傭兵団の実力と前世の記憶
『武商旅団』傭兵団の実力とアシュトレイの過去の物語です。
『武商旅団』は物資を詰め込んで街を出て一路最前線に向かう。
俺は『眼』を使って前方の様子を見させる。
今回の依頼は物資の搬入と言っていたが、恐らくは俺達は囮なのだろう。補給隊本隊は別に居るはずだ。っていう事はコチラの情報が十中八九敵部隊に流れているはずである。そして釣られてノコノコやって来る敵部隊を気にする事無く補給隊本隊は前線へと到達してる算段って事だね。
引き付ける役目は良いけどお前ら緩過ぎじゃね?傭兵軍団の連中は知らねえのか知っててそうなのかは知らねえが、酒飲んでる野郎まで居るんだから緩過ぎ以外の何物でもない。
それとも飲めば飲むほど強くなるのだろうか?まあ、コイツらは放っておいて俺は俺の出来る事をやるだけだ。こういう時のスイッチはカルディナス軍に居た時に直ぐに入るように訓練されてるからな。伊達に伍長なんてやってないんだよ。
そのうち『眼』からの画像に接近する部隊を発見した。
《200名ほど居るの》
(了解。アシュのおっちゃんにも見せてるよな?)
《見せてるの》
(分かった。引き続き周りを見ててくれ。コレだけじゃ無いはずだからね!)
《分かったの》
俺はザルスに耳打ちする。
ザルスは直ぐに傭兵団の連中に激を飛ばす!!
「お前ら!!出番だぞ!右手方向から200!!」
するとさっきまで酔っ払ってた連中のスイッチがいきなり入った!
「オラァ!!仕事だコノヤロー!!」
「てめぇら!!気合い入れろコノヤロー!!」
傭兵団がまるで別の軍団になっちまったぜ……。
まあ、俺的にはもう既に敵の方にキラを差し向けてるので、気合いが入った傭兵団が着く頃には終わってるだろうけど。
《逆方面から1000人程が来てるの》
「逆方面から1000人!!」
「何だと??どうする??」
「右手はキラが行ってるから左手の方へ!!」
「ラダルの言う通りに!!左手の方向に行け!!」
「おう!!!」
傭兵団は左手の方向に向かう。
俺は『十三』を魔導鞄から出してキラの受け持つ方向に行かせる。そして、俺は傭兵団と一緒に左手の1000人の方に向かう。アシュのおっちゃんは大きく迂回しながら1000人の方の裏を取る様だ。
ならば俺は正面から一気に行ったろか!!
俺は『隠密』を発動しながら【エナジードレイン】を発動、敵全員を指定してから【暴走する理力のスペクターワンド】を握り締めて『溶岩砲』を敵陣に連射して行く。敵陣では溶岩の塊が炸裂して敵兵がパニックになっている。
そこに傭兵団が一気に押し込んだ!
おいおい……大丈夫か?と思ってたが、魔力でかなりの身体強化をしており、弓矢の攻撃がほとんど通じてねぇ……思ってたよりもずっと出来る奴らだ!こりゃあ驚いたね!
俺は傭兵団をサポートする様に『溶岩砲』と『溶岩弾』を撃ちまくり、『千仞』で足止めしたり、『泥壁』で攻撃を防いだりしている。
そのうち後ろから軍馬に乗ったアシュのおっちゃんがハルバートで敵兵を斬り倒して行った!更にパニックを引き起こした敵兵は立て直しする為に一旦引き出したが、傭兵団の動き出しが早くその撤退を潰して行く。
何か皆がプチゴンザレス隊長みたいだぜ……全然止まらねえなコイツら!!
しばらくすると早々と200名の隊を血祭りにあげてきたキラが『十三』を背に乗せて走って来た!『十三』はヒラリとキラの背から降りて狙撃を開始。キラはブレスを吐きながら敵の隊列に突っ込んで行く!!
キラが飛び込んだ事で完全に敵の陣は崩れてしまい、動きがバラバラになった。
『十三』の狙撃により敵兵の指揮官が死亡した為に敵兵は蜘蛛の子を散らすように逃げ出し始めた。
「深追いするな!!」
ザルスの一声で傭兵団は逃げ出す奴らの追撃はほとんどせずに、向かって来た敵兵のみを殲滅して行く。
50人程の傭兵団が1000人の敵軍に突っ込んで行ってこの状況に持って行くとかスゲェな……基本は個人攻撃なのだが、バラバラでは無くてある程度の陣形に近い動き出しをしている。こんなやり方は初めて見るよ。
逃げ出した兵士は300を切ってたから、一人辺り10人以上はぶっ倒してる。こちらは被害ゼロ……ウソでしょ??
「おめぇ中々やるな。あの犬っコロもスゲェぜ」
「イヤイヤ、この傭兵団の身体強化はどうなってんの?凄すぎなんだけど……」
「ああ、この身体強化はザルスから手ほどきを受けるんだ。おめぇもやって貰うといいぜ」
「へぇ〜、ザルスがねぇ……後で聞いてみるよ!」
「おめぇと組んでる大剣持ちもスゲェじゃねぇか。ハルバートでぶっ倒しまくってたぞ!でもあの大剣は使わねぇのか??」
「あ〜アレはここぞと言う時に使うんだ。あのくらいならハルバートで十分だよ」
「へぇ〜ソイツは面白いな。今度使うのを楽しみにしていよう」
前に俺らに絡んたハゲのおっちゃんが声を掛けてきたのだ。まあ、直前まで酒飲んでたのに良くやるよ!
その後、合流して来たシウハとまた俺達は前線に向かった。
その日は襲撃もなく俺達はゆっくりと休めた。
次の日はゲリラ部隊の奇襲(と言っても『眼』にあらがじめ潜んて居ると見破らてた)があったが、これを難なく撃破した。
「結構しつこく来るもんだな」
「物資の不足は勝負に繋がるからねぇ~、そりゃあ必死になるよ」
「なるほど……ただ戦いに勝つだけでは無いのだな」
「アシュのおっちゃんは戦争には関わった事無いの?」
「全く無い。冒険者が長かったからな。ただローレシアから帝国に行く予定だったが、行ってたらもしかするとラダルと敵味方になってたかもな」
「そうか、その行く最中に転移の罠にハマったんだっけ?」
「そうだ……魔物と戦ってる最中にな……油断した。その時の連れが無事だと良いんだが……」
「ローレシアの人だったね?」
「ああ、ローレシアでも有名な魔導具職人でな……俺とはウマが合うと言うか、意気投合してな」
「魔導具職人?」
「ああ、貧乏貴族の三男でな……名前はアードリーと言って……」
「アードリー?!アードリー=ブラム??」
「おお……ラダルはアードリーを知ってるのか?」
「知ってるも何も……アードリー=ブラムの魔法銃のお陰で王国はキーサリーで負けたんだよ!」
「なっ……じゃあ『十三』の使ってる魔法銃はアードリーの?」
「そうだよ。そうか……アードリー=ブラムはアシュのおっちゃんと帝国に向かったのか……」
「ああ、アードリーは帝国の技師に招待されたんだ。結構な持参金を積んで来てたぞ。俺は奴と飲み仲間だったんだが、慣れない旅の用心棒にとついて行ったのさ」
「なるほどね……だとすればアードリー=ブラムは無事に帝国に着いてるよ。魔法銃がその証拠さ」
「そうか……俺個人としては奴の無事は喜ばしい事だが……」
「それは良かったで良いんじゃないの?コッチとの戦いはまた別さ。それより聞きたい事が有るんだけど……」
「何だ?」
「アードリー=ブラムは前世の記憶が有るとか言ってなかった?」
「ん?……そう言えば、酔いが回ると『オレが昔居た世界では〜』と言う作り話が定番だったな。空を飛ぶ鉄の船とか馬の居ない馬車とかな」
ああ、やはり……アードリー=ブラムは俺の予想通りに俺と同じ前世の記憶を持ってる男だ。魔法銃を見た時に種子島に似てるのでそう感じてたが……。
しかし、まさかアシュのおっちゃんとアードリー=ブラムが繋がってたとは……世の中不思議な縁があるものだね。
「俺も前世の記憶が有るからね。魔法銃の形でピンと来たよ」
「はあ?前世の記憶だと?」
「俺の作る料理とかは師匠から習った物以外はほとんどが前世の料理のレシピだよ」
「……言われてみればラダルの言動にはアードリーと似た所があるな」
まあ、こんな話を急にされても直ぐに納得出来ないだろうけどね!
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