奪われた宝たち
すぐさまメイドに連れられて広めの部屋に通されるとそこには女王やウィンディアの近衛隊であろう人たち、それに数人の使用人がいた。
「落ち着きなさい。1から状況を整理するわ。」
気丈に振舞う女王は姿こそ立派だが、痛々しかった。そんな女王にうながされそのとき護衛にあたっていたであろう騎士の1人が話し始めた。
「視察の途中、魔法アイテムを扱う店に入ったのですが、レシェナさまがこのアイテムは流通禁止のものだ、と言ったところ急に店から10人ほどの人が出てきて…ラシュリさまを人質にとりそのままお2人を連れて転送魔方陣で逃げられました。」
そういった騎士の顔は真っ青で今にも倒れそうだ。転送魔方陣を用意してた、ということは裏組織の密入品を売っていたということか…うっかり店頭に出してしまったところをレシェナに見つかったのだろう。
「魔法での捜索は?」
「はい、行っておりますがまわりに結界がはってあるようで我々の魔力では…」
向こうにはかなりやり手の結界使いがいるのだろう。それに、ラシュリやレシェナからのコンタクトがないということは気絶させられている可能性が高い。少なくともレシェナの魔力ならほとんどの結界は魔力を多少弱めることはあっても使えなくはしないだろうし。
「わかりました。わたくしが位置測定魔法を使います。そしたら、すみませんが頼みます。サーファスくん。」
「俺でいいんですか?」
近衛隊もいるのに…
「あなただから頼むのです。」
そう言って返事も聞かぬまま女王は魔力強化陣に入り縁唱を始めた。
「風よ、我が宝の在処を示せ。」
女王の手元のウィンディアの地図が光ると1点が目立って光っていた。
「ここは…」
ウィンディアとウォンティアの国境のある森の奥。この組織、ウォンティアにも関係しているかもしれない。
「転送。」
すぐさま苦手な援護魔法を使い森へと向かった。
その頃。
ーん?ここは…
ラシュリが目覚めるとそこはどこかの物置のようだった。起き上がろうとするがあいにく両手両足はロープでしばられ動くことはままならなかった。さらに口はハンカチのようなもので塞がれている。となりでは同じように手足をしばられ口を塞がれたレシェナが眠っている。
魔法でロープを切るろうとも考えたがどうやらここには対魔結界がはってあるらしい。魔力の強いレシェナならともかくラシュリでは魔法を使うことはできない。
しかたなくその場でどうするか思案しているとこちらに向かって足音が近づいてきた。
「おい、起きたか?」
寝たふりをしていると騙されてくれたらしい。
「にしても、この2人がウィンディアの姫さんですか。綺麗な顔してるねー」
気持ち悪い。しかし、文句を言うわけにもいかず寝たふりに徹する。
「どちらさんかがものすごい魔法を使うって本当なのか?…まぁ、いいか。ボスに報告と。」
うそ…レシェナのことは誰にもバレてないはずなのに。ただの姫という存在を狙った誘拐じゃないなんて…
思わず手を握り締めた。
ーサーファスさんっ!