懐かしい仲間たち
アシュトレイが『眼』と一緒に仲間たちを集めます。
『十三』の破壊された部品を拾い集めながらオレは『眼』に話し掛けた。
「あのラダルの変わり様は尋常ではない……一体アレは何なのだ?」
《アレは闇聖の魔力そのものを身に纏った姿なの》
「闇聖の魔力……」
《間違いなく主は究極の六芒星へと進化したの》
「進化……だって?」
《アレになった以上アシュトレイだけでは主を止められなくなったの》
「……では……オレはどうしたら良いのだ?」
《『光の神子』と『赤い鬼』の力を借りるの》
「『光の神子』と『赤い鬼』?それは一体何者なんだ?」
《『光の神子』はアシュトレイも良く知る人物なの。『赤い鬼』は主が良く知る人物なの》
「オレの良く知る人物?」
《破片を集めたら直ぐに転移するの。向こうで待っているの》
オレは良く理解しないまま『十三』の破片を集めて魔導袋に仕舞った。本体の『十三』も既に魔導袋に入れてある。もし行けたらドワーフのリメックに修理を頼むとするか……。
《『十三』の事は考えているの。とにかく今は『光の神子』に会いに行くの》
そう言って『眼』はオレとコチラに戻って来てくれた軍馬を一緒に転移させた。
転移した先は……見覚えのある建物……此処は聖都の……。
「アシュトレイ!!」
声を掛けてきたのはロザリアであった。ブリジッタも傍に居る。
「ロザリア?!……ブリジッタ……?!」
《『光の神子』はロザリアの事なの》
そうだったのか!しかも別れた時よりも二人共に驚く程の変わり様である。コレは恐らくレディスンの仕業であろう。
「そうか……レディスンに五行の修行を受けたのだな?」
「そうよ。大分見違えたでしょう?」
「ああ、魔力の質が別物だな……ロザリアはその上を行ってる」
ロザリアはオレの側までやって来た。
「アシュトレイもかなり強くなってるわね!」
「ロザリアはレディスンに似た雰囲気だな。やはり光魔法はレディスンに任せて正解だったんだな……ところでレディスンは?」
「それが……」
ロザリアはちょっと困った様な顔をした。するとブリジッタが助け舟を出す様に話し出す。
「実は私達五名でファブルを倒したのだけど……その後レディスンは他の2名を引き連れて『カノッテス大迷宮』に向かったの」
「なっ……ファブルを倒したのか??そうか……しかし、『カノッテス大迷宮』とは妙な話だな……レディスンは何を考えているのか……」
「結局何も分からずにレディスンに此処に帰るように言われて帰って来たのだけど……アシュトレイは一体どうやって来たの?」
《我が転移眼で連れて来たの》
「転移って……そんな便利な力があったの?」
《向こうで鍵を手に入れたの。だから力が戻ったの》
「ふーん……何か『眼』ちゃんも凄いね」
そう言ってブリジッタは『眼』を褒めていた。
《ブリジッタも雷の理を理解して強くなったの。【ネームド】も喜んでいるの》
「本当?それなら良かったわ!」
ブリジッタは喜びもソコソコにオレに向かって再び話し出す。
「ラダル君の件は聞いてるわ。一体どうなっているの?」
オレはラダルが闇の扉を開いて破滅の五芒星に闇堕ちした事、キラはラダルと一緒にいる事、更にオレとの闘いで進化して究極の六芒星になり、丸い『眼』と共に転移して逃げた事を話した。もちろん、オレを庇って壊れた『十三』の話もしている。
ブリジッタとロザリアはある程度事情は理解していた様子であったが、更に進化した話は驚いた様子だった。
「それじゃあ『光の神子』のロザリアの力が必要なのね?でもアタシも一緒に行くわよ」
「うむ、それは助かる。でも……良いのか?」
「もちろんよ。闇の御子を倒すのは我々のエーカル教徒の使命でもあるのよ。それが仲間なら尚更よ……必ずラダル君の目を覚まさせて見せるわ」
「だがラダルは全く手加減はせぬぞ。オレたちを殺しに来る。それでも大丈夫なのか?」
「当たり前じゃないの!もしラダルを倒すなら……それは私の役目よ!!」
ロザリアは真っ直ぐにオレの方を見てそう言った。事情を知ってたとは言え覚悟をするには相当葛藤があったのだろうな。
「それならば分かった。改めて宜しく頼むよ」
こうしてオレたちはまたパーティーを組む事になった。
「さて、次は『赤い鬼』だな?」
「『赤い鬼』?」
「ああ、ラダルの知り合いらしいのだが……カルディナス軍に居た頃の知り合いなのか?」
《そこに行く前に寄る所があるの》
「寄る所?」
《もう一人、アシュトレイの知り合いの元に向かうの》
「オレの知り合いだって?一体ソレは?」
《とにかく転移するの。ロザリアとブリジッタは旅の準備をして待ってて欲しいの。軍馬の方も頼むの》
「分かったわ!!早く戻って来るのよ!」
《わかったの》
オレは何が何やら分からずに転移をする。
……此処は……何処だ??
転移したのはどうやら地下牢の様な場所だな……。
奥の牢屋に人の気配がする……閉じ込められているのか?囚人なのだろうか?オレは首狩りの大剣を抜いて、その気配のする方に向かった……するとそちらから声がする。
「……誰か居るのか?……」
オレはその声に聞き覚えがあった……誰だ?……まさか……。
「お前……アードリーか??」
「……フフフ……どうやら死んだ奴の声まで聞こえて来るとは……俺ももう長く無さそうだな……」
オレはその声のする方に向かった。牢屋の中に痩せこけで髭が伸びた男が座っていた。
「おい!アードリー!お前どうしたんだ?」
「うわあああ!出たあ!!!」
アードリーは腰が抜けるほど驚いた様な顔をしてオレを凝視している。オレはとりあえず牢屋を壊す事にした。
「ちょっと待ってろよ。今助けてやる」
首狩りの大剣で檻を斬って蹴破った。
「……まさか……本物なのか??アシュトレイ!生きていたのか??」
「ああ、何とか生きていたさ。お前こそどうして閉じ込められてるんだ?帝国の魔導具師になったんじゃ無いのか?」
アードリーが話すにはどうやらカリードと言う奴に騙されて此処に幽閉されていた様だ。それならば早く助けるとしよう。
《さあ、早くアードリーを連れて逃げるの》
「おい!『眼』転移は?」
《少しチャージの時間が要るの》
「……おいおい嘘だろ……」
とりあえずオレはアードリーに水と回復薬を渡す。飲んでる間に魔導袋から『十三』が使っていた魔法銃を取り出してアードリーに手渡した。
「コレは……俺が設計した魔法銃か?それにしては何か違う気が……しかも軽い……」
「ウロボロスの背骨で改造されてるからな。精霊石が入ってるから魔力は尽きない。好きなだけ撃てるぞ」
「な、な、なっ!?ウロボロスだと??そんな貴重な物を一体どうやって……??」
「話は後だ!とにかく逃げるぞ!」
「お、おう……」
オレたちは地下の通路を通り抜け、上に昇る階段で1階に出た。すると兵士達が此方にやってきた。
「何者だ!?ソイツは……!!」
オレは首狩りの大剣で兵士達を斬り倒して行く。次に現れた兵士は魔法銃の様な物を構えていた。
「撃て!!」
魔法銃からバレットが飛んで来る!!オレは首狩りの大剣でそれらを叩き斬った。すると兵士達が次々と倒れていく……後ろから来たアードリーが魔法銃で倒した様である。
「うむ……中々の威力だな!流石はオレの設計だ!」
「感心してる場合じゃ無いぞ!直ぐに逃げよう!」
「騒がしいぞ!!何事だ!!」
そう言う声が聞こえてそちらを見ると2階から派手な衣装の男がやって来た……何者だ?
するとアードリーがその男にバレットを撃ち込んだ!男が左足を付け根辺りから撃たれて階段から転げ落ちて倒れている。威力が強いので左足が吹き飛んでいた。
「グオオオオ……アードリーイイイ!貴様ァァァ!」
「カリード!よくも騙した挙句に閉じ込めてくれたな!コレはその礼だ!」
今度は小さな魔法銃を持っていたカリードの右腕を撃った。吹き飛ぶ右腕……普通の人間に撃つとホントに凄い威力だな……。
「ギャアアア!!!」
アードリーはのたうち回ってるカリードを見ながら、魔法銃を構えたままで撃ち出さない。
「お前はその痛みを抱えて残りの人生を歩め!オレはお前を簡単に殺してやるほどお人好しじゃ無いぞ!」
オレとアードリーはそのまま屋敷を出て森の方向へと逃げる。そのまましばらく走りながら逃げていると『眼』が話し出した。
《待たせたの。やっとチャージが出来たの》
オレとアードリーはそのまま聖都へと転移した。
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