最終話「HELLO,WONDERFUL STUPID OUTSIDES.」
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今回は、残酷な描写はありません。
独自用語や舞台設定が多いので、リンク先に解説をまとめています。
宜しければご覧くださいませ。
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【約一年後――】
〈終焉のオーデ〉による襲撃から、およそ一年が経過した。
相変わらずユートピアの中心部にはクロノス本部が鎮座していた。
大陸各地には今も襲撃の爪痕が残る箇所もあったが、それすらも年月とともに日常の景色の一角と化していた。
窓の外をぼんやりと見つめる産土が今いるのは、アトランティス郊外の静かな街はずれの、古民家の一室だった。
彼はベットから少し上体を起こして、静かにそこから見える景色を眺めていた。
うっすらと霞んだ黄金の瞳には、もう以前の様な視力は無い。
彼の寿命は近かった。
腕を失ったことで導守の宿命からは解放されたものの、生まれた時からその能力を有していた彼の寿命はおよそ約30年が限度だと言われていた。今時期は丁度、その時を迎えようとしていた。
今日までの間に、産土のこれまでの功績を重んじ、再三にわたる延命治療などの話もあがっていたが、他でもない産土自身がその全てを拒否して、自然に永眠する道を選んだのだ。
余生は一人静かな場所でのんびりと過ごしたいと、ここにいることは誰にも明かさずひっそりと暮らしていた。
もう久しく、誰とも連絡を取っていない。というのも、ここ数か月の間に彼の衰弱は急速に進行し、もう声を発することすらも、すっかり億劫になっていたのだ。
たまに会話をするのは、いつからかここへ出入りするようになった、見知らぬ少女だけだった。
少女は産土がここに暮らし始めて暫くたったある日、突然訪ねて来たのだった。
その日は雨が降っていて、産土が丁度出先から戻ってくると、見知らぬ少女が軒下にしゃがんで雨宿りをしていた。
彼女はこの辺りの土地ではあまり見かけぬ、薄黒い肌色に漆黒の髪を肩くらいまでのコーンロウにしていた。茶褐色の大きなくぬぎの様な瞳が、産土の方を見上げた。
産土が何と声をかけても、彼女は一言も言葉を返さなかった。初対面の相手を警戒しているのだろうと産土は感じ、彼女の横にそっと傘を置くと家の中に戻った。
後日、彼女は傘を返しにやってきた。
その時彼女は初めて言葉を発したが、聞きなれぬ異国の言語ゆえに産土には理解出来なかった。同じく少女の方も、産土の言葉が難しいようであった。
しかし彼女はここの居心地が良いのか、その後も気まぐれに産土の家を訪れた。
産土は子供が嫌いだったが、少女は静かで利口だったので特に追い払うこともなく、来る者は拒まずにいた。
簡素な家具しか置いてない殺風景なリビングには、やがて彼女が木の葉や小枝で作ったオブジェの数々が飾られ、拙い文字のラベルが貼られた瓶詰のジャムは、いつしか彼女専用にと常設された小棚に可愛らしく保管されている。
依然、二人の間には言語の壁があったが、やりとりを重ねるうちに表情や行動から次第に意思疎通を図れるようになっていた。
少女がいつもどこからやってきて、どこへ帰っていくのか、産土は知らない。
彼女の方も産土に何も聞かなかった。
ただそこで気の向くままに遊んだり、おやつを食べたり、料理を作ったり、たまに家事を手伝ったりして、過去にも未来にも関心なく、ただただ無邪気にその瞬間を謳歌しているだけだった。
産土にはそれが心地よかった。
この日も少女は産土の家に訪れていた。
すると、もう数か月と使われていない産土の端末が鳴った。
耳慣れない通知音に、産土自身はそれが着信音であったことすら忘れていたが、たまたま少女がそれを見つけ、産土の枕元へと持ってきた。
「ん……ありがと」
産土は小さく言ってそれを受取ろうと左手を伸ばしたが、少女は何も言わずに少し微笑むと、ベッドに横たわる産土の耳元にそっと端末を添えた。
「あ、ごめん。さんきゅ」
産土は少女に礼を言いつつ、相手が誰だかの確認もせずに反射的に出た。
「もしもし」
久しぶりに聞いた自分の声はあまりに掠れていて、思わず産土は小さく咳払いをする。
そんな端末越しの産土の様子が分かったかのように、電話の相手は一拍置いてから第一声を発した。
「おう、俺。久しぶり」
朝霧だった。
「あぁ……あんぱんじゃん」
端末越しの懐かしい声に産土から自然に笑みがこぼれた。
朝霧は屋外にいるのか、彼の遠く後ろからは時折、強風が吹くような轟々という音が聞こえてくる。
「どうだ、調子は?」
産土より一回り以上も年上の朝霧だが、その声はだいぶみずみずしく感じられた。
「……そうね」
反対に、産土の声はあまりにもか弱い。しわがれて、枯木の如くうるおいの無い掠れた声は、無理に絞り出すような吐息と共に吐き出される。話すスピードも格段に下がっている。
あのいつも飄々とした、傲慢で最強な死神のここまで衰弱した有様など、誰が想像できただろうか。
「もうすぐ死ぬかな」
言って産土がうっすらと笑ったのが分かったかのように、朝霧は少しだけ黙った。
朝霧は電話の声から、恐らくそれが本当なのだろうと感じ取っていた。そしてそれは決して避けられない、変えられないことも、朝霧は同じく感じ取っていた。
だからこそ今更、そのことについて何だかんだと言葉を交わすことに、なんの意味もなかった。
無言のうちに、二者の間にはそうした共通認識があった。
「……そうか」
相変わらず言葉少なな相槌が、どこまでも朝霧らしい。
約6年間もの間、主従として苦楽を共にしてきた彼らだったが、終焉のオーデ収束後に誰にも居場所を告げず姿を消した産土に対し、朝霧はただの一度も詮索をしなかった。
バルバロア南西エリア管轄の外交職に就いた朝霧は、産土には何も聞かず、ただたまに気まぐれなタイミングで「xxエリア、整地完了」という用件のみの無機質なメッセージを送ってくるだけだった。
しかしそのシンプルすぎる言葉が何を意図しているか、産土には明確に伝わっていた。
産土がかねてより言っていた、彼の人生の目的――志乃さんの生まれ変わりを見つけ、幸せにすること。
それを知る朝霧は、ただ黙々と荒廃した土地を整地することで、産土へ「いつでも探しにこいよ」と、彼なりの表現で伝えていたのだ。
無論、衰弱した産土がそんなに遠くまで足をのばせることはもう無かった。
しかしいつしか、朝霧からたまに届くその知らせに嬉しさを感じている自分を産土は自覚していた。もうほとんど使わない端末を常に充電器を繋いでおく理由は、まさにそれだった。
「昨日偶然、陸と会った」
陸――その名が出た途端、端末越しに産土が少し高揚するのを、朝霧は分かった気がした。
「バルバロアには今でも定期的に復興支援に自衛隊が派遣されてるんだが、今回丁度それが陸の管轄の班だったらしい。まぁお互い任務中だったからな。大して話せなかったが、近況と……少し雑談程度か」
「へぇ……」
産土は二人の姿を思い浮かべるように、愛おし気に目を細めた。表情につられて自然と綻んだ声になる。
それを聞いた朝霧も、やや安心したかのような柔らかな声で言う。
「元気そうだったぞ」
「そっか……ちゃんとやってんだな」
しかしまた、すぐに沈黙が落ちる。
「……」
「……」
すると、端末越しに布の擦れるような音の後に、カチッと何かを点ける様な音がする。
その微かなノイズは、朝霧が煙草を取り出し一服したことを産土に知らせていた。
「煙草は身体に悪いよ?」
産土がわざとらしく忠告すると、朝霧はふっと笑いながら息を吐き出した。
「吸わねぇとやってけないさ」
朝霧の今の仕事は、何かとストレスが多いのは事実だった。長年FANGとして活躍してきた彼からしたら、デスクワーク中心の生活自体がストレスだった。おまけに日々多くの人間との折衝をこなしたり、膨大な資料作成に追われたりと、今までとは違った種類の負荷がかかっているのだという。
「ちったぁ気をつけなさいよ。あんぱんまでいなくなったら、陸が泣くでしょ」
産土がいつもの調子で言うと、朝霧はすかさず言葉を打ち返す。
「俺だけ居ても仕方ねぇだろ」
それは会話の流れで返した何気ない一言のようでいて、そこには確かに朝霧の本心が乗っていた。
ふーっと一度深くタバコをふかし、口を開く。
「……顔、見せてやらなくていいのか?」
陸に、という意味だ。分かった産土は微笑を浮かべつつすぐに断る。
「いいかな」
「……」
しばし朝霧が煙を吐く音だけが聞こえる。
産土が鎖骨辺りまで伸びたミルクティー色の癖毛を左手でわずかに弄っていると、
「……じゃ、またの機会に、な」
やっと言葉を見つけた朝霧が言った。
言われた産土の目元には影が落ちている。
最も信頼するこの男にまで、今更建て前を使う必要など無いじゃないかと、産土は次の瞬間、心の中で思ったことをそのまま口にしていた。
「……またの機会なんて、多分無いよ」
「……」
「……」
分かっていた通り、また長い沈黙が落ちた。
端末越しに流れる空気が重たすぎて、気が付けば互いに長すぎる沈黙をつくってしまっていた。
互いの息遣いすら聞こえぬ沈黙は、しんと静まり返った水面のようだ。
「……」
「……」
その長すぎる沈黙に、不意に朝霧の確かめるような声がぽつりと響く。
「……もしもし?」
「…………」
産土の返事は無い。
「……」
「……」
疲れて眠ってしまったのだろうか。
「……産土?」
名前を呼ばれた産土は、ハッとしたように目を開けた。
顔をそっと覗き込むような調子で投げかけられた声は、低くどこか優しい。
「………ん、もっしー…」
ようやくしわがれた小さな声が返ってくる。口調こそ彼らしいが、本当はこうして話すのも精一杯なのだろう。
産土が今どんな顔をして話しているのか、朝霧には分かる気がしていた。
かつてのあの孤高の最強の男が、今まさに、決して抗えぬ衰弱の一途を辿っていることを猛烈に実感させられると、思わず胸の奥が熱くなった。
朝霧はもう一本煙草を取り出した。
そしてそれを咥えると、なるべくいつもの調子で、まるでなんてことのない提案かのようにさりげなく言うのだった。
「もう一本分、話さね?」
産土が酷く嬉しそうにふっと笑ったのを見ると、少女は産土が話しやすいようにクッションの形を整え、そこに端末を置き静かに部屋を出た。
少女が部屋を出たあと、暫く、産土の笑い声がたまに漏れ聞こえた。
何を話しているのか、相変わらず言葉は分からなかったが、その安心したように穏やかな声色を聞き少女は静かに微笑んだ。
この時、二人が何を話したのかは、誰も知らない。
会話が終わった頃を見計らい、再び少女が部屋に入ると、産土はまたいつもの様に窓の外をぼんやりとじっと見つめていた。
ほどなくして部屋に漂ってきた香ばしいオニオンの香りで、産土はようやく少女の方を向く。
「セボ、ナァリ、ナポ?」
少女は産土に向かって微笑む。
彼女の母国語で、〈スープを作ったの。飲みませんか?〉と言う意味だ。
産土が「ありがとう」と、受け取るために義手をつけようとすると、少女は優しくそっとそれを制した。
産土がふと顔を上げると、彼女はスープを小さくひと匙すい、ふわりと微笑んで見せた。
刹那、その天使の様な微笑みを見て、産土に電撃が走った。
「――!」
これは――
その姿は不意に、ずっと探していたあの女性と重なった。
あの人を――志乃さんを感じるのだ。
「……」
夢ならこのままさめたくないと切に願うような表情で、少女を見つめる産土。
間違いない。
姿かたちは一切違うのに、今この瞬間、一杯のスープを差し出す少女の中に、志乃さんの魂を感じたのだ。
なんの打算も奢りも無い、呆れるほどに単純な慈愛の化身――そういう者にしか出せない波が出ている。
それはまさに押しては返す波の様に――産土の心を、じんわりと心地の良いあたたかな浅瀬へと連れていくように、ゆっくりと満たしていく。
あまりの衝撃にすっかり固まってしまった産土の口元へと、少女は木の匙を運んだ。
産土がそちらへ目線を移すと、少女は優しく添えるようにして産土の口へ匙を近づける。
(もしかしたら彼女は――)
産土は心の中で強く思ってしまう。
そしてそのまま口を開け、一口。
喉を通るのは、なんてことの無い、人肌程度にぬるくなったオニオンスープ。
しかし産土にとっては、特別なものに感じられたのだった。
「……ん、おいしい」
ぽつりと呟く産土。
少女が笑う。
その微笑みがまるで、
「頑張ったね」と――
「もういいんだよ」と――
志乃さんが語りかけてくれているようで、産土のぎりぎりの命をこの世に留めていたものが、彼の中でそっとほどけていく。
それは春風の様に、彼を優しく終わりへと誘うように優しく、酷く心地良い。
窓の外はぽかぽかとあたたかな日が差している。
小鳥のさえずりが聞こえる。
産土は少女に微笑み返した。
そしてスープを飲みながら思う。
彼女がここを出たら、そっと目を閉じよう。
驚かせずにすむように、と。
産土 漂 ―― 享年29歳8か月。
***
【アトランティス郊外 児童養護施設にて】
陸がここを訪れるのはもう数回目のことだった。
ここは約一年前の、終焉のオーデの被害で親を失った子供達を助けるために、七瀬が設立した児童養護施設の一つだ。
財閥の娘である彼女が、自分に何かできることを、と両親に掛け合って設立し、彼女自身も今はここで働いている。
夕方で子供達は別室で昼寝でもしているのか、陸が訪れた教室には誰も居なかった。
七瀬が来るまで時間を潰しておこうと、壁に飾られた子供達が描いたのであろうの絵画をなんとなく眺めてまわった。
ガラリとした教室に陸のブーツの足音だけがごつごつと響く。
「……」
クレヨンや絵の具でで思い思いに描かれた子供達の絵を、あえてゆっくりと順番に見ていく。
すると。
不意に、ある一枚の絵が陸の目に止まった。
腕の悪い男性と、彼にリンゴをあげてる少女を描いた絵だ。
それが視界に入った瞬間、陸は思わずハッと目を見開いた。
陸にはそれが、あの日以来急に音沙汰のなくなったかつての主――産土に重なって見えたのだ。
陸は絵の前で足を止め、正面からそれをまじまじと眺めた。
みるみるうちにその絵に釘付けになっていく陸。
「……」
産土とは、新死神の即位式の日――産土が退院した日以来、話していない。
行方をくらましてしまった産土に最初こそ寂しさを感じていたが、流石に一年も経てばそんな感情もいつしか日常のごく自然な忘却のサイクルにうまく乗せられた。
しかし今、目の前のこの絵を見た途端。
陸は急激に産土のことを思い出す。
鮮明に蘇る景色と共に思い出すのは、産土との最後の会話だ。
***
【回想録:約一年前 ―― 陸の記憶~カフェ&バー『Voyage』での会話~】
少し離れたところでクロノスの時計台の鐘が鳴り響き、午後三時を告げている。
今日はつい先程まで、クロノス本部で新死神の即位式をやっていた。
陸はなんとなくそちらを見やりながら、目の前に座る産土に何気なく尋ねる。
「即位式、呼ばれてたんだろ。見届けなくて良かったのか?」
終焉のオーデを見事沈めた英雄を労おうと、クロノスは産土に対して開催ギリギリまで即位式への参列を打診していた。
しかし当の本人は全くの興味無し。寧ろやっと解放されたとでも言わんばかりに、一切の連絡手段を断ち切り、クロノスから逃げるようにしてここへ来たのだ。
「必要ないでしょ」
産土は、ふっと微笑を浮かべながら、右の義手を撫でる。
「俺はもう使えない。やるだけやった……あとは任せるだけよ」
その表情は安堵と一抹の切なさが混ざる複雑なものだった。
今の彼は先の終焉のオーデとの死闘で右腕を失い、導守の刻印も背中の開闢のオーデの力ももう持ち合わせていない、ごく普通の人間だった。
運命に縛られ続けて孤独に戦い続けるのは、並大抵のことではなかっただろう。その上、右腕という代償と引き換えにしか得られなかった彼の自由。
今、目の前に座っているこの男は、一体どんな気持ちだろう……と、陸は思いを馳せずにはいられない。
そのうちに、陸の口からは自然と言葉がこぼれていた。
「……本当にお疲れ様。ボス」
産土も陸の方へ目を合わせ、薄く微笑んだ。
「陸もね」
陸も自然と微笑み返す。
産土は自分の左手で、目の前に置かれた縦長のグラスを持ち上げストローを咥える。
冷たいロイヤルミルクティーをちょろりと口に含むと、ふうっと一息ついてから続けた。
「でも結局のところ、大元は何も変わっちゃいない。
〈Horaison〉でやるべきQKは一掃できたわけだけど、それでこの大陸が安心安全な場所になったわけじゃない。
恐らく終焉はまた眠りについただけだし、開闢も別の居場所を見つけただけ。導守の役割は依然残ったまんまだし、おまけにあの調子じゃプロジェクトArcは頓挫せずに、第二弾派遣を“無事に”迎えるんでしょうよ」
産土は新死神即位が執り行われているクロノスの方を顎で指し示しながら、吐き捨てる様に言った。
「……どうせまたどっかのタイミングで、同じ様なことが繰り返されるんだよ」
遠くを見つめながらそう呟く産土はどこか儚い。
陸はそんな産土の横顔を見つめていた。
「なぁ、陸」
不意に産土が真剣な表情で陸の目をまっすぐに見つめる。
「ん……?」
キョトンと見つめ返してくる陸に、低く静かに産土は言った。
「あの日、世界が一度閉じようとしていたのを拒んだのは、間違いなく俺たちだ」
「――ッ!」
陸の瞳孔が一瞬見開かれる。
あの日とは疑う余地も無い、終焉のオーデを沈めたあの時のことだ。
産土の薄く形の良い唇から不意に放たれた重たい言葉が、一気に陸の胃を締め付けた。
「俺たち二人が、一度は閉じようとしたこの世界を、無理に続けさせたんだ。
そしてそのことを知ってんのも、世界で俺とお前の二人だけ」
「……」
「あの時、少なくとも今際の際で思い出したのは、あんぱんと志乃さんと、そんで背中にいたお前のこと……そんだけだった。あの時は、この世界を続けることでこれから先何が起こるのか、どんな困難が待ち受けているか、そんなこと考えもしなかった。
ただ正直に、軽率に――選んだのがこの結果だった」
陸は黙って産土の言葉を聞いた。
「あれから何度考えても、これが良かったのか悪かったのか、やっぱりよく分からない。
よく分からないのに自分の都合だけで軽率に選んだのは、ある意味で罪深い。この罪は重い。
そのことを忘れちゃならないのよ、俺もお前も」
「……」
「でも、どうやら世界はそんな俺達を“英雄”と呼んでるらしい、今のところね。
だからさ、胸張って生きてこう。俺も、お前もさ」
そう言ってニッと口角を上げる産土。
その表情に陸もつられたように自然と口角が上がる。
「これから先のことなんて、誰にも分かりゃしない。過ちや悲劇が繰り返される反面、それと逆のことも沢山起こる。
確かなことなんて、今日も自分が生きてて、いま目の前にお前がいるってことぐらいなんだし。
それに――」
そう語る産土の目は穏やかだ。ステンドグラスの窓から差し込む光が、彼の金色の瞳に反射して光る。
窓の外の、平和なユートピアの午後に目をやりながら、どこか懐かしむような口ぶりで産土は続ける。
「どうしようもなく平和ボケしたこの世界には、もしあの日終わってしまってたら、生まれてこなかった命が今はあって、二度と会えなかったはずの人が生きてて、幸福とか、見たい景色とか、うまい飯とか、そんなんが溢れすぎてる」
再び陸の方へ目を向ける。
「後悔はしてない。これからもしないように、この選択を正解にできるように、生きてこう」
そう言った産土の目を見ながら、陸はしっかりとうなずいた。心の中では何度も何度も、強くうなずいていた。
世界でたった一人の共犯者と共に、この先もこの罪と秘密を背負い続ける覚悟を見せるように、互いにもう一度しっかり頷いてみせた。
陸は目の前のグラスを手にとり、アイスコーヒーを口に含む。
冷たい氷がカラリと心地よい音を立てて、表面の水滴が数適滴る。
本当に、この店のアイスコーヒーは世界一だ。
陸は鼻に抜ける香ばしい香りの余韻に一拍置くと、産土の方に再び目をやる。
「……この後、どうすんの?」
両腕を組んでゆったりと腰かけている産土は、ぼんやりとした白昼夢の様な柔らかな雰囲気を纏っている。
「暫くのんびり生きるわ。そんでぼちぼち、志乃さんの生まれ変わりを探す」
産土は欠伸をしながら続けた。
「ま、のんびりっつても、当面は死神残務ってとこだろうけどね。だるいけど、開闢について色々と纏めておかなきゃだし。
開闢の力は、宿主本人の意思だけじゃ使えなかった。他のオーデとはきっと抜本的に性質が異なるんだろう。今現在、誰に継承されてるか知らんけど、そういうのはちゃんと記録として残しとかないとね」
「そっか」
やはり産土はそうかと、陸は納得する。
皮肉屋で軽薄な男だが、誰よりも責任感の強い男だ。彼はきっと、あの時終焉のオーデが開いた麓で起こったことを、決して風化させぬよう後世に伝えることが自分の死神としての最期の役割――そして、この選択をした者としての責任だと思っているのだろう。
――じゃあ自分は?
陸はそんなことを想いながら、手元に視線を落としたままだ。
産土はそんな陸を一瞥しつつ、残りのミルクティーを飲み干した。
「じゃあ、俺このあと寄るとこあるから」
産土はひとしきり話すと、ゆったりと立ち上がった。
「とりあえずこれから暫く一人旅に出るから、当面会わないと思うけどさ」
話しながら、伝票の上に二人分の金額を自然な流れで置く産土。
そして、
「陸」
まだ座ったままの――少し名残惜しそうな表情を浮かべる陸の名前を呼ぶ。
「ん?」
いつも通りの自然体の返事。
しかし産土を見あげるそのジュニパーグリーンの瞳は、何か期待するような――産土をもう少し引き止めたいような、そんな揺らぎを持っている。
あの日初めてここで会った日から変わらない純粋さが、今もその目にしっかり宿っていることに、産土は独りで安堵と満足を感じるのだった。
産土はそんな陸の姿をまるでしっかりと焼き付けるかのように、呼び止めた後、ほんの瞬き一度分ほどの間じっと見つめた。
何も言わずに見あげてくる陸が、なんだか弟の様で可愛くて、思わずふっと小さく笑ってしまう。
「陸――」
そして、一言。
「元気にしてなさいよ」
ニッと口角を上げた少し無邪気な屈託のない自然な笑み。
それでいて酷く愛おしそうに緩んだ産土の優しい目じりに、瞬間、陸の心臓が跳ねた。
(この人……こんな顔で笑うのか)
そう思わずにはいられないような、そんないい笑顔だ。
陸はこのとき初めて、産土本来の――彼の素の顔を見た気がしたのだ。
衝撃に陸が言葉を失っていると、
「あぁ……あと、」
産土が軽く肩をすくめながら続けた。
「俺としたことが、ちゃんと言えてなかったわ」
再び産土を迎えるかのように、なんとなく自分もその場に立ち上がる陸。
小首をかしげる陸に、産土はにっこりと微笑みかけた。
そして義手ではなく――残された方の自分の左手で、産土は陸の肩を掴んだ。
あの時――
終焉のオーデの麓に駆け付けてくれた陸に、心から伝えたかった――たった五文字の短い言葉を――
今、伝えるために。
その全てが伝わるように。
手には自然と力が入る。
「ありがとな、陸」
瞬間、陸は目を見開いた。
産土の口から、そんなことを言われるなんて――思いもしなかった。待ち望んでいた訳でもなかった。
しかしこうして改めて言われると、色々なことが一気に思い出され、陸の中に猛烈にこみ上げる。
そして同時に強く思う。
それなら、俺の方こそ――と。
何度伝えても足りない程、産土から沢山のものを貰った。
陸は産土の肩に無言で手を置く。こみ上げる涙を堪えようとすれば、その手は自然に掴むようになった。
何も言わずとも、陸の潤んだ眼差しがまっすぐに届いた産土には、陸のその気持ちがしっかり届いた。
そして二人はそのまま、どちらからというわけもなく互いに互いを抱き寄せる形で別れの抱擁を交わした。
***
これを最後に、陸と産土は今日までずっと音沙汰なしだ。
あの日、産土を見送ったあと以来、陸は一人またぼんやりと、またいつもの問いの答えを探していた。
――自分は何がしたいのか。
そしてあの日――終焉のオーデが出現した日に兄が言った言葉が、頭の中に何度も蘇る。
『やりたいこと、見つかったんでしょ』
そう――あの時は、確かにそうだった。
しかし、それが『自分は何がしたいのか』という問いに対する本質的な解決にはなっていないことを、陸自身は誰よりも自覚していた。
終焉のオーデ出現時には、確かに明確に自分のやりたいことが分かっていた。
世界を救いたかった訳でも、英雄になりたかった訳でもなく、ただ、産土の力になりたかった――たった一人で闘うと言った彼を一人にしたくなかった。
それだけだった。
しかし、もし仮にそれが、別の誰かだったら?
――自分は絶対に動けなかった。産土だったから動けたのだと陸は思う。
だから、あの時の揺るがぬ意思、あの瞬発力に、再現性など全く無い。
たった一回こっきりの、“特別”だったのだ。
当時のことを、頭の中で何度反芻してみても、何かの志望動機の様に使いまわせるような代物ではない。
つまり結局のところ陸は未だに、『自分は何をしたいのか』――その問いの答えを見つけられずにいたのだ。
答えが見つからず――あれからずっと、どこか悶々と日々を生きている。
どんなに壮絶な経験をしても、陸には導守の力があるわけでも、FANGとして主を護れる資格があるわけでもない。
陸は自衛官で、できることは、いつもと同じだ。
一つ確かなこととして、自分の役割はきっと――
あの日、産土とともに世界を継続することを選んだ者として、この世界の平和を守り続けることだと、陸はそう思っていた。
未だに終焉のオーデの爪痕が各地に残っているものの、一度は崩れかけた文明も秩序も、人々の生活や家屋も、少しずつだが確実に元通りになろうとしている。
自分は自衛官として、今日も瓦礫の中から、一人でも多くの命を見つけ、安全に保護する――それこそが、これまでもこれからも変わらない、自分自身の役割だと――。
しかしそれでも。
なぜだか、心の奥底には、どこか釈然としない想いが、違和感の様に陸の中にうっすらと張り付いていたのだ。
しかし今、この絵を見た途端。
短時間のうちに陸の中には旋風の如く様々な感情が吹きあれ、衝撃が走った。
まるでその違和感の正体に気付いたかのように。
「……」
目の前の絵を見つめたまま、陸は動けない。
不意に、そんな陸に後ろから声がかかった。
「その絵、ここの子達が描いたんだよ?」
声に反応して陸がそちらを向くと、七瀬が「やっほ」と小さく手を振っていた。
陸は同じく軽く手を振ったあと、再び壁の絵の方に眼差しが吸い込まれていく。
「そっか」
自然と手を伸ばしその絵に触れると、陸は不意に考えてしまう。
――産土は、あの人の生まれ変わりを見つけられたのだろうか、と。
そして、あの日以来会えていない――かつての主が語った心からの願いに想いを馳せる。
産土の言葉を思い出す。かつて彼が語った、彼の“生きる意味”を。
『だからせめて、生まれ変わったその人が安心して過ごせるように、この手でこの地の安寧を守る。
そういう方程式を作って、俺はなんとか必死こいて毎日このクソみたいな仕事をこなしながら踏ん張ってるわけよ。
やばいでしょ』
そう言って自嘲気味に笑う産土の横顔の記憶が、鮮明に蘇る。
そう――産土が守りたかったのは、志乃さんの生まれ変わりだけじゃなく、それを取り巻くこの世界そのものだ。
もしも――
もしも今、この大陸のどこかに、産土の探し人がいたとして――
見つけられたとしても、もう今の産土にはただ見守る以外の術は無い。
きっと今の彼はそれでもいいと言うだろう。
しかしもしも、その時――
その人が瓦礫の中で、かじかんだ手先に白い息を懸命に吹きかけていたら――
産土はどんなにやるせないだろう、報われない想いをするだろう、と陸は思う。
彼がこれまで必死に足掻き、傷つきながら守ってきた世界で、その人がそんな姿だったら――
一体産土はどれだけ絶望するだろうか、と。
そう、これが――
これこそが、産土が今、叶えたくても叶えられなくなってしまった――彼の“夢の続き”だ。
その時――陸の中で、今まで点と点だったものが微かに一繋がりなった気がした。
瓦礫の中から、一人でも多くの命を見つけ、安全に保護する。
そんな、今や呼吸をするように当たり前にやっている、自衛官として再びスタートした陸の毎日。
その先に、そうして世界の平和を守り続けたその先にあるのが、産土の夢の続きを見ることだとしたら――
今、陸の中で“世界平和”という漠としたものが、うっすらとしかし確かに彼にしか描けない形の輪郭を持ち始める。
ならば――
“自分のしたいこと“は分からなくても、産土の――たった一人の愚かな共犯者がかつて語った”夢の続きを見ること“ならできる。
むしろ、見たい。
絵を見つめる陸の瞳が、一気に希望の轍の様に、明るく輝き確かに熱を帯びていく。
そう思えた途端、急に自分の生き様に色がついたようにすら思えて、陸の心の奥は一人静かに高揚していた。
そんな陸の横顔を静かに見守っていた七瀬は、やがて小さく笑って優しい声で言った。
「私、陸のこと、あきらめる」
まるで陸の今の心境を見抜くかの様に。
あるいは彼の背中を押すかのように。
「……え?」
突然の告白に陸は驚き、バッと七瀬の方を振り返った。
「あれ? もしかして……気付いてなかった?」
七瀬は「結構バレバレだと思ってたんだけどな」と言いながら陸の方へと笑いかけた。
「私、ずっと陸のこと好きだったんだよ?」
七瀬から好意的に思われていること自体は気付いていた。しかしそれがまさか恋愛的な意味を兼ねていたとは、友人としての付き合いが長すぎたせいか、陸は微塵も考えていなかったのだ。まさに不意打ちだった。
七瀬は陸の隣に立つと、壁の絵の方を向いたまま静かな口調で話し始めた。
「陸のこと、今でも変わらず大事に思ってるけど……なんだかね、陸には私が見えないものが見えてるんだろうなって……
この先ずっと一緒に居られないんじゃないかなって。なんか分かるの」
そう言って七瀬が小さくすくめた肩に、大きな窓の向こうの夕日からセピア色が差す。
「……一年前の今日は、大変な日だったね」
――本当に大変な日だったと、陸も思っている。
当時を懐古し、浅く何度も頷く。
「そうだな……」
七瀬は壁の絵を見つめながら言った。
「あの日………実は陸は、あの麓に居たんじゃない?」
「え」
麓というのはまさしく終焉のオーデが出現した地点のことだろう。
七瀬にそれを言い当てられ、陸は驚いた。
「別にだから何ってわけじゃ全然ないんだけどさ」
七瀬は続けた。
「私はあのとき何も知らずに家で寝てたの。あの不気味な大きい紫の塊も、ニュースでしか見たことない。
でもきっと、陸は違うんだよね?」
そう言って、七瀬の目が陸をまっすぐ見つめる。
陸は、何もいえないまま、見つめ返した。
「私、陸の普通っぽいっていうか素朴な雰囲気がいつまでも横にいてくれる気がして、なんか落ち着くっていうか……そういうとこがよかったんだけど、今の陸はなんだかすごく遠く感じるんだ」
陸は黙って七瀬の言葉の続きを聞いている。
「私とか、みんなが知らない何かを見ているような……きっと私なんかが知る由もないくらいの何かを見てる……
こんなに近くにいるのに、なんかそんな風にすっごく遠いの」
七瀬には何も話していないのに――。
ぼんやりとしていてそれでいてどこか核心を突くような七瀬の言葉に、陸は驚ながらも申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「……ごめん。俺なんか、嫌な奴みたいな雰囲気出てる……?」
思わず頭をかきながら様子を伺う陸に、七瀬は「なにそれ」とくすりと笑いながら首を横に振る。
「全然、そういうんじゃないよ」
彼女の笑顔はいつも通りだ。
陸はそれを見て少し安心したようにかすかに口角が持ち上げる。
「私はしがない保育士だから、大それたことはできないけど。
ここでずっと、居場所を失った子達が少しでも悲しい思いをしないようにサポートを続けてくつもり。
生まれてこなきゃよかったなんて、そんな悲しいこと、誰にも思ってほしくないもん。
それが、今の私にできること」
そう語る七瀬の横顔がいつになく大人びていて、陸は頼もしかった。
気付けば陸はそのまま思ったことを素直に伝えていた。
「七瀬は立派だよ」
その言葉に、七瀬は横目でちらりと陸を見あげ、ニッと得意げに笑った。
「陸はきっとこの先も、この大陸中を駆け回って色んな人を沢山助けるんだと思う。
私は、陸がこれからしようとしてることの全部を、ここで応援しとくね」
七瀬は再び陸の方に向き合うと、右手を差し出した。
彼女の背中から後光のごとく夕日が差し込み、二人きりの教室をセピア色が包み込んだ。
「頑張ってね、陸」
陸は、差し出された彼女の手を強く握り返した。
「ありがとう、頑張るよ」
***
【エピローグ:夢の続きを見るために】
そう、頑張る――
自分はひたすら頑張る――
この生を全うしながら、頑張って生きていくのだと、今、陸は強く思う。
自分の生活、自衛官としての仕事、ぱっと見には何も変わっていない、今も続いている日常。
だが、陸自身はもう、以前と同じ陸には戻れない。
もうあの日以来――
目に映る全ての景色が、陸には以前と全く違って見えているのだ。
だってもう、知ってしまったのだから。
大地の怒りを体現したような地鳴りを引き起こしているのが何者なのか――
なぜ時折、記録的な雨が降るのか――
オーデの正体は悲しい過去を持ったクグリコで、この大陸の向こうにはまだ彼らが大勢いる――
そしてそれと対峙する死神は本当にいて、彼らは背負わされた宿命と葛藤する“普通の人間”だった――
クロノスは恐ろしい支配の楽園で――
バルバロアから見える海はあんなにも広くて――
朧が築こうとしていた新世界は悲しいの物語の産物だった――
その全てを、知ってしまったのだから。
しかしだからこそ逆説的に、この世界には自分の知らない秘密がまだ山程あるのだろうと、陸は思う。
陸が知ったことが別の誰かにとっては秘密で、その誰かしか知らないことは陸にとっては秘密になる。
そんないくつもの見えない秘密や複雑すぎる事情を抱えながら、この世界は成立している。
この世界はいつも、見えない“誰かの都合”で溢れかえり、ときにあらゆる人達を巻き込みながら、ときに全ての人達を置き去りにしながら、今日も廻っている。
人は。人というのは、こんなにも――
この一繋がりの――こんなにも酷く生きにくい世界に必死でしがみつき、互いに互いの蚊帳の外から懸命に干渉しあい、結局は今日もまた別の“誰か”が作った世界の恩恵を受けながら、生かされている。
その息の根が止まらぬ限り、自分の“生”というものになにがしかの意味を見出しながら、今日も必死で生きていくのだ。
しかしもはや、今の陸はそれを悲観していなかった。
この世界にどんなに秘密が眠っていようと、
幾多の野望が蠢いていたとしても、
壮絶な経験が一度幕を閉じ、再び訪れたこの平穏な日常は、こんなにも退屈で愛おしいのだから。
静かな午後のひと時に飲む一杯のコーヒーが、あんなにもおいしかったことに気付けたのだから。
何も怖がることは無い。
ならば――
陸は思う。
この気持ちのほとぼりが冷めぬうちに、ときになりふり構わず、ときに羽目を外して、自分の信じた道を歩いてゆこう。
他人の事情も、隣の喧騒も、親切心の皮を被った忠告や警告の類も、知ったことではない。
未来を勘定して恐怖する前に、心踊る方へ、暖かな木漏れ日が差す方へ、まっすぐに歩いて行こう。
いいじゃないか、それで。
それで大丈夫だ。
どれだけ賢くなろうと――
どれだけ年を重ねようと――
いかにして慈悲深さを極めようとも――
俺たちはどこまでいっても、他の誰かにとっての“愚かな部外者”で、それが集まってできているのが――
素晴らしく、愚かな、この世界なのだから。
はじめよう。
この気持ちはきっと、間違いなんかじゃない。
陸の上空で、翼が空を切る音が聞こえる。
大きな翼を自由に広げて滑空する姿が太陽に反射し、大地におちたその影は、まるでこの狭い世界から逃れるようにして草原を駆け巡る。
背中からその歩みを押すように、今、一吹きの疾風が、吹き抜けた。
- THE END -




