レディスン、山脈の向こう側へ行く。
少し時間が巻戻りまして、レディスンのその後となります。
ラダル達がアドラ城で話し合いをしていたその頃より遡ること八ヶ月……レディスン=ホークランドは精霊との出会いを果たし、遂にアマモ洞窟のアマモに対面していた。
《ふむ……あの小僧達の知り合いか……お主はこのまま通られよ》
「……二人からは試練があると聞いたのですがね?」
《理の力の試練の事であろう?この試練は理の力を知る為のもの……お主は理の力を知り尽くし極めておるでは無いか。だから試練は必要無い。さあそのまま通るが良い》
そのままアマモは寝入ってしまう。レディスンは残念そうだったが、仕方無く通る事にする。その時、アマモはレディスンにこう言った。
《お主はこの先で光の娘に出会うであろう。その娘を鍛えたその先に……お主のその『眼』は一体何を映し出すのかのう……》
「……なるほど、試練の遂行者には色々とお見通しという訳か。さあね、私は“視える”未来を信じて進むさ」
《であるか……それがお主の運命だとしても突き進むか……》
「その先にある“もう一つの光”の為なら喜んで……では」
アマモはそのまま寝てしまった。
レディスンはアマモに一礼するとそのまま向こう側に向かった。
しばらく歩くと大勢の人間を感知した。コレがラダルの言っていたウロボロスの採掘と言うやつかと。レディスンはそのまま歩を進めると警備の者が現れた。
「お前……向こう側からやって来たのか??一体何者だ??」
「あー、私はレディスン=ホークランドという者だ。えっと……そうだ、デュラハンスレイヤーの二人から枢機卿宛の手紙を預かっている」
「何?デュラハンスレイヤーの二人からだと??……す、少し待たれよ!」
警備の者が一人奥の方に走って行った。しばらく待つと中々大きな魔力を持つ者がやって来た……レディスンはその者の雷属性を見抜いた様である。
「デュラハンスレイヤーの二人からの手紙を持ってるのはアナタなの?」
「ああ。私はレディスン=ホークランド。アシュトレイとラダル君の師匠だよ。ラダル君からは君の事も聞いているよ、ブリジッタ殿」
「ワタシの名前を知ってるの?アシュとラダル君の師匠??じゃあラダル君の器を治せる人って……」
「それが私だよ。彼らは修行を終えて海を渡る為に旅立った。私はアシュトレイとラダル君から頼まれて君達に会いに来たんだ」
そう言ってレディスンはブリジッタにラダルからの手紙を見せた。ブリジッタは手紙を読むと「なるほど……そういう事ね……」とその手紙を預かる事にした。
「枢機卿には私から使いを出すわ。ロザリアをコチラまで来させるから少し待って貰う様になるわね。ところでラダル君達は元気にしていたの?あの二人の事だからそんなに心配は要らないと思うのだけど」
「うむ、二人共に素質が高かったからね。思っていたよりも早く基礎を覚えたよ。まだ港までは時間が掛かるだろうね。まあ、向こうでは色々有るだろうから一筋縄では行かないだろうけどねぇ」
「そう……あの二人は巻き込まれ体質だからねぇ。でも無事なら安心したわ。それにしてもロザリアにも教えて欲しいなんてあのラダル君が言うのだから、アナタは余程優秀な人なのね」
「二人からはロザリアは天才だと聞いている。それに私と同じ光魔法の使い手だと。だから教えてやって欲しいと言われてね……彼らほどの者たちが揃って天才というロザリアにも会ってみたかったんだ」
「確かに、身内の贔屓目が無くてもロザリアは天才だと思うわ」
「ほう、それは楽しみだ。ところでロザリアが来るのに時があるのだろう?ならばブリジッタ殿も少し修行をしてみるかい?アシュトレイやラダル君のやった修行を」
「ワタシが?そうねぇ……確かに興味はあるわね。あの二人が受けたって言う修行ならやっても良いかもね」
「君は雷属性を持っているから、教える光属性の私とは相性も悪くない。直ぐに上達するだろう」
こうしてブリジッタはロザリアが来るまでレディスンに五行の修行を受ける事になった。
それから二ヶ月程でロザリアがアマモ洞窟までやって来た。
「ブリジッタ!!私よ!」
するとロザリアは見た事のない男がこちらにやって来るのが見えたので警戒した。するとその男はにこやかな笑顔をしながらやって来た。
「やあ、君がロザリア君だね?私はレディスン=ホークランドだ。山脈の向こうからアシュトレイとラダル君に頼まれて君に修行をつけに来たよ」
「貴方がレディスンなの?手紙は見たわ!ラダルとアシュトレイは元気にしてるの??」
「もちろんだ。修行が終わって直ぐに出発したからね、もう土龍国には入ってると思うよ」
「そう……元気にしてるならいいわ!レディスンに師事しろってラダルからの推薦らしいけど?」
「ああ、二人から君を鍛えてやってくれと言われたよ。さて、とりあえず君の実力を見せてもらおうかな。私に攻撃してみたまえ手加減は要らないよ」
「ふーん……良いわよ!怪我をしても知らないからね!」
戦える場所まで移動した二人が闘いを始める。ロザリアはレディスンに対して素早く移動しながら『光弾』や『光線』で攻撃したが、レディスンは『反射』を使って全てを撃ち返す。
(ほう、光魔法の魔力操作の基礎は出来てるな……アシュトレイは中々良い教え方をした様だね。しかもこの動き……ブリジッタ殿にも仕込まれているな……優秀な二人から基礎をしっかり身につけさせられているから基本的なモノは問題無いな)
そのままレディスンもすかさず『光線』で反撃する。最初は『蜃気楼』で交わしていたが、何度か『反射』を見たロザリアはレディスンの『光線』を『反射』で撃ち返してみせた。
「ほう!見ただけで覚えたのか……なるほど、ラダル君が天才だと言っていたのが判るよ。じゃあ少しだけ本気を見せてあげようかな」
「ふん!一体何を見せてくれるのかしら?」
魔力を一気に上げたレディスンはロザリアに無詠唱で【極光幕】を発動して閉じ込めた。中でロザリアが撃った『光弾』や『光線』は全てオーロラに吸収されてしまう。しかもこの技は魔力が足りない為にロザリアには真似が出来ない。ロザリアは全魔力を『光輪』に乗せて斬撃を試みたが小さな傷がついただけであった。
「くっ……ま、参った……わ……」
倒れるロザリアをレディスンが素早く受け止める。
「フフフ……私の【極光幕】にたかが『光輪』で傷をつけるとはね……コレは鍛える甲斐がありますねぇ〜」
レディスンはロザリアの潜在能力に舌を巻いたのである。
しばらく気を失っていたロザリアが目を覚ますとブリジッタが座禅を組んで静かに座して居た。だか、そこに居るブリジッタの魔力はロザリアの知るものとは全く違う物であった。
「……起きた様ね、ロザリア」
「ブリジッタ……その魔力は一体……??」
「あら?この魔力に気付いたのね?アナタが来るまでの間にレディスンが五行を教えてくれたの。ロザリア、アナタもやりなさい。流石はラダル君が推挙して来るだけの事はあるわよ」
「気付いた様だね。ロザリア君」
やって来たレディスンの前に行き、膝をついてロザリアが言う。
「レディスン……いや、レディスン師匠!私にもコレを直ぐに教えて!!」
「もちろんだよ。アシュトレイやラダル君に頼まれてるからね。君を一人前にしてやってくれとね……いや、私としても自分の極めた光魔法の後継者として鍛えようと思うがどうだい?」
「私にも出来るなら何でもやるわ!!」
「良いだろう。では先ず五行から教えよう」
そして五行をたった一週間程で熟知して出来るようになったロザリアに、レディスンは座禅を組ませながら、それと並行して色々な光魔法を教えて行った。彼女はレディスンの予想を超えた理解度を示し、レディスンは改めてロザリアの才能に驚いていた。
(コレならロザリアは本当に私の領域までたどり着くかも知れない……しかも私の予想を遥かに超える短期間にだ。私の後継者として全てが教えられる。そして光魔法の真髄に辿り着けるに違いない……本当にラダル君達には感謝するしかないな)
そして更に三ヶ月後……遂にロザリアの光属性が【聖光】というレベルに達し、『光の御子』としての覚醒を果たしたのである。
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