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ファブルの行方

所変わってギスダルのロザリア達の動向です。

アシュトレイが精霊ミコトと話していたその頃、ギスダルの聖都にロザリア、ブリジッタ、レディスンが枢機卿の屋敷に居た。

三人は既に教皇との謁見も済ましていた。ファブルの討伐を報告する為である。そして教皇の命により枢機卿の屋敷でファブルの居場所の報告を待っていたのだ。

コレには理由があって、実は教皇とローディアス枢機卿は兼ねてよりファブルの動向を探らせていたのである。

そして、この日とある男がローディアス枢機卿の屋敷に到着し、メルローが案内をして来た。


「旦那様、マルデウス様がお帰りになられました」


「ローディアス!戻ったぞ!」


「マルデウス、待ち侘びたぞ。早く報告を」


マルデウス……かつてローディアス、ブリジッタ、キャンディーと共に『不死鳥の翼』のパーティーで、『神の盾』の二つ名を持つタンカーであった。彼ともう一人……『氷鬼』の二つ名を持つ氷魔法の魔導師ドンピエールがファブルの動向を探っていたのだ。


「相変わらずせっかちな奴だな。ファブルはやはりアデリーナムの近くに居たぞ」


「アデリーナム……確か、村長による虐殺があった地だな……アレもファブルの仕業か……」


「ああ、恐らくはな。今はドンに張り付かせてる」


「では、早速ブリジッタ達と向かってくれ」


「ブリジッタ達??お前は来ないのか?」


「オレは必要無さそうだ……メルロー、ロザリア達をここに呼べ」


「かしこまりました……」


「オイオイ……お前は正気か??ロザリアちゃんを行かせるつもりかよ!?」


「まあ、会えば解るよ」


しばらくするとロザリア、ブリジッタ、レディスンの三人がメルローに連れて来られやって来た。その二人の変わり様にマルデウスは驚いていた。


「マルデウスのおじ様!久しぶりね!」


「ろ、ロザリアちゃん?こ、これは一体……」


マルデウスは混乱していた。何故ならロザリアの持つ魔力の量だけで無く質がとてつもない事になっていたからである。


「ロザリアは教皇様より既に“光の神子”の認定を受けてるわよ」


「オイオイ……光の神子だと??マジか……いや、この魔力の質はただ事じゃねぇ。それにブリジッタ、お前まで何か偉い事になってるじゃねーか?こりゃあ何がどうなってんだ?」


「それは良い師匠に出会ったお陰かしらね。紹介するわ彼がロザリアと私の師匠レディスンよ」


「お初にお目に掛かります。レディスン=ホークランドです。宜しく」


レディスンを一目見てマルデウスはレディスンの凄さを肌で感じていた。今まで魔人級の奴らともやり合った事のある百戦錬磨の兵であるマルデウスもそのどれよりもずば抜けて凄い魔力だと見抜いたのだ。


「……ああ、俺はマルデウスだ。アンタも飛んでもねぇな……なるほどロザリアちゃんとブリジッタの師匠と言われるだけあるな」


「という事でこの三人に討伐を任せてる。マルデウスは三人の案内と補佐を宜しくな」


「分かった。コレならお前抜きでもファブル討伐は行けそうだぜ」


「そうだろう?三人共、くれぐれも気をつける様にな……相手はあの魔人ファブルだからな」


「パパ!私に任せて!」


「ロザリアは無茶をしてはイカンぞ!」


「ムッ!また子供扱いして!」


「アタシが居るから大丈夫よ。マルデウスも来てくれたしね」


「ん。ロザリアちゃんは俺に任せておけ!」


「お前らはパーティーメンバーだから信頼してるさ。後レディスンも付いてるから万が一も無いだろう。後は任せたぞ」


「全力を尽くします」


「うむ、それと教皇様がレディスンに話があると言っていた。直ぐに来てくれとの事だ」


「教皇様が?……分かりました、直ぐに。皆さんは先に向かってて下さい。後から追い掛けます」


「分かったわ。さあ、行きましょうか」


「師匠も早く来てね!!」


「ああ、分かっていますよ」


ロザリア達はそのまま屋敷を出て行く。レディスンはローディアスと教皇の元に向かった。その馬車の車内でローディアスがレディスンに話を切り出した。


「レディスン、実はな……話と言うのは……」


「ラダルの件ですか?」


「!?、じゃあお前も“視えて”いたのか?」


「ええ、残念ながら……どうやら一つ目の未来視は動いてしまった様ですね……」


「……随分と落ち着いてるじゃねぇか?弟子が闇堕ちしたってぇのに」


「それはアシュトレイ達が何とかしてくれますから全く問題ありません」


「アシュトレイ達??」


「ええ……私はその後の事を考えねばなりません。恐らく教皇様からはその件のお話になるかと……」


「……お前と教皇様には一体何が視えてんだ??」


「もちろん“その先”の事ですよ。コレこそ失敗すると大変な事となりますから……」


こうして教皇との謁見を済ませたレディスンはそのままロザリア達を追いかける事となった。

一方、先に進んでいるロザリア達一行は魔物を倒しながらアデリーナム方面に向かっていた。


「……オイオイ……圧倒的じゃねぇかよ……コレじゃあどっちが守られてるか分からねぇわ……」


マルデウスはロザリアが魔物を一瞬で倒してしまうのを見て驚きを隠せなかった。何せ彼の知っているロザリアは大した魔法を使えなかった可愛いじゃじゃ馬娘だったからである。


「退屈ねぇ……戦闘のし甲斐が無いわ!」


「後でたっぷりとお釣りが来るくらい出来るわよ」


「ふん!ファブルなんて大した事無いんだからね!」


「ロザリアちゃん……アレは舐めて掛かっちゃダメだぞ。ロザリアちゃんでも一人じゃ勝てねぇぞ」


「ロザリア、そこは慎重にね」


「分かってるわよ!」


そんな時だった……瞬間的に三人共に戦闘体勢に入った!かなりの魔力が突然現れたからだ。


「貴様ら……何をしに来たぁ?ああ?」


(この気配は……魔人……いや、眷族か??)


ブリジッタはそう判断した。アイコンタクトでマルデウスと同じ判断だったと解釈した。


「丁度良いわ!アナタは私の相手をしなさい!」


「はぁ??おめえアタマがイカれてるのかぁ?相手とか……?!」


全部言う前にロザリアの『光弾(ライトバレット)』で腕を吹き飛ばされたのだ。


「ごちゃごちゃ言ってないで早く掛かって来なさいよ!」


「こ、このおぉ!!ふざけやがって!!」


瞬間的に腕を再生した眷族はロザリアに剣を振るったがロザリアに避けられる。どんなに振っても当たらない。


「随分と遅いわね!」


それに怒った眷族が突然魔力を引き上げた!スピードが一気に上がり、剣筋が明らかに変わった。しかし、相変わらずロザリアは余裕を持ってそれを躱している。

それは眷族との圧倒的な速度の違いの為である。ロザリアは光速に近い速度で動いているので眷族の動きがスローモーションに見えているのだ。


「この程度ならもう用は無いわ!」


ロザリアは距離を取って眷族に【極光光線(オーロラビーム)】を発射した!その威力は凄まじく眷族を消滅させただけでなくその光線が止まった延長線上の全てを消滅させていた。


「ふん!大した事は無いわね!」


すると後ろの方からロザリアに声が掛かった。


「うむ……【聖光】の制御がまだまだですねぇ、ロザリア……」


「あっ……レディスン師匠……」


「もう少し緻密な制御を心掛けなさい。魔力は有限なのですよ。あの程度の相手だと最初の時点で気付いて居たはずですからね」


「……はい……」


ロザリアはレディスンに指摘されてしょんぼりしていたが、それを見ていたマルデウスは完全に度肝を抜かれていた。


「どう?ロザリアは?」


ブリジッタがマルデウスにニコニコしながら聞いて来た。


「……正直、ここまでだとは思わなかったぜ。末恐ろしいな……あのキャンディーが可愛く見えるな」


「ふふふ……そうね、キャンディーも呆れてるかもねぇ」


ロザリアの亡くなった母親キャンディーとパーティーを組んでいた二人は懐かしんで居るようだった。


「さあ、出発しましょう。眷族が倒されて我々の事を認識してるでしょうからね」


レディスンはそう言って歩を進めた。ファブルとの決戦はすぐそこに迫っていた。


お読み頂きありがとうございます。

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