スライムかと思ったら魔王でした!
ノジュアスはギルドから渡された依頼書を何度も見直していた。
森のスライム退治・Fランク
「よし……これなら、俺でもできるはず」
“最弱”スキルを持つ少年に与えられる、最も簡単な仕事。
本来なら弱者の練習相手――
……のはずだった。
森の奥へ
ノジュアスは意を決して森へ入る。
狼と戦ったあの場所より少し手前。
初心者向けの狩場らしい。
「スライムって、確か……ぷよぷよしてるやつだよな?」
草むらの先で、ぷるんと音がした。
いた。
薄い水色のスライムが、のんびりと跳ねている。
「いける……これならいける!」
ロープを武器代わりに構え、一気に走り出した。
スライム、意外と強い
「えいっ!」
ロープを振るう。
だが――
ボヨンッ!
スライムはロープを吸収し、逆にノジュアスの顔めがけて跳ね返してきた。
「うわっ!?」
避けられた。
避けられたが、心臓がバクバクする。
脳内にあの声が響く。
響く。
◆【極めるもの:発動】
《対象:回避行動
進捗:4% → 7%》
「……また成長してる……?」
スライムはノジュアスの動きを面白がるように、ぴょんぴょんと跳ねて距離を取る。
(なんか……普通のスライムより賢くないか?)
そう感じた瞬間、スライムが突然止まった。
そして――
**スライムの身体が光り始める。**
「え……?」
光は球体を包み、形を変え、膨らんで――
ノジュアスは呆然とした。
スライム、まさかの人化
光が消えると、そこには
**銀髪の少女**
が立っていた。
年齢は14〜15歳ほど。
透明感のある青い瞳。
スライムの名残か、髪先が水のように揺らいでいる。
そして彼女は――
**満面の笑みで手を振ってきた。**
「やっほー! はじめまして!」
ノジュアス
「…………」
少女
「あれ? 声出ないの? びっくりしすぎ?」
ノジュアス
「いやいやいやいやいやいや!!!」
自分でも驚くほどの大声が出た。
少女は胸に手を当て、にこりと笑う。
「わたし、スライムだったんじゃなくてね、
**“スライムの姿で遊んでただけ”** なんだよ」
「遊んで……スライムで……?」
「うん。だってさ、魔王って暇なんだもん!」
ノジュアス
「……魔王?」
少女
「うん!」
笑顔で即答された。
「本当の名前はね――
**『魔王リムリア=アクアス』**。
でも長いから、好きに呼んでいいよ!」
ノジュアスの思考が完全に停止した。
(スライムが……魔王……?
転生して一日目で……魔王と遭遇?)
少女――リムリアは指をくるくる回しながら続ける。
「さっきの避け方、すごかったよ!
“最弱スキル”のくせに、なんであんなに動けるの?」
「……くせにって言うな……」
「へへ。
気に入ったから友達になろ? ね?」
魔王なのに、まるで子犬みたいなテンションだ。
だが、その瞳だけは底知れない輝きを放っていた。
「ねぇノジュアス?」
少女は真剣な表情になった。
「わたし……“遊び相手”を探してたんだ。
人の形でいるとバレるから、スライムになって遊んでたの。
でも君、面白かったから……決めた!」
ノジュアス
「決めたって……何を?」
リムリアは手を伸ばし、ニコッと微笑む。
「**これから君を守る。
そして一緒に遊ぶ。
ついでに――この世界の“闇”も倒そっか。**
だって、そのスキル……放っておくと死ぬよ?」
ノジュアス
「…………え?」
少女
「君の“極めるもの”、あれ……
**世界に『脅威』認定されるスキルだよ?**」
風が止まる。
スライム討伐は終わった。
だが――ノジュアスの運命は、ここから狂い始める。




