アドラ城御前会議にて
アドラ城での会議の様子です。
ダイス砦を占領したアゼラル将軍は、すぐさまアドラ城も陥落(と言うより降伏)させて、ダークス陛下の居城として使う事にした。ダークス陛下が解放された事は直ぐに国中に伝わり、馳せ参じる貴族や軍人が多数アドラ城にやって来た。中でも前皇帝の時に宰相をしていたというハルモーデ伯爵(宰相時は侯爵だったが罷免後に何と降爵された)がダークス陛下の元に駆け付けた事で一気に打倒現皇帝の勢いがついた。
「ハルモーデ閣下の参陣でかなり助かりましたぞ」
「何を仰る……アゼラル将軍の素早い対応には頭が下がりますぞ」
「二人とも良くぞ参陣してくれた。礼を申すぞ」
「ダークス陛下!!頭をお上げください!!」
「陛下の元に馳せ参じるのは心ある者ならば当然の事です!!」
「しかし……兄上は何故あの様な愚かな事を……」
アゼラル将軍が苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「それは全てファブルの仕業です」
「ファブル?!あの魔人だと??」
声を荒らげるダークスにシウハはゆっくりと説明する。
「ダークス兄上はご存知無かったのですね…父上も母上もファブルに操られたサマリア兄上に殺されたのです。そして……そのファブルが企んでいるのは……闇聖ゼスの降臨でしょう」
「!!闇聖ゼスだと??」
「既に奴の依代は処分してはおりますが……まだまだ何が起こるか……」
「まさか四千年も前の亡霊が……信じられぬ!」
「奴らからすれば『破滅の五芒星』を倒し、闇聖ゼスの降臨を阻止した『光の御子』の子孫たる我らをどうしても消したいのでしょう」
「しかし、魔人が相手だとは……」
「ダークス陛下、御安心下さい……この老骨が最後のご奉公で魔人を斬りましょうぞ。出来ずともシウハリア様が連れて来た手練も相当な者たちで御座いますからな!」
「ラダル達の事か?」
アゼラル将軍はうむと頷いて、その後シウハが話を続ける。
「我との旅であのリルブルをも倒し、彼らの言い分では遺跡に封じられていたレブルまで倒したと聞いております」
「なっ!魔人を二人も!?」
「アシュトレイとラダルはかなりの使い手です。ファブルはアゼラル将軍と彼らに任せてもいいでしょう」
「ワシとの手合わせでは相当手加減しておったがな……あの食わせ者の小僧めが……フハハハ!」
「ア、アゼラル将軍と手合わせで手加減などと……そんな馬鹿な……」
「イヤイヤ、ハルモーデ閣下。あの小僧は間違いなく手加減はしておった……しかもワシが手加減した事も判っておったからな!」
「それ程とは……」
「とにかく彼らに魔人対策をどうするか尋ねてみましょう」
一同頷いて二人を呼び出す事にした。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「入りま〜す!!」
俺が間抜けな入り方をすると何か怖い目で見てる知らない人が居ますよ……誰アレ??
「シウハ……リアさま?どうなさいましたか?」
「ファブルについての対策を聞きたくてねぇ」
「う〜ん……確証は無いんだけどね……多分、ファブルは此方に来ないよ」
一同が驚いた。そしてハルモーデ伯爵がラダルに聞く。
「何??どういう事だ?お前にファブルが来ないなどと何故分かるのだ??」
「それは俺が山脈の向こうでファブルに会ってるからですよ。奴は向こうで魂を集めてる。だから向こうからはコチラにはやって来ないと思う。だからルファトを側近として皇帝の近くに置いてるんだと思う」
「だが、コチラに来ないとは限らんだろう??」
「ファブルは向こうを離れない……いや、離れられない理由があるんじゃないかなと思ってるんだよね。ヤツは俺に強い興味を持ってたし、強くなったら相手をするとまで言ったのに俺の元にはやって来ない。それはやって来れないんじゃないかなって。それにさ、向こうに居る俺達の仲間がファブルを倒すはずだからね」
「お前達の仲間だと??」
「うん。ブリジッタさんとロザリアは俺達と山脈の向こう側で俺達と旅をしていたんだ。二人ともかなりの実力だよ。それに俺達の師匠のレディスン師匠が向こうに大分前に向かってるから、もう到着しててもおかしくない。師匠ならロザリアと同じ光魔法を操れるから彼女を強く出来るよ。何せロザリアは超天才だからね。それにブリジッタさんも師匠に鍛えられるだろうからあの三人ならファブルを倒せるはずだよ」
アシュのおっちゃんも俺の意見を肯定する。
「ロザリアの天賦の才は光魔法を教えていたオレが保証する。更にレディスンが教えるならロザリアだけで我ら二人の実力をを超えても何ら不思議は無い。ブリジッタもレディスンにかかれば今の我ら並みには鍛えられるだろうし、レディスンは間違いなく今のオレたちよりも実力は遥かに上だし、彼一人でリルブルなら簡単に倒したろう」
絶句している彼らの中で、やっとシウハが話し出した。
「全く、あのレディスンがねぇ……それほどの男だったとは……あの時雇い入れて居たらねぇ……」
「前にもボソッで言ってたよね?やっぱり会った事が有るんだなあって。レディスン師匠が別れ際にシウハの名を俺が言った時に知ってる風だったからさ、気にはなってたんだよね」
「わざわざ向こうから来てくれたのにさあ……まあ、あの頃はアタシに見る目に余裕が無かったからね……仕方ないさね」
するとアゼラル将軍が急に割って入る。
「オッホン!!姫様……口調が……」
「……コレは失礼しました兄上……」
「フフフ……まあ良い。ではファブルは気にせずに良いか?」
するとアゼラル将軍が何が考えながら話し出した。
「彼らが言うなら恐らくは。たたし……ルファトは相当な使い手かも知れませんぞ」
「えっ、アゼラル将軍はルファトを見た事があるの?」
「うむ……嫡男に家督を譲る際に現皇帝陛下にご挨拶をした際にな……あの底の見えぬドス黒い眼と凍りつく様な魔力はただ事では無かったな」
「そうなのか……将軍がそこまで言うならそうなのだろうね……」
今までルファトの実力を計りかねていたが、アゼラル将軍がそう感じたのであれば相当厄介な事になってるのかも知れないね。するとアシュのおっちゃんがアゼラル将軍に話しかける。
「ルファトはオレ達で何とかしよう。アゼラル将軍、任せて欲しい」
「ヤツとは多少因縁も有るからね……今度で決着をつけるよ」
コレは俺が撒いた種だしね……ケジメはつけないとなぁ〜。
◆◆◆◆◆◆◆
「……ハルモーデ伯爵がダークス側に付いたと……」
「……はい、尚、ダークスを幽閉していたクザラが倒された様です」
「ほう……アレが倒されたか……アゼラルにでも不覚を取ったのか?」
「いえ……それが……どうやらシウハリアと共に来た傭兵に倒されたとか……」
「傭兵?……『月影』か?」
「いえ……それが……」
「どうした?」
「不確実な情報なのですが……『月影』と共に居たもう一人が殺ったと……何でも背の低いまるで子供の様な姿で大きな杖を持って居たとか……」
するとその男は持っていたグラスを握り潰す。部下が驚いて見上げるとその男の赤い目がさらに燃える様に赤く光る。
「その者の正体を調べよ……大至急だ」
「は、はっ!直ちに!!」
部下が立ち去ると、その男はニタリと嬉しそうな笑みを浮かべた。
「大きな杖の少年……フフフ……この日を待ち侘びていたぞ……ラダル」
その男……ルファトが自分を落ち着かせる様に深呼吸をする。
「ラダルよ……早く此処に来い……待っているぞ……ククク」
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