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クラン

王都ギルドに戻ったハルトたち。

ガルドの傷も癒えつつあり、次の目的地――ルクシード聖国への旅支度が始まります。

受付のセシルから思いがけず「クラン」の存在を聞かされた一行。

黒羽と渡り合うため、そして新たな仲間を迎えるため――物語は新たな段階へと進みます。

 王都ギルドの大広間は、夕刻の柔らかな灯りに包まれていた。

 依頼を終えた冒険者たちの笑い声、掲示板の紙をめくる音、酒場からの香ばしい匂い――

 それらが溶け合い、どこか安心を感じさせる賑わいを作っていた。


 窓の外では、紫の空に夕星が滲み、街路を行く人々の影が長く伸びている。


 受付カウンターでは、セシルが書類の束を手際よくまとめていた。

 ハルトたちが姿を見せると、彼女はぱっと顔を上げて笑顔を浮かべる。


「おかえり、ハルトたち! モルネの件、ちゃんと報告受け取ったよ。お疲れさま!」


「ただいま。……こっちは相変わらず賑やかだな」

 ハルトが肩をすくめると、セシルは明るく笑った。


「まぁね。でも、みんなが戻ってきてくれるのが一番のニュースよ」


 その笑みが一瞬柔らかくほどけ、すぐに真剣な色を帯びた。

「そうそう、ガルドたち――次はルクシード聖国に向かうんでしょ? 長旅になるなら、“クラン”を作るのを考えてみたら?」


「クラン?」

 ハルトが首を傾げると、セシルは胸を張って説明を続ける。


「簡単に言えば、仲間同士で正式に登録するチームみたいなもの。

 国を越えて動くときは、これがあると便利なの。資金口座、専用の拠点、そして身分証にもなる。

 黒羽みたいな大規模な組織と戦うなら、後ろ盾としても心強いはずよ」


 ガルドが腕を組み、静かに頷く。

「なるほどな……確かに、これから黒羽と本格的に対峙するなら、悪くない選択だ」


 セシルは人差し指を立てて続けた。

「でも条件がひとつ。登録には五人以上のメンバーが必要。今のままだと一人足りないの」


「五人……」

 リーナが小さくつぶやく。

 その瞳には、モルネの夜で見た炎の残光がまだ映っていた。


 ガルドが低い声で言う。

「すぐには難しいだろう。だが、ルクシードへの道中で信頼できる者と出会えるかもしれん」


「そうね」

 セシルは微笑み、四人を見渡した。

「旅って不思議よ。必要な人とは、ちゃんと出会うようにできてるんだから」


 その言葉に、暖炉の火がぱちりと弾けた。

 大霊灯の光が天井を淡く照らし、夜の訪れを告げている。


 ガルドが腰を上げ、短く言った。

「明日の朝には王都を発つ。各自、今夜のうちに準備を整えておけ」


 リーナが頷き、リュシエルは静かにルミナスブレードを握る。

 刃に反射した灯りが、白金の光を宿し、揺らめく炎のように彼女の瞳に映った。


「ルクシードか……長い旅になりそうだな」

 ハルトが呟くと、ガルドは淡く笑みを浮かべる。


「道は決して平坦ではない。だが――進むしかない」


 外では夜風がギルドの扉を揺らしていた。

 石畳に夜露が降り、星の光が反射して淡く光る。


 ハルトは扉を押し開け、夜空を見上げた。

 紫と藍が溶け合う空の向こう――そこに、ルクシード聖国。

 光の国と呼ばれるその地で、新たな仲間と、黒羽との宿命が待っている。


 彼の掌にある《黎明の刃》が、まるで応えるように微かに震えた。

クラン制度が初めて登場しました。

大きな旅や国を越えた行動に向けて、一行が力を合わせる準備が整いつつあります。

まだメンバーは足りませんが、これからの旅でどんな人物と出会い、どんな絆が結ばれるのか。

ルクシードでの新たな出会いに、ぜひご期待ください。

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