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黎明と蒼鱗

新たな旅立ちを前に、ハルトが初めて自分の意思で選ぶ剣と防具。

その選択は、これまでの成長と、仲間と共に進む未来を映します。

 ハルトは店主に導かれ、奥の陳列棚へと足を踏み入れた。

 壁に整然と並ぶ剣の刃が、朝の光を細く反射して輝く。

 微かに漂う油と鉄の匂いが、胸の奥を引き締めるように染みわたった。


「長剣だけでも、この数か……」

 思わず漏れた呟きに、店主が口の端を上げる。

「昇格したての冒険者が迷うのも当然だ。だがな――本当に自分の剣は、手にした瞬間に分かるもんだ」


 ハルトは柄を一つひとつ握り、重みを確かめた。

 重すぎれば腕に鈍い衝撃が走り、軽すぎれば空を切るだけ。

 どの剣も美しいが、どれも「何か」が違った。


 その時――

 群青の刃が、光の中でふと視界を引き寄せた。

 夜明けのように白銀の線が一本、静かに走る。

 その剣を握った瞬間、重みと温もりが腕にしっくりと馴染んだ。


「……これだ」

 自分でも驚くほど自然に言葉がこぼれた。


 店主が目を細め、静かに頷く。

「いい目をしてるな。それは《黎明の刃》。オリハルコンを極限まで薄く鍛えた特注品だ。

 軽さと切れ味――両立できる剣はそう多くない」


 ガルドが腕を組んだまま問いかける。

「どうだ、手に馴染むか」


「……振る前から、刃の軌道が見える気がする。まるで腕の一部みたいだ」


 その答えに、ガルドは満足げに頷いた。

「なら迷うな。それが“お前の剣”だ」


 店主は次に、防具の並ぶ棚を指し示す。

 革と金属が見事に組み合わされた鎧の中で、蒼く光る一着が目を引いた。


「防具を選ぶなら、これだな」

 店主が取り上げたのは、海竜の鱗で作られた軽鎧だった。

「《蒼鱗のジャケット》――魔力を帯びた鱗が斬撃をいなす。軽さに似合わず、守りは堅い」


 ハルトはそれを手に取り、静かに腕を通した。

 動かしてみると、驚くほど軽く、体の動きを妨げない。

 呼吸に合わせて鱗が微かに鳴り、光を受けて淡く煌めいた。


「……これなら、素早く動きながら戦える」


 ガルドが穏やかに笑む。

「剣も防具も、お前に合っている。これで次の地でも戦えるな」


 ハルトは深く息を吐き、目の前の装備に視線を落とした。

 ――黎明の刃。新たな道を切り開くための剣。

 ――蒼鱗のジャケット。仲間を守り、己を支える盾。


 どちらも、自らの成長と旅の再出発を象徴するように、静かに光を宿していた。

ハルトがEランクに昇格し、初めて本格的な武器と防具を選びました。

新たに選ばれた「黎明の刃」と「黒燐のジャケット」が、これからの旅を支えます。


挿絵(By みてみん)

ハルト

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