土龍国の裏切り
首都の雷土に向かうまでの物語です。
「ラダルの旦那ぁ~、次の行先は首都の雷土に決まりやしたぜ!」
「首都?それじゃあ一番デカい街だろ?また戦争絡みか?」
「何とも言えやせんぜ……もしそうならちょいとエラい事ですぜ」
「どういう事だ?」
アシュのおっちゃんが聞いて来た。そうだよなぁ、今更ヤバいも無いだろうに。
「黄龍国が今戦ってるのは隣りの青龍国ですぁ。それが首都の雷土で戦の準備ってぇと北東の青龍国じゃなくて、近くにある南東に位置する土龍国って事になりやす。今現在は土龍国とは不戦条約を結んで青龍国とやり合ってるのに、土龍国にちょっかい出したら……」
なるほどね、確かにそれは解せない。二国を相手にするほど黄龍国が強いとも聞いていないしな。
「土龍国の隣りと手を組んでる可能性は?」
「土龍国の隣は樹龍国ですから有り得やせんぜ。樹龍国は闇龍国とやり合ってる最中って話ですしね」
「だとすると何目的なんだ?売れる商品が分からないなぁ」
「アッシも気になってるんでさあ……他の連中も分からねぇって首傾げてますぜ」
「シウハに直接聞けばどうだ?」
「教えるかな?俺はシラを切られるか、金を要求されるかのどっちかだと思うけど」
「流石はラダルの旦那だ!他のが金を要求されたらしいですぜ!」
「まあ、そうだろうな。それなら今回はココの名物“ナハリの実”を仕入れようか」
「そりゃあ随分と手堅い商いですぜ……」
「ダメな時は利が薄くても良いよ。魔導袋を空にしとくよりマシさ。タヒドだって売れる物が無けりゃシウハに払えないよな?」
「そりゃあそうですけどね……」
「もし、仮に戦の準備ならポーションも有るし、他にも色々あるからね」
「まだ隠し玉が有るんですかい?」
「まあな。だから今回は手堅く行こう」
「分かりやした!任しておくんなせぇ!」
タヒドにナハリの実を買い付けさせてる内に俺達は旅の準備に取り掛かる。
アシュのおっちゃんは砦から乗って来た馬でそのままついて行く事にしたらしい。戦慣れしてる軍馬だから扱いやすくて、どうやら気に入ったみたいだ。
俺は傭兵用の馬車に乗るからとアシュのおっちゃんに軍馬用の防備を買ってあげた。馬用の鎖帷子みたいな奴だ。前後と両横をカバーする。コレで矢ぐらいなら弾いてくれるだろう。
「スマンな、良い物を用意して貰って」
「何言ってんのさ、必要経費だよ。俺達の売り上げの半分はアシュのおっちゃんの物なんだからさ!」
「商売の事は良く分からんからな……任せっきりで済まない」
「良いの良いの、適材適所って奴だよ。大体俺はタヒドを使ってるだけだしね!カッカッカ!」
タヒドが買い付けをして来たので俺が一緒に店まで行って魔導袋に品物を突っ込んだ。
帰りの途中、露店を開いてる爺さんに遭遇したのだが、面白い物を売ってた。俺の持ってる甘露の雫の壺と全く同じ形の壺である。
中身を見ると空になってる……甘露の雫を枯らせたのか??俺は『眼』に鑑定させると間違いなく本物らしい。
爺さんに話を聞くと旅の途中で仕入れた壺だとかで詳しい事は知らないとの事だった。俺はちょっと試したい事があったので、爺さんの言い値で壺を買った。タヒドが驚いて居たけどね。
戻ってから俺は自分の甘露の雫の壺から空の壺に甘露の雫を少量垂らしてやる。そして翌日、壺の蓋を開けてみると……甘露の雫が目一杯に溜まっていた!ヨッシャー!実験成功!甘露の雫の壺、二つ目ゲットだぜ!!
また空の壺が何処かで手に入ると良いなぁ〜。
そして『武商旅団』が雷土に向かって出発した。ココから1ヶ月程の道程だという……遠いよ!!
鴻蘭を出てから1週間後にまたも盗賊達に襲われた。マジで盗賊多いな……でもコイツらはかなり組織立って動いていた。コレって本当に盗賊か?俺はキラに突っ込ませて、俺と『十三』とで援護射撃をする事にした。キラが取り逃した敵はアシュのおっちゃんがハルバートで吹き飛ばしている。
他の傭兵の連中も飛び出して応戦しているが、アシュのおっちゃんが圧倒的に凄いのと、キラが突っ込んだ先でブレスと毒霧をバンバン吹くので、盗賊達も一気に数減らしていった。そして、生き残った盗賊を締め上げると、その盗賊達の正体は……何と土龍国の兵士達であった。
「へぇ〜、情報通りなんだねぇ。じゃあアンタらの本隊が居るはずだけど、何処に居るんだい?」
シウハの質問に答えない兵士。俺は『眼』を上空に飛ばして監視してる奴が居ないか探させると、2キロほど離れた山の方でコチラを監視してる奴が居た。更にその山の裏側に1000人ほどの兵士達が隠れている……これが本隊かな。
「シウハ、あの山の向こうに本隊が居る。500人程規模だがどうする?」
俺の話しに動揺を隠せない兵士。それを見てシウハがケラケラ笑いながら
「アタシら『武商旅団』を敵に回した事を後悔させてやろうじゃないか。ラダル、アシュトレイ、先鋒を任せるよ!」
「本気かい?まあ、やるなら良いけどさ!」
他の傭兵連中もやる気満々の様だ。全く血の気の多い奴らだな!
俺は『十三』に山の上からコチラを監視してる連中を始末させる。
俺と『十三』はキラに乗り、アシュのおっちゃんの馬と一緒に山の上まで一気に登って行く。
俺は下の兵士達に【エナジードレイン】を発動した。
アシュのおっちゃんは山の上から鉄砲水を出して下に放つとその大水は山の土砂を連れて土石流となり兵士達を襲った。
兵士達は大混乱となり200名程が土石流に飲み込まれた。
その後、俺は『溶岩砲』を撃ち込み、『十三』は魔法銃で狙撃。そして、キラが兵士達の居場所に突っ込んでブレスを吐きまくった!
キラが大暴れしてる最中に今度は傭兵軍団が急襲して大乱戦となった。
アシュのおっちゃんも下まで降りてハルバートを振り回している。
俺は『溶岩弾』を撃ちまくりながら下まで降りて行く。そしてバットアックスで兵士達を殴り倒して行った。
アシュのおっちゃんは指揮官とやり合って首を落とした。それが決定打となり敵は敗走し始めたが、傭兵軍団が追いかけ回してかなりの数を倒して行った様だ。
最終的には20名程に逃げられたが、他は数人残して完全に討ち取った。ほとんどはキラがブレスで焼き殺した様なものだ。
何名かは捕虜として雷土に連行する。シウハによると、黄龍国の上層部は土龍国の裏切りを察知しており、その為の物資を集めているのだと言う。そこで値がつり上がる所を狙って物資を売り捌いて、そのまま黄龍国を後にし次の青龍国へと向かう予定らしい。
それから3週間後にようやく雷土に到着、シウハは捕虜を差し出して顛末を報告。いくらかの報奨金を巻き上げたらしい。俺達は着いた先から土龍国が攻めてくる噂を流して値をつりあげてから直ぐに物資を売り捌く。俺はタヒドにポーションとひと樽だけ残した塩を全て売らせて、空の魔導袋に雷土の名物の果実酒を目一杯買い込ませた。鴻蘭で買ったナハリの実はここでは売らずに青龍国まで持って行く事にした。黄龍国の名物は青龍国でなら高値で売れるからだ。
雷土でも大商いとなってエラい儲けた。タヒドは小躍りしてたよ。
最後に雷土の魔導具屋に立ち寄っていくつかの生活魔導具を購入した。
そして、その翌日には雷土を離れ、次の青龍国へと向かったのである。
次の青龍国の街までは二ヶ月ほど掛かるようだ……って遠いよ!!
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