土下座の男、タヒド
キラの天敵??土下座の男ことタヒドとの話です。
街に戻るとシウハは役人らしき人間にオークキングの魔石と真っ二つだがオークキングの頭を見せて、何事か色々と話していた。
俺は土下座男ことタヒドに何やってるか聞くと「秘密だ」とか言いやがったからキラに脅させると簡単に吐きやがった。
「こ、ここの役人が……け、懸賞金掛けてたんだ!」
「なるほどね。そんで俺達に入団試験をさせて群れの弱体化を狙ったのか。それを俺達が全滅させたからご機嫌なんだな?」
「そ、そうだよ!まさかたった二人でオークキングの首を獲るなんて誰も思わねぇだろ!」
「ニャア!!」
「ヒッ!か、勘弁して下さいよぉぉぉ!猫の旦那ぁ〜!」
タヒドは俺の影に隠れてキラに謝ってた。まあ、しばらくはコイツを情報屋として働かせよう。キラに脅させれば何でも言いそうだ。
俺達は『武商旅団』の借りてる屋敷に案内された。この黄龍国にいる間は各街に拠点を借りてるらしい。
タヒドは東の果てからでは無く、地龍国からこの『武商旅団』に入ったらしい。タヒドは商人としての腕を買われたようで荒事は苦手だと言っていた。まあ、そうだろうな。
「ここら辺の相場を教えてよ」
「相場?」
「そう、鋼の剣はいくらか?後は塩だな」
「鉄剣なら銅1600~3500ってトコかな。塩はこの地では高いぜ」
と言ってタヒドは俺が持ってるのと同じ小瓶を出してきた。
「コイツに目一杯で銅3000!つまりは銀3枚って事さ!まあ、質にも寄るけどよ!」
「他の国より高いのかい?」
「海が無えココと地龍国は高ぇよ。他はその半分かちょっと高いかだな。闇龍国と樹龍国は知らねえ」
「じゃあこの塩ならどのくらいだ?」
俺は小瓶に入れた塩を取り出した。聖都で仕入れたかなりいい塩だ。
「こっ!こりゃあ良い塩じゃねーかよ!コレなら銀10は堅いぜ!!」
「じゃあ仮に100本ならどうだ?」
「100本?!それだけありゃあ金1枚だ!二ヶ月は遊んで暮らせるぞ!」
金1枚で二ヶ月か……なるほどなるほど。
「じゃあ、コレだといくらだい?」
俺は鋼の剣を出した。するとタヒドは真剣な顔で目利きをしてる……なるほど、確かに商人の目だな。
「コイツは上物だな。3000ならオレが買い取るぜ!」
「シウハに納めるのか?」
「はあ?何言ってんだ!オレが売るんだよ!」
良く聞くとタヒドや他の商人系の団員は『武商旅団』として守られながら商売をさせて貰えるらしい。その上がりから3割の上納金を払い、売り上げの無い奴は労働力で払うんだとか。なるほどね……。
「オレに売ってくれよ〜損はさせねェからよォ〜」
どうやらタヒドは先月売り上げが無かったらしく、それで見張りをやらされてたらしい。まあ、良く聞くと有った売り上げを何かの相場に手を出してしくじったらしい。思ってたよりもアグレッシブな馬鹿だな。
「よし、良いだろう。タヒドに俺の持ってる品を卸してやるよ。その代わりに俺達に色々と情報を流せ。俺を出し抜こうなんて考えるなよ?こう見えて故郷ではデカい商会と手を組んで商売してたからな。やったら必ずお前をキラのエサにしてやるからな」
「ちょ!ちょっとぉー!猫の旦那はぁ勘弁してくれよォ~!」
「じゃあ裏切るなよ。とりあえず塩と剣を50づつ卸してやるから」
「ほ、ホントかよ!だか金がねぇんだよぉ……」
「だから、お前にモノだけ渡してやるから売って来い。その売り上げから俺達とシウハに払えば良いだろ?」
「ま、マジか……わ、分かった!高く売って来るから任せてくれ!!」
俺は小瓶に詰めた塩50本と鋼の剣を50本渡してやった。
「へぇ〜ラダルの旦那も魔導袋を持ってんだ!流石だね!」
「お前も持ってたのか?良くシウハに取られなかったな?」
「そりゃあ、これが無いと商売出来ねぇからよ!頭目もそこまで鬼じゃねえさ!」
と、タヒドは魔導袋に品物を入れてそのまま走り出して行った。もちろん、『眼』の監視付きだから逃げやがったらキラに追いかけさせるだけだけどね。
タヒドが出掛けてから1時間ほど後にシウハが戻って来た。相当儲かったんだろうな……にこやかな笑顔だぜ、こんちくしょう!!
「アシュトレイとラダルだったな。今回は稼がせてもらったからね。月に銀100でどうだい?」
「中々面白い冗談だね?俺たちの実力は見ただろ?月に金200でも安くないはずだよね?」
「……一昨日来やがれだね!銀200だよ!これ以上は出さないよ!」
「おいおい、餓鬼の使いじゃああるまいし……金50だな」
オレを品定めする様に見たシウハ。しばらく睨み合ってると突然笑い出した。
「フハハハハ!!中々食えない坊やだね?商人の方が向いてないかい?」
「故郷で組んでた商会の会頭には婿養子に来てくれって言われてたよ。もちろん丁重にお断りしたけどね」
「なるほどねぇ。じゃあ銀7000でどうだい?」
「良いだろう。“一人で銀7000”だ!後は俺達が倒した獲物は俺達が頂くよ」
シウハは眉をビクッと動かした。恐らく2人で銀7000にしてやろうと思ってたんだろうな……俺をあんまり舐めんなよ。
「チッ!気付いていやがったのかい……食えない坊やだ事……分かったわ、その条件で良いわよその代わりしっかり働いてもらうからね!」
「まあ、コレでもそっちは全然お得でしょ?じゃあ契約書を交わそうじゃないか」
シウハは契約書を書いて寄こした。俺はしっかりそれを見てから名前を書いた。アシュのおっちゃんも名前を書く。
コレで契約成立である。俺達は『武商旅団』の正式な団員として旅に出ることとなった。
俺達は傭兵として働くので基本的に街の中にいる時は自由行動になるらしい。その時に街の中で揉め事を起こした時は契約破棄されて知らぬ存ぜぬとなるらしい。
俺とアシュのおっちゃんは街にいる時は、なるべく毎日外に出かけて魔物狩りに行く事にした。基本的に食事は自前だから狩りに行った方が安く済むからだ。それにウチにはキラと言う欠食児童が居るからね!
その日の内にタヒドは戻って来た。
「ラダルの旦那!!ガッチリ儲けて来やしたぜ!剣は1本銅3800!塩は1瓶銀12だったぜぇ!!」
「そうか……誤魔化してないよねぇ〜?タヒドさん?」
「ご、誤魔化す訳ねーでしょうが!!」
《剣は銅3950で塩は銀13と銅500なの》
「なっ!……い、今の声は??」
「ターヒードー!!」
「し、知らねえ!!オレは……」
「ニャアアア!!!」
「ひっ!!あ、ああ!!ま、間違えてやした!さっき聞こえてたヤツです!!」
と、タヒドは有り金全部俺に出して来た。全く……思ってた通り誤魔化してきやがったな。
また土下座をしてるタヒドの周りをキラが歩きながら監視してる。
「タヒドさん、どっちか選んで。このまま部屋に戻るか、キラの相手をするか……どっち?」
「そ、そんなぁ~そりゃあ殺生ってモンですよぉ〜!!」
「ニャアアア!!!」
「ヒィイイイ!!ラダルの旦那ぁ~!!勘弁して下せェエエ!!」
俺はビービー泣いてるタヒドに売り上げから3割5分の金を渡す。
「とりあえずシウハに払う分にお前の分も乗せてる。コレをどうするかはお前次第だけど、俺はシウハに聞かれたら庇わねぇからそう思ってね」
「そんなぁ〜オレと旦那の仲じゃねぇか!」
「キラ!」
「ニャアアア!!!」
「ひ、ヒィ!!!」
タヒドは急いで逃げて行った。シウハの所に行ったんだろうよ。
「ラダル、もう少し手加減してやったら良かったんじゃ無いか?」
「アシュのおっちゃんは商売向いてないよ。ああ言う奴は最初が肝心。キッチリイワしとかないとコッチが舐められるからね!アレぐらいで丁度いいと思うよ」
《我もそう思うの》
「そんなもんかね……まあ、ラダルに任せるさ」
アシュのおっちゃんは半ば呆れた様な顔でそう言った。商売は食うか食われるか……甘い顔は禁物なのだ。
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