魔王会談 記憶なき彼女と試される魔王
エルミアの記憶は、戻らなかった。
蘇生は成功した。
身体も、魔力も、命も確かにそこにある。
だが彼女の瞳に、かつての仲間たちの姿は映らない。
ノジュアスを見ても、カイラを見ても、そしてリムリアを見ても――
「……あなたたちは、誰?」
そう問いかけられるたび、ノジュアスの胸は静かに削られていった。
それから、二ヶ月が過ぎた。
魔王会談、開幕
世界の深層。
魔王のみが集うことを許された│空間《虚無円卓》。
そこに、ノジュアスは立っていた。
「……場違いだな」
彼自身がそう思った。
魔王になったとはいえ、元は“最弱スキル”持ちの元会社員。
周囲には、世界を一度は滅ぼしかけた存在たちが座している。
――八人の魔王。
・破壊の暴君
リムリア=アクアス
・異界の剣王
・冥府の支配者
・竜骸の女帝
・永劫の魔術師
・災厄の預言者
・機構世界の統治者
そして――
最後の一席に座る男。
黒髪、黒い瞳。どこか懐かしい雰囲気を纏った青年だった。
「……日本人?」
ノジュアスが呟くと、男は小さく笑った。
「正解。俺の名前は――ヒナタ・ヨシグチ」
その名に、円卓が微かにざわめく。
「元・日本人。そして今は――魔王の一人だ」
魔王として、相応しいか
会談の議題は一つ。
「ノジュアスは、魔王として存在を認めるに値するか」
厳しい視線が向けられる。
「魂数は基準未満」
「進化も異例すぎる」
「最弱スキルの魔王など前例がない」
次々に突きつけられる否定。
ノジュアスは黙って聞いていた。
言い返す言葉はない。
強くなったのは事実だ。
だが、それはすべて――エルミアを救うためだった。
その時。
「――うるさいなぁ」
空気が一変した。
リムリアが、笑顔のまま立ち上がる。
「この子、私が保証するよ?」
円卓が凍りつく。
「最弱スキル? だから何?
異例? だから面白いじゃん」
彼女の瞳が、魔王たちを射抜く。
「それに、この子が魔王じゃなかったら、誰が“世界の歪み”を背負うの?」
沈黙。
数秒――永遠のような間の後。
「……渋々だが」
「認めざるを得まい」
こうしてノジュアスは、正式に“第九の魔王”として認められた。
記憶は、戻るのか
会談の終わり際、ノジュアスはヒナタに近づいた。
「……一つ、聞きたい」
ヒナタは察したように頷く。
「記憶喪失だろ?
魔王進化と蘇生を同時にやったんだな」
ノジュアスの拳が、震える。
「戻る……のか?」
ヒナタは少し考え、答えた。
「可能性はある。ただし――」
その目が、真剣になる。
「記憶は“魂”に刻まれてる。魂が歪めば、記憶は簡単には戻らない」
「じゃあ……どうすれば」
ヒナタは静かに言った。
「その歪みを正すしかない。
世界か、時間か、因果か……どれを壊すかは――お前次第だ」
ノジュアスは、強く息を吐いた。
(まだ……終わってない)
(俺は……まだ、戦い続けなきゃいけない)
円卓の上で、八人の魔王が静かに世界を見下ろす。
その中心に立つのは――最弱スキルから成り上がった、異端の魔王。
そして彼の戦いは、更なる先へと続いていく。
第一期完結です!最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
第二期の時期については、活動報告でもお伝えした通り、作者の体調を考慮しながら慎重に判断していく予定です。そのため、現時点では未定とさせていただきます。
焦らずしっかりと準備を整えて戻ってきますので、再開を楽しみにお待ちいただければ幸いです!




