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拾漆 釣瓶落とし

 鬼の子である鬼龍院は、両親と共に山へ来ていた。

 妖壁と呼ばれる見えない壁で囲まれるその山は、人間が決して知覚することができない、妖怪たちの楽園である。

 

「おおー、すごい!」

 

 鬼龍院は、目の前に広がる光景に目を輝かせる。

 歩きやすいように多少の整備が施された大地と、そこから生える木々。

 そして、すべての木には釣瓶落としがぶら下がっていた。

 

 ここは、妖怪の家族に大人気の、釣瓶落とし狩り会場である。

 人間向けに説明するのであれば、ぶどう狩りの釣瓶落とし版、と言ったところだろうか。

 木の枝からどろどろとした粘液がたれ、その粘液の中には人間の顔が包まれている。

 まるで木の枝から生えるぶどうのように。

 

 釣瓶落とし狩りでは、新鮮な釣瓶落としが一時間食べ放題。

 料金はたったの一五〇〇円。

 鬼龍院は我先にと木の近くに駆け寄り、ぶらさがっている釣瓶落としをむしり取り、むしゃむしゃと喰らいつく。

 

「美味しーい!」

 

 鬼龍院の両親も合流し、釣瓶落としを取って食べる。

 

「おお、ここの釣瓶落としは新鮮だな!」

 

「まあ、本当ね!」

 

 家族三人、仲良く釣瓶落としを食べていく。

 鬼の主食は人間。

 鬼龍院にとって、美味しくないわけがない。

 

「食べすぎるとお腹壊すわよ?」

 

「大丈夫!」

 

 鶴瓶落としは別腹だと言わんばかりに、鬼龍院は次々と釣瓶落としにかぶりつく。

 

「お楽しみいただいているようで何よりです」

 

 鬼龍院があまりにも楽しそうに食べるもので、釣瓶落とし狩りの管理人がにこにこしながら近づいてきた。

 

「いやー、ここの釣瓶落としは本当に美味しいですね!」

 

 鬼龍院の父が笑顔で答える。

 

「そうでしょう! うちの釣瓶落としは、前日に埋めて、今朝生えたものばかりを取り揃えておりますから、鮮度には自信があるんですよ!」

 

「どうりで!」

 

 鬼龍院一家は、その後も釣瓶落とし狩りを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 備考【釣瓶落としの作り方】

 

 1.人間の首を斬ります。

 2.人間の首を地面に埋めます。

 3.一晩待ちます。

 4.翌朝、鶴瓶落としのぶらさがる木が生えます。

 

 

 

 

 

 

「お父さん見て! この釣瓶落とし、すごく美味しい!」

 

「おお! 赤ちゃんの首じゃないか! お父さんも食べたいな。どれどれ、どこかにぶらさがってないかな?」

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