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閑話 狂った未来視の行方

ロザリアの閑話です。

ロザリアは『眼』の転移で枢機卿である父の屋敷に戻って来た。


《ロザリアは元気を出すの》


『眼』はすっかりと元気を無くしたロザリアを気遣っていた。


「……何も……出来なかった……」


ロザリアは闇聖ゼスとの実力差にショックを受けていた。あの魔人ファブルとの一戦で自信を持っていたロザリアだったが、闇聖ゼスには何一つ通用しなかった事は彼女にとって信じ難い事であったのだ。


《……アレは仕方ないの》


「……ラダルは……」


《ロザリアは主の事を心配しなくて良いの》


「……でも……」


《必ず我が見つけるの》


そう言うと『眼』はそのまま消えてしまった。残されたロザリアが項垂れていると、屋敷からローディアス枢機卿が現れた。


「ロザリア……帰ったか……」


「お父様……」


「帰って早々だが私と教皇様の所に報告に行くぞ」


「……はい」


馬車に乗り込んだローディアスとロザリアは一言も喋らなかった。ローディアスはロザリアの様子から、色々と聞き出してもまともに答えられないだろうと考えたのだ。

教皇の居城に着くと直ぐに教皇の間に通された。そこには教皇と嫡男のハメスが待っていた。


「ローディアス枢機卿、ご苦労様でした。そして……ロザリア、今回は本当に良くやってくれましたね」


「……わ、私は……何も……」


項垂れているロザリアに教皇も流石に次の声を掛けるのを躊躇う。それを察したハメスがロザリアに声を掛けた。


「ロザリア、貴女は何も悪く有りません。今回の戦いは完全に想定外の事が起きています」


「……想定外?」


「はい……本来であればこの戦いで闇聖ゼスは倒せる筈でした。その未来視を私は視たのです……しかし想定外の事が起きて本来加わるはずの二名が加われませんでした……何故なら闇聖ゼスの復活が一年も早まってしまったからなのです」


「……一年……早かった??」


「そうです。私の視た未来視は後一年後に闇聖ゼスと戦うはずの未来視だったのです。ところが闇聖ゼスの復活が一年早まった事で本来加わるはずの十三改とキラがこの戦いに間に合わなかったのです。そしてこの時期に五人が集まって更に修行を積み、その後にキラと十三改が合流する……それが本来の未来視だったのです」


「十三改……確かにアシュトレイの下に居なかった……」


「そう……十三改は現在アードリーとリメックが改造してる最中なのです。そしてキラは……貴女も知る通り『魔強の洞窟』で修行中なのですから」


キラは今から2ヶ月程前に来たる闇聖ゼスとの戦いに必要な力を得る為に『魔強の洞窟』に潜り込み、の最深部にある『魔強の実』を得る為、修行も兼ねての魔獣退治をしてる最中なのだ。


「この時期にアシュトレイの元にラダルがやって来る事で皆が招集されて修行が始まるはずでした。そこでロザリアは更なる強さを得るはずだった……君だけでは無く他の皆もね。だが……一年早まった闇聖ゼスの復活が全てを変化させてしまった……私は貴女が『眼』に連れて行かれたと聞き、てっきり招集されての事だと思っていました。しかしその報告の直後に新たな未来視を視て愕然としました……それがラダルが未来に飛ばされる未来視でした」


「ハメス様、ラダルは……一体どうなってしまうの?」


「それは……分かりません。余りに遠い未来は視る事は叶いません……ですが……」


ハメスは項垂れているロザリアの方に近づきこう言った。


「……ロザリア、貴女は修行を続けるべきです。そしてその光の神子としての光魔法の真髄を弟子に伝えるのです。あのレディスン=ホークランドの様にね」


「レディスン……師匠……」


これ以上は彼女に良くないと判断した教皇はロザリアをそのままローディアス枢機卿と共に下がらせた。そしてロザリアはローディアス枢機卿に連れられて屋敷へと戻って行った。

ロザリア達が下がった後、教皇とハメスは再び話し出す。


「……ハメスよ、アレで良かったのか?」


「はい、今はラダルの未来視を伝えるのは彼女の為になりません」


「そういうものかな?」


「今回の未来視の覆った想定外は恐らく『混沌の闇』による妨害であると考えます。ですから彼女の様な優秀な光魔法の使い手をより多くする事が急務です……それが『混沌の闇』の力を削ぐ唯一の道になりますから……」


「ふむ……しかし……ラダルが未来へ飛ばされた事は飛んでもない想定外であったな」


「まだ彼も力を使いこなせてはいなかったのでしょうね。しかし彼は闇聖ゼスに届きうる刃となった……師匠であるレディスンには本当に頭が下がります」


「……そうであるな。自らの命を賭けてまで反理力を手に入れた……遺跡の件を教えたのは我であるが、何度も本当にアレで良かったのか……自問自答するが答えは出ぬよ……」


「恐らくレディスンは全て納得づくだったでしょう。私と同じ絶望を何度も味わって来たでしょうから……同じ未来視の持ち主として彼の行動は理解出来ます。そして私とは異なりそれを出来る才能が有った……だから私と同じ様にラダルとの出会いは真っ暗闇であった心に光を得たに違いありません……私が救われたのと同じ様に」


同じ未来視の視える者としての苦しみをハメスは知っていたのだ。そういった意味で彼はレディスンの唯一の理解者であった。



一方『魔強の洞窟』の最深部に到達していたキラは、その最後の敵であるヒュードラとの戦いに臨んでいた。同じ超再生の力を持つ者同士の戦いは熾烈を極めた。キラはその戦いの中で自らの爪に炎を纏わせる『炎爪』を会得し、ヒュードラの首を落とし傷口を焼いて超再生を止める事に成功してこの戦いに勝利する。

そして目的であった『魔強の実』を食べる事が出来たのだ。その実は『食べれば魔力が倍増し、他属性を一つ得る』と言う物である。キラは闇属性の魔物なので、他属性を得る事は闇聖ゼスとの戦いに必需であったのだ。

そしてキラが得た属性は炎属性であった。これによりキラが元からスキルとして使えていたブレスや新たなスキルである『炎爪』の威力が爆発的に上がる事となった。更に倒したヒュードラの肉を食べた事により、超再生や毒性の質が更に向上していた。

キラはヒュードラとの戦いの前にラダルが遠くへと飛ばされた事を感じ取っていた……闇属性を失ったラダルの眷族からは外れていたが、魂の部分ではまだ自らの主として繋がっていた為である。だが、キラはその野生の勘で再びラダルに出会える事を確信していた。その為には自らの力を向上させなければならないと本能で感じ取っていたのである。



そして……更に二ヶ月後。

失意のロザリアの下にキラが戻って来た。その魔力の上がり具合と属性を得た事を感じ取ったロザリアはハメスが言った言葉を思い出す。


「そうか……このままじゃダメだよね……」


「ニャアアア!!」


まるでロザリアを叱咤激励する様にキラは鳴き声を上げた。


この後、ロザリアはキラを連れて数々の遺跡や迷宮を攻略しながら自らの光魔法を磨き、新たな魔法を編み出す事となる。そして多くの光属性の持ち主に自らの魔法を伝えながら光魔法の勢力を増やす事に一生を捧げ、『光の神子』として数多くの逸話を残す事となる。

そして……後に彼女を陰から支え続けたハメスと結ばれる事となる。


お読みいただきありがとうございます

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