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転生魔法兵ラダルは魔力が少ない!だから俺に魔力を分けてくれ!!  作者: 鬼戸アキラ
第二章 魔法兵ラダルの東遊記
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言葉と大蛇狩りと旅への出発

ラダルが村で過ごした日々の物語です。

アシュのおっちゃんに連れられて1時間程でジャングルを抜けて、その後30分程でアムトレ村に着いた。そこは思っていたよりも大きな村だった。

村に着いた俺はアシュのおっちゃんに連れられて、早速村長さんの所に連れて行かれるが…言葉が全く通じねぇ…嘘だろ……。

戦いの最中にアシュのおっちゃんと言葉が通じたので全く気にしてなかったんだよなぁ……。

アシュのおっちゃんに「何で俺に通じる向こうの言葉で話しかけたんだ?」と聞くと「攻撃魔法の質が違うから」と言っていた。そんな違いを瞬時に判断してたのか……マジかよ……。

とにかく言葉が通じる様になるまではこの村からは出れないな…。まあ、アシュのおっちゃんが居るから教えて貰いながら覚えるとしよう……アシュのおっちゃんに頼むと二つ返事で引き受けてくれた。ええ人やなぁ……。


俺は村長から滞在を許されてアシュのおっちゃんが泊まってる宿屋を紹介してもらう。

だがここでもマズイ事が判明する…お金だ…俺の持ち金が一切使えないのだ。まあ、そりゃあ言葉も通じねえ場所で向こうの金が通用する訳が無いよなあ。仕方ないのでお金はおっちゃんから借りて、マンティスの鎌やらオーク肉や魔石を売りに行った。

アシュのおっちゃんに完全におんぶに抱っこである……もうホントにヤバい……。


こうして俺はアシュのおっちゃんに言葉と村の事、この大陸や国の事を教えて貰った。

アシュのおっちゃんは向こうでは冒険者をしながら色々な国を旅をしていたと言う。ところが3年ほど前に冒険者として活動していたとある街で出会ったローレシアの男と意気投合し帝国に行く途中、あの森に入り込み誤って転移されて、この村から北西の物凄く遠い場所にある『イーガルト連合国』に飛ばされたらしい。

飛ばされた先で魔物に急襲されて大怪我を負ったが、たまたま狩りに来ていた人に助けられて『イーガルト連合国』の村に連れてこられたと言う。そして苦労して半年ほど掛けてコチラの言葉を覚えてから旅に出たと言う。つまりはアシュのおっちゃんが2年半も旅をしても未だ帰る術も見つかってないという事である。とりあえずはこの地が『イーガルト連合国』の南東にあり、その先東に向かってずっと大陸があるという。『イーガルト連合国』は北西の果ての国と呼ばれていたらしく、それで南東へと向かって旅をして来たらしい。

このアムトレの村は『太陽国ギスダル』の村であるという。魔物を狩る事で生計を立てているアシュのおっちゃんは、この村では結構な有名人で余所者であるにもかかわらず皆に慕われている様だ。

最初こそ村人達にはちょっと警戒されていたらしいけど、アシュのおっちゃんの人となりが分かるようになるにつれ、村人達の警戒心も解けていったと言う。

おかげで俺も村にすぐ馴染む事が出来たよ。こうして俺もアシュのおっちゃんと狩りをしながら村でお世話になる事となった。

この地域の魔物はオークを中心にマンティスとデカいサーペント等が居る。俺は特にオーク肉を得る為にオークを付け狙ってジャングルに入って行った。

オークを倒して村に持って行き肉屋で売るのが俺の仕事。その際に他のオオカミや熊の魔物が獲れると素材屋にも牙や爪を持ち込んだ。

そんな日々の中で言葉も文字も覚えていったのである。



この村に来て3ヶ月程で俺はこの地の言葉と大体の文字を覚えた。これで俺も立派なバイリンガルである。やはり子供である影響なのか覚えが早い。

それに魔力を頭に集中させると記憶力など能力が増す事に気が付いた。それはこの村の役所の人で出納係のポンセという若い人が村一番の天才と呼ばれてると聞いてたのだけど、初めて会った時に頭に魔力を集中させていたのでそれを真似してみたのだ。詳しく聞くとこれをやると計算が早く出来ると小さな頃からやってるらしい。なるほど……それは思い付かなかったよ。確かに頭の処理速度が早くなった気がする。

そしてコレは嬉しい副作用として魔法の発動にも影響を与える事となる。今まで【暴走する理力のスペクターワンド】を使い魔法を撃つ時は魔力の集束に時間がかかっていたのだが、その時間がかなり短縮されたのだ。


俺はこの日もアシュのおっちゃんと分かれて、オークを狩りながらジャングルで薬草を採取していた。狩りばかりではなく、この地の薬草の知識も段々と覚えたり、或いは試したりもした。

この地の薬草料理のレパートリーも少し増えた。この地では根菜類が多くイモなども種類豊富である為、向こうで作れなかった料理も増える事になる。ただし穀物系が少ないので、ストックはあるもののそちらは懐かしく思える様になった。

そんな時に俺の感知にデカい魔力が引っかかった…オークジェネラル来たか?

俺は『隠密』を掛けてその場所に向かう…オークじゃない…巨大なヘビの魔物だな。

コレがグランサーペントか?村人からちょくちょく噂は聞いていた…出会ったらすぐ逃げろと。

俺は突然『隠密』を解除して『陽炎』を発動、そのまま【暴走する理力のスペクターワンド】を使って『溶岩弾マグマバレット』を発射した!!

グランサーペントは突然現れた俺に攻撃しようと口を開けて飛びかかる所を狙ったのである。『溶岩弾マグマバレット』は口の中から脳味噌を突き破り頭を貫通した。

それでもグランサーペントの勢いは止まらず、俺に突撃して来たが、『陽炎』の効果で俺の直ぐ右側に逸れて行く。その後何分間かは胴体の動きが中々止まらなかったな。スゲェ生命力だぜ。

さて、倒したはいいのだけど全長20m位は有りそうなデカいのを如何やって持って行くかが問題だ。と言うのも俺の魔導鞄は村人には秘密にしてあるから、オークとかも肉を分けてから持って行ってるのでコイツも捌かないとならん。

とりあえず、皮は綺麗に剝いで牙も抜いて持っていく事にした。肉はある程度持ったら焼いたて埋めた事にでもして魔導鞄の中に入れて置く事にした。皮を剝いで丸めてもかなりデカいし重いしで持って帰るのに苦労したよ。

村に戻ってから、いつも狩った魔物の素材を買ってくれる素材屋のおっちゃんに持って行ったら物凄くビックリていた。


「オイオイ…グランサーペントの皮じゃねぇかよ…良く倒したな…坊主」


「何とかね、牙も有るけど買う?」


「もちろんだ。皮も傷が少ないな…こりゃ良い。牙もまあまあの大きさだ」


「えっ、まあまあって……アレより大きいのもいるの?」


「ああ、滅多に見ないが30mくらいのが競りに出された事が何度かあるぞ。ありゃあ大きくなると手が付けられんからな。狩って来る奴は大体5、6人でパーティー組んでるぜ」


なるほどね…そりゃあ出会ったら逃げろと言う訳だ…俺は買い取りして貰った後、これもまたいつも行く肉屋にオーク肉とサーペントの肉をもって行く。


「おっ、いつものオーク肉か?」


「うん、それとコレも有るんだが…」


と、俺はサーペントの肉の塊を取り出した。


「オイオイ…サーペントの肉じゃねーか!あんちゃんが殺ったのか?」


「もちろん。皮と牙はもう売ってきたよ」


「流石だな!有るだけ買うぞ!全部出しやがれ!」


マジかよ……こんなに喜ばれるならもっと出せば良かったな。残りは燃やしたって言ったらとても残念がってたし。


夜に他の場所で狩りをしてたアシュのおっちゃんが帰って来たからサーペントの肉を少し分けてやった。


「そうか、サーペントを狩ったか…言葉も文字も大丈夫だし…じゃあそろそろ良さそうだな」


「ん?何が?」


「もちろん旅の再開だよ。帰る為のね」


「やった〜!やっと旅に出れる〜!」


苦節3ヶ月…やっと帰る為の旅に出れる事になった。

翌日、仲良くなった宿屋の夫婦に今更のお礼と昨日獲ったサーペントの肉を渡してから、昼前に精算をして宿を後にした。「これを持ってけ」とご主人が二人の弁当を用意してくれていた……ちょっと泣けたな。

その後、世話になった素材屋のオヤジと肉屋のおっちゃんにも挨拶しに行った。

素材屋のオヤジは厳つい顔のクセに意外と涙脆くてさ、おいおい泣いてアシュのおっちゃんに慰められてたよ。

肉屋のおっちゃんは「餞別だ!これ持ってけ!」ってサーペントの肉を渡して来た。コレ俺の売った奴じゃねの!

まあ、人情味溢れる良い人達だったなぁ。

最後に村長の家に挨拶に行き、旅に出るというと『太陽国ギスダル』の州都の一つであるリスカンドルの街までの詳しい道程を教えてくれた。

村長に今まで世話になった御礼にと俺特製の薬草ステーキ用シーズニングとそのレシピを渡すと「道中無事にな。焦ってはいかんぞ」と言って送り出してくれた。

ホントに良い村だったなあ〜流石にもう来る事は無いと思うけど…。

こうして、アシュのおっちゃんと俺は南東に向かい旅に出たのである。




……その後、しばらくしてこの村から『ラダル小僧のシーズニング』という土産物売り出された。

それが行商人を通じて『太陽国ギスダル』の各都市に徐々に広まり、大評判となったアムトレ村が賑わう様になるのだが、それはまた別のお話…。


お読み頂きありがとうございます。

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