闇龍国の蠢く闇
シウハが闇龍国へ行く目的の話です。
シウハリア皇女と言われたシウハはそう呼んだ男を見て驚いていた。
「ラ、ラハエル……皇太子……何故ここに??」
そのラハエル皇太子とか言われた男が笑みを浮かべながら話し出す。
「族長から、面白い話しを聞いたと報告が上がって来たのでね……話の真偽を確かめに私が来た訳だよ。何せ闇龍国の皇族の顔を知っているのは陛下と私くらいだからねぇ」
「なるほど……じゃあ惚けても仕方が無いねぇ……」
「フフフ……相変わらず肝が据わってるな。やはり婚約解消はこちらの失策だった様だね」
「あら、アナタ方から破棄してきて何を今更……」
「全くだ。私は反対したのだが……まあ、それは昔の事……さて、君がどうやって闇龍国をひっくり返そうとしているのか聞こうじゃないか?何なら手助けしても構わんよ」
「……一体どういう風の吹き回しだい?」
「この膠着状態をいい加減打破したいのだよ」
「へぇ……面白そうな話ねぇ〜」
「という事でこちらで話をしないか?それとソコの君、そろそろその凶悪な魔力を仕舞ってくれないかな?」
俺は魔力を元に戻す。精霊の腕輪の能力だから戻してもブーストはまだ使える。
「ありがとう。皆も攻撃は無用だ。私の話が終わるまでは変な事をしない様にね」
こうしてラハエル皇太子とシウハは別の部屋で話し合いをする事になった。ザルスはシウハと付いて行った。俺達はそのままその話し合いを待つ事になった。
しかし、まさかシウハが闇龍国の皇女だとは思いもよらなかった……他の武商旅団のメンバーにも聞いたけど知る者は居なかった。恐らく知っていたのはザルスだけだった様だね。
俺はアシュのおっちゃんと話をする。
「まさかだったね……」
「うむ、只者では無さそうだとは思っていたが……皇女だとは……」
「あっ……そう言えば、レディスン師匠がシウハの名前を出した時に知ってる風だったなぁ……」
「ああ、そう言えば……確か人違いとか言ってた様だがな。もしかしたら知っていたのかもしれないな」
とりあえずボケーっと待ってても仕方ないので飯でも作る事にする。一番デカい魔導鍋を用意して武商旅団の連中にも食べさせる事にした。今日のメニューはオーク肉のシチューである。野菜もたっぷり入れて煮込んでいく。出来たら皆に器を持って来させてその器に入れて行く。
警備をしてるケンタウロスに持って行くと『仕事中だ』とか言って食わない。チラ見してるから持って行ったのにさ。
俺とアシュのおっちゃんはシチューとパンの箱のパンを食っていたが、タヒドがパンを貰にやって来た。ホントにコイツはこのパン好きだよな……。キラにはオーク肉をそのままあげている。
余ったシチューは魔導鞄に突っ込んでおく。そうすればまた好きな時に食えるからね。
食べ終わると酒を飲んだり賭け事をしたり寝てる奴まで居るよ……本当に図太い奴らだな。俺とアシュのおっちゃんは例の通り座禅を組んで時間を過ごす。まあ、こっそり『眼』と『十三』にシウハの監視をさせてるし、何かあれば彼らを保護するつもりだ。
二時間ほど待つとシウハがザルスと共に戻って来た。
皆がどうなってるんだとシウハの方に話を聞こうと向かって行く。残ってたのは俺とアシュのおっちゃん、そしてタヒドだけである。
「タヒドは行かないでいいの?」
「アッシはついて行くだけでさぁ。行く所もありゃせんしね!」
「へぇ〜、意外と肝が据わってるねぇ」
「しかし……シウハは一体どうするつもりなのか……と言っても揉め事になるとしか思えんが……」
「まあ、そうだよねぇ〜。でも乗り掛かった船だしもう少し付き合ってあげようよ。目的地は一緒だしね」
「うむ、仕方ないな。ここまで来れたのはシウハのお陰でも有るからな」
「そうそう、何だかんだとここ迄ね。だから最後まで面倒見よう」
さて、シウハの元に行った連中で騒いでるのは商人専門の連中だ。傭兵の連中は意外と大人しくしている。珍しくザルスも丁寧に話をしているのが印象的だなぁ。その内に不満やる方ない連中が俺の方に向かってくる。
「ラダル!アシュトレイ!お前たちは平気なのか?俺達は騙されたんだぞ!?」
「そんな大袈裟な……」
「大袈裟じゃないぞ!向こうで戦争するつもりだ!俺達は商人なんだぞ!!」
「だったら商人として行けばいいよ。戦争は儲かるじゃないか?それとも今まで戦争に絡まないで儲けて来たのか?」
「いや、そう言う事では無くてだな……」
「じゃあこのまま置いていくから何処へでも行けば良いじゃないか?別にお前たちは自由なんだからね。話が違う?都合のいい話だな?今まで散々稼がせて貰ってさ。しかも次はもっとデカく儲けるチャンスだぜ?これを逃して何が商人だよ?そんなんなら最初からチマチマ薄利で商売しとけよ」
すると文句を言ってた連中が黙ってしまう。
「あのな、シウハが何者で何を企んでて、そして何を成そうとしてるのかは分からんけど、ここ迄連れて来てくれたんだ。俺は最後までシウハに付き合うよ」
「オレもだ。シウハが必要とするなら付き合うとしよう」
「アッシも最後まで付き合いやすぜ!一世一代の大博打でやすからねぇ!!」
すると傭兵のハゲが大笑いしながらやって来る。
「流石に腹を括ってんな!!オレらも同じ気持ちだ!ここまで来たら最後まで付き合うぜ!!お前らもいい加減腹を括れ!!」
不平不満はある様だが何とか矛は収めたようだ……まあ、此処で放り出されてもどうにもならんからな。
シウハとザルスが俺達の方にやって来る。
「アタシに付き合うのかい?港町まで案内させても良いんだよ?」
「行きがけの駄賃だからね、もう一儲けさせて貰うよ。帰るにはお土産が要るからね!」
「オレ達が行けば少しはシウハの役に立つだろう。今まで世話になったんだ、最後まで付き合うとしよう。カタをつけてから帰るのは悪くない選択だ」
「……全く、物好きな奴らだね!好きにしな!」
「じゃあそうさせてもらうよ!」
それからはザルスから詳しく話しを聞く事になった。
シウハ改めシウハリア皇女は闇龍国の第一皇女で現在の皇帝であるサマリア2世の妹である。皇帝サマリアはとある者の甘言により父である元皇帝を暗殺して国を乗っ取ったらしい。シウハリアは弟であるダークス第二皇子に国外へと逃がされたのだという。ダークス皇子はそのまま幽閉されて居るらしい。シウハリアはそのダークス皇子を助け出し、サマリアから皇帝の座をダークスに継がせる為の資金及び武具集めをしていたのだと言う。シウハリアには国の隠密部隊である魔影という連中が味方についており、諜報活動や根回しなどをやっており、かなりの勢力を味方に付けてると言う。サマリアを倒すのは訳無く出来るのだが、問題はそのサマリアをそそのかした連中であると言う。
「その連中ってどんな奴なの?」
「それは……『眼』に聞けば判るはずだ」
「はぁ??」
《それはアレが絡んでるの》
「アレって……!!あの真ん丸か?!」
《そうなの》
「やはり……あの丸い眼に会った事が有るのか?」
「まあね、何か泉の水を腐らせたり訳分からねえよ」
「アレはある者を呼び出す為に必要な腐水と言う汚染水を集めているのだ」
「ある者?」
「……闇聖ゼス……」
「なっ!闇聖ゼスだと?!」
オイオイ……此処で何で闇聖ゼスの名前が出て来るんだよ!!
「お前たちが前に持って来た棺桶があっただろ?アレは闇聖ゼスの依代が入っている」
「ウソ……マジかよ……」
「だが、あの依代だけではゼスをこの世界に呼び覚ます事は出来ない」
「だったらこの棺桶燃やしたら?」
「それには一切の魔法的な攻撃が全く通用しない……」
「えええ……んじゃ、どうするの?」
「火山に落とすつもりだ」
「燃えないのに?」
「取りに行けぬだろう?火山に落とせば」
「噴火したら飛び出て来るかもよ」
「……」
この棺桶については後で考えないとダメなようだ。しかし……闇聖ゼスの依代なんて……こんな厄介なモノを一体どうすりゃいいのさ?
それに現皇帝をそそのかした奴って一体誰なんだ??
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