表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/127

ソルディアへの旅立ち

 鍛冶場の奥、ハルトは研ぎ澄まされた長剣を手に取った。

 鍛冶師が腕を組み、真剣なまなざしで刃を見つめる。

「最近、この辺りでも妙な噂が立ってる。黒い羽根を残して消える賊がいるとか……。

 真偽はわからんが、物騒なのは確かだ。――気をつけなよ」


 ハルトは剣を光にかざし、静かに頷く。

「……ありがとう。心しておくよ」



 一方、風の練技場。

 リュシエルは両腕を広げ、蒼い風を纏わせるように駆け抜けていた。

 風の流れが旋回し、軽やかな足取りが空気を切り裂く。

 その姿を見守るセリスが、小さく息を吐く。


「……リュシエル、私も一緒に修練していい?」

 声にほんのわずかなためらいが混じっていた。


 リュシエルは軽く頷き、柔らかな笑みを浮かべる。

「もちろん。蒼天の刃の一員として――あなたの力は、これからもっと必要になるわ」


 セリスの手に星輪の杖が淡く光を宿す。

 リュシエルはその光を見つめながら、穏やかな声で続けた。

「どんな困難があっても、私たちは一緒に超えていく。

 あなたも、その仲間として――もう一人じゃない」


 セリスは微かに震える唇をかみしめ、やがて小さく頷いた。

「ありがとう、リュシエル。私……みんなとなら進める」



 旅立ちの時。

 街の門に集った仲間たちは、それぞれの支度を終えていた。

 ガルドは大剣を背負い、軽く肩を回す。

「南へ向かう道は長い。ソルディアに着く前にいくつかの村を経由することになる。

 その間に、黒羽の痕跡も探っていこう」


 リーナが弓を背にかけ、明るく笑う。


 ハルトは皆を見渡し、ゆっくり頷いた。

「これから先、氷冥王も黒羽も――そして俺自身の謎も待っている。

 けれど必ず、ソルディアで手がかりを掴もう」


 リュシエルが風をまといながら、澄んだ蒼い瞳を細める。

「南の帝国――紅蓮の溶岩に囲まれた炎の都、イグナリア。

 太陽の精霊を祀るその地で、きっと新たな試練が私たちを待っているわ」


 セリスが星輪の杖を握り、静かに微笑んだ。

「その試練を、みんなと一緒に越えていく。……それが今の私の道だから」



 街道の彼方、遠く霞む地平は淡い群青に沈み、旅立つ者たちを静かに包み込んでいた。

 蒼天の刃――五人はその道を見据え、揺るぎない足取りで歩みを始めた。


 氷冥王ヴァル=ノクトとの因縁を胸に、

 そしてソルディア帝国に潜む黒羽の新たな影を追って――

 彼らの新たな旅路が、いま静かに幕を開ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ