも怪しいところだが。
「じゃあ……実験するしかないのか」
いや、本来なら実験すらするべきではないのかもしれないが、そこは男子としてはやらずにはいられない。
時計の時間をしっかり確認して……。
「五分」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
五分間。
時計の秒針まで確認していたから正確に五分間であることがわかった。
もしかしたらさっきの三分間は、極度の緊張のせいで記憶が飛んでしまったのかと思ったが、今回の五分間によってそれはないと証明された。
「さて、じゃあ……これどうしよう」
証明が済んだのは良いが、今度は処理に困ってしまう。
確か他人にあげたら爆発するとかトンデモないことが手紙に書いてあった。
タイム・スキップが本当に出来たのだから、爆発も恐らく嘘ではないだろう。
恐いのでこちらは実験出来ないけれども。
ならば捨てようか、とも思ったが、果たしてこれはどのように分別すれば良いのかわからない。
別にその点をそんなに気にすることはないかもしれないが、まだ世間を知らない成りたての高校生であるから、変なところで慎重になってしまうのである。
親に捨ててもらえれば良いのだが、それが譲渡とみなされた場合が恐ろしいのでそれも出来ない
「あげてもダメ。捨て方はわからない」
噂の燃えないゴミというヤツだろうか。
待てよ、ゴミを処理する人の手に渡ったら爆発、とかないよな……?
いずれにせよ、捨てるのは無理だろう。
「そもそも爆発のレベルにもよるよな……。クラッカーくらいならちょっと火傷するくらいだろうけど、水爆レベルとかだったらなぁ」
とんだテロ行為だ。
となると、案外僕の腕に日本の命運が託されているのかもしれない。
いや、ひょっとすると地球の命運が……。
うわぁ、耐えられないって、その重圧。
やめよう、この思考は生産性が皆無だ。
「それに、こんなトンデモない物を持っているということを、僕は果たして誰にも言わずに自分の心の中だけに留めておけるんだろうか」
別にお喋りではないが、口は軽いのである。
だから僕と秘密を共有しようものなら、まず三日後には学年全体に広まっていると考えていい。
まぁ、僕にそんな友達がいれば、の話だが。
「友達、か……」
百人とまでは言わないまでも、出来ると良いな。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
次の日になって、僕は未だに悩んでいた。
結局昨日ずっと考えていたのだが、僕には何も思い付きはしなかった。
そもそも何を考えればいいのかすらあやふやだったので、出だしからミスしていたようなものだった。
スタート直後に転ぶとかではなく、エントリー時間に間に合わない、くらいのミス。
「あ、――くん」
ふと声をかけられたが、一瞬自分のことだと気付かなかった。
正確に言うと、自分のことではないと思い込んでしまったのである。
僕の苗字は世の中に溢れに溢れてありふれているので、きっと別の人が呼ばれたんだろう、と勝手に思い込んでしまうのだ。
佐藤さんとか、そういうこと多そう。
「あの、――くん、ですよね……?」
さすがに二回目だと振り返るくらいのことはする。
もっとも、二回目に振り返って自分じゃなかった時のあの恥ずかしさと言ったら穴に入りたくなるくらいのレベルなのだが、今回はそんなことはなくちゃんと僕のことだった。
「えっと、ごめん。――さん、だよね?」
間違ってはないハズだ。
昨日の自己紹介ちゃんと聞いてたし。
それでも語尾が疑問形になってしまったのは、もし間違っていたら、という恐怖が僕を襲ってしまったからなので仕方ない。
仕方ないか?
仕方ないだろう。
「憶えててくれたんですね」
ニッコリと微笑む彼女は、在り来たりな表現になってしまうが、まるで天使のようだった。
どうしよう、僕この子のこと好きかも。
一目惚れってやつをしちゃってるのかも。
ここで「あれ、ひょっとしてこの子僕のこと好きなんじゃ……」と思うより、遥かに誰にも迷惑をかけない思考をするあたり、僕らしい。
「まぁ、うん、クラスで一番印象に残ってたし」
「……私、そんな変なこと言いましたっけ?」
「あ、あぁ、そういう意味じゃなくて。ほら、一緒に学校行ったからさ」
そう言うとどうやら納得してくれたようで、彼女は「そうでしたね」と苦笑する。
そして、こう言うのだった。
「でも、――くんも印象に残りましたよ。あんなにユニークなことを言う人だとは思いませんでした」
いつもの僕なら笑って誤魔化していたかもしれない。
実際今もそうしかけた。
だがここで気付いた今日の僕は中々冴えてるのではないだろうか。
彼女がさっき言った言葉。
それによって、昨日から自分のことしか考えていなかったが、タイム・スキッパーによる"僕以外のモノ"への影響についても考えなければならない、ということに気付かされた。
「あっ、あのっ、――さん、僕昨日、何を言ったっけ……?」い
「え、忘れちゃったんですか?」
「いや、えっと、緊張しててあんまり憶えてないっていうか……」
「そうだったんですか? その様には見えませんでした。あまり顔に出ない人なんですね」
言葉の合間に行う、首を傾げたり等の小さな動作に一々愛嬌がある。
こんな純粋そうな少女を騙すのは非常に心苦しい感じがするが――母と彼女の間に一体どのような違いがあるのだろう。全部か――今の状況を鑑みるとそんなことも言っていられない。
「そっか……。僕は、喋ってたのか……」
「そこから記憶がないんですか……」
彼女が呆れていたがこの際どうでも良い。
このくらいの不名誉ならいつでも挽回出来るし、そもそも不名誉なんて大袈裟なものにすらならないだろう。
ともかくだ。
タイム・スキッパーによって僕以外の人間に影響は出ないということはハッキリした。
それどころか、飛ばした三分間の間に僕はしっかりと『自己紹介』という行為を行っていたらしい。
ただそこにおかしさを禁じ得ない。
前も言ったが、僕は皆の前で発表とか、そういうのがとても苦手な人間なのだ。
だから、こんなことを言うのも情けないが、"しっかりと"なんて無理なのである。
不可能。インポッシブル。
「ねぇ、――さん、今日のテストの科目、何だっけ」
実験だ。
高校最初のテストを捨てるのは中々勇気が要るが、テストよりも今はタイム・スキッパーの方が気になってしまう。
文系科目は真面目にやらないと、苦手な僕としては危険なのだが、比較的得意な理系科目は少々捨てたところで問題ないだろう。
そんなことを思案しつつ、僕は彼女の返答を待った。
「国語、英語の二教科ですよ」
おぉ神よ、あなたはなんて残酷なんだ。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
さて、国語の時間だ。もっと言うとテストの時間だ。
というか、何で数学のテストはしないんだ。
理系を蔑ろにしているのか。許さないぞ。
なんて、毒を吐きながら国語の問題に向き合う。
高校の国語はどうやら、現代文と古典に別れるらしく、現代文は評論文と小説・随筆、古典は古文と漢文に別れるそうだ。
つまり、高校の国語は四つも勉強しなければならないのだが、しかし僕達はまだ成りたてなので、中学生でも出来る国語のテストをするのである。
まぁ、中学でも古典は多少するが、正直印象薄すぎてほぼ何も憶えていない。
漢文なんてレ点と一・二点くらいしか記憶にないし、古文に至っては何も憶えてないくらいだ。
そんな僕に配慮してかはわからないが――してないだろう。きっと。倒置法――国語は現代文だけだった。
制限時間は60分。評論文と小説が一題ずつで二題。
……最悪小説は捨てよう。
評論文はしっかりと読み解けば点を取れるが、小説は無理だ。
何で文字列から感情だの心情だのを読み取らにゃならんのだ。
「ん……」
何分飛ばそうか。
評論文をちゃっちゃとやってから考えよう。
評論文の内容は美術的などうたらこうたらというやつで、比較的読みやすかった為に25分で終えることができた。
残り35分もあるので、なんだか余裕に感じてしまい、僕は思い切った行動に出てみた。
「三十分」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
テストから一週間。
今日の六時間目はHR委員――所謂学級委員のようなもの――等の委員会や係を決めた後、先週のテストの結果を返却するという、ひたすら楽な時間だった。
「では、HR委員やりたい人はいますか?」
日直の……名前は忘れてしまったが、眼鏡男子の日直君がクラス全体を見渡す。
僕もチラッと見てみたが、誰もやろうとしていないようだ。
「誰もいませんか?」
……このまま誰も手を挙げなければ、くじ引きかじゃんけん大会が始まってしまう。
そうなるとテストの返却が遅くなってしまうじゃないか。
いや、この言い方だとクラスよりテストを優先させてしまうヤツだと思われるかもしれないが、実際はテストの結果より実験の結果が知りたいだけなのである。
……つまり、クラスより自分を優先させてしまうヤツだった。
あれ、その方が印象悪くない?
「じゃあ、くじ引きで……」
「あ、あのっ!」
その声は僕のものじゃなかった。
僕の声よりもっと高く、澄んでいて、綺麗な声だった。
僕はというと無言で手を挙げているだけなので、ひょっとするとクラスの人達からは、僕がソプラノボイスを発したように見えたかもしれない。
彼女の声がソプラノかどうかなんて知らないけど。
そう、声の主は眼鏡の彼女だった。
「わ、私がっ、やりますっ」
激しい緊張ぶりだった。
そう言えば自己紹介の時も緊張して言葉に詰まってたっけ。
まさか彼女が僕と同類だとは思っていなかったので正直嬉しかった。
……何を嬉しがっているんだ。
「えっと、では、――さんと――君の二人で良いですか? 異論がなければ拍手をお願いします」
日直君の方が僕よりテキパキと業務をこなしてくれそうだが、彼も拍手をしている辺り、どうやら自分ではやる気がなかったようで、それならば僕の判断はきっと正しかったのだろう。
僕だってやる気があるわけではなかったけど、将来を見越した判断が出来ない僕の悪癖が出てしまった。
後悔はきっと帰宅後にするだろう。
だが後にするから後悔なのであって、今からそんなことを考えても仕方ないし、手を挙げる前なんて考えることすら出来なかったのだから、まぁ良いとしておこう。
どうせ三日後くらいには忘れてるだろうし。
「それでは次は風紀委員会を……」
その後の委員会はサクサクと決まっていった。
みんな責任がある委員会はやりたくなかったのだろう。
……待て、どの委員会にだって責任はあるだろ。
まぁ、その辺の話は割愛しよう。
というのも面倒すぎてタイム・スキッパーで飛ばしたから記憶になくて語れないだけなのだが。
「今からこの前のテスト返すぞ。出席番号順に取りに来い。まずは――」
国語のテストが返ってくる。
英語のテストも返ってくるが、どうせあんなの出来てないから問題ない。
学生としては学業面に穴があることは問題ではあるのだが、現在の僕の中にある問題は例の謎機械だけだ。
だから、さっきも言ったが、残念なことに僕は目先のことしか考えられないのである。
「次、――」
僕の番だ。
ここで少しネタバレをしておくと、タイム・スキッパーで飛ばした三十分の間に、小説の問題はしっかりと解かれていた。
変な言い方になるが、僕が飛ばした三十分の間にも、正常に世界は進んでいたのである。
テスト後に「時間足りなかったー!」とか、自分の低能ぶりを嬉々として暴露している者も数人いたが、それはきっとタイム・スキップとは関係ない筈だ。
普通に低能だっただけだろう。
「――、中々やるじゃないか」
その一言では一体何を言っているのかわからなかったが、返された答案を見てその言葉の真意を悟る。
いや、真意なんてものはなく、ただただそのままの意味だったんだろう。
今回の国語のテストは、評論文と小説それぞれ50点の合計100点なのだが、恐らく平均点は六割くらいだろう。
というのも、今までの経験則からして、僕の点の二割増くらいの点が平均点だからである。
これは数分後にわかることなのだが、平均点は、評論文が28.4点、小説が31.7点、総合で60.2点だそうだ。
やはり僕の経験則に狂いはない。
というか、何で小説の方が高いんだ。
まぁいい。
「ウッソ……」
僕の国語の点、評論文は19点。
これはまぁ、いつも通りどころか、いつもより頑張ってるくらいだ。
10点を切らなかったのだから。
で、問題はやはりタイム・スキップした小説。
正直なところ、どんな結果でも驚かないという自信は心の何処かにあったのだが、そんなものは一瞬でゴミ箱にポイッと捨てられた。
「よんじゅー……はってん……」
あまりの驚きで、ロボット界にも知れ渡りそうなくらいの棒読みになってしまった。
しっかり発音すると、48点。
得点率換算すると九割六分。わかりにくい。
要するに960‰。何で千分率だ!
(落ち着け……)
何度か深呼吸をして、動悸を抑える。
いやはや、それにしても驚いた。
僕は国語で満点を取るヤツは皆変態だと思っているのだが、その変態まであと一歩で届く点数だったじゃないか。変態予備軍だ。
でも、ここで満点じゃない辺りが僕らしいと言えなくもないが、やはりこの点は気味が悪い。
最初からこう思っているのが本来なら正しかったのだろう。
気味が、悪い、と。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
委員会を決めた日の放課後に早速全委員会が集会をするという、「思い立ったが吉日」方式だった。
……いや、きっと「思い立ったが吉日」方式は違うけど。
しかし集会自体は何の面白味もないもので、委員長、副委員長、書記を決めるだけの簡単なものだった。
しかも、入学したばかりの一年生にそんな役職が回ってくる筈もなく、全て上級生がやってしまったので、正直何もすることがなかった。
更に言うと、さすがHR委員をやるだけあって、全役職において立候補ですぐに決まるという、僕のクラスメイトも見習ってほしいような結果で、集会は幕を閉じた。
事が起きたのはその後だった。
事というと何らかの事件が起きてしまったように聞こえるが、そんなことはなく、言ってしまえばボーナスステージみたいなものである。
同じクラスということもあって、集会中僕の隣に座っていた、眼鏡の似合う彼女がこう言ったのだ。
「――くん、良ければこの後一緒に帰りませんか?」
こんなことされちゃうと運命感じちゃう。
気を付けてないと帰り道に告白しちゃいかねない。
まだ出会って一週間だってば。
恋に時間は関係ないとかよく言われるけど、さすがに入学後一週間では節操が無さすぎる。
「あ、ああ、うん、勿論良いぜよ」
うぉぉお……!! 噛んだぁぁあ……!!
坂本龍馬みたいになっちゃったぁぁあ……!!
「では、行きましょうか」
ニコリと微笑んで彼女は歩き出した。
僕が噛んだのはどうやら気にしていないらしい。
良い子過ぎる。
それから会話もなしに数分歩いて、校門に差し掛かったところでようやく僕は口を開いた。
「――さんはっ、家はっ、近いんでしょうかっ」
くそっ、もっとコミュニケーションをしっかりしとけばよかった……!
たぶん、趣味とかそういうことを訊けば良かったんだと思う。
「はい、歩いて20分くらいです」
「そうなんだ。自転車は……使わないの?」
「……ええ、まぁ」
なんだかお茶を濁したような返答をされてしまった。
ひょっとして僕嫌われてる?
いきなり家について訊いちゃったから引かれちゃったのか……?
「その、最近、気になって……」
「き、気になる……? それって……?」
ぼ、ぼっ、僕の、ことっ……っ!?
「……あまり、女の子にそういう話を深く訊いてはいけませんよ」
どうにも気になるばかりだが、訊いてはいけないと言われたことは訊かないでおこう。
無理して訊いて嫌われたりするの嫌だし。
そしてまた数分沈黙が続いて、今度は彼女が先に口を開いた。
「あ、あの訊きにくいことなんですけど……」
「えっ、何かな、何でも訊いて」
答えられるかどうかは別として。
「――くんって、その……」
「二重人格、なんですか……?」
え……?
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
帰宅後、学習机の前に座ってから考えてみる。
先程の二重人格の件、ちゃんと聞いてみるとこういうことだった。
普段の僕、といってもこの一週間だけだが、いつもの僕と、自己紹介の時の僕との間に大きな違和感を覚えたんだとか。
彼女自身の言葉を拝借すると。
「いつもの――くんは、その、大人しいというか、温厚そうというか……」
異訳すると、オドオドしているということだ。
やっぱりそう思われてたんですね。
「でも、あの時の――くんは、その、ハキハキしていたというか、真っ直ぐだったというか……。それに何だかぶつぶつ言ってましたし……」
言葉を選んでいるようだが、その気遣いがむしろ傷付くし、何よりあまり選べていない。
つまり、だ。
まとめると、「普段オドオドしてるくせに自己紹介の時だけ張り切ってたよね」ってことだろう。
「……そういう、ことだよな」
つまりは、僕が飛ばしたあの時間。
あの時間の僕は僕じゃないようだったということだ。
それで、用意したのがこちら。
「ビデオカメラ~」
の、アプリなんですけどね。
先程の彼女の発言を聞いて、僕自身が僕のことを知っておかなければならないと思ったのだ。
そこで考えた作戦がこれだ。
まずはビデオカメラ(アプリ)を起動。そしてそれで僕を映したまま時間を進める。以上。
わぁ、簡単。
「じゃあ早速起動して……」
ピコンと撮影開始の音を聞いてから、セッティングを始める。
セッティングといっても、僕が映るようにスマホの角度を合わせるだけなのだが。
何はともあれ、セッティングも終わったので。
「三分」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……ふぅ、えっと、初めましてかな」
三分後の世界で撮ったビデオの映像を確認していると、映像が始まって五秒も経たないうちに、画面の中の僕が喋り始めた。
喋ったことに関しては大した問題ではないのだが、僕がタイム・スキッパーを使う素振りを見せなかったのがちょっとした問題ではある。
「改めて。初めまして。僕は僕だよ。君は僕かい?」
こいつは何を言っているんだろう。
いや、僕なんだけどさ。
どうやら僕ではあるが、僕ではないらしい。
何だよややこしいな。
「そうだな……、何を話せばいいんだろう。君と会話できると楽でいいんだけど、残念ながらそんなことは不可能だし、時間も限られてる」
そうだ。
三分しかないんだからさっさと喋れ。
「でも、うん、自分に対して君っていうのはなんだか不思議な感覚だね」
うるせぇ、時間がないって自分で言ったんだろ。
笑ってるんじゃないよ。
「最初に言っておくよ。僕は君が知りたいことを何でも知っている。君が訊きたいであろうことも予想はついている。ただ、このことを知るということが、君にとって良いことであるかは僕にもわからない」
こうしてじっと自分の顔を見たことが今までそんなになかったから、まるで画面の中の人物が全くの別人のようだ。
言い方は雑にはなるが、喋り方も僕はこんなに賢そうではないと自覚している。
彼女は二重人格と言っていたが、僕からしたら普通に別人なのだ。
「だから今回は忠告だけしておく。何があってもタイム・スキッパーに依存するな。感覚的にはそれは麻薬に近い」
「もう一度、これが最後だ」
「絶対に使うなとは言わない。言いたいが君のことだ。そして僕のことだ。使ってしまうだろう」
「だから」
「依存だけは絶対にするな」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
自分からあれだけ忠告を受けて、「バーカ、そんなの守るわけないだろー。おしりペンペーン」と、無碍にするほど僕は愚かしくない。
かといって、全てをそのまま鵜呑みにするほど馬鹿正直でもない。
僕は結構捻くれ者なのである。たぶん。
「しかし訊きたいことはたくさんあるな……」
だが自分自身がこう言っていた。
『僕は君が知りたいことを何でも知っている。君が訊きたいであろうことも予想はついている。ただ、このことを知るということが、君にとって良いことであるかは僕にもわからない』と。
この言葉を、自分とは言い切れないが自分の口から聞いていて、果たして僕は自分から聞いてもいいのだろうか。
なんだかややこしくて厄介なことを言ってしまっているが、日本語が難しいからいけないのだとして。
正直なところ僕は恐いのである。
気楽にタイム・スキッパーの実験をしていただけなのに、まさか自分自身にあんなことを言われるとは思わなかったのだ。
「何でこんなことになるかなぁ」
この謎装置のせいで、何だか振り回されてる。
振り回されまくってる。
「面倒な物を僕に押し付けやがって……」
誰がかは知らないが。
そもそも押し付けられたとか被害者面して言っているが、誰も使えなんて言ってない。
僕が自発的に持ち歩いて、自発的に使ってしまっているだけ。
そう考えると、というかそう考えるまでもなく、悪いのは僕なんだ。
当たり前じゃないか。タイム・スキッパーに関する一連の話の上で、登場人物は僕だけなんだから。
家族や彼女もちょいちょい顔を覗かせてはいるが、タイム・スキッパーとは全くの無関係。
「つまり、これは全部僕の問題だ」
僕の問題であるからこそ、僕が解決しなければならない。
誰も巻き込むべきでない。
そう、僕ならいいんだ。
「じゃあ、もう一度だ」
時計の短針が、7と8のちょうど真ん中に位置する頃だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僕は自分とコミュニケーションを試みた。
と言っても別に、何か特別なことをしたとかそんなわけではなく、原始的かつ甘酸っぱい青春のように文通だ。それも声での文通だ。言ってしまえば擬似的な会話である。
方法は単純。
自分が伝えたいことをビデオカメラのアプリで録画して、タイム・スキッパーを使うことでアイツに見せる。そして向こうにも同じことをしてもらうというわけだ。
男同士で文通(会話?)というだけでも結構な気持ち悪さだが、その相手が自分自身となるともはや黒歴史確定である。
正直なところ、誰も見ていない筈なのに最初の一言を始めるのが酷く恥ずかしかった。
まぁ、僕側の僕(つまり僕だ)オンリーのモノローグをいつまで聞かせてしまっても申し訳ないので、実際に文通でどのような会話をしたかをお見せしようと思う。
……かなり恥ずかしいけれども。
「どう始めればいいのか見当もつかないから、僕の意図から説明しようと思う。
動画を長めにして君に喋ってもらっても良かったんだけど、そうすると僕はただの聞き手になってしまう。僕は君と話したい。だからこういう手段をとった。恐らく、僕が尋ねる側、君が答える側になる筈だ。だから僕はこの擬似的な会話を通して、知りたいことを全て君から教えてもらう。
異論や質問があったら僕と同じように録画してくれ。
タイム・スキッパーで五分飛ばすように設定してある。短ければその旨も伝えてくれ」
『成る程、良い手だと思うよ。まさかこんな手があるとは知らなかったよ。うん、知らなかった。
で、君は知ることを選んだんだね。なら僕も覚悟を決めよう。僕が知っている範囲で全ての質問に答えるよ。
異論はない。質問も今のところはない。
ただ五分は少し短いかな。君が気付いているかどうかわからないけど、気付いていないとしてもこれからすぐ気付くと思うけど、その五分の中には相手の動画を見る時間と、アプリを起動して準備する時間も含まれている。けど僕はこの通り、お喋り好きだからさ。余計なことまで喋ってしまう。君の時間は無限でも、僕の時間は有限だ。だから君の録画時間プラス五分にしてくれ。僕からの要求は以上だよ』
「わかった。時間はそうするよ。
じゃあ本題に入るぞ。まず、タイム・スキッパーって一体何なんだ?」
『そこから訊くんだね……。軽く驚いたよ。まぁ、説明するけどさ。
まず、タイム・スキッパーという名前に騙されているようだけど、タイム・スキッパーは時間を飛ばすような装置ではない。いや、名前に騙されたというか、あの手紙に騙されたのかな。因みにあの手紙の差出人は僕だ。
さて、もう気付いてるだろうけど、タイム・スキッパーは僕達の意識を入れ替えるための装置だ。いやぁ、君が僕に気付くのはもっと後だと思ってたんだけどな……。アイツが余計なこと言うから……』
「質問に答え切らないまま動画を終えるのはやめてくれ」
『ごめんごめん、ちょっとスマホがズレたから直そうと思って触ったら録画終了しちゃってね。面倒だからそのままにしちゃったよ。
タイム・スキッパーは僕達の意識を入れ替えるための装置だ。だけど君に僕のことが知られると面倒だから、つまりこういうことになるから、タイム・スキッパーなんてありもしない偶像を生み出した。
偶像を生み出すなんて矛盾しているような言い方をしたけど、実際そうなんだ。
タイム・スキッパーという機械はこの世に存在しない。
だから君にとっては面妖な機械に時間を唱えたと思う。けどその一部始終は他の人には何も見えていない』
「存在しない? それは僕が幻覚を見ていたってことか?」
『ほぼそういうことだけど、正確に言うと僕が君の意識を少し操ってそう見えるようにしていたんだ。僕達の意識は違うものだけど、ある場所……つまり意識が存在している体は同じ僕だからね』
「じゃあ、最初の手紙に書かれていたことも全て嘘か?」
『勿論そうなるね』
「何であんなに不必要に脅してきた?」
『他人に喋られたくなかったからだよ。そんなことをすると一瞬でタイム・スキッパーの実態についてバレちゃうからね』
「何で知られたくなかったんだ。最初から僕にちゃんと説明していればよかったじゃないか」
『いいや、僕のことなんて知らなければ知らないで良かったんだ。知らない方が良いことだって、この世にはあるんだから』
「どういうことだよ。勿体ぶらずに教えてくれ」
『いやいや、僕は質問に答えるものだと思ってたんだけどな。まぁいいや。
ちょっと長く説明するから、次はちょっと長めに飛ばしてくれ。一気に喋るけど、このトピックは小出しにするよりそうした方が頭に入ると思う』
「……わかった。次は余裕をもって20分飛ばす」
『そこまで飛ばしてくれなくても良かったんだけどね……。10分あれば十分……って駄洒落みたいだね。
じゃ、始めるよ。
僕はもう一人の君だ。正確な言い方をするならば、本来僕だった筈の存在だ。
たぶん意味がわからないだろう。でもちゃんと説明するから安心してほしい。
有り得ない話のように思えるかもしれないけど、僕はもう一人の僕であり、元々は君の兄、或いは弟だった。もうわかっちゃったかな。そう、僕と君は元々双子だったんだ。
ただ、普通の双子ではなかった。
僕らはこの世に生を受けるもっと前、精子として存在する遥か前から、僕らは一緒だったんだ。それが本当に兄弟なのか気になるだろうけど、単純な二重人格ではないんだということだけわかってほしいんだ。具体的に何が違うかと言われると、やっぱり僕達が違う生命だということだ。
体は共有しているけど、それは形としての体のことであって本質的な体ではない。具体的に言うと、僕がこの体で怪我をしても、それは君には引き継がれない。もっと言うと、君が死んでも僕は死なずにこの体に居続けられる。
何故なら、さっきも言ったように、僕と君は同じ体を共有している別の生命だからだ。
君の小さい頃の記憶があやふやなのは、経年による忘却というのもあるけど、やっぱり僕のせいというのが大きい。
この辺りで一旦君に返すよ』
「……正直、信じられない。荒唐無稽っていうのはこういうことを言うんだろうな。
まぁ、一応聞き入れた体で質問をするよ。
このことは、家族は知っているのか? 知らないのだとすれば、お前はどこでこのことを知ったんだ?」
『いいや、皆知らないよ。知っているのは僕だけさ。
何故知っているかっていうのは……すまない、もう一度訊く。これ以上聞く覚悟はできているか?』
「当たり前だ。ここまで来てやっぱりやめるなんて言い出す筈がないだろ。何を聞かされたって僕は平気だ。早く言えよ」
『わかった。じゃあ言うよ。
何で知っているかって? それは、この体は、僕の物だからだよ』
「……ん? えっ、いや、どういうことだ?」
『……はぁ、何で、これでわかってくれないかなぁ』
『つまりさ』
『元々僕という存在に、君という存在が後付けで入ってきたんだよ』
『だから本当のこの体の所有権は僕にある筈なのに、それを君が奪ったんだよ』
『それなのに自分ばかり被害者面しやがって。自分の無知さを棚に上げて、自分で考えて理解しようともせずに僕にばかり質問を重ねやがって』
『本当の被害者は僕だってんだ』
『君がこうやって語りかけてきたのだって、正直無視してやりたかったくらいだ』
『はっきり言って、ウザいんだよ』
『返せよ、僕の体を。君の……いや、お前の体じゃないんだよ』
『さっさと返せ、この侵略者』
それ以降、僕が何度呼びかけても、返答は来なかった。
正直なところまだ訊きたいことはあったのだが、これ以上何をやっても恐らく無駄になるだけだろうし、言われてしまったように自分で考えてみる時間が必要だ。
そう思って時計を見ると、あと数分で時計の短針と長身が真上で重なろうとしていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
もう一人の僕……いや、本当の僕?
よくわからないから彼と呼ぼうとも思ったが、それではあまりに他人行儀だろうか。
考えたって不毛だろうからアイツくらいに留めておくとしよう。
アイツが突然不機嫌になった理由。
それはアイツ本人も言っていたように、僕が無知で無神経だったからだろう。
この場合においては無知さゆえの無神経というべきだろうが、そこを釈明したところで何も変わったり改善されたりしないから問題ない。
いや、問題は山積みなのだが……一つずつ解きほぐしていこう。
まずは元凶とも言える謎機械、タイム・スキッパー。
あれはアイツが僕に見せていた幻覚で、実体のない虚構の存在だった。
そして、それを見せていた理由が僕達の存在に繋がってきていたということだ。
確か、夢のようなことを言っていたよな。
また一々繰り返すのは面倒になるからやめておくが、個人的にはあの一点だけは繰り返さざるを得ないと思った。
繰り返して反芻して、それでも足りないくらいのことだと思った。
『元々僕という存在に、君という存在が後付けで入ってきたんだよ』
これが事実なのかなんて僕には確かめようのないことだ。
思考を現実という枠の外に持っていって考えるなら、侵略者は実はアイツの方で、僕を乗っ取るための方便だったとも考えられる。
考えられるが、それはやはり考えられるだけであって、たぶんアイツは嘘なんてついていない。
長年同じ体にいたからだろうか、直感的にそう感じ取れる。
これ自体がアイツの心身操作によるものだとしたら、僕はまんまと引っかかってしまっているのだが。
正直に、アイツの言ったことを鵜呑みにして進めていくと、正直なところ僕は死にたくなってくる。
死にたくなるというか、死ぬべきなのではないかと、そう思えてしまう。
本当は僕の体ではないのに、勝手に入ってきて所有権を掻っ攫ったと言うのだ。
じゃあ僕は退去すべきだろう。違うだろうか。
いや、別にだからといって早急に自殺をしてやると言うほど、僕は即決即断できないし、そもそもそこまで愚かだとも思っていない。
……………………………。
僕は、どうすればいいんだ。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
結局、布団に潜ってもまったく眠れそうになかったから、僕はリビングである作業をしていた。
作業といってもなてんことはない。
ただ、アルバムを見ていただけだ。
アルバムと言っても、昔を懐かしんで卒業アルバムを見ているわけではない。
懐かしむ昔なんて、僕にはないんだから、そんな無駄なことなんて……いや、中学時代の記憶ははっきりしているのだが。
そんなことではなく、もっと昔、具体的に言うと幼稚園時代のアルバムだ。
「……やっぱり、そうなんだな」
僕と一緒に写って、僕と一緒に笑っているこの子達、僕は全く記憶にない。
それどころか、こんなに小さい頃の自分の姿すら……。
でも、一人だけ。
一人だけ、見覚えのある子がいた。
見覚えがあると言うと少し語弊があるのだが、とにかく、僕の記憶にあるような面影が、写真に写っていた。
それも、たくさん。たくさん……。
「こんな時間に何やってんの」
姉。
ヒト科家族目きょうだい属・姉。
何をしに来たのかと思えば、眠そうに目を擦りながら、冷蔵庫からお茶を取り出してラッパ飲みし始めた。
「……せめてコップに注げよ」
「良いじゃん、飲み干すし」
「まだ四分の三くらい残ってるのに……?」
しかも2Lのペットボトルだぞ。
高三にもなっておねしょしても僕は知らないからな。
「で、何してんの」
「見てわからないか」
「全部言わないとわからないかな。アルバム見て何してんのって訊いたつもりなんだけど」
棘があるな。
眠いのかな。じゃあさっさと寝ればいいのに。
「……別に。ただ見てただけだよ」
「ふぅん。いつのアルバム?」
「幼稚園の頃の」
「幼稚園? また何でそんな古い……あぁ」
姉は何かを思い出しように頷いて、そしてニヤついた。
何を笑ってるんだ。
「何で笑ってんの」
「いやぁ、あの頃のアンタは可愛かったなぁって」
「うるさい」
「――ちゃんと結婚するーって毎日のように言ってたっけ。卒園以来会ってないんじゃない? 元気してるのかな」
姉の言葉に、驚く半面、納得もしていた。
やっぱりそうなんだな。
僕の記憶にはないけれど、僕以外の記憶にはしっかりと残っていて、記録としてもちゃんと残っている。
「元気にしてるよ、きっと」
「……ふぅん?」
姉は怪訝そうな顔を見せて、それから何も言わずに部屋を出て行った。
自分の部屋に寝に行ったんだろう。
しかも、あの短時間でしっかりお茶を飲み干している。
さて、別に、姉との会話が原因とかではなくて。
問題を終わらせるとかではないけれど、というか終わらせるつもりで終わるかどうかなんてわからないけれども、それでも自分の中で全てを一件落着させようと。
僕は、深く決意した。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
「本当は、僕だけの問題として終わらせたかったんだけど、そうもいかなかった。出来なかった。力不足だ」
誰もいない屋上。
そりゃそうだ、今は放課後で、しかも天候は雨だ。
こんな日にわざわざ傘をさしてまでやってくる物好きな人間なんて滅多にいないだろうし、更に言うと僕みたいに傘もささずに弱くない雨に曝されてまで屋上に来る人間なんていないだろう。
というか、いてほしくない。
高校生にもなって雨にはしゃいでしまうような幼稚な人間がいなかったことに安心しつつ、僕は彼女を待つ。
「――くん、こんな所に呼び出して、一体どうしたんですか……?」
屋上への扉を半分くらい開けて、こちらを窺っているのは、眼鏡の彼女。
僕以外の唯一の登場人物と言っても過言ではない彼女。
「って、ビショビショじゃないですか!」
そう言いながら傘をさしてこちらに向かってくる彼女。
どうりで遅いと思ったよ。下駄箱まで傘取りに行ってたんだもんな。
まぁ、僕だって本当はこんなビショビショにはなりたくなかった。
なかったけど、雨が降ってしまったんだから仕方ない。
教室では誰かに聞かれてしまうかもしれないし、一緒に帰りながらする話ではないと思った。
「傘には入れてくれなくていい。その位置で、そのまま聞いてほしい」
「いえ、でも……」
「――さん、君は、僕を知っているよね?」
たぶん、こんなことを唐突に言ったって何のことかなんてわかる筈もないだろうけど、ここまで来て、僕は自分を抑えられなくなったのである。
正確に言うと、感覚的な話なのだが、自分の中の何かを抑えるのに手一杯で、こちらまで手が回らなくなってしまったような感じだ。
……ひょっとすると、もう一人の自分が、アイツが、僕の中で暴れているのかもしれないとか、そんなことを思ってしまう。
「え、ええ、もちろん知ってますけど……」
「違う。とぼけないでくれ。わかってるんでしょ?」
「……何のことですか」
「アルバム。幼稚園の頃のアルバム、見たよ」
その言葉で諦めたのか、彼女は少し俯いて。
そっと溜息を吐いて。
「ヒント、出し過ぎちゃいましたかね」
「ヒントというか、完全に答えだった。君がいなければ、僕はアイツの存在にすら行き着かなかっただろうし」
「ふふっ、じゃあこれは気付いていますか?」
うん?
まだ何かあるのか?
いや、あるといえばたくさんあるんだけど。
「これ、あなたの夢の中なんですよ」
「……はぁ?」
それは突拍子もなくて、唐突な事実。
まるで夢のようだとは幾度となく思ったが、まさか本当に夢……?
「私の言ったこと、信じるんですか?」
「……嘘なの?」
「いえ、嘘ではないのですが……まぁ、正確に言うと現実世界でいう夢とは少々勝手が違うのですけど」
「ん、どういうこと?」
「噛み砕いて言うと、あなたは寄生虫によって夢を見せられているんです」
いや、虫ではなくて、侵略者ですかね、と言い直す。
侵略者というと……。
「あなたが新生活を憂鬱に思う気持ちにつけ込んだんです。あの侵略者、もう一人のあなたと言われるアイツが、です」
『嘘に惑わされるな』
自分の喉が勝手に音を発したようだった。
僕の意思とは無関係に口が動いた。
体を操られているということがこれほどまでに気分の悪いことだとは知らなかった。
って、こんなことが出来るならこの前までの録画会話は何だったんだ、と言いたくなるが……。
ひょっとして僕がアイツに呑まれてきているのか?
『彼女が言ってることは全てまやかしだ。僕の言うことが信じられないのか?』
「正直なところ、君を信じるのも彼女を信じるのも、リスク的なことでいえば大差ないんだよね。僕としてはどちらの意見も半信半疑だからさ」
「あなたがどちらを信じても構いません。言ってみれば私はあなたとは無関係ですし」
平行線ではないけど、全員が意見を言うだけ言って会話として成り立っていない。
僕は何を信じるべきなのか。
そんなものは答えが出ている。
いや、実際のところ答えなんかない。
何も信じず、それでも自分自身だけを信じればいい。
その旨を、僕は伝えさえすればいい。
「僕は二人ともを信じない。自分だけを信じる。もちろん、自分っていうのは僕の意識ってことだ。信じなくても僕は解決さえすればいい」
「つまりさ」
「この話に、ケリをつけてよ」
「そのための意見を聞かせてくれ」
「僕はそれだけでいい」
僕は早く、全部を終わらせたい。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
アイツの言い分。
「僕はこの体の本来の持ち主で、君こそが侵略者だ。だから、君の意思でこの体から出ていきたいと願うだけで、この話は終わる。終わるんだよ」
彼女の言い分。
「これはあなたの中のものが見せている夢です。私はその夢を終わらせる方法を知っています。わたしの言うことに従えば全て終わります。終わりますよ」
時間にすれば10秒にも満たない主張を聞き終えて、僕は考える。
まずは、二人の今までの意見を総括して共通点を挙げる。
と言っても、『僕の中のどちらかがこの体の侵略者であること』と『どちらも従えば話は終わる』という点しかない。
もっと探せば細かいものがあるのだろうが、そんな些細なものはどうでもいいだろう。
「ねぇ、従えば全て終わると言ったけど、具体的には僕は何をすればいいんだい?」
「……信じるか信じないかはやはりあなた次第ですが。私は『第三惑星防衛室』の"侵略対策課"という部署に所属しています。そして、私は『夢乗り』という力を使って人の夢の中に入り込み、夢の中で自由自在に、思ったことを何でもできます」
夢感が一気に増した。
夢感というか、胡散臭さが。
「私は『寄生担当』で、簡単に言えばあなたの中にいるものを退治しに来ました。ですが、あなたを助ける義理は私にはありません。ですので、何をすればいいのかは教えません」
『ほら、こんなことを言うような奴を信じるのかい? これは夢なんかじゃない、現実だよ』
だから、僕は、自分を信じるんだって言ってるだろ。
ただ、今の発言ではっきりした。
これが本当に夢であるか、夢でないか。
それさえわかればいいんだ。
そして、夢であるかどうかの判断なんて、昔から一つしかないだろう?
それは同時に、夢を終わらせる方法でもある。
「――さん、一つだけ頼んでいいかな」
「何でしょうか?」
「君がどうやって君が言う夢を終わらせるのか知らないけど」
「僕が3秒数えたら、君の力で僕を、殺してほしい」
心拍数が急に上がる。
それに併せて思ってもない言葉が口から出てきた。
『お、おい! 何言ってるんだ!』
「うん? 君の主張によると、これは現実なんだろ? それで、彼女の主張は彼女の力は夢の中でしか使えないというものだ。つまり、3秒後に全ての結末は決まるじゃんか。僕が生きてたら僕は君を信じよう」
『な、何を言ってるんだ! 僕より彼女を優先するって言うのか!』
「レディファーストだよ。ってのは嘘でさ、僕は君を信じてない。それに加えて、僕は彼女より君の方を疑ってさえいる」
『どういうことだ! 自分だぞ!』
「違う、僕は僕だよ。それに君のやり方は所々強引だったってのもある」
『それだけで、僕を疑うのか!』
「いや、今思うと、一番最初から怪しかったんだよね」
『一番最初……?』
「これを夢だと仮定すると、痛みなどの様々な感覚は君が触角を操っていたんだろう。でも、一番最初、ボールペンを踏んだ時、僕は何も感じなかった」
驚愕している、というのが不思議とわかる。
やっぱり、僕とアイツとの境界線が曖昧になってきているのだろう。
「あの時は寝ぼけているだけかとも思ったけど、まだ寝てたのかもしれない、ってね」
さて、じゃあやってくれ。
夢の中で死んだら、目が覚める。
ありきたりだろう?
でも最後に、言っておこう。
「3秒後生きてたら、その時はこの体は明け渡してやるよ」
ふふっ、と彼女は微笑んで。
「合格、ですっ」
3秒、2秒。
さぁ、タイムスキッパー、最後のお仕事だ。
「1秒」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
15歳、4月、今日は入学式。
目覚まし時計が非常にうるさい。
「……何だか、ややこしい夢を見た、気がする」
とてもややこしくて、とても長くて、とても曖昧な、中学生上がりにとってありきたりな夢を。
新生活なんて期待していない。
いつもと同じ朝食を食べて、いつものように顔を洗って制服に身を包み、いつも見る玄関前の風景に飽き飽きし、そして。
「きゃっ」
桜が舞う季節の中。
いつも通る十字路で。
「あ、あぁ、すみません、大丈夫ですか?」
「え、えぇ……」
どこかで見たことがあるような、そんな錯覚と共に。
いつもと違う出会いが待っていた。
Is it a dullish, ordinary dream?
――Yes, but No.
本当にお久しぶりです。風見燈環です。
四か月ほど前からリハビリ目的で書いたお話ですが、さすがに長期間ちょっとずつ書いていると考えとか変わっちゃって、話の方向性がぶれまくりでしたが、まぁ、リハビリだしこんなものかなぁと……(汗)
今回のお話の大本は、『こんな道具があったらなぁ』というところから始まっているのですが、最終的にファンタジー色を強くしてしまうあたり、僕も中学生を卒業できていないのかもしれません。大学生なのに。
この度はお見苦しい文章を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
これからの作品もよろしくお願いします。