連携訓練
森を震わせる咆哮が、再び仲間たちを叩き起こした。
「立てェッ! 今日からは一人じゃねぇ――“隊”として戦え!」
オルドは二振りの木剣を携え、獣のような気配を放つ。
その視線を受け、全員が自然と武器を構えた。
リーナは弓を背に掛け、両手には双剣を。
ガルドは重々しい大剣を構え、
ハルトは長剣を握り、
セリスは杖を胸に抱き、
リュシエルは静かに短剣を掲げる。
「かかってこい! 本当に仲間なら、俺を越えてみせろ!」
次の瞬間、オルドが踏み込む。
その速さは嵐のようで、最初に狙われたのはリーナだった。
「っ!」
リーナは双剣で受け止めるが、衝撃で後ろへ押しやられる。
すかさず背中の弓を手に取り、矢を番えて放った。
矢はオルドの木剣に弾かれるが、その一瞬の間隙を――
ガルドの大剣が力強く叩き込んだ。
「リーナ、よく繋いだ!」
「まだよ!」
二人が押し返す間に、セリスの詠唱が仲間の体に力を送り込む。
声が流れ込むたび、疲労で重くなった足が再び前へ踏み出す。
「止まらないで! 私が繋ぐ!」
オルドは唸り声を上げ、今度はハルトに狙いを定める。
長剣を受け止めた刹那、全身を揺らす衝撃。
それでもハルトは声を張り上げた。
「……俺は、もう逃げない!」
必死に押し返したその瞬間、リュシエルの短剣が横から閃く。
小さな刃が鋭く入り込み、オルドの動きを止める。
そこへリーナの矢が飛び、ガルドの大剣が振り下ろされた。
刃と矢と声と意志が重なり合い、五人の動きがひとつに繋がる。
初めて“隊”として形を成した瞬間だった。
オルドは木剣を振り払い、全員をまとめて押し退けると、大きく笑った。
「ははっ! ようやく群れになったな!」
荒い息をつく仲間たちを見渡し、さらに言い放つ。
「だがまだ半端だ! 背中を預け合えるかどうか……それはこれから証明しろ!」
誰も口を開かなかった。
だがその瞳には、確かな光が宿っていた。
――彼らは初めて、“隊”として立っていた。