首都攻防戦
闇龍国の首都攻防戦の始まりです。
遂に首都ラスカンドルに後五キロほどに迫った。向こう側には皇帝軍が待ち構えていた。実に異様な雰囲気の軍である。オレはアゼラル将軍とザルスと一緒にその軍を見ていた。
「あの軍……何か変だね」
「闇の魔法で操られて居るのだろう……アレは厄介だな」
ザルスは闇の魔法であの軍が操られてるのを看破していた。
「アレの他にも何かしら罠を張ってそうだよなぁ」
「そうだな、何を張ってるか……」
「とりあえずスケルトンか食屍鬼辺りを召喚と予想するね」
「うむ……それも厄介であるな……」
アゼラル将軍も嫌そうな顔をしている。スケルトンや食屍鬼は中々しぶといから戦闘ではかなり嫌がられるのだ。
「まあ、その為のキラだからね。恐らくは軍の後ろに召喚するだろうから、後方に盾兵を揃えて直ぐに防御をして下さい。召喚されたと同時にキラを巨大化させて召喚された連中のど真ん中に入ってブレスで焼きながら倒させます。本陣の魔導兵にも魔法攻撃をさせて下さい」
「分かった。キラ投入のタイミングはラダルに任せるぞ」
「とりあえず『眼』に監視させてますから大丈夫ですよ」
「……しかし、流石は兵士だったと言うだけあって上手く作戦を建ておるわ」
「まさかアゼラル将軍にそんなお褒めに預かるとは光栄至極に存じます……」
「フハハハ!何処でその様な言い回しを覚えたのやら!とにかくルファトはお前達に任せるぞ。皇帝は生かせられるなら生かして置いてくれ。ダメなら仕方無いがな……」
「善処しますが……期待はしないで下さい」
「無理はせずとも良い。ルファトを倒す事が重要だからな」
「理解しております。ではそろそろ行ってきます」
「うむ、気をつけてな」
俺とザルスはアシュのおっちゃんと合流して『隠密』を掛けて首都の方向に居る皇帝軍を回り込むように移動して行く。
一方、アゼラル将軍は騎馬隊を前面に展開させてゆく。槍兵と盾兵はあえて後ろに配置している。キラはまだ本陣の中でネコの姿のまま寝ている。
ダークス陛下が全兵士に向かって激を飛ばす。
「皆の者!遂にこの時が来た!あそこにいるのは魔人に誑かされた愚か者よ!この戦いに勝ち、この圧政に終止符を打つぞ!!」
「おう!!!!!」
アゼラル将軍は兵士に向かって声を上げる。
「騎馬隊出撃!!歩兵連隊も続け!!」
騎馬隊は一斉に皇帝軍の方に突入して行く!!
歩兵連隊は盾兵と槍兵を後衛にして剣士が前衛を務める特殊な形だ。
本陣には魔導兵を配置して不測の事態に備えている。アゼラル将軍は本陣に控えており、そのアゼラル将軍に『眼』からの念話が発せられる。
《やはり召喚の魔法陣が隠されていたの。まだ魔力が通って居ないの》
「分かった、魔法陣が発動したら直ぐに教えてくれ」
《わかったの》
「将軍、何かございましたか?」
「やはり召喚の魔法陣が敷かれてるそうだ。魔導兵には何時でも魔法発動出来る様に準備をさせるのだ」
「はっ!!」
先鋒の騎馬隊は一気に皇帝軍に詰め寄り攻撃を開始した。皇帝軍は全く怯まずに反撃を開始する。騎馬隊はその皇帝軍の異様さに驚いていた。全く恐怖感がまるで無いのだ。
歩兵連隊は追い付くと押し込むように前へと歩を進める。しかし、皇帝軍の連中は全く怯まない。
「グハハ!!皆殺しにしろおお!!」
「ケケケケ!!赤い血をもっと見せろろろ!!!」
討伐軍の兵士達が皇帝軍の連中はまるで狂戦士にでもなったのかと思うほどの不気味さである。斬っても斬っても全く怯まない……最前線はまさしく死闘となっていた。
ダークス陛下はアゼラル将軍と話をしていた。
「かなり皇帝軍の抵抗が激しいな……」
「恐らくは魔法にでも掛かり操られておるやも知れませんな……中々抜けられませぬ」
「こちらの戦力差を考えれば確かに皇帝軍の抵抗は異常だな」
「そろそろ魔法陣が発動されるはず……そうなると厳しいですな……まあ、普通ならばですが」
「ここまでは読み通り……だからな」
《魔法陣に魔力が通ったの。準備を始めるの》
「分かった!召喚の魔法陣が発動したぞ!魔導兵は召喚後に即攻撃開始せよ!!」
「おう!!!」
すると寝ていたキラはムクリと起きてその戦場の方にトコトコと歩き出している。ダークス陛下はキラに声を掛けた。
「キラよ、もう行くのか?」
「ニャア〜〜!」
そして魔法陣が発動し、無数のスケルトンが湧き出て来たのである。それを見て魔導兵が攻撃を開始した。
その攻撃が合図となって盾兵と槍兵がくるりと反転してスケルトンを迎え撃つ。
トコトコと歩いていたキラはそのまま巨大化した。そしてブレスを右から左へと吹いていく!!
スケルトン達の目の前に陣取ったキラはブレスを吐きながら、進んでくるスケルトン達を前脚の爪で切り裂いたり、弾き飛ばしたりと獅子奮迅の活躍をしている。
魔導兵は魔法をスケルトン達にどんどんと撃ち込みがっちりと後ろを固めている盾兵と槍兵をサポートしながら、こちらに向かってくるスケルトンも倒していく。
スケルトンが何とか片付けそうだと思っていたその時である。
《また魔力が通ったの。第二弾が来るの》
「何だと??アレだけ召喚してもまだ魔力が尽きぬのか??」
《相手は魔人の眷族なの。魔力は沢山あるの》
「むう……コレは……」
《今、主達が向かっているの。眷族と戦えば召喚は出来なくなるの》
「とにかくそれまでは辛抱あるのみか……分かった!!」
「召喚がまた来るぞ!!ここを何としても踏ん張るのだ!!」
◆◆◆◆◆◆◆
俺達は大きく迂回してようやく首都の街に到着していた。街の中には人が全く居ない……どうやら兵士達にされている様である。
「このままあの城まで一気に進むよ!」
「分かった」
俺達は『隠密』をかけてそのまま走っていく。『十三』は屋根伝いを例の光学迷彩を使いながら走ってる様だ
(と言うのも全く見えてないし、音も聞こえない)
城の前には2m程の眷族が二人待ち構えていた。
「オレが殺る」
アシュのおっちゃんは速度を上げると『首狩りの大剣』に一気に魔力を入れて二人とも斬って捨てた……スゲェ……。
俺達はそのまま城の中に入るが……全く人が居ない……まさかあの門番だけしか居ないのか??
そのまま進むと大広間に眷族共が沢山祈りを捧げていた。
「コイツら召喚してるのか??」
俺は精霊の腕輪を発動して魔力を一気に上げた!!
「【黒雷】!!」
そこに居た眷族達に【黒雷】が襲いかかり一気に殲滅する!!
「コレで召喚の魔法陣は大丈夫じゃないかな?」
「うむ、先を急ごう!!」
そして、謁見の間に到着するとその先の皇帝の椅子には首の無い死体が座っており、隣に途轍も無く強い魔力を持つ者が首を抱えて控えていた。
「……随分と遅かったな……待ち侘びたぞ……ラダル!!!!」
そこに居たのは間違いなくあのルファトであった。
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