血魔法の実力
対ポリュペーモス戦のお話です。
この土壇場で腕輪の精霊石が赤く光った!キタコレ!!
「【血魔法】!!」
すると俺の中から血の霧が噴き出してポリュペーモスのパンチをガッチリ受け切ってしまった……上位魔法……マジか?無敵かよ……。
驚くポリュペーモス……しかしそのまま何度もパンチを繰り出して来るも血の霧によって受けられてしまう。
そのうちに右腕が血の霧によって受けられたまま動かなくなった。どうやら支配に掛かった様だ。
その期を見逃さずに動いたのはアシュのおっちゃんだ!!
「雷炎剣!!兜割り!!」
ジャンプしたアシュのおっちゃんが大剣に雷と炎の魔法を付与してポリュペーモスの右腕をぶった斬る!!
凄まじい斬れ味でポリュペーモスの右腕だけでなく下の大地ごと切れ目が入って割れているー!!スゲー!!
『ギィャアアアアァァァ!!!!』
右腕をぶった斬られたポリュペーモスは左手で切り口を抑えながらひっくり返ってのたうち回っている!!タダでさえデカいから周りがエラい事になってるわ!!お前は環境破壊王かよ!!
無理をしたアシュのおっちゃんとブリジッタさんはもう魔力が残ってないから、コイツが暴れてるのを避けるのが精一杯でこれ以上は攻撃出来ない。
俺はポリュペーモスの眼を狙いたいがのたうち回っているので『溶岩砲弾』で直線での狙いが定まらない!!
クソッタレが!!ケツの穴に撃ち込んだろか!!
《ダメなの。我の眼を使えば良いの》
『眼』は上空からしっかりとポリュペーモスの眼を捉えていた。
《主はもっと“ネームド”を使いこなすの》
チッ……簡単に言いやがって……だがこのままじゃあジリ貧だ。さあ、どうする?直線で狙いが定まらないなら?……俺は想像する……そしてイメージから“創造”する……。
『眼』でロックオンして敵を弱点を追いかけて倒す……そうか!昔見た……逃げる戦闘機を撃ち落とす……まるで“サイドワインダー”の様に!!!
俺は【暴走する理力のスペクターワンド】で魔力を圧縮し暴走させる!!
そしてイメージしたモノを魔法として具現化する!!
「喰らえ一つ眼!!『溶岩誘導弾』!!!」
発射された溶岩のミサイルは『眼』の正確に狙った的を目掛けて飛んで行く!そして、のたうち回っているポリュペーモスの眼を正確に捉えて突き刺さった!!
『ギャァァァァァアアアアア!!!!』
ポリュペーモスの断末魔が峡谷中に響き渡る。
そして、突き刺さった『溶岩誘導弾』がそのまま爆発する!!!するとポリュペーモスの眼はおろか頭ごと吹き飛んだ!!おお、スゲー威力だぜ!!
「よっしゃー!!!やったぜ!!」
すると俺の中にドロっとした物が流れ込む……いつもの闇属性の魔力だ。どうやらまた闇属性の深化が進んだ様だな……。また闇の暗黒面に近付いた……俺は何者になるのだろうか?
そして、動かない骸と化したポリュペーモス……ん?あの腕に噛み付いてるのってキラじゃね?
『ニャッ!!』
ポリュペーモスのパンチを食らってペシャンコになってたはずが……もう再生してたのかよ。しかもポリュペーモスがデカいからって昔の姿の大きさで食ってやがる……。
獅子の顔だけじゃなくて山羊の頭や尻尾の蛇まで噛み付いて食ってるよ……何かスゲえぞ。
そんな可愛いキラを生温い目で見ていると、アシュのおっちゃんとブリジッタさんがやって来た。
「ラダル君!やったね!」
「何とか仕留められました。ブリジッタさんは怪我とか大丈夫でしたか?」
「私は大丈夫よ。アシュトレイも凄かったわね!あんな技は見た事が無いわ!」
「うむ……まだ、魔力の加減が難しい……修行が足りない様だ。今回は大剣に助けられたな……」
「それでも助かったよ。アシュのおっちゃんには助けられてばっかりだなぁ〜」
「おいおい……ポリュペーモスにトドメを指したヤツが言うセリフかよ……しかもあの【血魔法】ってのは驚いた……流石はレブルの力といったところか……」
「ホントに驚いたわよ!あのポリュペーモスのパンチを受け止めるなんて……信じられないわ!って……レブル?ソレってあの……バンパイアロード??」
「まあそんなトコです……【血魔法】を発動出来ればこんな感じなんですけど……今回はコレで打ち止めの様ですね……」
俺の腕輪の精霊石の赤い光が消えてしまった。コレでまた一ヶ月後に会いましょうだな!!
「アシュトレイのあの技を見て、何か私も雷の魔法を操作するコツ?みたいな物を掴めそうな気がしてきたわ」
「あ〜ソレって大事な事ですよ。きっかけはそう言う閃きですからね!」
「まだまだだと思うけど……しかし、あなた達には驚かされてばかりね。一緒に居るともっと強くなれそうな気がするわ」
「あっ……そう言えばポリュペーモスをキラが食っちゃってますけど、取っておく物有ります?」
「あ……大変!!皮を剥がなきゃだわ!!」
「あわわ……キ、キラ!!皮を剥ぐって!!」
『ニャッ!?』
キラが慌ててまだ食べてない場所の皮を剥いでいる……結構上手いもんだな……。
「後は骨と魔石だな。キラ!後は全部食って良いぞ!」
『ニャア〜!!』
アシュのおっちゃんから許可が出てキラは嬉しそうにポリュペーモスを食らっていた。翌々見ると結構グロい。
「サイクロプス系は肉質が良くないから……食べ物には向かないのよね。キラちゃん良く食べるわねぇ……」
「まあ、キラは好き嫌い無いですから。大食い選手権なら負けません!」
『ニャッ!!』
しばらくすると結界に隠れていたロザリアがこちらの方に走って来た。
「み、みんな無事なのね!?」
「ロザリア、もう大丈夫よ!コレでやっと帰れるわね!」
「うん……ありがとう……」
「ほら、私だけじゃ無くてアシュトレイやラダル君にも!」
「……あ、ありがとう」
「うむ。役目を果たしたまでの事だ。気にするな」
「そうそう、一緒に旅をしてる仲間なんだからな!」
「……仲間……」
「うふふ……良かったわね、ロザリア」
ロザリアはちょっと顔が赤くなってブリジッタさんの後ろに隠れてしまった。何この可愛い生き物は。
とりあえずキラが食事をしてるので、俺達も一服しがてら休憩を取る事にした。俺は魔導コンロにポットと鍋を二つ用意する。魔導水筒で湯を沸かしてポットに入れて薬草を煮出し皆に薬湯を出す事にした。ロザリアには小さい鍋でチャイティーを作って出してあげる。
「!!こ、コレ美味しい……」
「それはチャイティーって言ってね、紅茶に少し香辛料を入れるんだ。そしてミルクを入れる。甘いのは甘露の雫だから普通は砂糖かなぁ」
「あ〜私も欲しいかも」
「皆の分も出しますよ。ちょいとお待ちを……」
しかし、甘露の雫は本当にありがたいな。甘いのはやっぱり料理には必要不可欠だからね。この地に来て色々な香辛料やそれに近い薬草を手に入れたので料理の幅も広くなったよ。
「あ〜、暖まるわね〜」
「うむ……疲れも取れたような……」
「ああ、甘露の雫は体力回復の効果もあるからね〜」
皆でくつろいでいる最中に俺は闇魔法のスキルを確認する。
暗闇:相手の目を見えなくする。成功率48→53%、持続15→18分 (パッシブ)
麻痺:相手の動きを麻痺させる。成功率32→39%、持続10→12分 (パッシブ)
猛毒:相手に毒を与える。成功率56→61%、持続15→18分 (パッシブ)
隠密:自分の存在感を消す。持続9→12分
陽炎:自分の姿を相手から見え難くさせる。持続6→9分
結構苦労した割には微増ってとこですかね?
『魔力玉』と『生命玉』も微増だね……【エナジードレイン】の範囲は……ん?変わってねぇぞ……どうなってんだ?前の時でカンストしちまったのかな?
《範囲より時間に特化してきたの》
なるほど……【エナジードレイン】は範囲よりも時間が早くなる方向にシフトしたって事か。それはそれで使い勝手も良くなるけどな。まだまだ時間は掛かるけどそのうち時間が縮まってリッチの様にエナジードレインを直ぐに発動出来る様になるのかな?そうなったらその時の俺は人間で居られるのだろうか……。
とにかくは俺の『器』を何とかしないとだな。それにはあの精霊が言っていた“ある人物”とやらを探さねば……まるで雲を掴むような話だけど。今回でも【血魔法】の有用性がハッキリしてるから是非とも何とかしたいね。
「ラ、ラダル……」
「ん?どうした?」
顔がほんのり赤くなったロザリアがカップを持って来て
「……コレ、おかわり……」
「あいよ。ちょっと待ってな」
俺は他の皆の分もチャイティーの用意をする。どうやら皆チャイティーが気に入ったようだね。
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