レブルの箱
最終章の始まりです。
あれから半年が経った……。
俺は今、故郷の村に帰って絶賛リハビリ中である。
何せ突然魔力が無くなってしまったからね……身体強化とか当たり前に使ってた身としてはかなり身体が重くなった気がしますよ。まあ、鍛えてはいたからヒョロヒョロじゃ無いけどね!
気が付いた日から2ヶ月ほどローディアス枢機卿の屋敷で面倒を見てもらった俺は、アシュのおっちゃんに『十三改』を任せる事にした。魔力の無くなった俺にはどう考えてもオーバースペックだからね……。『十三改』には「俺の代わりにアシュのおっちゃんを頼んだぞ」と言うとコクリと頷いた。こっそりと『十三改』の魔導箱にアシュのおっちゃんが大好きな『パンの箱』と『甘露の雫の壺』を入れておいた。アシュのおっちゃんはその何日か後、俺には何も言わずに俺宛ての手紙だけメルローさんな託して『十三改』を連れて旅に出た様だ。手紙には急遽何やら調べる事が出来たらしく、挨拶も出来ずに本当に済まないと書かれていた……。何だよ……アシュのおっちゃんには話したい事が沢山あったのになあ……。旅に出るなら『十三改』の魔導箱に入れておいた二つは役立つだろう。
キラはロザリアに面倒を見てもらう事にした。今の俺ではキラが暴れたらとても手に負えないし、魔力が消えて俺の眷属を離れた今は仲の良いロザリアに面倒を見てもらうのが一番だからだ。ロザリアは快く引き受けてくれたのだが、キラは俺が屋敷を離れるまで傍を離れなかった……。
そして、ロザリアにはもう一つ……俺の【暴走する理力のスペクターワンド】を使って貰う事にした。魔力を失った俺には無用の長物であるからだ。「俺の代わりだと思って大切にしてくれ」と言うと「し、仕方ないわね!」と素直に受け取ってくれた。大事そうに抱いていたので気に入った様だ……ロザリアなら間違い無くこのワンドを使いこなす事が出来るだろう。ロザリアは“光の神子”としての役割が大きくなるみたいだ。俺が帰った2週間後に『聖なる祠』に修行に入る旅に出る事になった。
俺の遺跡の装備類は魔力が無いと使い物にならないのでゴンザレス隊長とブリジッタさんに全て渡して使って貰う事にした。ゴンザレス隊長は俺の金槌を使う事にしたみたいだ。金棒と金槌の二刀流って事だ……考えるだけでも恐ろしい……。また、遺跡の武具を調べてる時ブリジッタさんに『自在のブーツ』を勧められるとゴンザレス隊長が「お、おう……分かった」とかすんなりと言う事を聞いていて偉く驚いた。しかも、俺がカルディナス領に戻る時に何とブリジッタさんは「アタシも行くわよ」と一緒について来てしまったのだ……。コレにはローディアス枢機卿もロザリアもメルローさんまで唖然としてたが……。
どうやら二人はそう言う事らしい……チッ……リア充は爆発しろ!
そして、俺とパスが切れた『眼』はゴンザレス隊長とブリジッタさんを領都に送り、俺を故郷の村に送った後、何処へともなく姿を消した。何処にいるのかは分からないが新しい主が見つかると良いね。つか、アシュのおっちゃんに主になってもらえば良かったのにさ。
そして俺は故郷の『還らずの谷』で魔物を狩っている。
何故狩りが出来るか?それはこの『魔導ライフル銃』があるからだ。
きっかけはローディアス枢機卿の屋敷に居た時に、あの魔導具師アードリー=ブラムと会う事が出来たのである。俺の予想通り彼は俺と同じ転生者であった。しかもかなりの高学歴の工学博士だったのには驚いた。なるほど……この男なら『十三改』を魔改造してしまったのは仕方無いだろうね。今はあのアホドワーフの郷で巨大ロボットを製作中らしい……「やっぱり巨大ロボットは男のロマンだよねぇ〜」とか言っていた。この人は一体何処に向かってるんだ……?
まあ、色々と話をした後、俺が魔力を失った事で色々大変だろうからと俺の所持していた『魔法銃』を俺の使い勝手に合わせて改造……いや全く別物の魔改造を行ってくれた。改造を決めた時にボソッと「精霊石があれば『十三改』に持たせてるサブマシンガンに出来たんだけどねぇ……」などと物騒な事を言いながら1週間掛けて俺専用に魔改造をした。
俺には使い勝手の良くない射程距離を半分以下に抑える代わりにダイヤルの調節でバレットの威力を変えられる様にした。最大出力でA級位の魔物を射殺出来るくらいの威力を持たせてた……。
そして昼夜兼用の自動照準ナビ付きの魔導スコープを取り付けた。そして、銃身の四分の一程の所が中折れする様になっており、中折れさせ発射するとショットガンの様にバレットが拡散して発射される様な機能も着けてしまった……アードリーはこのまま俺に戦争でもさせたいのだろうか?
しかも、銃身の全てをウロボロスの背骨とミスリルに交換、更に『十三改』に使われてる光学迷彩まで施した……一体何の必要性が有るのだろうか?
新しく着けた銃床に魔石をいくつも詰められる様にして動力源とし、今までよりも魔力の抽出効率を上げたと言っていた。
アードリーは俺にライフル銃を手渡すと満足した様にドワーフの郷に帰って行った。帰り際に「今度会う時はロボットに乗って来るよ!」と言っていたが、なるべくなら関わり合いたくない気がした……。
こうして姿を形も威力も性能も全く別物の魔改造を施された『魔導ライフル銃』を持って『還らずの谷』で魔物を狩っては魔石や素材を集めているのだ。集めた魔石はライフル銃で使うのと『ミスリルの芽の鉢』に与えてミスリルを作らせている。それを集めたらクロイフさんに引き取ってもらう予定だ。
その日も『還らずの谷』で狩りに行く前にふと壁に掛けられたランドセルを取ろうとした時に、棚の上に置いてある魔導鞄が目に入った。こちらに帰って来た時にランドセルから取り出して棚の上に置いておいたのだ。
(そう言えば……帰ってから魔導鞄の中身をチェックして無かったな……)
俺は狩りが終わってから家で魔導鞄の整理をする事にした。
狩りから帰宅し、いつもの様に家族五人でワイワイガヤガヤと飯を食ったその夜、俺は魔導鞄の中身を色々と取り出していた。武具類で使えそうなのが何点か有ったりして後は売りに出そうと思って整理をしてると、あの“読めない導書”と最後に箱が出てきた。
(コレは……ああ……レブルの箱かぁ)
そう、封印がされていたあの謎の箱である。俺はすっかり忘れてたのだが、アレから何も触ってなかったのだ。封印が解けないと中身も見れないしなぁ……。
だが、その時パカッと箱が開いてしまった……いつの間にか封印が解けて居たのだ……一体何時解けたんだ??
確か……魔人を倒すのが条件だったな……あっ、そうか!リルブルか!俺はいつの間にか封印を解く条件を満たしていたのだ。もうアホかと……。
改めて中身を見てみると蒼っぽい六角の鉛筆の様な形の棒が出て来た……何だこりゃあ??ミスリルとは明らかに違う金属で出来ており、何やらびっしりと文字らしき物が彫り込んである……。
その箱の中には小さな羊革紙が入っておりそれを見てみると文字が書いてある……。
『忌まわしき反理力の極芯也』
と書いてあった。
誰が書いたのか解らないが何となく不思議とこれはレブルの書いたものでは無いか?という風に思えた。あの魔人が忌わしいと書くほどのブツなのだろうか?俺がそれを取り出す時に一回だけ蒼く光った。その後は何をどうしても何も起こらなかった。
気になったのだが生憎と『眼』はもう居ない……仕方ないのでクロイフさんにでも鑑定を頼むとしようかと考えた。俺は箱に入れようとしたが、何故か持たなくてはいけない気かして、その鉛筆モドキを持ち歩く事にした。後で考えると何故その様な事をしたのか理解出来ないが、その時はそれが当たり前の様に動いてしまっていた。
それからさらに3ヶ月が経った。
その日も俺は狩りをしていた。そして、還らずの谷で飯を作って居ると誰かがやって来る。森の木々の木漏れ日がその男の姿を写す……まさか……何故この人が……??
「いやぁ、ラダル君。久しぶりだねぇ〜」
その男は紛うことなき我が師匠、レディスン=ホークランドその人であった。
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