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閑話 アシュトレイ、アードリーを訪ねる。

しばらく閑話が続きます。

ラダルが未来へと飛ばされた戦いの3ヶ月ほど前……


アシュトレイの庵に突然4m程のゴーレムが現れた。そしてそれが膝を付いた状態から胸の辺りがパカっと開くと、その中から一人の男が降りて来たのだ。


「やあ!アシュ!久しぶりだな!」


「なっ……アードリーなのか……何故ここに?と言うかそのゴーレムは一体?」


ふらりと現れたのはあの魔導具師であるアードリー=ブラムであった。彼は不思議な形をしたゴーレム??の様な物に乗って現れたのだ。


「ああ、実はな……この新型アーマード〇ルーパーの試運転兼ねて、こちらに居るというドワーフの名工のリメック殿に会いに来たのだ」


「あーまーど……何とかと言うのか?それは……ゴーレムでは無いのか?」


「ゴーレムとは違うぞ!私が操縦してるのだからね!言いにくければ『エーティー』と呼ぶと言いぞ」


「それをアードリーが操縦?ほう……」


「どうだ?中々良い出来だろう?コレで魔物も倒してここまで来たのだ」


アードリーは自慢気に胸を張っている。確かに大きくて強そうだが……。


「何の動力で動いているんだ?」


「そりゃあ魔石の魔力さ。但し燃費が悪いからかなりの魔石をストックしなければならない。まあ、魔物を倒しながら補給するし素材も売れれば魔石も購入出来る……自転車操業だけどな!フハハハ!」


「じ、じてんしや?」


「ん?ああ、この世界にはまだ自転車は無かったな。そのうち作るか……」


アードリーが『エーティー』に乗り込んで動きを見せてくれた。意外と動きが早くて力強い……そして動く間に身体の後ろにある穴から石が排出された。どうやら使用済みの魔石の屑が排出されるらしい。確かに燃費?は悪そうだ。


そこに十三改が魔物を狩って帰って来た。十三改は獲物を置くとアードリーに気付いて彼の所に走って行く。


「おお!十三改じゃないか!どうだ?調子が悪い所は無いか?」


十三改は左腕の関節の部分を指さした。実はキラとの戦いで十三改は関節の動きが悪くなっていた様なのだ。アードリーは直ぐに十三改の左腕を取り外し中身を確認する。


「うーん……なるほどね、高速機動に耐えきれず駆動部自体が焼けてるね……魔法陣の書換えと言うよりこりゃあ根本的な問題だなぁ……私の想定よりも増幅した

精霊石の魔力が上回ったのかもしれない」


そう言うと十三改の脚やら身体の中身を点検しだした。


「うむ、やはり他にも多少のダメージが残ってるな……このままだと高速機動をした際に他の部品も壊れる可能性が濃厚だな。アシュ、十三改を連れて行っても構わないか?ドワーフの里で改良をしてみるよ」


「そうか……ならば頼む。十三改、ちゃんと直して貰うんだぞ」


十三改はコクリと頷くとアードリーの『エーティー』とやらの肩に跳び乗った。


「もう少し話すつもりだったが早く直してあげたいからこのまま行くぞ」


そう言って挨拶もソコソコに『エーティー』に乗り込んだアードリーはそのままドワーフの里に向かった。それにしてもあの『エーティー』と言うのは速いな……あの腰を少し降ろした様な状態で足元が少し浮いてそのまま走って行ってしまった。

……そして、十三改は戻らぬままあの闇聖ゼスとの戦いになってしまったのだ。



そして、ラダルが未来へと飛ばされた後、『眼』に「一人でも帰れる」と言うロザリアを説き伏せてギスダルに送り届けさせ、オレとブリジッタ、そしてゴンザレスは闇龍国へと向かって旅をしていた。闇龍国からそのまま船で王国のある大陸へと渡り王国まで帰るつもりだが、途中でオレは二人とは別れ、ドワーフの里にアードリーを訪ねて行く事にする……十三改を引取りに行く為だ。ブリジッタとゴンザレスは旅行がてら王国へと帰るらしい……。

ドワーフの里に着くと早速ドワーフ達から手痛い歓迎を受けたが、何とか里へと入る事が出来た。アードリーの話をしたら突然ドワーフ達の態度が軟化したのには驚いたのだが……アイツは一体何をしてるんだ?

霧の里に入ると例の『エーティー』をドワーフ達が弄ってるのが見えた。何かドワーフ達は楽しそうだな……そんな事を思ってると建物の中からアードリーとリメックが何か話しながら出て来た。


「おい!アードリー!客だぞ!」


アードリーとリメックはオレを見ると急ぎ足でやって来た。


「アシュ!?どうしたんだ?まだ十三改の改造は途中だぞ?」


「アシュトレイ!久しぶりだな!酒はあるのか??」


リメックはいきなり酒の話をして来た……どんだけ酒好きなんだ……。オレは途中の街で購入した酒を10樽ほど出してやった。


「コレは挨拶代わりだ。飲んでくれ」


「おお!こりゃあ良い!」


酒に目が行ってるリメックを尻目にアードリーに声を掛ける。


「実はな……」


オレは闇聖ゼスが復活した事、全く歯が立たなかった事、そしてラダルが現れてオレたちを救ってくれたが未来へ飛ばされた事。深手を負った闇聖ゼスが亜空間に逃げ込んだ事等を話した。


「そうか……今回の戦いには間に合わなかったか……ではラダル君とはもう会えないのだな。また前世の話などしたかったのだが……残念だ」


「済まない……」


「おいおい、アシュが謝る事じゃ無いだろう?それに未来へ飛ばされたのなら『眼』が彼を見つけるさ。それに君の子孫がラダル君を助ければ良いだろう?」


「オレの……子孫……」


「そうだよ。それにだな……十三改ももう少しで新たな駆動部品の試験が終わる。それが終われば組み立てて仕上げてしまえば、十三改も未来に居るラダル君の助けになるはずだ。彼は朽ちる事は無いんだ、時を超えられるからね!」


アードリーの言葉を聞いて少しだけ心が軽くなった気がした。


「そうだ!アシュはココでしばらく過ごせ。十三改が完成したら此処で修行をつけるんだ!」


「修行って……十三改にか?」


「勿論だ!君との修行で蓄積されるデータ……いや情報が十三改を更に強くするからね!そうすればラダル君の役にきっとなるはずだよ! 」


「なるほど……分かった!そうしよう!」


こうしてオレは十三改の改造を霧の里で待つ事にした。その間も五行の修行や剣術の稽古を重ねた。自分が持つ技を誰かに伝えられる様に……。




そして三ヶ月後……アードリーとリメックによる十三改の大幅な改造が完了した。


「うむ、こう言うのは何だが……かなりの自信作じゃな。うん」


「リメック殿のお陰で十三改をここまでに仕上げられました。感謝します」


「いやいや、ワシの技術だけではこの域までは完成させられぬわい。アードリーの知恵が有ってこそじゃ」


十三改は見た目も少々変わってはいるが、大きさは前とほとんど変わらない。しかし中身はまるで別物になっており、各駆動部は抜本的に改造された。特に手足の関節の駆動部は真円の球体になっているという。それに骨格部が吸い付く様に取り付いているが、実際は接着はしておらずその球体上を滑る様に動かされる。それにより摩擦が起きないので熱が発生しないし、高速化に寄与するだけでなく耐久性も格段に向上した。その上関節部は自由自在に動くので人間の動きとは全く別物の動きも可能である。その仕様の変更の為に元来駆動部の熱を魔力変換して予備の魔力として使っていたのを止め、精霊石の魔力を更に増幅させる新たな魔法陣を組み直し、最大魔力量を向上させた。また、高速機動していない際の余剰魔力を貯めて置く『魔力電池』も新たに取り付け、それを精霊石の増幅魔力と同時に使う事でパワーとスピードを一時的に引き上げる『ブースト機動』を新たに取り付けた。引き上がる能力は1分間限定だが約5倍の能力向上である。

更に制御処理装置の更なる高速化を目指し、並列処理用の魔法陣を新たに追加して仮想空間での処理を何個も並列して同時に行える様にさせた。

また、十三改の使う短刀の高周波ブレードに光魔法を付与して闇属性への破壊力を上げた。そして『魔動銃』から射出されるバレットにも光魔法のコーティングがなされる。


「と、まあこの位の改造を施して置いたよ。武器に関しては『魔動銃』以外にもう一つ造る予定なのだが、まだ時間が掛かりそうだから今回は無しだよ」


「……いやいや……コレでも充分じゃないか?」


アシュトレイも若干引くほどの大改造……いや魔改造である。


「十三改から十三改MarkII『SHINOBI』と名乗るが良いよ」


「十三改まーくつーシノビ????」


「うむ、改造した証なのだ!フハハハ!」


相変わらず何を言ってるのか良く分からないのだが、アードリーは自信あり気である。リメックも後ろでウンウンと納得の様子。やはり天才は天才を知るのだろう。


それからオレは十三改MarkII『SHINOBI』と共に動作確認や試運転も兼ねての修行を行った。恐ろしく強くなった十三改MarkII『SHINOBI』との修行はオレ自身にも有益な物になった。


お読み下さりありがとうございます。

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