キマイラ、眷属になるってよ
キマイラが眷属となるお話です
「ニャア〜〜〜」
その三毛猫は俺にしつこくまとわり付いて離れない。
どうやら懐かれてるらしいのだが……オマエ……キマイラだよな?
《どうやら主の眷属になった様なの》
「はぁ??眷属??」
何でそうなった?俺からはその事は一切行っていないし、【ザ・コア】が勝手にそのような事もしていない。一体何故こんな事に……。
あ……そうか…【血魔法】か!!
確か……『自らの血液を【血魔法】により血の盾として使う事が出来る。【血魔法】により魔力で超強化された血液は自由に形を変えながら使用者を守る。
更に何度も血の盾に攻撃した武器は使用者に乗っ取られ持ち主を攻撃する』だったよな?
何度も血の盾に攻撃してたな……このキマイラは。
つまり血の盾に繰り返し攻撃をしていたあの爪と前足の一部が俺に乗っ取られたって事?だから動きが止まったのか?
むう……よく分からんな……だがそこら辺が絡んで支配されたのか?
まあ、見た目は変わった色の三毛猫ではあるしコレだけ懐かれたんじゃあ仕方ないか……猫可愛いし……昔から「ネコと和解せよ」って言うからな……命懸けで戦った相手だが和解するか。
「まあ、仕方ないから連れて帰るか……」
「ニヤッ!」
《ならば名付けをするの》
「名前か?」
《眷属ならば名付けは必要なの》
眷属だの名付けだのって……それまんまバンパイアじゃねーかよ……。
「眷属って……名前ねぇ〜……うーん……キマイラ……キマイラ……キラ……よし!キラにしよう!」
俺は三毛猫を両手で持ち上げて
「今日からお前はキラだぞ!分かったか?」
と言うとキラが突然光り出した!そして直ぐに元に戻る……一体今のは何だ??
《名付けが無事終わって、主の正式な眷属になったの》
「ニャア〜」
「正式って……そんなもんなのか?」
《眷属となったキラは主を裏切らないの》
キラは俺のランドセルの上に乗って肩の横から顔を出している。そして俺の顔に頭を擦り付ける様にしている……猫だな……。
俺はそのまま精霊の元に戻って行った。
『お、お前……それはキマイラでは無いか!!……へっ?け、眷属って……しかも名付けまで終わっておるではないか!』
精霊はキラを見て直ぐにあのキマイラなのを見破ったが、それと同時に俺の眷属になったのも理解した様である。
「まあ……良くわからんけど成り行きでね……」
『まさか……あの凶暴なキマイラを眷属にしてしまうとは……正にバンパイアの所業!!』
「ニャア〜〜」
「あっ、それと腕輪の効果で初めて【血魔法】を使えたよ!結構強烈な魔法だわ!やっぱりスゲェよな上位魔法って!」
『ふむふむ……なるほど……どうやら血魔法の効果とキマイラの再生能力による融合によって支配が掛かった様じゃな』
「融合?どういう事?」
『【血魔法】の効果で攻撃した前足の部分がお主に従属した。そして何らかの原因で身体のほとんどが無くなり、残っている前足中心に再生した為にそのまま従属したという訳じゃよ』
「やっぱり【血魔法】の効果か……ホントにスゲエな上位魔法は!感激するよ!」
『今回は再生をする相手だという特殊な前提条件が有ったからのう。ソコにたまたま従属という条件が重なったからであろうな。中々このようにはならぬぞ。お主は運が良い』
「そうだね……確かに俺は運が良いよな。猫も手に入れたし」
「ニャア〜〜」
《もう戻るの。アシュトレイが心配するの》
「おっ、そうだな。じゃあ戻るわ」
『うむ、世話をかけたな。コレでこの地も安定した……お主のお陰じゃ。ラダルよ、コレを持って行くが良い』
精霊が渡してきたのは小さなナイフだ。碧銀色に輝く綺麗な刄、持ち手には精霊石なのか?青い色の石が嵌っている。
『それには精霊の加護が付く。お主の能力は特殊じゃからのう……常に身につけて居ると良いぞ』
「……お前良い奴だな」
『フフフ……今頃気づいたか?』
《意外とマトモだったの》
『貴様は一言多いのう……呪ってやろうか?!ああ?!』
「まあまあ……それじゃあ戻るよ精霊さん」
『うむ……それとな、東の山脈を越えた遥か向こうにお主の『器』の問題を解決する者が居るようじゃ。その者に会うのじゃ』
「器の?……なんて言う人?」
『それはここからでは遠過ぎて分からぬ……済まぬな。だが必ず出会う事になるじゃろう。向こうに居る精霊ならば詳しく分かるやもしれぬ』
「そうか……ありがとう!」
『達者でな』
《さらばなの》
『お前は呪われろ』
《やっぱりロクでもないの……》
こうしてつまらぬ諍いを尻目に俺は湖を後にした。
急いで宿に戻るとアシュのおっちゃんが出掛けようとしていた。
「ラダル!大丈夫だったのか!」
「ごめん。何とか大丈夫だったよ」
《主が心配掛けたの》
「いやいや、お前が言うなし!!」
「ニャア〜〜」
「ところでその派手なネコは?……ん?コレは魔物か?」
「うん、キマイラのキラだよ。何かね俺の眷属になったみたい」
「眷属??どういう事だ?」
俺は精霊の事やキマイラの戦いの件などを詳しく話した。アシュのおっちゃんはそれを聞いて色々と考えている様だった。
「ラダル、お前は闇魔法……と言うより闇属性に感化され過ぎている。あまりそちら側に傾倒するとアンデッドになるかもしれないぞ」
「それは……大丈夫だと思うけど……」
「……お前は言わないが、お前が闇属性のスキルを使えるのは薄々感じてはいる。それにあのバンパイアの力まで手に入れた。お前が使う闇属性のスキルはオレのみる限り全て人外の術だ。傾倒し過ぎると闇に引きずり込まれるぞ。使わずに済むならなるべく使わない方が良い」
《アシュトレイ、それは大丈夫なの》
「ん?何故大丈夫だと言えるんだ?」
《主は使える範囲と時間が限られてるの。無制限に使える訳では無いからまだ大丈夫なの》
「……そうか、ならば良いのだが……危険な時はラダルだけでなくオレにも言えよ」
《分かったの。安心するの》
何か俺の事を勝手に決めてるうぅぅぅ……。
でもみんな色々心配してくれてんのね。
しかし……闇属性に引きずり込まれるってどういう事ですかね?……何かの暗黒面かな?
「ニャアニャア!」
「ん?腹が減ったのか?ちょっと待ってな」
俺はキラに魔導鞄の中から取り出した結構デカいオーク肉を出して切ろうとすると、そのまま齧り付いてペロッと全部平らげた。
腹が一杯になると寝っ転がってゴロゴロしてる。
「み、見た目はすっかり普通の猫だな……凄い食いっぷりだが……」
「まあ、見た目は猫だし何とかなるかな。面倒くさけりゃテイムしたとでも言えばいいかな?」
「ああ、魔物使いか……なるほど、それならばギルドで登録するか」
「えっ、冒険者ギルドってあるの?」
「デカい街ならありそうだが……後で聞いてみるかな」
その後俺達は村長に呼ばれてまた宴会に付き合わされた……流石にアシュのおっちゃんはもう酒は飲まなかったけど、料理はたらふく食わされた。俺はかなり食わされたが魔導鞄にいくつかの料理はこっそり入れて、部屋で待っていたキラに持って行ってあげたらあっという間に平らげていた……。
翌日、ローレスさんに冒険者ギルドの事を聞くと州都には冒険者ギルドがあると言う。
これでまた州都に向かう理由が増えちゃったという訳である。
ローレスさんにキラの事を話してテイムしたので安心して下さいと言うと
「なるほど!まあデュラハンスレイヤーなら魔物など何匹従えてもおかしくありませんからなあ!ウハハハ!」
などと言われた。そんなもんなのかな?ってかローレスさん、それでエエんか?エエのんか?
そういう訳で俺達は先を目指すことになる。
セレドラの村を出て次の村であるホルストイの村に向かう。
次の村でもこんな感じで歓待受けるんだろうな……行く前からブルー入るわ……こりゃあ州都に着くまでに食い過ぎ飲み過ぎで俺達二人とも死ぬんじゃね??
「ニヤッ!!」
何故かキラが自信満々に見える……確かに良い食いっぷりしてるからなぁ……次はお前に任せるかな!
お読み頂きありがとうございます。




