表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/160

魔法兵としての終焉

遂に決着の時来たる。

《お前は信用ならないの》


《あら、妾を信用しないならそれでも良いのだけど……その代わりあの者達……死ぬわよ》


《……困ったの》


《そんな足りない頭でいくら考えてもどうにもならないわよ?》


《我はお前よりは優秀なの》


《何を言うかと思えば……妾に出し抜かれてばかりのクセに……フフフ……》


《それはタマタマ運が良かっただけなの》


《運も実力の内なのよ。さあどうするの?》


《……困ったの》



『眼』が悩んでいる間にも状況は刻々と変化していた。

更に闇聖の魔力を引き上げたラダルに対してゴンザレスは金棒を振るい続けていた。ラダルの攻撃を浴びながらも金棒を振るい続けるその姿は正に鬼神であった。

一見して無駄かと思われるその愚直な攻撃だが、実は闇聖の魔力を徐々にだが削り取っていたのだ。


『鬱陶しい奴め……』


そこにアシュトレイの攻撃が加わった。そのゴンザレスの愚直な攻撃でラダルに隙が出来て来たのだ。アシュトレイの【咆哮する龍力のドラゴンバスター】は確実にラダルの身体にダメージを与え生命玉を削り取って行く。


「【極光光線(オーロラビーム)】」


ロザリアもラダルの攻撃を避けながら【聖光】の攻撃を当てて闇聖の魔力を削り取っていた。しかし、ここに来てロザリアの消耗が激しくなって来た。エナジードレインの効果が年齢の低いロザリアに効いてきてるのだ。

それを見ていたブリジッタはキラが『十三改』に気を取られてる隙を見てはラダルに攻撃を仕掛けていた。ロザリアの負担を少しでも減らす為である。しかし、それはブリジッタ自身の負担を増していた。そしてそれは攻撃の際に隙となって現れた。ブリジッタの踏み込みが浅く体勢を崩してしまったのだ。その隙をラダルが見逃すはずも無い……ブリジッタに紫色の光線が迫る。ブリジッタは目を閉じた……。


「おい……無理すんじゃねえぜ。イイ女が台無しじゃねーか」


ブリジッタの目の前に大きな男が割って入っていた……ゴンザレスが盾になりブリジッタへの攻撃を受け止めたのだ。


「あ……ありがとう……」


「気にすんな……それよりあの嬢ちゃんを頼むぜ」


ブリジッタはゴンザレスの傍を離れてロザリアの元に向かった。


「ロザリア!」


「こ、このくらい平気よ!」


ロザリアは強がっているがかなり不味い状況である。

その時突然アシュトレイのギヤが上がった!アシュトレイはブーストを掛けたのだ。それに呼応する様に【咆哮する龍力のドラゴンバスター】の魔力が引き上げられてゆく。ラダルも金槌で対応しようとしているが、アシュトレイの攻撃はそれを上回る。


「やるじゃねーか!じゃあ俺ももう一段上げるぜ!」


ゴンザレスもアシュトレイのブーストに呼応するかの如く自らの魔力を引き上げる。あの『魔神』ゾード=ラル=ダルムとの一騎打ちの時の様に……。


それでもまだラダルには余裕があった。それだけエナジードレインの効力が強かったのである。



《ほら、もう危なそうよ?早くしないと本当にマズイわよ?》


丸い『眼』が『眼』を急かす。

当然の事ながら丸い『眼』には狙いがある。その為には何としてもラダルを……いや、ザ・コアを倒す必要があるのだ。それに感づいている『眼』は中々判断出来ずにいたのだ。しかしながらもう時間は無い……このままラダルをザ・コアの傀儡にさせる訳にはいかなかった。


《仕方無いの……やるの》


《フフフ……やっと決心したのね?じゃあ行くわよ……転移眼!!》


すると『眼』がラダルの頭の上に突然現れた!驚く四人とラダル。


《これで最期なの!縛破眼!!》


するとラダルの身体から紫色の三つの玉が引きづり出される。


『グォオオ!!何故身体から!?コレは??』


《今なの!アシュトレイ、ロザリア、ゴンザレス!!》


その声にゴンザレスは右にある玉……生命玉に金棒を振り下ろす。


「ウラァァァァァ!!」


生命玉が破裂して消えて無くなる。


ロザリアは魔力を【神光】まで引き上げて魔法を放つ!


「【太陽光線(デル・ソル)】!!」


その光は魔力玉を貫いた。そして魔力玉が消えて無くなった。


そして最期の一撃……アシュトレイの【咆哮する龍力のドラゴンバスター】が【ザ・コア】に突き入れられた!!


「真、古龍の咆哮!!」


ザ・コアに突き入れられた剣先から更に神聖魔法の魔力が発射された。


『ギィヤヤアアア!!!』


ザ・コアは砕け散った……しかし、その砕ける瞬間に分体を放出していたのである。


(こ、このまま……逃げ切れれば……依代はまた探せば良い……)


だが、それを見逃さなかったのはブリジッタであった。【風雷】でレイピアの突きを放つとザ・コアの分体は姿を現した。それに反応したのはロザリアであった。


「【太陽電離(ソル・プラズマ)】」


幾重にも【太陽光線(デル・ソル)】が反射してザ・コアの分体を貫き通しながら反射し続ける。


(何が……何が間違えて……我は……最強を……)


ザ・コアの分体が完全に消え去った時に大量の魂がとある方向に向かって行った。


《フフフ……それじゃあまたね。次は妾の主に対面させてあげる……》


丸い『眼』はそのまま消えた。


「ラダル!しっかりしろ!」


残され倒れていたラダルをアシュトレイが抱き起こした。するとラダルがゆっくりと目を覚ました。


「ラダル!」


「あ、アシュの……おっちゃん……」


そのままラダルはまた気を失った。その時ブリジッタは何かに気付いた。


「こ、これって……ラダル君……魔力が……」


すると『眼』が静かに答えた。


《そうなの。主の魔力は消えて無くなったの……》



◆◆◆◆◆◆◆◆



丸い『眼』は火山の真上に転移していた。

沢山の魂が火口の中に入って行く……。

しばらくして全てが魂が火口の中に入り終わると何かが切り替わった様な感覚がして、その後火口のマグマの表面に石棺が浮いて来た。

そしてその石棺がゆっくりと開いた。


《お待ちしておりました……我が主》


『……うむ……長かったな……』


《今のご気分は如何でしょうか?》


『まだ完全に馴染んではおらぬ……しばらくはまた休息が必要だ……』


《ではどちらかに移りますか?》


『……いや、このまま此処に居よう……此処ならば誰にも邪魔されまい……』


《畏まりました……御目覚めになられたらいつでもお呼びくださいませ》


『うむ、良きに計らえ……』


そのまま石棺は閉まりマグマの中に沈んでゆく……。


《おやすみなさいませ……闇聖ゼス様……》


そして丸い『眼』も何処へともなく姿を消した……。



◆◆◆◆◆◆◆



俺はあの後三日ほど寝ていたようだ。起きた時には枢機卿の屋敷に寝かされていた。

あの闇の扉を開けた瞬間から俺の記憶は何も無かった。

アシュのおっちゃんやロザリア、ブリジッタさん……それにまさかのゴンザレス隊長が居たのには驚いたよ!

それから色々と話を聞いて本当に皆に詫びたよ。だけどローディアス枢機卿は驚愕の事実を告げた。


「全ては教皇様の神託の通りだった」


オイオイ……マジかよ……それはアシュのおっちゃんも選択肢のひとつとして聞いていたらしい。その未来を変える為にアシュのおっちゃんは神聖魔法を習ったり、レディスン師匠と色々行動したりしていたのだという。

本当にアシュのおっちゃんには申し訳無かったよ。そしてレディスン師匠も……。そのレディスン師匠はあのファブルを倒した後、ブリジッタさんの元パーティーメンバーを連れて【カノッサス大迷宮】に向かったのだと言う。レディスン師匠には師匠なりの理由が有るのだろう……俺は無事を祈るばかりである。

オレの魂がザ・コアに乗っ取られなかったのは懐に入れていた精霊の短剣が護ってくれたかららしい。


ゴンザレス隊長には「テメェは何で余計な真似してやがんだ!」とアイアンクローを掛けられるし、ロザリアには「アンタ馬鹿じゃないの!」と泣きながら叱られた。ブリジッタさんはそんな二人を見ながらヤレヤレと言った感じだったよ……とほほ……。


オレがザ・コアの呪縛から離れた後、俺の眷属を離れたキラは正気を取り戻して猫の姿に戻っていた。今はロザリアに抱かれて眠っている。キラにも悪い事をしたなぁ……。

それにしても『十三』いや、『十三改』の改造がえげつない……一体何処に向かってるんだ……?



そして、皆が居なくなった後……改めて俺はこう思ったんだ。



「魔力が無くなっちゃったんだなぁ……」



そして……



「そっか……俺、魔法兵じゃあ無くなっちゃったんだ……」



と……。


お読み頂きありがとうございます。

これにてこの章は最終話になります。

次章がラストになります。

宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ