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虚無の雨

 某所。


 不気味な静けさが広がる街に漆黒の牧師服を着た人物が歩いている。


 顔は仮面で覆い隠しているため分からない。


 牧師服の上に黒い外套を羽織っていることで、彼の身体的特徴も詳しいことは分からない。


 唯一分かることは、この人物の髪の色が黒と白が混じっているというところだけだろうか。


 そうして、牧師服を着た謎の人物が街の中を歩いていると、彼を取り囲むように動く複数の気配を感じ取る。


 数はざっと300人といったところか。


 だが、謎の人物は気にした様子もなく、街の中を歩き続ける。


 そのように、謎の人物が周りにある気配を気にせずに歩いていると、


「奇襲しなくても良いのか?」


 謎の人物の前に一人の人物が現れる。


 目の前に現れた人物は男であり、見た目は普通の人間とは変わらない。


 だが、彼から放たれている魔力は膨大であり、その魔力量は古龍にも匹敵するほどだ。


 そんな男へ向けて謎の人物は奇襲せず、わざわざ目の前に出てきても良かったのかと質問する。


 まあ、奇襲を仕掛けたところで、謎の人物は彼らの存在に気がついていたため、奇襲が成功することはないのだが。


 そんな謎の人物からの問いに男は答える。


「それは貴様に聞いておかなければならないことがあるからだ」


 謎の人物に聞かなければならないことがあるためだと。


「へえ、俺に質問があると?心当たりはないんだが?」


「御託はいい。ミシュエルサたちに何をした?」


「ミシュエルサ?誰だ?それ?俺の知り合いにそんな名前の奴はいないが?」


「とぼけるな!!」


 謎の人物が知らないと答えるなり、この男は怒声を浴びせる。


 その怒声は激しい憎悪の感情が込められており、下手なものが受けると、気絶してしまうほどの言霊が宿っている。


 だが、謎の人物には一切通じていない。


「いきなり大声を出すな。耳が痛いだろ」


「黙れ!!貴様がミシュエルサたちを誘拐し、非道な実験の果てに彼女たちを醜い化け物へと変貌させた!!それだけでなく、貴様はミシュエルサたちをこの街へ仕向け、我々を襲わせたのだろう!!」


「言いがかりはよしてくれ。俺には一応、立場というものがある。そんな非道な真似ができるわけないだろう?」


「嘘をつくな!!貴様がどんな手を使って情報を隠蔽しているか分からないが、我々の目は騙されない!!」


「はあ、これだから話の通じない奴と話すのは嫌いなんだ。無駄に時間が取られる。それで?俺がその非道な実験をやったという証拠はあるのか?」


「我々の種族は互いに記憶を共有する力を持っている。そして、我々は見たのだ!!貴様がミシュエルサたちに非道極まりない実験を行っていたところを!!」


「なるほど、理性を失っても記憶の共有は可能なのか。これは厄介だな」


 謎の人物がそう独り言を呟いた瞬間、彼の纏っている気配が大きく変わる。


 先ほどまでは一変し、謎の人物からは得体の知れない不気味な気配を纏い始める。


 その気配に当てられた男は恐怖のあまり、たじろぎ、謎の人物から一歩距離を取ってしまう。


 そんな男のことなど気にしていない謎の人物は話を続ける。


「お前らは俺がどうして、彼女たちを誘拐し、あんな実験をしたのか知りたいらしいな。まあ、別に話せないわけでもないから言ってやるよ」


 謎の人物は目の前の男だけでなく、自分を取り囲む者たちに向けても話し始める。


「ここ最近、神国アヴァロン内で行方不明事件が多発するようになった。それはどうしてだと思う?それはな、ミシュエルサとか言う奴が首謀で誘拐事件を起こしてたからだ」


 謎の人物は淡々と話していく。


「俺はお前らの仲間であるミシュエルサたち全員を捕縛することに成功した。そして、尋問の果てにお前らの仲間が誘拐事件を起こしていた理由が判明した」


 謎の人物は仮面の下から男へ視線を向ける。


 その瞬間、男は視線を向けられただけで恐怖から体が動かなくなり、ただその場で震えることしかできない。


「その理由は神を捕食するためだった。まあ、神を食う奴なんて世界にいくらでもいる。だから、驚くことでもない。だから、お前らの仲間は法に則って裁かれるはずだった。だが、一つだけ君の仲間は大きな過ちを犯してしまった」


 そう言うと同時に、謎の人物から放たれる視線は更に冷たくなり、その視線だけで相手を凍てつかせられると錯覚するほどに。


「過ちを犯したものの末路は知っているか?それは破滅だ。だから、俺はお前らを絶滅させることにした。生憎、お前らの種族が滅びたところで、世界にそこまで影響はないからな」


 謎の人物がそう言った瞬間、空高い場所で雷が走り、周りへ轟音が響き渡る。


「どうやら、天気が悪くなってきたようだ。これは確実に雨が降るな」


 謎の人物がそう言いながら人差し指を立てた左手を顔の前に持ってくる。


 そして、一言唱える。


虚無の雨(サイレント・レイン)


 次の瞬間、先ほどまであったはずの街が男たちの仲間ごと消滅した。


 いや、何を言っているのだ?


 この場所は元から平地であったではないか。


 それに、ここは未開拓領域なのだから、人がいるはずもない。


 そうだ。


 彼は平地が開発可能であるかを確認しにきただけであった。


 そうして、土地の状況を確認し終えた謎の人物はこの場から立ち去ったのだった。


 ちなみに、虚無の権能だけでは存在の完全消滅は行えません。なので、この人物は虚無の力だけでなく、他の力も使っていると言うことですね。あー怖い怖い

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