創、異世界に行く①
ここは何処かに存在する世界。
まだ誰の管理下にも置かれていない未開発地域。
そこに何故だか創がいた。
創はいつものように放浪の旅に出たのだが、たまたま立ち寄った世界でワームホールを見つけた。
このワームホールは誰かが作ったものではなく、自然発生したものでどこに繋がっているのか見当もつかない。
普通ならば、このワームホールに入ることは危険だ。
この先がどこにつながっているのか分からないからな。
もしかしたら、猛毒に包まれた世界に放り込まれたり、危険生物が溢れかえる世界に放り込まれるなど危険極まりない。
なので、神国アヴァロンでは自然発生したワームホームを見つけた場合、すぐに警察やその地区の行政に連絡を入れなければならないようになっている。
だが、今ここにいるのは如月 創だ。
彼は最強であり、自分勝手であり、己の欲望のままに生きる厄災の具現化とも言える者だ。
そして、彼は好奇心旺盛であり、気になるものがあったら直ぐに調べたくなるたちだ。
こんな面白そうなものがあったら入らずにはいられない。
そうして、創はワームホールに入り、この何処にあるのかすらも分からない未開発地域にやってきたのだ。
創はまずはこの世界のことを知るためにも色々と世界を見て回った。
この世界には高度な知能を持つ知的生命体がいるのか。
いるとするならば、どういう系統の生命体なのか。
この世界の生態系はどうなっているのか。
調べることはたくさんある。
まずは情報収集から始めるのが吉だろう。
創はそう考えて世界を回ってみた。
そうして、創は世界を回ってある程度この世界のことが分かった。
この世界には知的生命体が存在している。
それも地球などで見られる猿が進化した形であるホモ・サピエンスと同じ進化を辿った存在だ。
なので、創は別に変装などする必要もない。
そして、この世界はいわゆる中世と呼ばれる時代と酷似している。
水は基本的に井戸だし、トイレも穴を掘っただけものだったり、風呂は貴族の家にしかなかったりする。
多くの人は農民であり、毎日のように畑を耕している。
そして、治安ももちろん悪く、当たり前のように村が盗賊に襲われ、壊滅したりしている。
普通に暮らしていて不便な時代だ。
だが、この世界はこれだけではない。
この世界には魔物と呼ばれる生物が住んでおり、創たちが運営する世界でも同じような動物が住んでいる。
分類的には魔力保持生物というカテゴリーに分類される生き物であり、魔力を内包している生物群だ。
その中でも色々と区分することができるが、ここではその説明はいらないので省かせてもらう。
そして、創たちの世界でも魔力保持生物と呼ぶのが面倒臭いということで魔物と呼ばれていたりもする。
そんな魔物であるが、この世界の魔物はこの世界に生きる人類と比べて強すぎる。
最低位の魔物ですらもよく訓練された優秀な兵士が5人係で勝てるかどうかであり、一般人では歯が立たない。
それだけではなく、この世界の魔物の中には普通に下級神すらも超える力を持つ魔物も普通に存在している。
何なら、上級神の力を凌駕するような魔物も稀ではあるものの存在しており、明らかにパワーバランスがおかしい。
まあ、この世界は創たちのような神の存在が干渉し、近郊を保っていないので、仕方ないのであるのだが。
そんな強大な力を持つ魔物が跋扈していることもあり、人類はこの世界であまり生存領域を広げられず、発展も著しく低い。
普通ならば、この世界で中世ヨーロッパほどの技術力まで発展することはできないだろう。
いや、絶滅させられている方が自然だ。
しかし、この世界の人類には時折魔物にも負けない力を持って生まれてくる者がいる。
何故、それほどの力を持って生まれてくるかは分からないが、彼らのお陰でこの世界の人類は生き残ることが出来ていた。
そして、この世界には創も大好きなダンジョンなども存在している。
そのためか、魔物の討伐やダンジョンなどを攻略する冒険者という職業がある。
よくファンタジー小説などに出てくるようなあの冒険者だ。
もちろん、冒険者ギルドも存在しており、冒険者ギルドで申請することで冒険者になることが出来る。
冒険者にはもちろんランクがあり、下からアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、ミスリル、オリハルコンである。
一応、ランクごとに下から1〜5までのランク区分もあるのだが、ミスリルとオリハルコンにはこのランク区分はない。
どうして、ゲームのランクみたいに細かく区分してるんだよと創も最初は思ったが、そういう世界なんだと無理矢理納得した。
ちなみに、創は自分がやっているほとんどのゲームでこの世界でいうオリハルコンクラスのランクであり、世界最強クラスのゲームプレイヤーである。
まあ、これは本人の性能が高すぎるだけなのだが。
そんな色々と人類に厳しい世界にやってきた創はこの世界で冒険者になったのだった。