ケンタウロスの砦
ケンタウロスの支配地を通る話です。
アラクネの街を出てから3週間ほどは魔物を倒しながらの旅となった。まあ、タマタマなのか強い魔物も居なかったのでキラと『十三』の餌食なのだが……。
そんな感じで進んでいると『眼』から
《右手の方向からケンタウロスが集団でやって来たの》
俺は直ぐにシウハに知らせると馬車を停めさせた。どうやらケンタウロス達が来るのを待っている様だね。
しばらく待っているとケンタウロス達がやって来た。
『お前達……前にも来た事があったな?』
「覚えていて下さりありがとうございます。私は武商旅団の頭目のシウハで御座います。是非とも族長様に御目通り願いたいのですが……」
オイオイ……随分と低姿勢じゃねーかシウハ!……吹き出しそうになっちまったぞ!!
『……良かろう。ただし妙な事はするなよ?すれば分かっているだろうな?』
「もちろんで御座います。我々は族長様に御目通りしてからこの地を通行させて頂く許可を頂く為にお待ち申しておりました」
『うむ、分かった。ついてくるがいい』
俺達はケンタウロス達が周りを囲む中、先頭のケンタウロスについて行く。
そんな中、軍馬の上で座禅を組みながら乗っているアシュのおっちゃんにケンタウロスの一人が声をかける。
『貴様、変わった乗り方をしているな』
するとアシュのおっちゃんがそのケンタウルスを見ながら話し出す。
「こうしていかなる場所でも座禅を組み、無に近づく事が修行になると師から教わったのだ」
『無とはなんだ?』
「無とは何か?……それを知る為の修行だ」
そのケンタウロスは分からない様だったが、先頭のケンタウロスは目を細め、ほほうと言う顔をした……何かしら理解したのだろうか?そう言う俺は馬車の中で座禅を組みながら『眼』から送られた画像を見てたんだけどね。
ケンタウロス達に連れられて1時間ほど走ると大きな砦が見えて来た。ここにケンタウロスの族長が居るのかな?そう考えてると砦の奥から物凄く大きな魔力が吹き出してくる。こりゃあ中々の魔力ですよ……まあ、リルブル程では無いけれどさ。
「何か様子がおかしい……悪いがラダル、アシュトレイと一緒に俺達と来てくれるか?」
「分かったよ。キラと『十三』も連れて行くよ」
「うむ、それも良いだろう万が一という事も有るからな」
俺はアシュのおっちゃんに話をしてからシウハとザルスについて行く。族長の居る大広間に通されると奥の方に恐ろしく魔力の大きなケンタウロスが居た……アイツだな、さっきの魔力の持ち主は……。
『お前は前にもココに来た者だな?』
「はい、シウハと申します。族長様に御目通り頂き感謝致します。この地を通る許可を頂きに参りました」
『そうしたいのは山々なのだがのう……お前についての情報を持って来た者がおってな……出て来い!』
すると奥の部屋から出て来たのは……
「ウヒヒ……シウハ、久しぶりだなぁ?」
そこに居たのは前にハメてやった腐犬のナルデアだったのだ。コイツ……どこから湧いて来やがったんだ??つか、俺達より早くここに居るっておかしくねぇか?
シウハは眉ひとつ動かさなかったが、ザルスは明らかにナルデアを睨み付けていた。
「オイオイ、怖い顔するなよ。月影さんよぉ……それからそこのガキ!お前にはカリを返さねぇとなぁ〜!!」
俺が知らんぷりしてるとナルデアは気味の悪い笑みを浮かべた。
ケンタウロスの族長はこう切り出してきた。
『こやつの進言ではシウハ、お前が闇龍国と繋がっているとの事だが間違い無いか?』
「繋がっていると言うか……生まれ故郷ですので商売をしに帰るだけですが?」
さも動揺せずに話すシウハにケンタウロスの族長が『ほほう……』と言う。
「騙されてはいけませんぞ!!このシウハは樹龍国に仇なす敵ですぞ!!」
「ならばお前が証拠を見せたら良かろう?」
「はぁ??」
「我々は商いをしながら旅をする者。武装してるのは戦乱の地を歩く為。さしたる証拠も無しにその様な甘言を言わぬでしょうね?」
「オレという立派な証人が居る!!」
「ならばお前が嘘を言ってないと言う証拠は?我々は商いをしながらここまで来ている証拠は有りますよ。ラダル、例の札を見せて差し上げて」
俺はハイリザードマンとハイエルフから貰った札を取り出して掲げる。
するとケンタウロス達がザワつく……もっと驚いた様にしてるのはナルデアである。
「ば、バカな!!」
するとナルデアは俺を指さしてこう言った。
「あのガキはオレをハメたヤツだ!何かイカサマをしてるに違いない!!」
「おじちゃんだぁれ??」
俺がすっとぼけるとナルデアは頭に血が上ったのか、俺に罵詈雑言を並べ立てて来た。
俺は知らんぷりしなからとぼけまくってると更にエキサイトしたナルデアは俺の方にやって来てぶん殴ろうとして来た。
俺は『黒霧』でナルデアの動きを止める。そしてナルデアの近くに行った。
「お前バカなのか?あの時言ったよな?次はお前の番だと……まさか忘れたのか?」
「俺がそんな脅しに怯むとでも……?!」
俺はナルデアが全部の台詞を言う前に精霊の腕輪の力を使って一気に魔力を上げる。ナルデアは目をひん剥いて俺を見る。周りのケンタウロス達が戦闘体勢に入った。
「俺は有言実行の男なのでね。脅しだと?警告だとちゃんと言ったはずだ。あのまま大人しく捕まってれば良かったものを……わざわざ死にに来るとは本当に馬鹿なヤツだな」
俺は【黒霧】でナルデアを締め付けてそのまま外に連れ出す事にした。
「族長様、申し訳無いがコイツは俺達に歯向かう頭のおかしな狂犬なのでね、前に1回は情けをかけて許したのだけど2回目は無いと警告していたんです。んで、ノコノコ顔を出してきたのでちょっと始末して来ます……ココを汚しちゃあ申し訳ないので外に出ますね」
俺が出口へ向かおうとするとケンタウロス達が攻撃して来たので【血魔法】の赤い霧で防御しながら広間を出て行く。ケンタウロス達が固まっている。
「だ、だすげでぐれえええ!!」
ナルデアは【黒霧】に締め付けられてマトモに喋れない様だが気にせずにそのまま砦を出て行く。
そして俺はナルデアを地面に何度か叩きつけた後でゆっくりとナルデアの方に手をゆっくりと突き出す。
「じゃあな……汚ねえイヌッコロ……【黒炎】!!」
俺の手から飛び出した黒い炎はナルデアに取り付く!
「ギィヤアアア!!!!!」
ナルデアの最期の絶叫は砦中に響き渡る。攻撃をして来たケンタウロス達が呆気に取られていた。黒炎に焼かれたナルデアは黒い塵になってその場から消えて無くなった。
ケンタウロスの族長がやって来て俺の方にやって来る。
『お前……何故その魔法を使えるのだ?』
「この間、リザードマンの島で魔人リルブルを倒した時に覚えたんだよ」
『なっ!……リルブル?!倒しただと??』
「ええ、赤いハイリザードマンから感謝されてね、それで直接札を貰いました」
『むう……アレが人前に……』
「ああ、ハイエルフのカリシャスも同じ事言ってましたね」
『なっ!!ハイエルフの名まで知ってるのか??……うむ、ならば商売をしたのは間違い無いという事か……』
「そういう事です。商売してるから闇龍国へも商売に行くだけですよ」
まあ、俺とアシュのおっちゃんは向こうの大陸に帰る為だけどね!!
『……うむ、分かった。その札が有るならばお前達が商いをしている事に間違いは無いのだろう……だがシウハ、お前は一体何をする為に闇龍国へと向かうのだ??』
「それは……」
「闇龍国を引っくり返しに行くのであろう??シウハ……いや、シウハリア皇女殿下」
シウハが喋る前に被せてきた男がいる。何者だ??シウハは驚いた様な顔をしている!知り合いなのか??つかシウハリア皇女って何!?
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