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5.〜初めての町はファーストタウン〜

 前回までのあらすじ。

 魔王ナナの臣下になった俺。無策で町を支配しに行く。




「リュウジは町は初めてじゃな!楽しみじゃろう?お菓子を買ってきても良いぞ、ほれ、お駄賃をやろう」

「俺は子供か」

「美味しいパン屋もあるし、美味しいジュース屋もあるぞ!楽しみでワクワクじゃろ!」

「忘れとった!今日のぽにーてーるは特別赤いゴムを使ってやろう!」

 俺以上にルンルンなんだけど。

 はぁ〜気が重い。俺なんかが町を支配できるわけがない。そんなに簡単に出来るか?無理だろう。能力も全然だし、コミュ力は変わってない。顔が良いくらいで町を支配は出来ないだろう。一応鎧は着ていくが、鎧もかなり初期装備といったところだ。

 そんなノロノロと鎧を着る俺を尻目にナナは持ち物を点検する。

「ハンカチは持ったか?飴ちゃんも持っていくが良い。イチゴ味じゃ!」

「お前は俺のばあちゃんか」

 時々ナナはおばあちゃんみたいな世話を焼いてくる。口調も相まって益々おばあちゃん感がある。

「支度も万全な様じゃし、行くとするか!」

「えーいえーい」

「「おー」」

 ノリノリな少女と既にやる気のない男の声が響いた。




 俺、リュウジ。絶賛飛行中。

正しくは、運ばれ中。


 自転車もない俺がどうやって町に向かうか疑問だった。出発時にナナから膝をつく様に言われ、その通りにした時、後ろからナナが抱きついてきた。

 相手が背の高い巨乳美人お姉さんだったらまだしもチビっ子だ。背中には何も感じないし、良い匂いもしない。友人なら大喜びかも知れないが俺には子供にじゃれつかれてるのと同じだ。

 抱きつく腕に力が入る。

 ジャーマンスープレックスでもされるのかと思ったが、違った。

 ふわりと体が浮いたのだ。段々と身体が宙に浮き、地面に引き寄せられる様な重力を感じる。

「う、浮いてる!」

 驚く俺を見てナナは嬉しそうにする。

「歩くと時間がかかるからの。ふふ、特別郵送じゃ」

「すげーな!マジで飛んでる!プロレス技でもされるのかと思ったわ」

「ぷろれ…?リュウジの世界の言葉か?ふむ。調べておこう」

「いや、それはいい」



 ふとナナの方を見ると、ナナの背中からは黒いモヤのようなオーラのような羽が生えていた。バサバサと優雅に振るう姿はたしかに魔王、いや悪属性って感じだ。


 改めて上から見ると、ホテルから町の道中には本当に何もない。あるのは広い土地と森。流れる川だけだ。町は思ったより小さく、住んでる人も少なそうだ。

 だからと言って支配出来そうかと言われると無理だがな。


「なぁ、俺ホントに何も考えてないんだけど。どうしたらいいんだ?」

「町で一騒ぎすれば、どうにかなると思うがのぅ」

「どうにもならなかったらどうする?そりゃ頑張りはするけどさ」

「そうじゃなぁ」

「『魔王の手下だ!ひれ伏せ!』とか言っても魔王とか御伽話信じないだろ。戦うって言っても俺まだレベル低いし」

「あー、そうじゃった。コッチの世界について何も言ってなかったな」

「?」

「リュウジとの生活は平和すぎて説明を忘れていたのじゃ」

「リュウジの世界も勉強したし、分かりやすく説明をしてやろうではないか。よく聞いておけ」


 ナナ曰く、この世界は良く言うRPG世界の様なものらしい。

 魔力を持つ者、魔力を持たない者で形成されている。

 魔力は人だけでなく動物も持っている事がありそれを“魔物”という。魔力を持ちまた特定の能力をもつ者、つまり“能力者”にも色んな種類があり所謂“治癒者“、”呪術者”、森に身を潜ませ薬学やら浮世離れした“魔女”など、沢山いるらしい。

 良くある“ギルド”なるものもある様で、“能力者”ないし“無能力者”も役職登録出来て、お尋ね者討伐や失せ物探しなど出来るとの事だ。


 世界の悪役はもちろん“魔王”。目的は“世界の掌握”。ゲームや漫画の様に町を悪いヤツがいて都合よく支配している事がある。

 如何にも、といったところだ。


「え!!じゃあ、本物の魔王がいるって事か⁉︎」

 ヤベーじゃん!本物の魔王様がいるってのに、それなのに魔王なんか自称して目をつけられたら一発だ。死、あるのみ。俺は顔面蒼白になる。

「落ち着くが良い」

 ナナの声は落ち着いている。

 表情は真剣だった。




 ナナが言うには、現在の魔王は姿を潜めている。


「私は現魔王の力が弱まってきていると見ている」

「魔王には一族がいるのじゃ」

 そのため次期魔王を狙って一族同士で争っていて、バチバチだとか。

 また町を身勝手に支配する者たちは、ナナから言わせれば“自称魔王の部下”だったり、“魔王一族の手下”らしい。

 昔からすると、統率の取れ方はバラバラで、目に余る行為が多いと。


「だから、私が魔王になって清く正しく世界ではなく悪しき魔物たちを支配してやろうも思ったのじゃ」

 ふふん、と少し誇らしげに言う。何でだよ、と俺は言う。

「清く正しくなら、別に魔王じゃなくていいだろ。普通に勇者とか名乗って魔王討伐すれば」

「何じゃ何じゃ。オタクと言うのに察しが悪いの」

 戸惑った様な顔をした後、上を向く。表情は見えない。


「私は魔王の一族じゃ」


 そして、少し口を噤む。


「魔王一族を討伐すれば。私が自然と魔王となる」

「私は思う。よく聞く魔王は必要悪なのか?魔王が悪いシンボルにならなくても、どうせ悪い奴は出てくる」

「魔王は悪でなくても良い。酷い支配は必要ないのじゃ。だのに魔王一族たちは人間を酷く扱いたがる。かつての遺恨が尾を引いている」

 人間でも酷い支配をする奴はおるがの。と呟く。


「だが、皆が魔王は悪と呼ぶなら私は手始めにその悪の魔王とやらになってやろう。魔王になった曉には、悪を滅し人間に示して善き魔王となるのじゃ」


 

 真剣な表情を少し崩してこちらに微笑みかける。


「まぁ、だから魔王になるため、とりあえず存在をアピールする為の町の支配なのじゃ!支配はしても酷い扱いはせんよ」

「…狼煙をあげるってやつか」

 ナナが魔王の一族ってのは意外だったが、それ以上に深く考えていることが意外だった。

 いつも大雑把で寛容で、魔王になるとかももっと簡単な理由だと思ってたからだ。




「・・・・ん?まて。魔王の認知についてはわかった。でも、だからって俺が町を支配出来る訳じゃないだろ!」

「町の人からしたら結局悪役になるわけだし!俺、余計に詰むじゃん!!」

「わわっ。暴れるでないっ!」

 バタバタする俺を必死でナナが掴む。落ちたらただでは済まないが、町でボコボコに殺されるよりはいいかも知れない。

「安心せいっ」

 ナナが慌てて言う。

「リュウジにはちゃんと指示の紙を作った!それ通りしたら問題ないし、安全じゃっ!」

 暴れるのをやめる。

「紙はズボンとスカートのあいだじゃ」

 ナナの腹部に手を回し、ゴソゴソと紙を取る。これやっぱりスカートだったのか。

「臍を大胆に触るとは、エッチじゃのぅ///」

「大人になってから出直してこい」

 ちびっ子のくせに何を言うか。

「何じゃ何じゃ。オタクとやらの好みドンピシャじゃろう」

「それは偏見だ。ロリ好きがライトでヤバイし多いからそう言われる。俺の好みは年上だ」

「ほほう。リュウジは年上が好みか。そうじゃったのか。童貞君は年上のお姉様がいいのか」

「どどどど童貞ちゃうわ!」

 多少の動揺を隠せない。というか、中二で童貞じゃないとか倫理観おかしいだろ。どんな人生だよ。リアルが充実し過ぎだろ!それってリア充だろ!

 震える手で紙を開く。

「・・・・これ、やるのか?」

 中には簡単な指示が稚拙な字で書かれている。

「そうじゃ。ニッポン語の文字は難しいな!リュウジはまだ文字が読めぬからな。頑張ったのじゃ」

 褒めても良いぞとニヤニヤする。

・・・・簡単な指示ではある。指示自体はかんたんだ。

 しかし、それが出来るかといえば、かんたんではない。


「それをするか、己の力で何とかするか。どちらか、二者択一!じゃ」

 ナナははっきりとした口調でいう。

 まじか。


「ふむ。町が近いぞ。」

 前を見ると町が数十メートル先に見える。。小さくはあるが、家の造りもしっかりしておりある程度の文明がある事がわかる。町へ行き交う人がこちらをチラチラ見ている。

 子供が鎧を着た少年を抱いて飛んで運んでいるのだ。さぞ珍しいだろう。とりあえず、両手で顔を隠す。

「目立つと恥ずかしかろう。ここら辺で降ろしてやるぞ」


 町の少し前へ降り立つと、ナナは町をさす。

「ここはファースト町。ニッポン語でも初めての町と訳せる。お誂え向きじゃろう?」

 ナナはドヤりとした。

 

 

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