闇の扉(前編)
三章ラストの前後編です。
「気持ち悪いな……野郎のストーカーなんて真っ平御免だね」
俺はルファトに毒づいたが……コイツの魔力は尋常じゃない。アゼラル将軍の言っていた通りにコイツの魔力は何か質が違う。そうだ、ファブルの魔力に似ているんだ……眷族だからなのか?いや、それだけじゃ無いな……何かドーピングでもやってんのか??
《どうした?ワシがこれ程の魔力を持ったのが不思議なのか?ならば教えてやろう、ワシはファブル様の眷族になった時にアデリーナムの村人全員の魂を奉納したのだよ!この闇龍国でもだ!その度にワシは闇聖様の魔力を頂けるのだ!全ては貴様に復讐する為だ!!》
「なるほどね……借り物の力か。まあその位しないと俺に勝てないだろうからね」
《何の力であろうが貴様を殺す為なら何でもやるさ……》
ルファトは先制攻撃をして来たが、アシュのおっちゃんが『首狩りの大剣』でルファトの放った闇魔法の氷柱を斬った!
「今度はオレも相手になってやる」
《お前は……確かアシュトレイ……デュラハンスレイヤー二人なら相手にとって不足無しだ》
そう言ったルファトはまた闇魔法の氷柱を発射したが、それはザルスの『引力と斥力の壺』に吸い込まれる。
「オレもいるんだがな……」
《貴様は月影の魔術師か?聞いているぞ、シウハの手先だったな?護衛もせずにノコノコとココに来るなど馬鹿なヤツよ》
「ココが勝負所だと思ってな……貴様を倒せばこの戦いは終わるだろ?」
《フハハハ!!ワシを倒せるとでも思って居るのか?目出度いヤツめ……まあ、仮にワシを倒せたとしてもファブル様が未だいらっしゃる。そして必ずココに戻ってお前達を討ち果たすであろう》
「いや、それは無いよ。ファブルはロザリアとブリジッタさん……そしてレディスン師匠が向こうで必ず倒してくれるはずだからね。こちらはお前を倒せば終わりだよ。何せロザリアとレディスン師匠は光魔法の天才だからね!」
《……ならば余計に貴様らを早く倒し、そ奴らを殺しに行かねばな!!》
すると突然にルファトの魔力が巨大になる!圧倒的な魔力である。
俺とアシュのおっちゃんは【ブースト】を発動する!!ザルスは何やら金環の様なものを頭に装着すると闇属性の深度が深くなる!!
俺の精霊の腕輪のような奴か??こんなモノまで隠し持っていたのかよ!!
俺は【血魔法】を発動してルファトの攻撃を防御しながら『黒霧』を何本もの剣の様にしてルファトに向かって攻撃をする!!それと同時に【暴走する理力のスペクターワンド】を握りしめ、『隠密溶岩誘導弾』を二十発ほどルファトに叩き込んだ!!
しかし、ルファトの目の前で攻撃の全てが弾かれてしまった!
《無駄だ!!ワシの【黒環】には貴様らの軟弱な攻撃では傷も付かぬわ!!》
「破魔ノ神風十字斬!!」
アシュのおっちゃんが『首狩りの大剣』でルファトに攻撃を入れた!!【黒環】に十字の亀裂が入る!!
「【黒雷】!!!」
入った亀裂に向かって【黒雷】を放つと【黒環】が破壊された!!
そのルファトに対してザルスは銀色の槍を取り出して投げつけた!!
ルファトの胸に刺さった銀色の槍から魔法陣が浮き出てルファトの魔力を封じ込めて行く!!
俺はすかさず【黒炎】を『火山爆弾』に纏わせてルファトに放つ!!
黒い炎の溶岩がルファトに直撃し、激しい爆発を起こして燃えている。そのルファトにアシュのおっちゃんが更に攻撃を加える!!
『日輪ノ黄龍斬!!』
光属性の斬撃がルファトに襲いかかる!!
しかし、ルファトが左腕で防御すると光属性の斬撃が止まってしまう!
《フフフ……中々の攻撃だったな。まさか【黒環】を破られるとは思わなかった……ついつい本気で受けてしまったよ》
この野郎……魔力を封じ込められて溶岩や黒炎で焼かれながら、対極の光属性の斬撃を受け切って笑っていやがる……これほどの化け物になりやがったのか?
俺は【暴走する理力のスペクターワンド】を握りしめてルファトにさらなる攻撃を加える!スペクターワンドが黒くなり魔石が赤く光り出す!!
「【黒陽】!!」
黒い太陽がルファトに向かって行く!!ルファトはその黒い太陽を両手で受け止める様にしている!!そこにアシュのおっちゃんとザルスが左右から飛び込んで剣で斬ろうとした!!
《【闇の破動】!!》
その瞬間、【黒陽】もザルスもアシュのおっちゃんも俺も建物ごと吹き飛ばされた!!
ルファトが大技を繰り出し、更に攻撃しようとした刹那、ルファトの顔面にバレットが炸裂していた!!
魔力が少なくなった瞬間を狙って『十三』が『眼』のアシストでルファトを狙撃したのだ!
俺は【血魔法】とマントの力で攻撃を防いだがアシュのおっちゃんとザルスが近距離から攻撃を受けたので不味いかもと思ったが、ザルスは例の壺に魔法の威力を封じ込めたらしく、壺にヒビが入っていた。アシュのおっちゃんは予め胸鎧に仕込んでおいた神聖魔法の【神ノ盾】が発動して無事だったようだ。
更に『十三』の狙撃がルファトにされた瞬間、胸の手前でバレットが止まっている。コイツ……まだ生きてんのかよ!!俺は【黒雷】をそのまま撃ち込んだが、それもまた左手で防がれてしまった。
するとバレットでデカい穴の空いた顔が元に再生されていく……クソっ!
《まさか……【闇の破動】を耐え切るだけでなく、ワシが魔力を出し切った瞬間を狙って更に攻撃するとは……アレがバレットで無ければ大きなダメージを受けたやも知れぬな……》
そう言ったルファトはバレットが発射された方向に大量の黒い氷柱を発射した!!
だが、その瞬間ルファトの真後ろからバレットの狙撃がされる!!残念ながらバレットは後頭部の手前で止められたが……。『十三』は常に動きながら狙撃をしている為、狙撃ポイントを確認しても既にそこには居ない。しかも魔力感知は出来ないし、光学迷彩により姿も見えないので非常に厄介な相手になるのだ。
《くっ……忌々しいハエめ……だがそのバレットではかすり傷も負わぬわ!》
そう、『十三』の魔法銃では土属性のバレットしか撃ち出せない……アードリーであれば改造出来るかもだが、あの時ドワーフのリメックには頼まなかったのが痛手だ。
更に攻撃をしようとしたその時にルファトがニヤリと笑いながら俺達に話しかけて来る。
《どうやらゲストが御到着される様だ。丁重に迎える事としようかな……》
ゲスト??
するとルファトの左手後方に何者かが転移して来た。
ルファトの手の者か?同じファブルの眷族の魔力である。
そして、その男が鎖で縛り上げていたのは……まさか!?
「シウハ!!!」
ザルスがそれを見て一瞬動揺したのかルファトから注意を逸らしてしまった!
その瞬間を見逃さずにルファトは黒い氷柱をザルスに撃ち込んだ!!
「ザルス!!」
ザルスの胸には深々と黒い氷柱が突き刺さっていた……。
それを見た瞬間、俺の中の闇の扉が更に赤く……いや、更に“紅く”輝き出したのである。
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