ロザリアのブートキャンプ
光魔法の天才ロザリアの特訓の様子です。
アリドー大森林を抜けるまで1週間程は急がずに歩を進めていた。
と言うのもロザリアにアシュのおっちゃんが光魔法を教えながら進んだ為だ。
やはりロザリアには戦闘がある程度出来ないとマズいとブリジッタさんとアシュのおっちゃんが言ったからである。
キラは時にはサポートして、また時には相手として訓練に加わっていた。
しかし、ロザリアはあのエルフに捕まった際に一切の攻撃をしなかった……というか出来なかったのだ。それは対人の戦いが皆無だった為である。だから魔物相手でどれだけ戦闘訓練をしても余り意味は無いのではと俺は思っていた。
「ラダルの言いたい事も解らなくは無いがな……やれるだけやるしかない」
「俺何も言ってないけど……」
「見れば解る。どうせ対人じゃないととか考えてるだろ?」
「まあ、ぶっちゃけそうなんだけど……」
「でも、今やってる事も無駄では無いからな。それに身体で覚える事も有るだろ?」
「まあ、確かに無駄では無いかもね。効率は悪いが……それは仕方ないしね」
「そう。無い物ねだりをしても仕方ないさ」
「何かこう……盗賊でも現れないかねぇ……」
「まあ……無理だろうな。ここら辺を商人が通るとも思えん」
「ダヨネ……さて、そろそろ飯の支度でもするかな」
とまあこんな感じで進んで来たのだ。ロザリアの光魔法の腕はメキメキと上がっていて、かなり強い魔物でも倒せる程になっている。光属性の深度も上がっているのではないだろうか?
《前よりはずっと深度は上がってるの》
「まあ、そうだろうな〜。魔力の質が変わってる様に感じるからね」
《この先に洞窟があるの。試すには丁度良いの》
「本当か?それなら少しはいってみようか?」
アシュのおっちゃんは乗り気だね。
「そうねぇ〜ちょっと寄るのも良いかな」
「二人がそう言うなら俺も問題は無いよ。『眼』案内して」
《コッチなの》
俺達は『眼』の案内で洞窟へと進んだ。すると比較的大きな洞窟が姿を現した。
「随分と湿気の多い洞窟だな……」
アシュのおっちゃんが言う通りに洞窟からはモワッと湿気が吹き出して来る。
「このくらい湿気が有るならリザードマンが居そうね」
「ねぇ、リザードマンってこんなに湿気の多い場所を好むの?」
「ここら辺に居るリザードマンは湿気を好むわね。リザードマンは湿地帯とかにも居るし湿気の多い洞窟は彼らのテリトリーよ。湿気の多い場所を好むのは脱皮がし易いからだと言われてるわ」
「油断するなよ、リザードマンは気が荒い。動きも速いからしっかり動きを見る事だ」
「わかった。行くわよ!!」
ロザリアはそのまま洞窟へと入ろうとしたので止めた。
「ロザリア、暗視用の魔導具眼鏡を着けてけ」
「魔法でライトボール出して照らすわよ!」
「それじゃあ来て下さい、攻撃して下さいと言ってる様なもんだ。コレを着ければ奴らと同じ条件になる」
「そうね、それは着けた方が良いわよ。アナタは遠距離だからね。近くに来る前に倒さないとだから相手に居場所が直ぐ分かるのは得策では無いの」
「でもラダルはどうするのよ?」
「俺は『眼』からの情報があるから平気だよ。いくつか持ってるし」
「私も『眼』の方が良いわ!」
「ロザリアは千年洞窟に着くまでしか俺達と居ないから『眼』に頼らない戦い方を覚えるの。洞窟だけじゃなくて夜の戦闘にも対応出来るからね」
「……分かったわ」
ロザリアはゴーグルを着けるとキラの後に付いて洞窟へと入って行く。俺達三人はあくまでも補佐である。人型のリザードマンと戦うのは対人戦闘を考えると悪くないかも知れないね。
洞窟へ入りしばらくするとワラワラとリザードマンがコチラに集まって来た。結構数が多いぞ……大丈夫か?
キラが囮役で前に出るとロザリアは落ち着いて『光弾』や『光線』で仕留めて行く。
しかし、数が多いのでロザリアに直接向かってくる者が現れる。するとロザリアは近くに来たリザードマンを『光輪』を駆使して次々とリザードマンを斬り倒してゆく!!スゲェな……ジャグラーみたいに光輪を操ってるぞ!マジで大道芸人になれるな!!
それでも数が多い為に近距離まで接近してくるリザードマン!!
俺がバレットを飛ばそうとすると、アシュのおっちゃんが俺を止める。
「まあ、見てろ」
リザードマンがロザリアに攻撃をした瞬間にロザリアが消えた!と思ったらリザードマンの後ろに出現して後頭部に『光弾』を撃ち込んでいた。
「速っ!!」
思わず声が出たくらい速かったよ……。アシュのおっちゃんとブリジッタさんはさも当たり前の様に見てるけどね!
ワラワラと集まって来たリザードマン30体程をキラのサポートが有ったとはいえ、全て一人で倒したのだから大したモノだ。俺がプレゼントした『光速の指輪』も使いこなしていたし完封と言える戦いだったよ。
「さて、本番はここからよ」
確かに次にやって来たのはリザードソルジャーやアーチャーと言った上位種である。
キラは少し身体を大きくして囮役と盾役を兼任する。
ロザリアは『光弾』を撃ち込んだが盾に弾かれる。そこでロザリアは『光線』に切り替えて速度を上昇する事で盾に防がれない様に撃ち込んだ。
鎧が無い首元や頭に撃ち込んで倒したが、リザードアーチャーがロザリアに矢を放ってくる!
ロザリアはその矢を瞬間移動の様に避けて『蜃気楼』で自分の分身を作りリザードアーチャーを惑わせ、その隙に『光線』でリザードアーチャーを次々と倒して行った!
そしてリザードソルジャーをその後に『光速の指輪』を使いながら瞬間移動して、リザードアーチャーを翻弄しながら『光輪』を駆使して斬り倒したり『光線』を撃ち込んでどんどんと倒して行く……。
あっという間にロザリアの周りにリザードマン達の亡骸の山が出来ていた。
「おいおい……圧倒的じゃね?」
「そうねぇ……悪くないわね。もう少し動き回っても良いけど魔力切れが怖いみたいね」
「もう少し『光線』の威力を下げれば魔力にもっと余裕が出来る。相手に合わせる事も魔力節約には有効だ」
「もう少し魔力調節を覚え込ませないと……体力ももう少しね。あの程度で息が上がる様じゃねぇ……」
「基礎が足りなかったか?調整してみるか?全体の底上げになるしな」
「あと呼吸法ももう少し教えるわ。思ってたよりキチンと出来てないし」
「戦い方のバリエーションもいくつか試させようかな。もう少し上のランクのをな」
「あ〜それもイイわね〜」
何この鬼軍曹みたいなセリフは……ロザリアはこの間まで戦闘の素人だぞ!
此奴らは鬼や……此処に鬼が居るで!!
意気揚々と戻って来たロザリアに鬼軍曹二人は容赦なくダメ出しをしていたよ!!どんだけ〜!!
二人にシコタマやられて、うなだれる涙目のロザリアに、俺はチャイティーを入れてあげて、「良く頑張ったな」と頭をナデナデしてやったよ……。
《ロザリアは天才だからまだまだ出来るの》
お前まで言うかね?何そのやれば出来る子みたいな追い込み方は!!此処にも四角い鬼が居たわ!!
結局、この洞窟で3日間、ミッチリ特訓を受けたロザリアは精密機械の様にリザードマンを倒せる様になっていたよ……。
ココはリザードマンキラーブートキャンプかよ!!
注)ロザリアが倒したリザードマンはこの後、ウチのキラが美味しく頂きました。ってやかましいわ!!
お読み頂きありがとうございます。




