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転生魔法兵ラダルは魔力が少ない!だから俺に魔力を分けてくれ!!  作者: 鬼戸アキラ
第二章 魔法兵ラダルの東遊記
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『眼』からの相談事(アシュトレイ視点)

アシュトレイ視点で『眼』からの相談事等の話です。

州都に向かって馬に騎乗している最中に突如声が聞こえて来た。


《アシュトレイ……主について相談があるの。頭の中に直接語りかけてるから声を出さないで欲しいの》


(……こうで良いのか?)


《それで良いの》


(ラダルの事で相談とは?この間の件か?)


《それも含めてなの。最近、主は怒りっぽいの。飛ばされる前は怒る事の方が珍しかったの》


(怒りっぽい……そう言われてみると出会った村で過ごした3ヶ月では怒った事は無かったな。確か……ゴブリンスレイヤーの件で州都で怒ったのが最初だが……)


《怒り方も段々と激しくなって来てるの》


(確かに……先日の件でも、な……)


《このままだとちょっと心配なの》


(でもまだ11歳だろ?こんなもんじゃないか?)


《主は普通の子供とは違うの》


(それは否定しないが……有るとすれば闇魔法の弊害だが……)


《アンデッド化はしてないの》


(アンデッド化してない事だけが闇魔法の弊害では無い。本来、闇魔法は人の負の部分を増幅させやすいからな。ラダルの場合、グレーターダークラミアの魔力とデュラハンの魔力……そしてバンパイアの王レブルの魔力を吸収している。ならばその闇の魔力に触れて性格が攻撃的になると言う事もあるかも知れん)


《……困ったの》


(後でラダルと話してみよう。話を聞いてやる事も改善に繋がるかも知れんしな)


《お願いするの……》



『眼』が心配なのは分からなくもない。俺よりも付き合いの長い『眼』がそう言うならラダルに攻撃的な何が生まれて来てるのやもしれない……。

確かにあの村での怒りの火の着き方はちょっと驚いた。ローレスさんも心配していたくらいだからな……。

しかしだ、まだ11歳の子供が魔法兵をやってる事自体が異常だし、更に知らぬ場所に飛ばされた挙句に言葉も分からなかったのだ。それであの様に旅をしたり、戦闘をこなしたりと大人のオレでもキツい状況であの精神力を保ってると言うのが普通じゃない。

そもそもラダルは色々と規格外過ぎる……あの魔力量や、やられてもあっという間に回復するという強さ……何もかもである。

ここまでは能力的な事はあまり聞かずにいると言う、いわゆる“冒険者ルール”で接して来たが、もう少し踏み込んでも良いのかもしれない。何せオレ達はパーティーを組んでるのと変わらんのだからな。

そう俺が考えてる内に大きな道に出て来た。そろそろ州都が近いという事なのだろう。


「アシュのおっちゃん、そろそろ州都が近そうだね」


「ああ、その様だな。今日中には着けそうだ」


「お二人共、後2時間ほどで州都に着きます。その後はそのまま王宮に入って頂きましてお休み戴く予定です」


「それでは州王様への謁見は?」


「次の日の昼前に謁見となります。その前に朝食後に身支度をして頂きます」


「分かりました。宜しくお願いいたします」


「万事このローレスにお任せを!」


「ローレスさん、頼りにしてまーす」


「ラダル殿、お任せあれ!フハハハハ!!」


良し、コレならば今日中には話す機会は出来そうだ。


そんな風に考えている内に州都の門が見えて来た。すると門の前にローレスさんと同じ甲冑の兵士が勢揃いして道を開けて待っているでは無いか。

これはまさかのオレ達の出迎えって事なのか?


「デュラハンスレイヤー御到着であるぞ!!全体敬礼!!」


近衛兵団の一糸乱れぬその動きは訓練の賜物なのだろう。実に見事である。


門の手前で待っている近衛兵……アレが隊長なのだろう……魔力の大きさが桁違いだ。正直、この人とはやり合いたくないな。


「ローレス、御苦労だったな」


「何のこれしき。隊長、此方がアシュトレイ殿とラダル殿のデュラハンスレイヤーのお二人です。アシュトレイ殿ラダル殿、此方が近衛兵団隊長のラプロス=ディアマンであります」


「隊長のラプロスです。遠路はるばるお越し頂き光栄至極。これから王宮に御案内致します」


「アシュトレイです。お出迎え頂いて感謝しております。また、ローレス殿を始め近衛兵の方々には大変お世話になりました。何分平民の出ですのでご迷惑をおかけすると思いますが宜しくお願いいたします」


「これはご丁寧に……この先王宮でも私とローレスが引き続きお世話致しますので御安心を……」


「ラダルです。ラプロス隊長、宜しくお願いいたします」


「お任せ下さいラダル殿。さあ、参りましょうか」


オレ達は近衛兵団に率いられ街を練り歩くと街の人達からも歓迎を受けた。しばらくして一緒に付いてきていたボルトムとココで別れる事となった。


「ラダルくん、本当に感謝しております。ありがとうございました……」


「今までの分を取り返さないとね。もうあの村の事は忘れるといいよ。あっ、この手紙を後で読んでね」


「……ありがとう。この恩は生涯忘れないよ」


「いいのいいの。忘れるくらい幸せになりなさいって」


「では……お元気で!」


「ボルトムさんもね!」


オレも挨拶をして彼と別れた。気になったので手紙の事を聞いてみた。すると小声で皆に聞こえない様にこう言ってきた。


「あの村は近い内に滅びるから、もうあの村への怨みは消しなさいと書いたの。後は商売的な助言をいくつか書いたよ」


「滅びるって……どういう事だ??」


「あの村の連中は魔人に狙われているからね。ボルトムさんがやらなくてもいずれは全滅する運命だったのさ」


「魔人……まるで直接話した様な口振りだな?」


「あ〜、ここに来る途中……あの村を出て3日後位にボルトムさんの魔力が消えたでしょ?あの時魔人が現れてたんだよ。何か特殊な結界で俺以外の時間を止めてたみたい」


「なっ、何だって?それでラダルは大丈夫なのか??」


「うん。魔人の言うには今の俺は弱過ぎて相手にならないから泳がせるんだってさ。その時にあの村を狙ってると言ってたからね。恐らく次はあの村長が奴隷の候補だね。俺を相当恨んでるから丁度良いだろう」


「ちょっと待て……それじゃあ村長が村を滅ぼすって事か?しかもラダルを恨んでって、いずれは復讐に来るんじゃないか??」


「その時は返り討ちにしてやるさ。魔人……【怨呪】のファブルにもそう言っておいた」


「ファブル……どこかで聞いた名だな……」


「まあ、あの村はもう終わりだよ。誰にもどうにも出来ない。あの魔人は強いからね」


《ファブルは恐ろしい傀儡術士なの》


「ああ……そうか……あの伝説の傀儡王か……」


オレは昔からの言い伝えである『傀儡王』の物語を思い出した。そうかあの『傀儡王ファブル』が魔人だったのか……。


「アシュのおっちゃんはファブルを知ってるの?」


「ローレシアの方では知らぬ者は居ないと思うぞ。『傀儡王ファブル』は有名な物語でな、その昔ローレシアの王を手玉にとって国を滅ぼそうとした男の話が描かれている」


「へぇー、じゃあ後で教えてよ」


「ああ、良いとも。オレも話したい事もあるしな」


「そう?じゃあ後でね!」


なんて事だ……ボルトムに力を与えた魔人があのファブルだったとは……聞いた話からすると直ぐにどうこうは無いだろうが……いずれは戦う事になるかも知れんな。

とにかく今日は色々と話さなければいかんな。


州都の街は賑わいを見せていた。

オレ達をひと目観ようと集まって手を振る者も多かった。

ラダルはニコニコと愛嬌を振り撒きながら手を振っていた。

オレは正直こういうのが苦手だ……まあ、仕方無いから手ぐらいは振ったが……。


連れて行かれた王宮は……流石にデカい。

王国やローレシアの王宮も大きかった記憶が有るがこの州都も負けてない。

隊長は報告に向い、オレ達はローレスさんの案内で王宮の貴賓室に案内された。物凄く豪華過ぎて落ち着かない……。

とりあえず風呂があると言うので二人して入ると物凄くデカい風呂だった……。何人入れるんだってくらいデカい。

ラダルは物凄く喜んでいて「高級オンセンリョカン?みたいだ!!」と大喜びしていた。

浴槽に入りながらオレはラダルに話しかけた。


「ラダル、最近……と言うかこちらに飛ばされてから変わった事は無いか?」


「変わった事?……う〜ん……あり過ぎかな」


「あり過ぎ……そうか……感情の起伏とかはどうだ?」


「感情の起伏?そうだなぁ……うん、沸点が低くなった」


「沸点??」


「あー怒る早さというかな……すぐ怒りの感情が出てくる」


「その自覚はあったか」


「もちろん。コレが環境のせいなのか、それとも他の原因なのかは分からない」


「そうか……オレは闇属性の弊害かも知れないと睨んでいる」


「闇属性の弊害?」


「人の負の感情を闇属性は増幅させる。だから怒りの感情や残酷な考えを平気で肯定してしまう」


「なるほど……確かにそれに近い感じだなぁ。やはりデュラハンやレブルの闇属性を吸収した事が拍車を掛けたのかも……」


「その可能性は高い。だが、完全に引っ張られてる風でもないな。もし完全に引っ張られてるとなればもっと魔力も闇属性側になるはずだ。だがラダルにはそれが現れていない……そこが不思議だな」


「うむ……あっ……もしかして湖の精霊に貰ったあのナイフか?……」


「精霊……前に言ってた奴か?オレは見てないが……」


「精霊石の付いてる加護のナイフを貰ってから……何となく冷静になってる様な気はする……まあ怒るは怒るけどね」


「ほう……加護ってくらいだ、何かが付帯されてるのかもな」


「そう言えば、邪気を払うってさ」


「なるほど……引っ張られてないのはそれが原因かもしれんな。常に身に付けておくといいだろう」


まあ、本人の自覚も有るし、加護のナイフか……それがあれば大丈夫かもしれん。とは言えオレも注視しておくとしよう。


「で、ファブルの話ってどんなの?」


「うむ、物語ではファブルは海を渡って来た魔術師で、蛮族との戦で戦果を出して王に近づいたとされる。王はファブルの『力を与えてやるから蛮族の一族を滅ぼせ』との甘言に乗り契約を結んでしまうんだ」


「ソレって……ボルトムさんと同じ……」


「そうだな……。その後、力を得た王は蛮族を倒しその一族を滅ぼした。そして王は契約によりファブルの眷属として操られる。そこで行われたのはローレシアの民の虐殺だ。それにより何万もの民の魂をファブルは手にする事となる」


「そうか……やはり魂が狙いだったのか」


「その様だな。ファブルに操られた王を倒す為、王族でもある聖騎士ハレルが仲間と共に王を倒し、ファブルを無限牢獄に閉じ込めてしまう……そこまでが物語で描かれている。コレが単なる物語なのか実在した物なのかは解っていなかったが……どうやら本当に有った事なのかも知れないな」


「無限牢獄か……どうやったのかな?」


「そこの所は物語では詳しく書かれていないのだが、確か『聖騎士ハレルの魔法で』と書かれていたはず……」


「う〜ん……つまり聖騎士ハレルは封印の魔法を使ったって事かな……だとすると何故出て来れたのか……」


「何らかの方法で無限牢獄から出たのか……とにかく謎が多い。ローレシアに行けば何か分かるかだが……」


「まあ、封印出来る何か方法があるってだけで今は十分だよ」


まあ、物語の一節がどこまで本当なのかは怪しいところなのだが……それでもファブルへの対抗策があるかも知れないだけでも良しとすべきかな。

しかし、ラダルと旅を始めてからというもの、ゴブリンキングから始まり話が尽きないほど色々な事が起こっている。どうやらラダルは巻き込まれ体質の様だ……。

今度は魔人と来たか……だがオレがラダルを守ってやらねばならん。傀儡王ファブルか……オレももっと強くならねばな。


お読み頂きありがとうございます。

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