血の眷属の始祖現る
遺跡内で最強の敵が出て来ます。
「なあ、ラダル…ハルバートの方がかっこいいだろ?」
「そんな事無いですよ!遺跡の……デュラハンの大剣ですよ!?コレで一刀両断とかファンタジーの王道じゃないですか!!」
「ふぁんたじい??……何だか良く分からんが凄い自信だな…君らはどう思う?」
俺はアシュのおっちゃんから話を振られた村人に『お前ら分かってんだろうな?』的なガンを飛ばしてプレッシャーを掛ける。
「大剣カッコイイデス……」
「そうか?うーん…皆がそう言うなら…」
そりゃあ遺跡の大剣使うでしょ普通?デュラハンの持っていた大剣だよ?中々お目にかかれない物だって。それをカッコイイとかどうでもいいわ!もしネームドなら大変な価値があるんだぞ。ってかアンタ遺跡の専門家じゃねーのよ!!そもそもハルバートがカッコイイって何基準よ?意味わかんねぇわ!!
こんなバカ話しながら危険な遺跡の中を歩いてるとか……村人達が引いてるわ…。
俺はデュラハン戦でまた、闇魔法の深度が上がった様だ。やはり闇魔法の深度には闇属性の魔物を倒す事が重要らしいな。今回のデュラハンは闇属性としてはかなりの上位だった様で前のラミア戦よりも明らかに闇魔法の経験値が上がった様に感じる。
暗闇:相手の目を見えなくする。成功率30%、持続12分
麻痺:相手の動きを麻痺させる。成功率17%、持続6分
猛毒:相手に毒を与える。成功率36%、持続10分
隠密:自分の存在感を消す。持続5分
陽炎:自分の姿を相手から見え難くさせる。持続3分
もう少しパッシブの成功率が上がっても良さそうだけどなあ……。
だがそれよりも重要だったのは【エナジードレイン】の範囲が4キロになった事である。今歩きながら遺跡の全部の魔物に【エナジードレイン】の指定をしたので遺跡の中を探検しているのだ。そのうち魔物が居なくなればお宝タイムになるからね。しかも微妙に効力も上がった様で回り始めて2時間半ほどでポツポツと反応が変わり始めている。
デュラハンのお陰で俺の闇属性も上がったのだろう。
とりあえずデュラハン戦で消耗した『生命玉』の補充は上手くいってる様だ。
当然の事ながら【ザ・コア】も闇属性が上がった事により成長したので『魔力玉』『生命玉』の二つも大きくなった様だ……『魔力玉』は1.5倍程大きくなっている。
う〜ん……果たして俺はどこに行き着こうとしているのだろうか?
弱った魔物を倒しながら開きそうな部屋を探す。アシュのおっちゃんの話によると遺跡内部の部屋は扉が開く部屋と開かない部屋があり、開く部屋には遺跡のブツがあるらしい。
何が有るかはお楽しみだと言う。
今まで4つの部屋は開かなかったので次は5つ目だ。この部屋は開いたので注意しながら中に入ると、そこそこヨレヨレのワーウルフが居た。俺の【エナジードレイン】が相当効いているのだ。俺たちに一応歯向かおうとしたが、アシュのおっちゃんに一刀両断にされた。すると吸収されたワーウルフの魔石と共に遺跡のアイテムが出てくる。
出てきたのは俺のと似た感じのガントレットだった。
アシュのおっちゃんは「デュラハンの盾は見た目がカッコ悪い」と謎の判断基準を持ち出して来た。それで装備しようとしなかったので、仕方無く俺が背中のランドセルに取り付けたのだ。
しかし流石にこのガントレットは装備させた。大剣を扱うには必要な装備だろうからね。最悪盾がわりにもなるだろう。どうやらアシュのおっちゃんはガントレットは気に入った様だった。
次の部屋にはオーガが居たがコイツはまだ少し動ける様だった。アシュのおっちゃんとやり合ってる隙に『隠密』を発動して後ろに回り込んで『溶岩弾』を5発連射でぶち込んでやるとぶっ倒れた。
この部屋で出たのはチェストアーマーだったのでアシュのおっちゃんに装備させた。コレもガントレットと同様に不思議と抵抗せずに装備した……何でや?その基準が分からんのよ……。
その後は7部屋が開かなかったので、そろそろ終わりにしようかと思ったその時、行き止まりになってしまった。
「あれ?おかしいなあ……この先に魔物の反応があるのに……」
「確かに…隠し扉なのか?」
アシュのおっちゃんと俺は色々と探してみるが何も見つからない。ついてきていた村人達が俺たちを生温い目で見ながら座ったその時
「あっ!!」
村人の一人が手をついた場所が沈んでいく。すると扉が浮き出てきた。
「コレは……中々手の込んだ事だな。前にもこんな事があったが、その時は開かなかったんだよな……」
俺はおっちゃんの言葉を聞きながら扉に手をかける…開いた…俺はすかさず『隠密』を発動して、アシュのおっちゃんは大剣を構える。中はかなり広くなっており、まるで謁見室の様になっている。その先の方に階段が何段かありその上に大きな椅子がある。
その大きな椅子に座っている者から漏れ出てる魔力はかなり……いや物凄くヤバい感じだ……背中に嫌な汗が吹き出て来た。俺は咄嗟に扉を閉めながら「間違えました……失礼しま〜す」と言うとその椅子の主がこう言った。
《何もせずに帰るとは非礼では無いか。少しは我を楽しませろ》
その声を聞いた途端、俺とアシュのおっちゃんが扉の中に吸い込まれる!!当然の事ながら扉は閉まってしまう。そいつは俺を見ながらこう言った。
《ほう…小僧、貴様がその二つの“玉”で吸い上げていた者か。中々やるのう…フフフ…》
コイツは俺の『魔力玉』と『生命玉』が見えてるって事か…厄介だな。しかも俺の【エナジードレイン】が全く効いてない。アシュのおっちゃんは何を勘違いしたか下の方を押さえている…そっちの玉じゃねーよ!!
「まさか喋れる事も驚きだけど、俺のコレも見えてるとは驚くね」
《フフフ…遺跡の者の中にも知識を持ち言葉を喋れる者が事を知らなかったのか?お前達も“ネームド”の存在くらいは知って居るであろうよ》
はぁ??“ネームド”は喋れる魔物が落とすのか?アシュのおっちゃんを見ると頷いてるし…マジかよ…知ってるなら早く言ってよ……。
「じゃあ……貴方を倒せば“ネームド”が手に入る訳ですね?バンパイアのおっちゃん」
《!!……ほう、小僧は気づいておったか。左様、我がバンパイアの王である。お前達、名を名乗ると良いぞ》
「俺はラダル、そっちはアシュのおっちゃんだ」
何かアシュのおっちゃんがズッコケたけど何でや?
何故コイツがバンパイアだと思ったかと言うと、俺の【エナジードレイン】が効かない事と喋れる事、人の様な顔形である…等々で闇属性の上位の魔物だと考え、コイツはバンパイアだと判断したのだ。まさか王だとは思わなかったが……。
《うむ、ラダルとアシュのおっちゃんだな?我こそは【血の眷属の始祖】たるバンパイアロード、レブル=ラー=ノーチラスである》
「おーい!!おっちゃんは余計だ!!アシュトレイだ!!」
《む……アシュトレイか……うむ、分かったぞ。さあ、ラダルとアシュトレイ、そろそろ宴を始めようではないか!》
レブルはいきなり俺の傍にやってきて真っ赤な剣を俺に振るいながらアシュのおっちゃんに炎魔法を無詠唱で叩きつける!
オレは金槌で受けながら無詠唱で『溶岩弾』を連射で打ち込みながら『陽炎』を発動させる。アシュのおっちゃんは炎魔法を遺跡の大剣で弾き返しながらレブルに大剣を振り下ろす!
しかしレブルはそれを綺麗に受け流しながら俺の『溶岩弾』を華麗な体捌きで避けていく……まるで中国雑技団みたいだ……。俺とアシュのおっちゃんは一気にレブルに迫り、大剣と金槌を振るうが真っ赤な剣で大剣を受け流しながら俺の攻撃を避ける。俺はすかさず【暴走する理力のスペクターワンド】を左手に構えて『溶岩弾』を連射すると避け切れずにレブルの身体に当たった……が、その傷は直ぐに再生して行く……。
《ほう……“ネームド”を所持していたのか……それは……ほう、スペクターが殺られてたのか……馬鹿なヤツよ……。しかしラダルよ、お前はまだまだソレを使いこなせてない様だがな……クックック……》
な、なにぃ……使いこなせてないだと??俺はかなりイイ線いってる気がしてたのに……。
《どうした?まさかその程度で“ネームド”を使いこなせていると思って居たのか?それはどう考えても愚か過ぎるぞ。その“ネームド”は『暴走する』とある、暴走させられもしないお前が使いこなせてる訳も無いだろうに》
う、うそーん……マジかよ……暴走させないように色々頑張ったのに、むしろ暴走させる事がこのワンドを使いこなせてる証だったとは……。
《フフフ……だが気に入られては居るようだな……いずれは使いこなせていただろうに。我と出会ったのはちと運が悪かったのう》
なんて奴だ……これ程やばい気がするのは初めてだ。だが何か引っかかって仕方が無い……何がだ??
レブルが赤い剣で俺に攻撃して来るのを金槌で食い止めながら無詠唱で『溶岩弾』を近距離で撃ち込むがコレもまたヒラリと身を捻って躱した。だがアシュのおっちゃんはそれを待っていた様に大剣でレブルに斬り掛かると流石に避け切れずに右腕を落とされた。
《ふむ、そのタイミングで踏み込んで来たか。中々やるのう…だが身を斬れ無かったのは些か甘いな》
落ちた右腕が消滅すると同時に右腕が生えて来た。こんな超再生能力もあるとは……面倒な奴だ。
俺は戦い続けながらも引っかかっている事の正体を考える……そしてその違和感の可能性を試す事にする。俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を左手に構えて、奴の座っていた玉座に向かって『溶岩砲』を撃ち込んだ!すると玉座の前に展開していた魔法障壁の様な物が砕け散った。
それを見て驚いた表情のレブル。
そして俺は金槌を構えてその玉座に向かって走り出す。アシュのおっちゃんは「行かせねぇよ!!」とレブルをガッチリブロックしてくれていた。
金槌を振り下ろしながら魔力を一気に入れ込んだ!!玉座が砕け散ると同時に玉座の後ろの壁が無くなりその壁の向こう側が見えた……。
コレが俺の引っかかっていた違和感の正体……全体的な魔素量とこの部屋の体積が合わない事…つまり隠し部屋があると言う事だったのである。
そしてその壁の向こう側には八方から鎖が伸びて、宙に浮く十字架に貼り付けられた白骨がこちらを見ていたのである。
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