入団試験はオークジェネラル退治?
『武商旅団』入りを目指すラダル達はオークジェネラルを倒す事を命じられます。
「入団試験って何するの?」
「お前達、この街に来る前にオークの群れを退治したんだって?」
「ああ、そうだが……それが何か?」
「ならオークの群れにオークジェネラルが居るはずだからソイツを狩って来な!」
「ん?そんなので良いの?」
「ほぉ……随分と簡単そうに言うねぇ~」
「そのくらいなら俺やアシュのおっちゃんが出張る必要ないよね。キラと『十三』に行かせるかな」
「そうだな。それが良い」
「ニャッ!!」
「それじゃあ入団試験にならないわ!自分で行って来な!」
「そう言う事なら仕方ないな。ジェネラルで良いんだな?」
「フフフ……その言い草、まるでオークキングも倒せそうな言い草だな?」
「ゴブリンキングなら倒した事有るからね……あんまり良い思い出じゃ無いけどさ。じゃあ行こうか?」
「もうあの件の事は忘れたよ……」
「はぁ??ゴブリンキングを倒したって??フハハハハ!!作り話もここまで来ると笑い話だね!」
「もうええわ……キラ、此処で待ってて。片付けたら呼ぶからさ」
「ニャア~~」
俺はキラを置いてアシュのおっちゃんと向かう為に、オークの群れが居る場所を『眼』に特定させた。
どうやらシウハの手の者が近くで見張って居るらしい。中々手の込んだ事をしている事……。
《この集落はオークキングが仕切っているの》
「はあ?マジかよ。こりゃあキラも連れてくれば良かったかな?」
「まあ、何とかなるだろ?『十三』だけでも出したらどうだ?あの女狐は俺達にオークキングの事を言わなかったんだからな」
「そだね。じゃあ出すかな」
俺は魔導鞄から『十三』を出して魔法銃を持たせる。オークジェネラルとオークキングは俺とアシュのおっちゃんが倒すつもりなので他のオークを狙撃する様に話すと『十三』はコクリと頷いた。
『眼』が探し当てたオークの集落はかなりの大きさだ。こりゃあ骨が折れるぞ……しかも俺の腕輪はアマモとの戦いの時に使ってしまったので【血魔法】は1ヶ月弱は使う事が出来ない。
「アシュのおっちゃん、俺のスキル使っていこうか?」
「数も多いからな……それが良いか。とりあえず周りのオーク共が沈黙すれば、ジェネラルやキングも狙いやすいからな」
俺は【エナジードレイン】でオークの集落に居る全てのオークを指定した。
時間が掛かるので、2時間ほどゆっくりと休む為にテントと結界の魔導具で休憩場所を確保する。
『眼』の画像ではオークにはバレてないし、女狐の手の者は俺達が作戦会議でもしてるんだろうくらいの体でオークと俺達を監視している。
俺はチャイティーを入れてアシュのおっちゃんに手渡す。
そして2時間経つ頃にバタバタとオーク達が倒れだした。もうオーク達は騒ぐ気力も無い……そのまま倒れて行く。
「オークも倒れだしたし、そろそろ仕上げに行きますか!」
「だな。とりあえずジェネラルを先に片付けよう。その後2人でキングを倒す」
「了解!『十三』は指示の通りな!」
俺とアシュのおっちゃんは『十三』がオークソルジャーやアーチャーを狙撃して作った道を走り抜けてオークジェネラルを狙って行く!
オークジェネラルは3匹居る。俺は2匹で近くにいたオークジェネラルを両方とも『千仞』で底無し沼に沈めて動きを止める!そして『溶岩砲』を連射して直撃させると、オークジェネラル2匹はマグマの熱で大火傷を負う。
『ギャアアアア!!!!』
凄い悲鳴を上げるオークジェネラル!俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を握りしめながら1匹を『溶岩弾』を眉間にぶち込んで倒した後、そのまま走り抜けてバットアックスをもう1匹の首根っこに叩き込んだ!
首が落ちたオークジェネラルが動きを止めたその時にアシュのおっちゃんがもう1匹をハルバートでバッサリと斬り裂いていた。
『グロオオオオオォ!!!!』
響き渡るオークキングの声!!
俺達に向かってオークキングがぶっ飛んで来た!!速い!!
俺はオークキングの進行方向に『千仞』を発動させたが、やはりそれを通り抜けた!!
しかし、それは分かりやすいフェイクである。
『隠密千仞』
オークキングは全く見えていなかった分マトモに底無し沼にハマった。
大剣を抜いたアシュのおっちゃんが『首狩りの大剣』に魔力を込める!!
『雷炎剣!!兜割り!!』
アシュのおっちゃんの大技炸裂!!オークキングは真っ二つに斬られた!!
後は残りのオーク達だが、ほとんどを『十三』が狙撃で仕留めていた。
俺は残りのオーク達を『溶岩弾』で倒しながらキラを呼び出した。この死体の山で食事をさせる為である。
ようやくオーク達を殲滅させた後、合流して来た『十三』にナイフでの魔石の取り方を教えながら、先ずは魔石集めをしてると物凄い速度で猫のままやって来たキラがオークの死体の山を見てにゃあにゃあと喜んでいる。
デカくなったキラは魔石を取り出してない奴までバクバク食べた後に、魔石だけぺっと器用に吐き出している……そんな技いつの間に覚えたんや……。
キラが食事をしていると女狐の手の者が慌ててコチラにやって来ると
「ちょちょちょ!!待ってくれ!!」
「何?何か用か?」
「オーク肉を食わせないでくれ!これも立派な商品なんだ!!」
「はあ?そんな事聞いてないぞ。それに倒した奴の物だろ?俺達はまだ雇われてないからな」
「た、頼むよぉ……頭目に殺されちまうよォ!!」
ソイツが土下座して頼むんで仕方なくキラに食事を止めさせると、キラはその姿のままソイツを睨みつけていた。その兄ちゃんはブルブル震えながら「食わないでくれぇ〜!!」と叫んでたがそのまま放っておく。食い物の恨みは恐ろしいんだぜ……キラ、マジで食うなよ……。
「ラダル、あの『千仞』は?全く気付かなかったぞ」
「あ〜アレは『隠密千仞』だよ。闇魔法を合成する事で『千仞』自体を見え難くしてるんだ」
「……凄いな……しかも相変わらずの無詠唱で発動が速いな」
「アマモの試練で合成の力が上がった気がするんだ。俺の理の力は合成にもあるのかも知れないね」
《主は理の力を段々と理解して来てるの》
『眼』は上空から俺に声をかけてきた。まあ、そう言うのなら順調って事なのだろうね。
2時間ほどすると『武商旅団』の団員達が大勢やって来た。もちろん女狐のシウハもやって来ている。
「へぇ〜!中々やるじゃないか!……おい!お前は何やってんだい!土下座なんかして!」
「と、頭目ぅ〜!!キ、キマイラにぃ~!!」
キラは既に小さくなっていたが、土下座男の真ん前で睨みつけたままだ。
「食事を邪魔されたからキラが怒ってるんだよ。食い物の恨みは恐ろしいからねぇ~」
「ああ……そう言う事かい……何か凄い勢いで走って行くからアンタらが殺されたのかと思ってたよ。まさかオークを全滅させるとはね……正直オークキングを倒すとは思って無かったが、中々の腕前じゃないか」
「で、このオークキングの首はいくら位になるんだい?アンタ狙ってたんだろ?」
「ほぉ……そこまで読んでるのかい?こりゃあ当たりの人材だね!よしっ!合格だよ!ウチの団員になりな!契約を後で詰めようじゃないか!フハハハハ!」
そう言って女狐のシウハはご機嫌な様子で集落の周囲を調べて歩いていた。その後、俺達の方に戻って来て話を始める。
「魔石はどうするんだい?ウチで買うけどどうする?他に売っても構わないよ」
「じゃあ半分は買ってもらおうかな。もう半分はコッチでも使うから取っておく事にするよ」
「魔石を使う?何に使うんだい?」
「持ってる魔導具に使うからね。『十三』も魔石で動くし、魔導鍋とかも料理で使うからね」
「ラダルの料理は絶品だぞ。そこらの食堂じゃあ太刀打ち出来ないくらいの腕はあるぞ」
「へぇ〜、じゃあ今度作って貰うとしようかねぇ~」
「有料で食べさせてあげるよ」
「フハハハハ!ラダルと言ったかい?アンタ中々面白いわね!」
こうして俺達は『武商旅団』団員としての
入団試験に合格し、正式に傭兵として旅に出れる事となった。
「も、もう勘弁して下さいよぉぉぉ!!」
キラ……そろそろ勘弁してあげなさいよ……。
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