レブルの遺産
レブルの眷属と会う話です。
「では宜しく頼む……」
「依頼料はキチンと貰えるのだろうな?」
「それは安心してくれ。聖都のギルドで支払う事になっている」
「分かった」
何かアシュのおっちゃんの言葉が硬いな……やはり警護の依頼で何かあった様だ。後で聞いた方がいいかな……。
ロザリアの護衛のブリジッタさんの事も一緒に旅をする以上色々と聞かなければならないな。俺の見立てでは相当出来る雷魔法の魔導士であるはずだ。
「じゃあ改めて……ブリジッタさん、俺はラダル、魔法兵です」
「オレはアシュトレイ、君と同じく冒険者だ」
「ブリジッタさんは冒険者で宜しいんですよね?」
「ああ、銀級冒険者だ。ここら辺では一応名の通った冒険者のつもりだよ」
それにハインディールさんは補足を入れる。
「彼女は“紫電のブリジッタ”という二つ名を持っている優秀な冒険者だ。実力は私が保証するよ」
「紫電……やっぱり雷魔法の使い手だったんですね」
「やっぱり?」
「ええ、魔力の感じが昔感じた事のある雷魔法を使う宮廷魔導士のそれに似ていたので……」
「宮廷魔導士??」
「俺たちは転移で此方の大陸に飛ばされて来たんですよ。で、元居た王国で最強の宮廷魔導士の一人【雷帥】の魔力がブリジッタさんと似ていたんですよ。それで雷魔法の使い手だと推測したんです」
「転移??噂には聞いていたが……良く生きてたな?」
「オレもラダルも運が良かったのさ。オレはイーガルドに飛ばされた。ラダルはギスダルだった」
「イーガルド?!西の果てじゃないか!良くここまで来れたな!」
「ラダルに出会うまで2年半掛かったな。その後半年くらいかな」
「そうか……それでアシュトレイは大剣使いなのか?魔力からすれば魔導士であるはずだが……」
「オレは大剣使いさ。魔法はほとんど使わない。まあ大剣の方がカッコイイからな!!」
「か……カッコイイ……」
そんな生温い目で見ないでやってくれブリジッタさん……。
「俺は魔法を使うから基本は中長距離が専門。でも近距離はこの金槌でぶん殴るから、まあオールラウンダーだね。後、『眼』とキラは俺の従属だから」
「その『眼』というのは一体何なんだ?」
《眼は眼なの》
「はい、ブリジッタさんソレコイツには禁句ね。コイツはそれしか言わないから。遺跡で見つかったらしいからそれ以上は分からないけど意思は持っているね。キラはテイムしたキマイラだよ」
「遺跡の?意志を持ってる?……てかキマイラを良くテイム出来たな?不可能と聞いてるぞ!」
「色々と特殊な条件が重なって出来たのさ。俺は運が良かっただけですよ。キラもかなり強いから戦力になりますよ。この間はオーガを瞬殺してましたから」
「ニヤッ!!」
「そうか……私は中長距離……と言いたいところだが実は近距離専門だ」
そう言ってブリジッタさんは腰のレイピアを抜いて見せた。すると『眼』がレイピアに近づいて熱心に見ている。
《このレイピアは“ネームド”なの》
「!!良く分かったな!そうか……鑑定か!?」
「すみません、コイツは見えてしまうので悪気は無いのですがね……レイピアのステータス見せましょうか?」
「み、見れるのか?」
「『眼』鑑定出して」
《天翔る雷覇のフュルフュールレイピア》
レベル:S 属性:風、雷
雷の速度を体現出来るスキル【風雷】を持つレイピア。基本は音速で動ける様になる。深度が深くなれば更に速い速度と波動を体現させられる。風属性と相性が良く、風魔法の使い手以外は使用出来ない。
「おお!!……こ、これが鑑定……」
《ブリジッタはまだこのレイピアを使いこなせてないの》
「なっ、何だと!?……私がレイピアを使いこなせてない?そんな馬鹿な!」
《このレイピアがそう言ってるの。ブリジッタも昔の主と同じで理の力を理解し切れていないの》
「レイピアが?……理の力……」
「俺の場合は魔力の収束と圧縮と暴走を理解する事でコイツの力を引き出せました」
俺はベルトに差してある【暴走する理力のスペクターワンド】を取り出した。
「それも“ネームド”なんだね……何となく分かるよ」
「俺の【暴走する理力のスペクターワンド】のステータスは後で見てもらうとして、力を引き出す鍵は恐らく『天翔る雷覇』の部分です。となると雷魔法あるいは雷属性に関する理の力を理解すると良いはずです」
「雷……理の力……良く解らんな……」
「まあ、直ぐに理解出来るとは限りませんからね。俺も時間が掛かったし……」
「そうか……しかしショックだな。まさか使いこなせてないなんて……私もまだまだ未熟と言った所かな」
「今判ったなら知らぬままより一歩前進ですよ。何かの拍子に気付きも有りますからね」
《主もまだ伸びしろがあるの》
「俺の場合は器の問題が有るからこれ以上は簡単じゃないの!!」
《また怒ったの》
「チッ……とにかく少しづつ解明していけば良いですよ」
「そうだな。とにかく二人共宜しく頼む」
「ああ、こちらこそ宜しく頼む」
「宜しくでーす!!」
こうして俺達四人の聖都までの旅が始まる。
その前に色々な買い物をしなければならない。
何故ならばキラというミニブラックホールが居るからだ。今までは村の歓待などで沢山食えたが、次からはそうは行かない。現地調達が出来なければ食事を用意して置かないとダメだ。
キラの為にデカい肉を魔道鞄に沢山突っ込んで置いた。お金は沢山貰ったから問題無いけどね。
まあ、最悪キラは強いから旅の途中で魔物を襲わせても良いと思うんだが……。
「ニヤッ!!」
「心配しなくて良いってか?まあそうだけどさ」
そんな感じて店をまわってる時だった。
《主、面白いお店を見つけたの。すぐ来るの》
『眼』が珍しく面白いとか言ってる……何があったのだろう?俺はキラを連れて『眼』が居る場所まで走って行った。
『眼』が言ってた店は普通の雑貨店だった。
「おい……何処が面白いんだ?」
《主はまだ気づいてないの……》
ん?どういう事?……俺は魔力を探ってみる……んんん??何これ?レブルの……どういう事だ?すると店の中からおっさんが出て来て俺を見るなりこう言った。
「貴様か……レブル様を倒したのは」
このおっさん……バンパイアか??いや、ちょっと違うか……レブルの眷属で奴隷って事かな?。
「だったら?」
「そうか、それなら入れ。少し話をしよう……」
一体どうなってんだコレ??まあフル装備だし何かあっても何とかなるかな。俺は注意深くソイツの後について行った。
店の中に入ると結界の張られた場所が有り、その結界を解くと地下に行く階段が有った。
おっさんは地下の階段を降りてゆく……俺も階段を降りてゆくと扉がある。
おっさんがゆっくりとその扉を開くと……部屋がありその真ん中には魔法陣がびっしりと描かれている赤いマントが掛けられていた。
「そのマントはレブル様の物だ。もはや誰かに渡す事も出来ないと思っていたが……まさかあの方を倒す者が現れるとは……レブル様を倒した其方ならばこのマントは相応しい。どうか受け取って欲しい」
「何故貴方が着ないのですか?」
「私がレブル様の眷属で、その決まりとして我が主の持ち物は装備出来ません。それ故に此処で長い間守っていたのです」
そしてそのおっさんは段々と黒味がかってくる……。
「眷属として消える事も出来ず、ただこのマントを守り続けて来たが、やっと解放される……ありがとう……」
そう言うとおっさんは……塵となって消えてしまった。残ったのは服だけだある。
『眼』はマントの周りをグルグルと回っている。
《コレはかなり良い装備品なの》
《始祖の月光マント》
レベル:S 属性:闇
バンパイアロードの魔力により生み出されたマント。物理耐性、魔法耐性、呪詛耐性を持つ。耐性のレベルは闇属性の深度により決まる。ボロボロになったとしても月の光を浴びせると元のマントに戻る。闇属性に親和性が高く、闇魔法の使い手以外は使用出来ない。
おいおい……すげぇ装備品じゃねーのよ!!
まさかのレブルの遺産ですか??こりゃあテンション上がるね!!
お読み頂きありがとうございます。




