ラダルの行方
樹龍国でラダルの行方を探す途中です。
オレがラダルを倒すと決心したのを見てミコト様は『十三』に話し掛ける。
《そこに居るオートマタにも力を授けましょう。その魔導具の筒を此方に……》
すると『十三』は魔法銃を取り出してミコト様の前に持って行った。ミコト様は魔法銃に何やら呪文を掛けている。すると魔法銃が青く光って元に戻った。
《その筒から出るバレットに精霊魔法が付加される様に魔法陣を書き換えました。コレで闇の力に対抗出来るはずですよ。後でカリシャスから精霊石を貰ってその筒にも取りつけなさい。そうすれば精霊魔法の力をより高められるはずです》
「ありがとうございます。ミコト様」
《このくらいでは返せぬ恩義がラダルには有りますから……それでは頼みましたよ》
そのままミコト様の声は聞こえなくなった。どうやら眠りについた様である。
「ミコト様は力を使われて休まれた様だ。さあ、此方に来てくれ……先程ミコト様より言われた物を渡すとしよう 」
オレ達はカリシャスの屋敷まで連れて行かれて客間に通された。そこでしばらく待っているとカリシャスが小さな箱を持って現れた。
「コレが精霊石だ。先程の筒に取り付けると良いぞ」
『十三』は魔法銃を取り出してハマっていた魔石を取り出し、精霊石と交換して取り付ける。『十三』は腹の魔導箱に大事そうに魔法銃をしまい込む。
《カリシャス、世話になったの》
「まさかの事態だが……気を付けて行けよ」
《アシュトレイが居るから大丈夫なの》
「カリシャス殿、色々と感謝します」
「気にするな。全てはミコト様のご意志……それに私も力を貸したいと思っていたからな」
「本当にありがとうございます」
「うむ、上手く事が運ぶ様に祈っておる」
エルフの砦を出てその道すがら『十三』は早速魔法銃を試し撃ちした。バレットの周りにに精霊魔法が付加されてるので闇属性にかなり有効になった様である。また、精霊石であれば魔石と違い魔力が無くならないので、交換する手間も要らないのである。
そのまま軍馬で道を進んでいるとフラフラと道を歩いている男に魔物が襲いかかろうと後ろからやって来てるのが見えた。
そこで『十三』に魔物を狙撃させて間一髪危機を脱した。
男の元に向かうとその男はドワーフであった。
「どうした?大丈夫か??」
「み、水を……」
オレは水を取り出して与えると何とか落ち着いた様である。
「た、助かった……商品を売りに行った帰りに馬車を魔物の集団に襲われてな……他の連中も生きてれば良いんじゃが……」
「とりあえず馬車の所まで案内してくれ。少し探してみよう」
「そ、そうか?それは有難い。あちらの方角じゃ」
オレは『眼』にそちらも方向を探させると12キロ程先に馬車らしき物を発見した。人影も見えると言う。軍馬にドワーフとオレが乗り、『十三』を走らせる。その走っている『十三』を見てそのドワーフは驚いていた。
「おい!そのオートマタは……確か……そうだ、黄龍国に居たドワーフの村のオートマタだ!だが彼処はもう滅んだはずじゃ!」
「そいつらなら山脈の向こう側に居るぞ。そいつらから買ったからな。それで炎龍国のドワーフの長リメックにウロボロスの骨で改造して貰ってる」
「ウロボロスだって??凄いお宝じゃねぇか!!しかし、リメックとは凄い名人の名前が出たな!それならあの性能も納得じゃ!」
馬車らしき場所まで行くと倒れた馬車に二人のドワーフが居て馬車を修理していた様である。
「おお!無事じゃったか!」
「親方も無事で良かったぞ!」
「ふむふむ!!良かった良かった!」
その二人が一緒に乗っていた連中の様だ。その二人も『十三』を見て驚いていた。親方と呼ばれたドワーフが色々と説明をしてたよ。ドワーフ達が馬車を修理してる間、オレは休憩をとった。その内に修理も終わったのでオレの軍馬に馬車を引かせる事にした。
「いやぁ、スマンのう。立派な軍馬じゃから一頭でも軽々と引きおるのう」
「なに、コレも何かの縁だからな。しかし良く魔物から逃げ切ったな」
「おお!あの魔物達はデカい空を飛ぶ怪物を追いかけてた様でな、ワシらには見向きもせんかったわい。ただ、馬が暴れてしまってなぁ……」
「デカい空飛ぶ怪物?」
「そうじゃ、あんな怪物は見た事がない」
どうも要領の得ない話である。とにかくドワーフ達の里まで送り届けてから土龍国に向かうとしよう。恐らくは彼等がリメックが言っていた樹龍国に居るドワーフ達なのだろう。
そのままアラクネの里まで一気に向かったのでドワーフの里へは行けなかったのだ。
四日程行くとドワーフの里に到着した。見知らぬ人間に驚いた様子だったが、三人の話でオレが彼らを助けたと知ると里の長が挨拶をして来た。
「この度は助けて貰って感謝するぞ。何でもリメック殿にも会ったらしいのう」
「ああ、『十三』を改造して貰った。彼には感謝してる」
「うむ。ワシらの同胞が山脈の向こう側に居るとか……もう滅んだとばかり……本当にありがたい情報じゃった。アマモ洞窟は行き来出来るのじゃな?」
「もう大丈夫だ。理の護符が有れば通れるだろう」
「そうか!それならば今度山脈の向こうまで行かせて見るかのう」
オレが話も早々に出て行こうとすると礼をするからと里長が言うので、急ぎの旅だからと丁重に断ろうとすると『十三』の下げてた短刀を見て「その短刀に付与を掛けよう」と持って行ってしまった。
仕方が無いので待つ事三時間ほど……やっと里長が戻って来た。
「付与の魔法陣を入れたからのう。光魔法を付与したから魔物も良く斬れるじゃろう」
「それは助かる。ありがとう」
「何を言うか……礼を言い足りぬくらいじゃよ。ウロボロスの短刀に付与を出来るなど中々無いからのう」
里長から貰った短刀を受け取った『十三』は短刀を何度か振って満足そうに鞘に納めた。
『眼』を探すと馬車の親方の三人と何やら話をしていた。
《アシュトレイ、どうやら魔物が追ってた空飛ぶ怪物はキラかもしれないの》
「何だって??どういう事だ??」
《魔物を引き連れて何処かに向かったの》
「……とりあえず追い掛けるしか無いな」
オレは軍馬に乗ろうとすると軍馬に着けていた鞍が変わっていた。
「ソイツはオレたちからの御礼じゃよ。受け取ってくれい!」
「そうか……有難く受け取る。スマンな」
「何を言うか!もっと礼をしたいくらいじゃ!」
「もう、十分だ。ではそろそろ行くとしよう。さらばだ親方」
「うむ、達者でのう」
オレはドワーフ達と別れてその怪物が向かった方向に向かって軍馬を走らせた。鞍には何か細工がしてあるのか今までとは比べ物にならない程の乗り心地だった。ドワーフの技術は侮れないな。
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