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転生魔法兵ラダルは魔力が少ない!だから俺に魔力を分けてくれ!!  作者: 鬼戸アキラ
第一章 転生魔法兵誕生
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遺跡の杖とビギナーズラック

星とブクマをありがとうございます!!


ラダルの相棒となる武器を手に入れるお話です。

1ヶ月ほど後に俺達は城塞都市カロス守備の任を解かれ、ダイラード男爵軍に引き継ぎを行って引き上げるというその日、カロス市民は俺達4番隊を盛大に送り出してくれた。

中には泣き叫びながら「私を見捨てないでぇ〜〜!!」とウチの副長にしがみつこうとする婦女子が沢山おり、かなりの騒ぎとなった。隊長には「一人か二人連れて帰ったらどうだ?」と言われて苦笑していた。

後は隊長に向かって敬礼しながら男泣きするむさ苦しい集団や、隊長に酒を樽ごと持って来た酔っぱらいのジジイの集団などもおり、お祭り騒ぎと言うよりは地獄の一丁目のみたいな感じだった。

こんな後を任されるダイラード閣下もやり難いだろうなあ…お気の毒様です。


行きと違って、帰りはゆっくりと進んでいくので、色々な街に立ち寄りながら帰る事となる。


その中でも工業都市リメルトに立ち寄った際に、面白い杖を発見した。

姿はバカ長い亀甲竹の杖の先が異常に太いフォルムでいかにも爺さん魔術師が持ってる長い杖みたいだった。

最初は灰色の軽くて硬い木だと思っていたのだが、魔力を入れると色がどんどん濃くなり、質量も硬度もとんでもなく増すという謎の材質の杖だ。

どうやら何処かの遺跡から持ち帰られた物らしい。魔力の通りもかなり良くて魔法の起動が速くなる。魔法兵ならさぞや欲しがるだろうなどと思ってたが、質量と硬度を増す際にかなりの魔力量を持って行かれる為に、魔力量の少ない魔法兵では魔力切れを起こしてしまい誰も使えないらしい。

しかも、これを使えそうな魔力量の中級魔導兵や上級魔導兵、あるいは宮廷魔導師などは質量が増すと重過ぎて使えない様だ。そもそも中級魔導兵くらいからは接近戦を想定してないので見向きもされなかったらしい。

色々試してみると俺の『魔力玉』から直接魔力を振り分けられるのが判った。コレなら魔力量の問題は解決する。

俺はコレを買おうと思ったが、人気も無いくせに50金貨とか値を付けていた。このアホ店主が!ふざけんなよ!


「おっちゃん、コレ50銅貨の間違いじゃね?」


「何言ってんだ小僧がっ!コレはアルトラ遺跡から持ち帰られたスゲー杖なんだぞ!!」


「ホコリ被ってんじゃん…俺なら500銅貨で買うよ」


「馬鹿言うな!!仕入れ値が高ぇんだよ!ビタ一文まからねーぞ!」


「あっそ。じゃあ他行くか…」


「ち、ちょっと待て!もう諦めるのか?粘るとかそう言う頭が無いのかよ!」


「う〜ん…5銀貨ならすぐ買うよ」


「ふざけんな!10金貨だ!!これ以上まからねーぞ!!」


「10銀貨の間違いじゃね?」


「良しわかった!持ってけドロボー!!7金貨でどうだ??」


「客をドロボー呼ばわりとか…50銀貨」


「だから銀貨から離れろよ!!5金貨だ!」


「100銀貨かな、これ以上まからねーぞ!!」


「何言ってんだ!俺のセリフだろが!もう2金貨で勘弁してくれよぉ〜〜」


「わかった!!」


「じゃあ2金貨だな??」


「500銀貨で!!」


「殺す気かっ!!」


結局、800銀貨で買ってやった。多分仕入れは600位だろう?殺す気かってオマエは殺しても死なねータイプだろ!!

全くとんでもない野郎に絡まれたけど中々良い杖を手に入れる事が出来た。アホ店主に色々と聞いてみたが、判明したのは杖がアルトラ遺跡の奥宮から持ち帰られた物って事と、売りに来たのは廃嫡された元貴族だと言う事だけだった。恐らくは財産整理だったんだろうな。


俺は早速、街の外に出て杖のテストを行う。魔力がどの位まで入るのか?試しにやって見ると『魔力玉』の3分の1まで吸い取られた。なるほど…これじゃあ普通の魔法兵の魔力量じゃ使えないわ。

しかしながらココまで魔力を入れると重さが半端無い。身体強化しても持ち上げるのが精一杯な感じだった。

嘘だろ…これじゃあ使えない…。

其処で色々考えて閃いたのが、相手に当たるインパクトの手前で魔力をガッツリ入れるやり方だった。

重さで更に加速するので質量と硬度を活かせる。

コレは本当に凄かった。

テストで魔力量全開にして殴りつけた5mの大岩が粉々になってしまった…明らかにオーバースキルである。

俺は魔力量を調節しながら使いこなせる様に練習を重ねる。

とは言え、俺は基本遠距離の攻撃が求められるので、あくまでも接近戦になった時に相手を倒す為のものとして使うつもりだ。


4番隊の泊まってる陣に戻ると今の俺にはこの杖は大き目なので同部屋のアリエスからは「杖が歩いてる」なんて小馬鹿にされた…ぐぬぬ…解せぬ。


隊長と副長は笑いながらも俺の杖の良さを見抜いており、副長は「中々面白そうな物を見つけて来たな。それなら最前線でも十分に戦えるな」と笑顔で怖い事を言ってた。

そんなもん無理っしょ?俺みたいなちっちゃいのが暑苦しい大男共に揉みくちゃにされるんだぞ?命がいくつあっても足りん。

ウチの前衛の兵士はあの隊長と一緒に突っ込んで行く命知らずばかりだからな。ちょっと頭がイカれた連中じゃないとつとまらねぇよ!

俺は丁重にお断りを入れて遠距離で生温く頑張ると宣言した。


工業都市リメルトを出発したのは杖を買った2日後だった。

途中、コボルトの群れに遭遇した時に近寄って来たコボルトを練習にと杖でぶん殴ったらそこそこ遠くまでぶっ飛んでしまった…するとローグに「まるで隊長みたいだった」とか言われる始末。あんなゴリゴリマッチョと一緒にしないで欲しいね。俺はまだ9歳だぞ、可愛い盛りじゃないか!

その後バレットを連射して倒してるとシュレンから「魔法の起動が更に速くなってる!」と驚かれた。そうそう、ローグもそういう専門的な所に気付きなさいよ。何その隊長みたいだとか言う感想は…ド素人かよ!

この戦闘ではたいした被害もなくそのまま隊は進んで行く。


その後何ヶ所か駐屯しながら進んだ後に着いたのが湖の畔にあるレクマーノの街である。

この街で俺はこの異世界で初めての釣りをする事になった。

湖に皆と意気揚々と出掛けて、釣りを楽しんでる時に仲良くなった釣り好きのおっちゃんから面白い釣り糸を分けてもらった。

何でもジャイアントスパイダーの糸だと言う。ジャイアントスパイダーの糸は魔力を入れると強度が増すので釣り糸には持ってこいだそうだ。

しかしそれには魔力を通す釣竿が必要だ。だが俺には例の杖が有るので、それに釣り糸を括り付ければ使えるのである。何か竿先がエラいぶっとい(細い方を先にすると持ちにくい)ので変な感じだが、一投目にいきなり掛かったので引っ張ったが、大物なのか俺の方が引きずり込まれそうになる!頭に来たので身体強化から湖とは逆向きに体を入れ替えて、杖を一本背負いの要領で肩に担いで勢いよく振り下ろしざまに魔力を全力で入れ込むと、重さが加わった勢いでデカい魚が湖からぶっ飛んで来た!4メーターはあろうかというとてつもない大物だ!


「フハハハ!!どうよ?俺の腕前は?」


「そんな釣り方見た事ねぇわ!そもそもそんなのは釣りじゃねーだろ!!」


などと皆からは返って変人扱いされてしまった…何故こうなってしまうのか?

皆で街に魚を運んだら魚屋の兄ちゃんがエラい喜んで結構良い金で買ってくれたので、皆に酒を持たせた。

翌日にやはり釣りに来ていた糸をくれたおっちゃんに余った金を全部渡したよ。


「おいおい…良いのか?」


「良いに決まってるよ!何なら明日も釣るし!」


その日から街を離れるまで俺には一切アタリが来なかった…この異世界にもビギナーズラックは存在した…。



そして3ヶ月以上掛けてやっとカルディナス伯爵領に帰って来た。

俺は帰って早々に隊長と副長にカルディナス城にへと拉致された。

そして、カルディナス伯爵から直々のお褒めの言葉を賜り、4番隊魔法兵の伍長として任命をされた。

この際に例のローブの事も話して「閣下に進呈する為に3番隊の隊長が預かるとの事でしたのでお願いしております。必ずお受け取り下さい」と一言言っておいた。

あの野郎がそのままパクるのと自分の手柄にするのを阻止するためだ。

カルディナス伯爵閣下には大層喜んで頂いた。

城から引き揚げる際に副長から「お前中々の策士だな」と笑われた。これであの野郎が帰って来た時にローブの事を閣下に黙ってるなら面白い事になりそうだからね。


城から帰った俺は、実家に何を送るか考えていた。今回は臨時のボーナスが有ったからね。ただし、いきなり金貨を送るのは如何するか悩みどころであった。

貧乏人がいきなり金持ちになるとロクな事にならないのは前の世界でもこの異世界でも一緒である。そこを案じて今回は経済的支援を行う事にした。先ずは生活の質を高めるのに必要な支援を中心としたモノである。

そこで俺が目を付けたのは卵である。

この世界でも卵は優秀な栄養分であり、生活では必需品である。

だが実家には勿論ニワトリが居ない。コチラの世界ではラボーという鶏なのだが。

このラボーはかなり高値で取引されるので貧乏農家には中々ハードルが高い。

コレを21羽ほど送る事にした。雄は1羽で20羽が雌で繁殖させれば養鶏で食べていけるはずだ。雄は1羽100銀貨で雌は60銀貨となっている。つまりは1300銀貨…1金貨と300銀貨である。

俺が副長に相談するとしばらく考えた後、テズール商会という領内でも一番の商会の代表であるクロイフさんを紹介してくれた。

そこでクロイフさんにラボーの手配と鶏舎や実家の建築などを一括でお願いする事にした。鶏舎の建築やその後の指導も含めてテズール商会にお願いしたのだ。

コレで15金貨がぶっ飛んだが、投資としては高くない。

後は小さな魔導コンロや炊事などの水が湧き出る魔導具、後は服なども一緒に送った。

合計で20金貨だが、今の俺には大した金額では無い。

実家にはもっと良い生活をして貰おう。

それに伍長に昇進したので年俸も上がる事になった。

今までは年に45銀貨だったが、昇進と伍長手当込みで年に120銀貨になった。月に10銀貨貰えるので毎月5銀貨を送ってやれる。

コレだけで実家は働かなくても食って行けそうな金額である。

鶏舎の建築には家の建て替えも入ってるので、今の実家は倉庫にでも使ってくれと手紙には昇進した事も含めて書いておいた。


「ご実家にこれだけの事をしようというその心根は素晴らしいです。しかも養鶏に目を付けられたのは感心するばかりですな」


クロイフさんは紅茶を飲みながら俺にこう言った。


「実家は貧乏だったけど楽しく暮らしていけたし感謝してるんです。両親も勿論ですが弟や妹には良い生活をして欲しいんですよね」


「うむ…聞けば聞くほど素晴らしい。流石はタイラー様のご紹介だけありますな。今回の件は私共に全ておまかせ下さい」


「ありがとう御座います。クロイフさんなら安心してお任せできます。今後とも宜しくお願いしますね」


「勿論ですとも。コチラこそ宜しくお願い致します」


テズール商会を出た俺は駐屯地に戻り、副長に挨拶に向かった。

副長の元に向かうと、物凄い数の書類に囲まれたタイラー副長がにこやかに応対してくれた。


「良い商会を紹介して頂いてありがとう御座いました」


「上手くいったかい?それなら良かったよ」


タイラー副長が書類の山の中から声を出した。

4ヶ月も居ないと恐ろしく書類が貯まるらしいからね…御愁傷様です。


お読み頂きありがとうございます。

面白いと思った方はブクマと下の星を入れて頂けると中の人は喜びます。

何卒よろしくお願いいたします。

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