世界の闇と、魔王
森の奥。
スライム討伐の依頼は終わったはずなのに――
ノジュアスの心臓は、まだ早鐘のように鳴っていた。
目の前には、魔王リムリア。
スライムから人化した銀髪の少女。
その彼女が、ノジュアスをじっと見つめている。
「……“脅威”って、どういう意味だよ?」
ノジュアスが絞り出すように問うと、リムリアは静かに座り込み、空を見上げた。
「ノジュアス。
この世界ってさ、表向きは“冒険ファンタジー”って感じだけど……実は違うの」
「違う?」
「うん。
この世界はね――
『スキルによって支配されてる世界』 なんだよ」
リムリアの口調が、普段よりも落ち着いている。
■ 世界の真実
「人は皆、何かしらスキルを持って生まれる。
でもね、そのスキルには“階級”があるの」
・神級
・王級
・英雄級
・上級
・中級
・下級
・最弱
ノジュアスのスキルは――
最弱。
「最弱スキルの人は差別される。仕事も、冒険も、戦いもできない。
“価値がない”って扱われるの」
ノジュアス
「そんなの……」
「でもね。
世界にはもうひとつ、絶対に知られてはいけない“裏設定”があるの」
リムリアはノジュアスの目をまっすぐ見つめた。
「“極めるもの”は、
世界の階級をぶっ壊すスキル なんだよ」
ノジュアス
「……ぶっ壊す?」
「そう。
本来、最弱は最弱のまま。
上位スキル持ちは一生“上”に君臨するって仕組みなのに……
君のスキルは、
努力すればどこまでも強くなる“無制限成長 型”」
風が吹き、彼女の銀髪を揺らす。
「だから世界は、君を“脅威”と認定してる。
君みたいな存在が増えたら……
“支配階級”が崩壊するから。」
ノジュアス
「俺を……殺しに来るってことか?」
リムリア
「うん。確実に。」
あまりにもあっさり言うので、逆に怖かった。
■ 魔王の役割とは?
ノジュアス
「……で、魔王って何なんだよ?
スキルの支配者とか、世界の敵とか……そういう立場なんだろ?」
リムリアはクスッと笑う。
「わたし? 違うよ。
“魔王=世界の敵”ってイメージは、人間が勝手に言ってるだけ。」
「え?」
「魔王ってね、
世界を監視し、均衡を保つ役目 を持つの。」
「え、むしろ正義側!?」
「まぁ厳密には“中立”かな。
世界の流れが壊れそうなら、魔王が動く。」
ノジュアス
「じゃあ、なんでスライムになって遊んでたんだよ」
リムリア
「だって退屈なんだもん!」
ノジュアス
「お前……絶対まともな魔王じゃないだろ」
「まともじゃないよ?
でも、君みたいな“変化の種”を見つけたのは久しぶり」
リムリアは立ち上がり、ノジュアスの手を軽く取った。
「ノジュアス。
君はこの世界の“闇”と正面からぶつかることになる。
そしてその闇の中心にいるのが――」
一瞬、彼女の笑顔が消える。
「スキル管理組織
“最弱を排除する仕組み”を作った連中。」
ノジュアス
「アークシステム……?」
「君の“極めるもの”を、
世界から消そうとしている大本命 だよ。」
森が静まり返る。
ノジュアスの背筋に、悪寒が走った。
リムリアは再び微笑む。
「でもね。
安心していいよ、ノジュアス」
彼女は一歩近づき、宣言した。
「わたしが君を守る。
魔王の名にかけて――
君の未来を壊させはしない。」
ノジュアスの、異世界での戦いは――
もう“逃れられない運命”へと足を踏み入れていた。




