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転生魔法兵ラダルは魔力が少ない!だから俺に魔力を分けてくれ!!  作者: 鬼戸アキラ
第二章 魔法兵ラダルの東遊記
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アデリーナムの村八分

アデリーナムの出来事の物語です。

次の村、アデリーナムに着くと今までとは打って変わってしーんとしていて、まるで葬式会場の様だったので俺達はローレスさんの方に向くと明らかに焦った顔をしていた。

ようやくやって来た村長の憔悴し切った表情に若干の不安を覚えていると、急に村長がジャンピング土下座をしてきた!!ビックリしたわ!!


「デュラハンスレイヤー様にお願いの儀が御座います!!何卒お聞き届けをぉぉぉぉ!!!」


俺達は百姓の直訴を受ける殿様かよ!!

つかどっちかって言うと俺も百姓の出だぞゴルァ!!


「落ち着いて下さい、お話はお聞きしますから……」


俺が思わず声を掛けると村長が涙を流しながら俺達に礼を言って来た。いや〜まだ何もするとも言ってないんだよね……。



「……という訳なのでどうかお助けぉぉぉぉ!!」


……まあ、要約するとこうだ。

村にとある男が居て村の方針に中々従わず、村人達に村八分の様になっていたと言う。嫌がらせが何十年も続きその男が恨みのあまり魔人と契約を交わして村人達に復讐をしようとしてる。何とか助けて欲しいという事だった。


俺は正直言うと胸糞悪くて可哀想とも思わなかったのだが……と言うのも理由はどうあれ村八分にするのは俺的にNGだからだ。

俺の村では村長が必ずそういう者の面倒を根気よく見ていたし、協力者も多かった。

貧しい村だったから皆で協力しようという気概があったからだと思う。でもこの村ではそれが無かったという事になる。


「そもそも何故村八分などという愚かな事をしたんですか?」


「それは……村の掟を守らないあの……」

「それを根気よく面倒を見るのが貴方の役目ですよね!?」


村長を始めとした村人やローレスさんもアシュのおっちゃんも驚いた様な顔をして俺を見てる。

俺は更に続けてこう言った。


「あなたがそういう立場の人間を庇わずに皆で責め立てればこのような事になると思わなかったのか?俺も貧しい農民の出だが、村に馴染まない者を村八分にしたなんてうちの村では聞いた事が無い。何故ならうちの村の村長が体を張ってそういう者を守っていたし、そういう村長を見て村人達も考えを変えて根気よく面倒を見ていたよ。つまりはアンタの職務怠慢だろ?それをしなかったのに今更俺達にケツを拭けってか?いい加減にしろ!このドたわけが!!ゴルァアアア!!」


村長を初め村人達も俺の勢いに圧倒されて腰を抜かしそうな勢いだ。

流石にアシュのおっちゃんが俺を宥めようとやって来て俺は段々と冷静になった。


「とにかく俺は協力しない。むしろその男に協力したいくらいだ。俺はこの村には一切世話にならない。村の外で寝る!以上!!」


俺はキラと『眼』を連れて村の外に出て行った。


その後、アシュのおっちゃんとローレスさんがどの様な話をしたのかは知らない。だが俺はその村八分の男を助けようと思っていた。


《主は短気なの》


「人間にはね、やっていい事と悪い事があるの。アイツらはロクデナシの集まりだよ」


《もう少し話を聞けば良かったの》


「何でさ?」


《やむにやまれぬ事情って言う事もあるの》


「それを何とか治めるのが村長の役目。やれないやらないは業務放棄。どうせ言い訳に終始するに決まってるよ。聞くだけ時間の無駄だ」


《主は厳しいの……》


俺は魔力を探ってみる。

あの小高い丘の方にエラい魔力の奴が居る。アイツだろうな……さて、どうするか。


「なあ、あの村長が言ってた魔人って何だ?」


《魔人は魔人なの》


「それもう良いから……強いのか?ソイツ……」


《主なら瞬殺されるの》


「は?」


《主が戦ったバンパイアの王は元々は魔人なの。その力を封じられてあの遺跡に取り込まれていたの。主と戦った時は最低でも20分の1ぐらいの実力しか出せてないはずなの》


「はあ?最低でも20分の1ぃ?……そんなスゲェのかよ……」


《魔人とは理の力を超えた存在なの》


「魔人と契約ってどうなるんだ?」


《魂を担保に魔人の力を借りられる眷属になるの。目的が終わると魔人の奴隷として一生仕える事になるの》


「契約を解除するには?」


《魔人を倒すか魔人に契約を破棄させるしかないの》


「ふーん……なら目的が終わらなきゃ奴隷として仕える事は必要無いって事だな?」


《……いかにも屁理屈なの》


「でもそういう契約だろ?守らないと魔人に何か罰則でもあるんじゃないのか?」


《……そういう例が無いの》


「じゃあやる価値はありそうだな……」


《危険な賭けなの》


「まあ、やって見てのお楽しみ……あの村のヤツらの良い様にも、魔人の好きな様にもさせない」


《……主は無茶するの》


無茶だろうが何だろうがやってやろうじゃねーか!

俺は早速その男の元に向かった。



結果から言うと死にそうな目に合わされて逃げ帰って来た……。いやはやあの魔力半端ねぇな……どっかのオオサコさんもビックリだよ!

しかし復讐心で頭がいっぱいって感じだな……正に聞く耳を持たないとはあの事だ。


さて、俺はどうしたかと言うと……次の日もまた死ぬかと思ったくらいにやられて逃げ帰って来た。


コレをしつこく4回ほど繰り返した5日目に奴は流石に俺に話しかけて来た。


「こ、小僧……いい加減にしろ……」


「嫌なこった。アンタが話を聞くまで何度でも俺は来るぞ!」


「……何故だ?何故そこまで村を守ろうと……」


「はあ?村だって?あんな村どうでもいいさ。俺はアンタが魔人の奴隷になるのを阻止したいだけだよ。正直あんな村は潰れてもいいがその目的が達成されるとアンタがヤバい。それを避ける為に俺は来てる」


「……何だと?お、俺の為だと……何故だ?何故見知らぬ俺にそこまでする?何が目的だ?」


「正直、この状況の何もかも気に食わない。あの村のヤツらはアンタを殺させようとしてるし、魔人はアンタを奴隷にしようとしてる。……実に気に食わん。アンタは被害者じゃないか。何でそんな事にならなきゃいけないんだ?だから俺は来た。そのどちらも達成させない為にアンタに提案がある」


「俺は……復讐さえ……“アイツら全員皆殺しに出来れば”……それで良い……邪魔するな……」


「良し、聞いたぞアンタの目的を。まあ、そう言うなって……ちょっと耳を貸しな……ゴニョニョ……」


男は目を見開いて驚いている。まあ普通はそうなるわな……。


「……何だと……そ、そんな事……出来るのか?」


「出来るのか?じゃ無くてや・る・の!それならば全ての目的が達成されない。これこそ三方一両損ってヤツだな!!ガハハハ!!」


「さんぽう?……何だか分からんが良いだろう……少しくらい待ってもそうは変わらん……」


「とにかく俺は村に行く。アンタはこのまま待っててくれ。俺が戻ったらその時は作戦成功だ」


俺は急いで村に行く。

俺が行くと村人達は驚いた様な顔をしていた。ローレスさんが俺の方にやって来る。


「どうされました?例の男と何度もやり合っていた様ですが……」


「村長に提案が有ります。聞いて欲しいのですが」


いそいそとやって来る村長。俺にはかなり怒っている様だが州王様の客人で他の村を救った英雄を無下には出来ないだろう。


「正気を逸しているようだ説得は無理だった。だが相手の実力は分かったので“何とか出来る”がどうする?」


「それは何とかしてもらえれば……」


「じゃあ“何とか”しよう。“報酬は頂ける”のだな?」


「そ、それはもう……」


「ならば俺に頼むと良いよ。“何とか”する」


「では、お願い致します!!」


「分かった。んで、村長……」


「は、はい、なんでしょう?」


「今の言葉……“絶対に忘れるなよ。”わかったな?ローレスさんも今のを聞きましたね?」


「あ、ああ、私も聞いたぞ。でどうするのだ?」


「お任せ下さい。今から行って“何とかして来ます”から」


俺が村を出ようとすると、さっきの話には加わらなかったアシュのおっちゃんがやって来た。


「ラダル、お前何か企んでるな?」


「フフフ……流石だね。まあ、誰かが死ぬ事は無いからさ。少なくとも今回に関してはね」


「……それならお前に任せる……正直言うとあの後の話でな……まあ、この村の連中にはオレもローレスさんも流石に呆れたよ」


「やっぱりね……なら、ちょっと待っててね。面白い事になるから」


俺は急いで彼の元に向かった。

コレで条件は全て整った……もう八割方俺の考えた通りになった。最後の仕上げだが……それは魔人の出方次第だな。


お読み頂きありがとうございます。

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