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矛盾の炎

黒羽を追う調査隊は、モルネへ向かう街道で異様な現象を目にする。

ガルドが口を閉ざすその光景は、彼の過去と深い因縁を秘めていた――。

 モルネへ続く林道は、灰色の霧がひたひたと地面を這い、視界を覆っていた。

 木々の梢を揺らす風は冷たく、湿った土と枯葉の匂いが一行を包む。


 先頭を進むガルドが、突然足を止めた。

 霧の奥、倒木の側に、不自然な青白い光がほのかに揺れている。


「……見ろ。」


 ハルトは息を呑む。

 黒く焦げた倒木。その表面を縁取るように、紅燐光がじわりと滲んでいた。

 まるで炎が凍ったかのように、熱を持たない光が淡く脈動している。


「……火じゃない。氷でもない……」

 リーナが小声でつぶやき、翡翠色の瞳をわずかに細めた。

 リュシエルも眉を寄せる。「女神の加護でも説明できないわ……。」


 ガルドの琥珀色の瞳が、一瞬だけ影を帯びた。

 その視線の奥に、過去の記憶がちらりと揺らぐ。


「昔、一度だけ……この光を見たことがある。」

 低く押し殺した声だった。


「……どこで?」

 ハルトが問いかける。


 ガルドは短く息を吐き、霧の奥を見据えた。

「帝国騎士だった頃だ。」

 それ以上は語らず、大剣の柄に静かに手を添えた。


 ハルトの胸に、黒羽の名が重くのしかかる。

 この異様な光――黒羽の幹部「碧刃」と呼ばれる者の仕業なのか。

 だが、ガルドの口からその名が出ることはなかった。


 霧はさらに濃くなり、周囲の気配がひりつく。

 不意に、森の奥から微かな金属音が響いた。

 リーナが素早く短弓を構え、リュシエルも短剣に指先を添える。

 ハルトは長剣を握りしめた。


 霧の中、何かが確かにこちらを見ている――。

 その気配が、一行の背筋を凍らせた。

ガルドの一言と青白い焦げ跡。

これが何を意味するのか、そして誰の仕業なのか。

次回、霧の奥からついに不穏な影が動き出します。

物語の続きが気になった方は、ブックマークや感想で応援していただけると励みになります。

これからもハルトとリュシエルの旅路を見守っていただければ嬉しいです。

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