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王都へ向かう一行

 王妃が目の前で無惨な死体へと変化したことにアドニアス6世は思考が追いつかない。


 そうして、ただ茫然としていると、いきなり教皇に胸ぐらを掴まれた。


「貴様は一体何をこの世界に呼んだのだ!!今すぐ答えろ!!」


 アドニアス6世の胸ぐらを掴んだ教皇は鬼気迫る勢いで問いただす。


 その姿は普段の教皇からは考えられないほどの凶暴さが滲み出ていた。


 その姿を見たアドニアス6世はもちろん、周りにいた聖騎士たちも驚愕している。


 アドニアス6世は少しの間、状況が理解できずに固まっていたが、少しずつ理解が進むにつれ、行き場のない怒りを覚える。


 そして、アドニアス6世はその怒りを教皇にぶつけるように答える。


「私にも分からん!!伝承通りに勇者召喚の儀式を行っただけだ!!私こそあの者の正体が知りたいのだ!!」


 アドニアス6世は怒りが爆発したあまり教皇の胸ぐらを掴み返しながらそう答える。


 怒りに囚われたアドニアス6世の目には涙が溢れており、妻を奪われた悲しみが滲み出ていた。


 そんな姿を見た教皇は冷静さを取り戻す。


 そうして、冷静さを取り戻した教皇は聖騎士たちに指示を出す。


「今すぐミーシャを連れて来てくれ。私はミーシャと共にアドニア王国に出向く」


 この国の聖女であるミーシャを連れてアドニア王国へ出向くと。


 そのことを聞いた聖騎士たちは最初はたじろいでいたが、教皇からの命令を聞かないわけにはいかず、ニアトス大聖堂の中へ入っていく。


 その間に狂乱状態に陥っているアドニアス6世を宥める。


 そうして、アドニアス6世が正気を取り戻した時、


「お待たせしましたお爺様」


 ついに聖女がこの場にやって来る。


 白色の美しい髪をした美少女であり、何処か見たことのある系統の顔つきだ。


 聖女ことミーシャは純白の修道服を身に纏った状態である。


 ミーシャは教皇の孫にあたり、神と人間のハーフであるデミゴッドだ。


 彼女の父親がこの世界の創造神であり、彼女の母親が教皇の娘である。


 そうして、ミーシャが来たことを確認した教皇は、


「それでは私たちはアドニア王国に向かう。君たちはニアトス大聖堂の守護に戻ってくれ」


 今から自分たち三人でアドニア王国に向かうと聖騎士に伝える。


 まさか、自分たちだけでなく、誰も連れていかないという選択肢を取るとは思っていなかった聖騎士たちは驚きを隠せない。


 しかし、相手は得体の知れない存在であるため、彼らだけを向かわせるのは危険すぎる。


 そのため、聖騎士たちは同行を求めたのだが、断られてしまう。


 それも教皇からではなく、聖女であるミーシャからだ。


 ミーシャは彼らにただ一言、


「あの方は優しい人なので、心配は無用です」


 自分たちの心配はする必要はないと答えた。


 聖騎士たちはあの方は創であることは容易に想像できるため、彼女が言っていることが理解できなかった。


 創はアドニアス6世の目の前で王妃を無惨に殺したのだ。


 優しさのかけらもない男だと思われても仕方ないだろう。


 実際、彼は人間に対しては優しさのかけらもないので、合っていると言われれば、合っているのだが。


 そうして、教皇たちはミーシャの説得もあり、三人でアドニア王国を目指すことになった。


 アドニア王国とは転移魔法陣があるため、すぐに移動することが出来る。


 そのため、教皇たちはすぐにアドニア王国へ辿り着くことが出来た。


 しかし、本来ならば、王城近くに転移されるはずなのだが、今回は王都から少し外れた森の中へ飛ばされた。


 これは前に創が教えてくれていたので、王都に飛ばされることはないとはわかっていた。


 そのため、想定内の出来事である。


 そうして、近くの森に飛ばされた三人はアドニアス6世の案内で王都へ向かうために歩き出す。


 三人が森を歩き始めてから10分が経った時、彼らはなんとか森から出ることができた。


 そして、アドニアス6世と教皇は目の前の光景に驚きを隠せない。


 彼らの前には立派な毛並みをした8本足の漆黒の馬が引く場所が待っていたのだ。


 この8本足の頭には二本の角が生えており、その体の大きさは普通の馬の5倍から8倍はある。


 そんな巨大な馬を見た二人は驚きを隠せずにその場に固まっていたが、ミーシャだけは違った。


 ミーシャは巨大な馬を見るなり、この馬の方へ近づいていった。


 それを見ていた教皇は慌ててミーシャを止めようとしたが、時すでに遅し。


 彼女は馬の目の前まで来ていた。


 そして、馬はミーシャのことを見るなりその図体にふさわしい巨大な嘶きを上げた。


 教皇はもうおしまいかと思った次の瞬間、この巨大な馬はミーシャへ嬉しそうに頬を擦り付け始める。


 それに対し、ミーシャは優しく馬の頭を撫でてあげている。


 予想外の出来事に二人が驚いていると、


「さあ、早く王城の方へ向かいましょう」


 すでに馬車の扉を開け、中へ入っているミーシャに馬車へ乗るように急かされる。


 状況があまり理解できていない二人はミーシャに言われるがまま馬車の中へ入る。


 そして、ミーシャが巨大な馬に合図を送ると、そのまま馬車は王都へ向かって走りだしたのだった。


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