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閑話 アシュトレイ、ヘスティアと再会す。

アシュトレイ本編最期の閑話です。

「気をつけてな」


「ああ、色々と世話になったな」


「この位は大した事は無いさ。メンテナンスもボクの仕事だからね」


相変わらずアードリーは聞きなれない言葉を普通に使う……。十三改マークII『SHINOBI』の改造が終わった後も試運転を兼ねて稽古に励んだ。問題無さそうだとの事でそろそろ出立する事にしたのだ。


「後は新兵器だけなんだが……コレは簡単に行きそうも無い。まだまだ掛かりそうだ」


「慌てる事は無いさ。ヤツもあの傷だ……簡単には戻って来れないだろう。恐らくオレ達が生きてる間は出て来れないんじゃないか?」


「まあ、それでも早く作れればそれに越したことは無いからね。それよりも十三の稽古を頼んだよ。戦う毎に記憶が蓄積されて強さを増すはずだからね」


「ああ、それは任せてくれ。何なら十三だけでヤツを仕留められる位まで鍛えるさ」


「フハハハハ!その調子だ!十三、頑張るんだぞ!」


アードリーの言葉に十三改はコクリと頷いた。


「アシュトレイ、コイツを持ってけ」


ドワーフの天才技術者であるリメックがアシュトレイにポーンと投げて渡す。


「……鞘?」


「そうだ。その鞘には仕掛けがしてあるから旅の途中で色々試してみろ」


「……分かった。感謝する」


「な〜に、良いって事よ。次に会う時はまた美味い酒を沢山持ってくればそれでいいぞ」


「フッ……そうか。ではそうしよう」


「僕はこのまま此処で物作りをしているよ。また必ず来る事。良いね?」


「分かってるさ。十三の……めんて?も有るからな」


「そうそう。アシュもわかってきてるね!」


こうしてアードリーとリメック達と別れ、ドワーフの里を出て行った。

軍馬に乗ったオレと十三は途中の街で話を聞き、修行がてら遺跡にも立ち寄った。

その遺跡はどうやら少し前に誰かが入った様で部屋は殆ど開いてなかった。恐らく入った者達がかっさらって行ったのだろう。一番奥の部屋も開かなかったのは残念だった。だが魔物が多かったので修行としてはまあまあかな。


その後、何ヶ月かかけて樹龍国を経て闇龍国へと入ったのだが、闇龍国にも遺跡があると聞き急遽向かう事にした。

街で聞いたその遺跡は『タウロス遺跡』と言う遺跡で、その街では“帰らずの遺跡”などと呼ばれているというのだ。ここ何週間か前にも女の冒険者が、ギルドの依頼で行方不明者を捜しに向かったまま帰って来ていないという。オレは修行には丁度良いと判断して十三とその遺跡に入った。


『タウロス遺跡』は入った者達に方向や認識等を阻害する魔法を掛ける様だった。しかし、オレは全くそれが効かなかった。何故ならリメックがオレに寄越したあの大剣の鞘にはそういった魔法を防ぐ魔法陣が組まれていたからであった。それと十三の改造された眼はかなりの高性能の様で、遺跡に張り巡らされていた罠という罠を全て看破したのだ。

オレと十三は魔物を次々と倒しながら部屋の宝箱を開けて遺跡のアイテムを手に入れていた。そして、最奥の部屋に入った途端にオレ達は何処かに飛ばされた。


「ここは……」


どうやらオレは十三とバラバラに飛ばされた様だ。しかし大きな場所である……コレは遺跡の地下なのか??オレは襲って来る魔物達を【咆哮する龍力のドラゴンバスター】でぶった斬って行く。しばらく進んで行くと何かが戦ってる音が風に乗って聞こえてきた。オレはそのまま音の方へと向かって行く。すると人の物である魔力を感じたので急いで魔物を斬りながら向かっていった。

向かった先では何者かと十三が多数の魔物に取り囲まれながらも何とか善戦しているのが見えた。オレは【咆哮する龍力のドラゴンバスター】に魔力を入れて魔物の群れに解き放った。


「真・古龍の咆哮!!」


群がっていた魔物達を一瞬で吹き飛ばしてやると、体勢が整った十三が魔動銃を取り出して次々と魔物達を殲滅して行った。


「おい!大丈夫か??」


「な、何とか……助かったわ……この子は一体??」


その声を聞いたオレは一瞬何処かで聞いた声だと感じた。


「ソイツは十三、オレの今の相棒さ」


振り返ったその女の顔を見たオレは驚きのあまり固まってしまった。向こうもオレを見て驚いた表情をしている。


「まさか……ヘスティアか?」


「ア……アシュトレイなのか?」


オレはかつての恋人であったヘスティアと再び出逢ったのだ……こんな場所で。


「何でこんな場所に居るんだ!!」


「ギルドの仕事よ。貴方こそどうして……」


「オレと十三は修行の為だ」


ヘスティアは呆れた様な表情をしている……何故だ??それよりもここから出る事を考えなくては……。


「とりあえず外に出よう。話はそれからだ」


「簡単に言うけど此処は出口が無いの。散々探したのよ」


「そんな馬鹿な……」


「今までは何とか此処に閉じ込められて死んだ冒険者達の遺品を貰いながら戦って居たけど……十三?が来なかったら危なかったわ」


ヘスティア程の実力者が追い詰められたのだからそうなのだろう……このままではオレたちもジリ貧か……。


《アシュトレイ……やっと見つけたの》


そこに現れたのは『眼』であった。


「お前どうやって??」


《遺跡は我の庭みたいな物なの。とにかくさっさとここから出るの》


「いや、ヘスティアだけ先に外に出してくれ。オレと十三は少しここに残って修行する」


《アシュトレイには呆れたの。ヘスティアは我と一緒に来るの》


「えええ??アシュ!?」


すると『眼』はそのままヘスティアと転移した様である。


「コレで良し……さあ十三、修行の時間だ」


十三はコクリと頷いて魔動銃を仕舞うと短刀を抜いて魔物達に飛び込んで行く。オレも【咆哮する龍力のドラゴンバスター】で群がって来る魔物達を次々と斬り倒していった。


それから3時間程の間休み無く魔物達を切り刻みながら自らの剣を研ぎ澄ましてゆく……無心に……更に奥に……。そしてオレは何かを掴んだ気がした。


《アシュトレイ、もういい加減にするの……》


『眼』に叱られたオレと十三は渋々転移をしてヘスティアが待つ遺跡の外に出て来た。


「アシュ!!」


ヘスティアがオレの胸に飛び込んで来た。


「ヘスティア、オレは何か掴めた気がするよ」


「バカ者……死んだらどうするんだ……」


「オレは死なないよ……まだ死ねないんだ。このオレの剣術を未来へ繋げなければならない。そして……未来で待ってるラダルを助けさせなければならんからな」


「えっ?……ラダル??アシュはラダルを知ってるのか??」


「勿論さ、君の事も彼から聞いてる。ラダルはオレの相棒だったのだからね」


それからオレはヘスティアに『眼』と十三を紹介した。そしてオレとヘスティアは一緒に故郷に帰る為にしばらく転移せずに旅を続けた。




◆◆◆◆◆◆◆◆




それから……195年後



「父上……やはり行くのですね」


「無論だ。シンよ……後の事は頼んだぞ」


「はい……初代様の残した『古龍抜刀術』を後の世まで残します」


「うむ。もしワシに何かあった時はこの剣は十三に必ず届けさせる。その時はお前が初代様の御遺言を果たすのだ」


「はい、父上」


「ではな……十三、参るぞ」


十三はコクリと頷きその老人である『剣鬼ラディス』の後について行った。


「お爺様は行かれたのですね……」


「ああ……もう直ぐあの闇聖が蘇る……父上は初代様の意志を継いで死地に向かったのだ。よく見ておけよ……あの背中を……」


「……お爺様……」


アシュトレイとヘスティアの子孫であるシンと息子であるランティスが見守る中、『剣鬼ラディス』は闇聖ゼスを倒す為の旅に出たのである。

アシュトレイが開祖である『古龍抜刀術』は子孫に引き継がれ、闇聖ゼスを倒す為の技を磨き続けて来たのである。中でも初代の生まれ変わりと誉れ高いラディスは【剣鬼】の二つ名を持ち、数多くの剣客達から恐れられていた。


『剣鬼ラディス』はアシュトレイの遺言通りに旅に出た……ラダルが飛ばされてくる200年後から遡る事、五年前の話である。


お読み頂きありがとうございます

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