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転生魔法兵ラダルは魔力が少ない!だから俺に魔力を分けてくれ!!  作者: 鬼戸アキラ
第三章 ラダルと武商旅団
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レディスン師匠の修行【其ノ参】

レディスン師匠による修行の続きです。

気が付くと俺はベッドの上で寝ていた。アレ?何でベッドに……ああ、あの時倒れたのか??


「ニャアア〜」


キラが心配そうな声で鳴いている。俺はキラを撫でて落ち着かせる。


《主が起きたの》


「おお、起きたか。三日間も寝てたから心配したぞ」


「アシュのおっちゃん……えええ!!俺、三日間も寝てたの???」


「そうだぞ。まあ二週間以上寝ないで戦うとは驚いたな。それだけやれば当然ではあるな」


アシュのおっちゃんと話しているとレディスンがやって来た。


「うん、起きた様だね。今日から座して貰おうかな」


「やりますっ!」


「おお、やる気が有って良いねぇ。アシュトレイもそろそろ始めるかい?」


「うむ、そうしよう。まだ【無】には程遠い気がするが……」


「ああ、そうやって結果を意識するのが駄目なんだ。座して呼吸する事だけを考える事だね。それが結果的に早く【無】に辿り着くはずだからね」


「う、うむ……解ってはいるのだが……」


「焦りも禁物だよ。悪くない状態なのだから余り余計な事を考えない様に。ラダル君は呼吸法から教えようかな」


「俺もあの山でレディスンが見せた様な【無】を体得出来るの?」


「それは修行次第だね。二人共素質は充分だから焦らずに集中する事さ。そうすれば自ずと結果はついてくるだろう」


俺は呼吸法を教えて貰いながら座禅を組んだ。呼吸法を丁寧に行いながら集中して行く。しかし、どうしても【無】の事を考えてしまう……と言うのも俺は今まで目的をイメージする事でそれを成し遂げてきた。だから目的を持たないやり方がどうもしっくり来ないのだ。

苦戦しながらやっているとレディスンの気配が完全に消えている。何処かに行ったのかな……などと考えていると突然肩を叩かれた!


「駄目ですねぇ……もっと集中しないと」


「い、いつの間に……」


「最初からここに居ましたよ」


隣で座禅を組んでいたアシュのおっちゃんもビックリした様な顔をしている。


「いや、気配が消えた……まさか……」


「そうです。あの山で私が魔物達に対して行なった事をやったのですよ。私の気配が消えた事を気付いたようではまだまだ集中が足りてませんねぇ」


おいおい……ありゃあ完全に闇魔法の『隠密』よりも……と言うか質がそもそも違うぞ。ザルスもかなりの術師だがそこに居るのを消えた様に見せるなんて芸当はとても出来ない。俺にもこんな事が出来る様になるのだろうか??


それから一週間ほど経つとアシュのおっちゃんの気配が突然消えた……隣に居るのに……。


「うむ、アシュトレイは遂に入り口まで到達したみたいだね」


「なるほど……オレは難しく考え過ぎていたという事か……」


「フフフ……だから最初から結果を考えては駄目だと言ったはずですよ。さあ、アシュトレイは次の修行に行きましょう。ラダル君はそこで座していたまえ」


そう言ってアシュのおっちゃんはレディスンと外に出てしまった……俺は考える。何故俺は考えてしまうのか?

そう俺は今【無】になろうとしている。だがレディスンは目的を考えては駄目だという。呼吸に集中する事だけをやれと……そうか!呼吸する事だけイメージすれば良いのか!座して呼吸する事だけ……機械的に……そう、あの山で魔物達を倒した時の様に!!

それから俺は“呼吸する事”のイメージを創り上げそれを機械的に行い続けた。すると三日目に自分がその場に溶け込む様な感覚に陥った……何だこりゃ??するとレディスンが俺に声を掛けてきた。


「ほう、思ったよりも早く入り口に立ったね。うん、上出来上出来。やはり良い素質をしているよ。さあ、君も次の修行場に行こうか」


「今の感覚が【無】なの?」


「正確に言うと【無】に至る最初に通る道かな。これの遥か先に【無】はあるのだけれど、ここまで来れば後は徐々にそこ迄に到るはずだよ」


うわぁぁぁ……まだ遥か先なのか。

でも、何となくだが色々なものがクリアになった気がする……上手くは言えないんだけどオブラートが一枚無くなった様な感じだな。


レディスンに連れて来られた場所は……滝である。所謂滝行をせよと言う事の様である。

アシュのおっちゃんは……ああ、滝に打たれてるね……しかし良く探さないと見えなかったよ。コレが修行の成果って奴なのかな?


「滝に打たれながら座す事で、更に集中力を鍛え上げる事が出来る。触覚を常に刺激された状態で呼吸に集中する事はかなり難しいからね」


「とりあえずやってみます」


俺は滝に打たれながら呼吸をする事だけをイメージする……が、確かに刺激を受けながらの集中はかなりの難易度である。一定の刺激なら何とかなるが、降ってくる水はその都度バラバラの色々な刺激である。降ってくる水の衝撃、痛み、冷たさ……それが全てが一定では無い。だから集中を乱されてしまうのだ。

最初の二日間は刺激に慣れる事に費やされた。そして三日目から呼吸に集中する事をイメージする。だが、中々イメージが固定出来ない……心が折れそうである。

しかし、アシュのおっちゃんがどんどんと【無】に向かっているのが理解出来る。コレも一つの修行の成果なのだろうか?


俺はまずイメージ固定の為に滝に打たれる事に慣れる事だけに集中する。そして一週間もすると大分慣れてきたので徐々に呼吸に集中する。そしてそのイメージを固定する事で更なる【無】に向かって行く事にした。

そして四日目になりやっと段階が上がった感覚を覚えた。やはりオブラートがまた一枚消えた感じがする。


「うんうん、中々順調に仕上がって来たね。それじゃあこの先の段階に進もうじゃないか。さあ、こちらに来たまえよ」


レディスンは俺を滝の上の崖に連れて行く。物凄い崖だな……ここでなら問い詰められたら犯行を自白してしまいそうだ……。そこには三本の大きな丸太が崖の外側に向かって3分の1ほど出されており、先にこのステージに来ているアシュのおっちゃんがその丸太の先端で座禅を組んでいた。

コレって何かの罰ゲームかな??


「その丸太の上で座して貰う。此処では恐怖と強風に耐えてもらうよ。洒落じゃないからね!アハッハッハ」


笑い事じゃねぇええ!!コレってかなり命懸けのヤツですよね……この修行終わった頃には超なんちゃらになっちゃいそうですよね!!

とにかく恐怖に打ち勝たないとダメなのだね……それにしても高っ!

後は風だよ……すげー風通しが良いから丸太も俺も揺れる揺れる……先ずは禅を組むのが難しいよ!!アシュのおっちゃん良くやってるね!!


「中々難しいだろう?此処ではまず、恐怖を克服するのが鍵だよ。でないと筋肉が硬くなってしまってバランスが取れないからね」


なるほど……ただ、そもそもこんな恐怖に打ち勝たないとイケナイ理由がイマイチ分からん……。


「恐怖に打ち勝つ事は心力にとって重要だ。バランスを取りながら座す事で、より集中に負荷が架かるから心力を鍛え上げるのに必要なのさ」


ほうほう……なるほどね。一応理に適った方法なのか……さて、先ずは恐怖に打ち勝たないとな……。俺は先端に立ちながら慣れる事に時間を割いた。確かに最初は恐怖を感じていたが、慣れてくる事で徐々に恐怖による筋肉の収縮は治まってくる。一日くらいでようやく禅を組む事に何とか成功した。

次にバランスを取るイメージを固める事に集中して、徐々に呼吸の方に集中をシフトして行く。一週間もするとバランスを取りながら呼吸に集中するイメージが固定されて段々と機械的になって行く。

そして、三日目に遂にまた一段階上がった感覚に支配された。オブラートがまた一枚消えた感じだ。コレでかなり魔力が更にクリアになった気がする。


「うんうん、上出来上出来。大したものだ、ここまで本当に出来てしまうとはね。コレで心力は並に上がったから、ココからは時間を掛けるしかないよ。一日に一回は特殊な座し方で集中する事だ。最後にそのやり方を教えよう」


レディスンは俺にその特殊な禅を教えてくれた。コレは心力を使って集中する事でその場で少し浮き上がりながら禅を組み、呼吸法に更に集中すると言うかなりの難易度が高いやり方を伝授してくれたのである。


お読み頂きありがとうございます。

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