表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ「はじまりの日」

残酷な描写はまだありません。


独自用語や舞台設定が多いので、リンク先に解説をまとめています。

物語の進行に併せて随時更新してまいります。

宜しければご覧くださいませ。

https://ncode.syosetu.com/n9351kp/1/

太陽が照り付ける。

人間の痛みなど意にも介さないような灼熱。

大地はじりじりと焼かれ、地表は熱気で小刻みにうねり、陽炎の向こうの景色は輪郭をゆがめている。


その中を――今日も一人、歩いているのは、まだ幼い痩せた小さな影。

固く乾ききって、干ばつでひびの入った大地のような唇を固く結び、誰に教わったのか、こぼれ落ちないよう必死にバケツを運んでいる。


とぼとぼとした足取りで、渇きを癒してくれぬ己の影に恨めしく目線を落としながら。

くたびれた雑巾のような服に覆われた身体は、骨と皮ばかり。日に焼けた四肢はところどころ皮がむけている。


一体どれほど歩いているのだろう。

両手に持ったバケツの持ち手は、細い指のスキマから今にも滑り落ちそうで、貧相な針金のような腕が、その重みに耐えられていることはもはや奇跡にちかい。


ただひたすらに、歩く。

うねる灼熱の大地を、裸足で。

痛くはない。既にぼろぼろの足裏は、いつしかその熱に慣れてしまって、もう痛みも感じなくなっているのだ。


胸の奥底に秘めた、たった一つの願いを込めて。


耐え難い喉の渇きに、手にしたバケツに何度も唇を寄せたくなった。

しかし、それすら我慢して、ただ、ただただ歩くのだ。

歩いて、水を運ぶ。

そうすればいつか――と、信じていた。


信じていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ