レディスンの本当の目的
ロザリアの更なる修行とレディスンの目的が明かされます。
「さて、この先は私の持っている光魔法の中でも光属性が【聖光】まで達しないと覚えられない術を教えるとしよう」
「あの光の幕みたいな奴??」
「ああ、あの【極光幕】もそのうちの一つだ。後は三つで【極光光線】【極光刃】、【極光嵐】である。【聖光】を上手く扱わないとこの魔法は発動出来ない。今から魔法を発動するから魔力の流れをきちんと理解するんだ」
そう言うとレディスンは【極光幕】をロザリアに見せる。レディスンはコレを一度見せているが、極光の魔法の基礎となるべき魔法なので最初に見せていたのだ。
「どうだい?魔力の流れは掴めたかい?」
「う〜ん……【聖光】の流れがちょっと……一度放出されたものが元に戻っている様に見えたの……」
「そうだ、それが正解。良く“視えて”いる様だね。【極光幕】は放出した【聖光】を元に戻す……つまりは自分に取り込む事で【聖光】の魔力をある程度節約している。放出しっ放しでは長く使えないからね。この制御が出来る様になれば他の極光の魔法も直ぐに出来る様になるんだ」
「【聖光】の魔力を制御……分かったわ!」
ロザリアは直ぐに【聖光】の魔力を制御しようと動かしたが、中々思う様に動かせない。
「何故動かせないか不思議だろう?それは普通の魔力と動かし方が違うからさ。良く“視る”んだ」
レディスンはもう一度【極光幕】を発動した。食い入るように“視て”いたロザリアは何かを掴んだ様にもう一度【極光幕】を発動すると今度は上手く【聖光】の魔力を動かして見せた。
「そうだ、中々良い調子だぞ。次は【極光光線】だな。行くぞ!」
ロザリアが“視てる”前でレディスンが【極光光線】を発動した。【聖光】の魔力が集束していき更に圧縮された後に発射された。ロザリアは“視た”ままのやり方で【極光光線】を発射して見せた。
「流石はロザリア君だねぇ。覚えが早い」
その後は【極光刃】は一度で、【極光嵐】は3回視ただけで修得したのである。
「コレで【聖光】の魔力を使う魔法は全て教える事が出来た。感想はどうだい?」
ロザリアは何かを考える様にしてからレディスンに答える。
「……この【聖光】の魔力の先に伸びてる光の糸の様なものは何?」
するとレディスンはニヤリと笑ってロザリアに言った。
「ロザリア君、合格だよ。其れが“視え”たならその先……私の居る領域までやって来れる……【神光】の領域までね。さあ、五行の先の修行【来迎】を始めよう」
レディスンはロザリアに【来迎】のやり方を見せる。それは座禅を組んだまま浮遊して掌を合わせ【聖光】の魔力をその掌の中で凝縮させてゆく。その凝縮が一定の状態に達すると凝縮された【聖光】の魔力が無に還る様に消えて行く……すると無くなったはずの掌の中に【聖光】とは全く別物の魔力が溢れて来た。
「コレが【神光】の魔力だよ。凝縮された【聖光】の魔力は一旦天に還り、そしてその後に【神光】の魔力として迎えられる。コレが【来迎】という【神光】の魔力を得る修行だよ。さあ、やってごらん、かなり難しいからね」
それから二ヶ月の間ロザリアは【来迎】をやり続けた。【聖光】の魔力を凝縮するのが難しく、恐ろしい程の集中力を必要とする。これは五行の無の境地に達しないと出来ないものなのだ。そしてロザリアは無の境地からの【聖光】の魔力の凝縮に成功して、遂に【神光】の魔力を迎え入れた。そしてロザリアは【光の御子】から上位である【光の神子】としての完全なる覚醒を果たした。
レディスンはロザリアの【神光】の魔力を見て驚いていた。
(こんなに短期間で【来迎】の修行まで終えてしまうとは……私でさえも一年以上掛かったものを……しかもこの【神光】の魔力は……)
【来迎】を終えたロザリアにレディスンは話しかけた。
「良くここまで短期間で来れたものだ。天賦の才とは恐ろしいものだね。さて、ロザリアに教える事が後一つだけある。それは【神光】の魔力には二種類有るという事なんだ。【神光】の“陰”の魔力と“陽”の魔力だ。そしてこの陰陽によって魔法が異なるのだよ。私の魔力は“陰”の魔力で、ロザリア君の魔力は“陽”の魔力だ。つまりは私の魔法は君には覚えられないものなのだ」
「それじゃあ、“陽”の魔法は??」
「自分で掴み取るしかない……」
「そんな……」
「参考までに私の“陰”の魔法を見せておく。【星光槍】!!」
その空から降ってきた光の槍は落ちた瞬間に激しい爆発を起こした。ロザリアはレディスンが手加減していた事に気付いた。
「本来はアレを無数に落とす技だがね。他にもあるが見せても、残念だが君にはあまり役には立たない。私の魔力は“陰”……つまりは星光や月光の魔法。そしてロザリアの持つ“陽”の魔力は太陽の魔法なんだよ。だから君は太陽の光の魔法を掴み取るんだ」
「一体どうやって……」
「君は知っているはずだ。ラダル君の言葉を思い出すと良い」
「ラダル?……」
ロザリアは思い出す……ブリジッタとアシュトレイにダメ出しをされた時……チャイティーを入れてくれた時の事を。
《ラダルはどうやって魔法を合成するの?》
《良いかい?魔法はイメージなんだよ。想像力で“創造”するんだ!》
「魔法は……想像力……やってやるわよ!」
それからロザリアはひたすら座禅を組み、何かを創り出そうと没頭していた。レディスンはそんなロザリアを見守っている。
ブリジッタはそんなロザリアを見にやって来ていた。
「中々難しそうね?もう1ヶ月よ?」
「いやいやブリジッタ、そうでも無さそうだよ……」
するとロザリアの頭の上に巨大な魔法陣が出現する。そして“陽”の魔力が集束して行く!!
「【太陽光線】!!」
膨大な光の集束が山脈の頂を掠めて、その光の形でえぐられていた……凄まじい威力だ。
「こ、これは……驚いた。まさかの威力だよ……」
「……もう少し下なら山ごと消えてたわね……」
「どう!?私の魔法は!?」
ロザリアは腰に手を当て胸を張って威張っている。
「見事だね。ロザリア君がコレを自由自在に操れる様に出来たら三人で旅に出るとしようか?」
「旅に??」
「何をするの??」
「この世界を救いに……魔人ファブルを倒しに行くよ」
「魔人ファブル??」
「そうだ、この大陸で奴がやっている事は見過ごせない。奴はとんでもない者を出現させようとしている」
「とんでもない者……まさか……破滅の五芒星??」
「いや、それは……いや、それよりももっと不味い奴だね」
「そんな奴が居るの??」
「ああ……混沌の闇、闇聖ゼスだよ」
「闇聖……??……ゼス??」
「それが破滅の五芒星を生み出した元凶さ。こいつを呼び出す為に魂を集め続けているんだ。ファブルだけは倒さなければならない……ファブルさえ倒せば闇聖ゼスに刃は届く」
「ファブルってラダルが会ったという魔人よね?」
「そうだね。そう言っていた」
「なら倒すわ!!」
「その前に自由自在にあの魔法を使える様に修行だよ」
「任せて!師匠!!」
こうして特訓後にレディスン、ブリジッタ、ロザリアはファブルを倒し世界を救う為、三人で旅に出る事になった。
お読み頂きありがとうございます。




