最弱スキルと冒険者ギルド
── 第二話 「最弱スキルと冒険者ギルド」──
森を抜けると、視界が一気に開けた。
小さな街――木製の柵に囲まれ、煙が上がる家屋が並び、人の声が聞こえる。
転生直後で混乱していたノジュアスは、それでも胸がどこか温かくなった。
「やっと……人に会えるかもしれない」
最弱スキルを持っていても、異世界でぼっちは辛すぎる。
そんな気持ちで街へ足を踏み入れた。
◆ ギルドという場所
街の中心には、ひときわ大きな木造の建物があった。
扉は重そうだが、冒険者たちが笑いながら出入りしている。
剣を背負った者、魔法杖を持つ者、鎧を着た者――
まさに“異世界”の象徴。
「ここが……冒険者ギルド?」
勇気を出して扉を押すと、賑やかな酒場のような雰囲気が広がった。
カウンターの奥には、栗色の髪の女性受付が立っている。
年齢は20代前半くらいで、明るい笑顔を浮かべていた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。
あれ……あなた、見ない顔ですね?」
ノジュアスは慌てて頭を下げた。
「えっと……ノジュアスといいます。
今日……いや、さっき、この街に来たばかりで……」
受付嬢はにこりと笑った。
「新規登録ですね? 大丈夫ですよ。
まずはあなたのステータスを見せてください」
◆ 最弱の現実
ギルドでは、初心者が自分のステータスを見せるのは当然らしい。
ノジュアスはスキル画面を呼び出し、受付嬢に見せた。
●固有スキル:最弱
●固有スキル:極めるもの(???)
受付嬢は一瞬、固まった。
……そして、周囲の冒険者たちの視線が一斉にノジュアスへ向けられる。
「おいおい……“最弱”スキルだってよ」
「まだガキじゃねぇか。154cmって……」
「そりゃ最弱にもなるだろ」
「見ろよ剣も持ってねぇ。丸腰だぜ?」
「すぐ死ぬぞ、あれ」
ざわ……ざわ……
完全に笑い者だった。
受付嬢ですら、困ったように眉を寄せた。
「……ノジュアスさん。
“最弱”スキルは……その……冒険者としては、かなり厳しいです」
ノジュアスは自分でも分かっていた。
世界で一番ダメなスキル。
戦えない。
使えない。
成長もしない。
でも――胸の奥には、あの狼との戦いで確かに感じた感覚が残っている。
「……でも、『極めるもの』があるんだ」
ノジュアスがそう呟くと、周囲の冒険者は爆笑した。
「説明なしのスキルなんて役立たずだろ!」
「最弱と説明なしって、最悪の組み合わせじゃねーか!」
「ガキ一人で森に入ったら死ぬぜ?」
しかし――
受付嬢だけは、笑わなかった。
「……分かりました。ノジュアスさん」
「え?」
「“最弱”でも、諦めない人は強いです。
ここに“最弱からSランクになった人”もいるって噂もありますし」
「本当に……?」
「ええ。
だから、私が最初の依頼を紹介しますね。」
ノジュアスの胸に、小さな火が灯る。
自分を笑いものにする声は気にしない。
154cmでも、最弱でも――
この世界に来た意味を、自分で“極める”。
受付嬢が一枚の紙を差し出した。
「これが最初の依頼です。
“森のスライム退治・Fランク”」
ノジュアスはその紙をしっかり掴んだ。
「...やります」
ここから、異世界での“最弱から最強への道”が始まる。




