明かされる闇の正体
遂に魔人を操る者が判明します
アシュのおっちゃんが全属性持ち……羨ましくて何も言えぬ……。コレで魔力も相当な大きさなのに魔法を使わないとか……もったいなさ過ぎる。普通さぁ……転生者ならアシュのおっちゃんみたいに全属性持ちで強大な魔力持ち!!とかいうチート設定が当たり前でしょうが!!とショックを抱えながらも活躍した我が優秀な眷属のキラに、ストックしてたサイクロプスの肉を与えながら、見事リルブルの魔人石を撃ち抜いた『十三』の頭を撫でてやる。
《主も人の事は言えないの。主は【暗黒魔法】を手に入れたの》
「何?それは本当なのか?」
「うん。リルブルも俺の身体を乗っ取ろうとして【ザ・コア】に取り込まれてさ……レブルもそうだったけど何で不死の魔人は身体を乗っ取ろうするのかねぇ?」
《それが不死の秘密なの》
「……うむ、恐らく死にそうになった場合に、自分を殺そうとした相手に取り憑くのが一番合理的ではあるな」
《アシュトレイの言う通りなの》
なるほど……確かに自分を倒す程の危険な奴だし、近くに居るし……まあ、合理的って言えばそうだねぇ。
「それにしても気になる事を色々言ってたよね……」
「そうだな……先ず気になっていたのはリルブルが魔人としては弱過ぎないか?という事だな。ラダルが言っていたファブルは『レブルも遺跡に取り込まれなければ100倍は強い』と話したらしいが、どう考えてもレブルの強さから計っても十倍……も怪しいくらいだ」
「俺たちがレディスン師匠の修行で強くなって更に“ブースト”まで使ったけど……確かにあのレブルの100倍は無いよね」
「だとすると、最期の言葉……『これが魂の奉納の儀式を拒んだ者への報いなのか』だったか?コレが原因の様だな」
「う〜ん……魂の奉納の儀式って言うのが魔人にとって力を維持する為の儀式って事なのかねぇ?」
「かもしれんな。そうだとするとファブルが魂を集めてる理由も説明出来る」
「なるほどねぇ……でも気になるんだよね“奉納”って……誰に“奉納”するのかがさ」
「闇せい……と言ってたな……闇の精霊なのか?」
「闇せい……せい……征夷大将軍とか?……」
「せいいたいしょうぐん??」
「あ……いや、忘れて良いです……でも確かに気になるワードだなぁ……そう言えば『あの方の“手付け”』とか言ってたし、あの方ってのが闇の精霊なのかな?」
「闇の精霊なのかはまだ分からんが、“あの方”と“闇せい”は同一人物だろうと思う」
「だとすると、考えたくないんだけどさ……魔人の上位者が存在するって事だよねぇ……」
「破滅の五芒星……」
「あっ……そう言えば……【ザ・コア】にリルブルが取り込まれる前に五芒って言ってたんだよね……でもさ、ソレっておかしくない?」
「おかしい?」
「だってさ、叙事詩エルクスードには破滅の五芒星はリルブル達5名の魔人だって書かれてたってブリジッタさんは言ってたのに【ザ・コア】を見て五芒星って言うかな?」
「うむ……確かにおかしいな。すると叙事詩エルクスードの記述が間違ってるという事になるか……」
「うん。それならリルブルに呪詛王と言った時にさ、『またその名で呼ぶのか、人間』とか言ったのも説明出来るんだよね……つまり……」
「破滅の五芒星は5名の魔人を指すのでは無く、魔人を統べる者の名……という事か?」
「そういう事。それが“闇せい”なのかもしれないね」
かの叙事詩エルクスードが長い歴史の中で間違えて伝えてしまったのか……それとも何者かが意図的に事実をねじ曲げて伝えたのかは謎だけど、どうやら黒幕が居るのは間違いなさそうである。
ここに来て色々と謎だったモノが解きほぐれて来た様な気がする……。
「それはそうとして……【暗黒魔法】を手に入れたのは本当なのか?」
「うん。スキルに入って来たよ。【ザ・コア】に取り込まれると基本はスキルになるからねぇ。何でかは知らんけど」
「そうか……ならば先程の戦いで使ったあの魔法か?」
「そうだね。【黒炎】と【黒雷】、後は【黒陽】それと黒い粒子の奴は【黒霧】それを凝縮して鎌みたいのを使えるみたい。形は変えられるかもしれないな〜」
《主には【黒霧】しか使えないの》
「は?」
《他の三つは【血魔法】と同格だから無理なの》
「マジかよ……トホホ……」
相変わらず俺のスペックが貧弱な件について……拝啓、レディスン師匠……小生、まだまだ修行が足りない様です……。真円にはまだまだ程遠いのかなぁ〜。
キラがサイクロプスの肉を食い終わるのを待って、俺達は島からキラに乗って飛んで行った。島をぐるっと一周回ってみたが他に魔物らしいのも居ない様だ。
俺とアシュのおっちゃんはブーストを使った影響で一週間ほど魔力が出ないので本当に良かった。
港に戻るとシウハとザルスが迎えに来てくれた。何だかんだと心配していた様だ。
「……お前達、魔力を感じ無いのだが……」
「うん、奥の手を使ったから一週間ほど魔力無しだから」
「……全く……無茶するねぇ……アンタ達にはホントに呆れるよっ!」
「でも、リルブルは倒したよ。コレで香辛料も手に入る!」
「リルブルだって??あの【覇忌】のリルブルかい??」
「うん……ちょ、ちょっと待って!シウハ今さ【覇忌】のリルブルって言ったよね?!」
「ああ、リルブルは【覇忌】の称号を持ってる魔人だからね」
俺とアシュのおっちゃんは顔を見合わせた……一体どういう事??
「【覇忌】っていうのは称号なの?」
「ああ、それはね『五魔人』の称号さ。【呪怨】【覇忌】【邪恨】【凶怖】【恐堕】の五つ。コレを与えられる魔人は本来の力を遥かに超える魔力を与えられるって話しさ」
「与えられるって……誰に?」
シウハはその時苦々しい顔をしてこう言った……。
「ソイツは“混沌の闇”……【闇聖ゼス】さ」
“混沌の闇”【闇聖ゼス】……。
伏龍の一族に代々伝わると言われている秘伝の書《破魔天龍之書》にはこう書かれていると言う……
『混沌の闇より産まれし闇の司祭、闇聖として闇の世界に君臨す。名をゼスという』
『闇聖ゼスは更なる闇を広げる為にこの世界を支配しようと目論むもこの世界に入り込む術を持たず。その為にその世界に居た闇に近しい者、五魔人に力を与える代わりに魂を闇聖ゼスに奉納す。之が魂の奉納の儀式である』
『魂を集める事でこの世界への道を創らんと闇聖ゼスは更なる魂を求めて自らの分身をこの世界に誕生させる事とす。その“闇の御子”は五魔人を引き連れてこの世界を地獄とす』
『“闇の御子”を倒す為、天龍より光を与えられし“光の御子”が現れ、壮絶な戦闘の末に“闇の御子”と二魔人を倒し、囚われた魂を解放し浄化す』
『その後、“光の御子”の子孫が伏龍の一族となりこの地を治めた』
この様に書かれているという。
そして、その“闇の御子”に関してはこの様な記述があったと言われている。
『闇の御子、額に黒き五芒星を宿し、闇の術を駆使し死人の山を築く……』
つまり、破滅の五芒星とは闇の御子を指した言葉だったのだ。この地から山脈の向こう側に伝わる時に五魔人が破滅の五芒星と同一とされてしまったのだろうね。
「ところでシウハさ……」
「何だい?」
「何故秘伝の書である《破魔天龍之書》の内容を良く知ってるのさ?」
「……ふん、その話はいずれしてやるよ。闇龍国に着いたらね……」
シウハはそのまま自分の馬車に行ってしまった。
女狐のシウハ……一体何者なんだ??
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