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4.〜俺の能力(アビリティ)〜

 前回までのあらすじ。

 魔王を目指すナナ、その部下となった俺は砂を動かす能力を得た。



 ナナの所で目覚めて数ヶ月が経つ。

 ここでの俺の仕事は洗濯掃除料理。


洗濯は近くの井戸で汲んだ水と石鹸を使い、洗濯機のような機械にまとめて入れて機械を手動でグルグル回す。洗濯はまだ良い。

 ここには掃除機のようなものは無く、箒のみ。

 しかも住んでいる所は、墓地にお参りに来た人用の宿泊用ホテルで、小さいながら部屋は何個もある。ナナは俺が目覚めた部屋を使っていて、自室と風呂場とリビングの生活に必要な部屋だけ掃除していた。一階の部屋にはドアの隙間から土埃が見えいる部屋があるくらい、他の部屋は埃と砂と蜘蛛の巣だらけだ。


 俺は自分の部屋を確保するため、蜘蛛の巣を払い棚やベッドの埃を払い床の砂をはくなど奮闘した。そんな姿を見て「男手は必要だのう。どれ、他の部屋も頼んだぞ」と嬉しそうにナナは言う。もちろん手伝うなどはしない。

 正直言ってかなり面倒なので他の部屋はしていない。ナナもそれを知ってか知らずか特にアクションはないので良しとしている。


 料理は近くの森で摘んだ木の実と指定された食べれる葉っぱ、あとはナナが適当に街で買ってきた肉を使う。

 食材は、幸運なことに元の世界と味も見た目も名前もほとんど同じだった。


 住んでるホテルは街から遠く離れており、周りには店すらない。徒歩だと1日はかかりそうな距離で、俺は交通手段を持たないため、森で食べ物を摘むぐらいしか出来ない。

 ナナは空を飛ぶことが出来るからそれでひとっ飛びだ。正直ズルイが文句を言うと砂の能力を取り上げられる気がして何も言えない。



 料理の内容は基本的に炒め物だ。

 基本的にじゃない。

 毎日炒め物だ。料理は現代では一度もしたこのないから他のやり方を知らない。

「食べれれば良いのじゃ。素材を存分に生かした味で美味いぞ」

 とナナは言うけれど俺は正直飽きてきた。

 気まぐれにナナが作る時もあるが、全部スープだ。くたくたに煮込むので木の実は柔らかく、しかも味があまりしない。俺の方がセンスがあることは確かだ。


 仕事の後は鍛錬だ。一掴みの砂の山を机に置き、じっと見つめる。前よりは動かせる砂の量は増えた。しかし精度は粗く狙った所に動かすのはまだまだだ。現段階では動かすと言うよりは、大雑把に飛ばすと言ったほうが正しいかもしれない。

 この能力は砂しか動かせず、小さな石とかは無理だ。また、土と思うと動かせないので気をつけないといけない。


「何故土だと思うとダメなのかじゃと?その能力が砂の能力だからじゃろう。“数千粒の砂の集まり”を一つの“土”と見なすと脳の認識が無意識に切り変わって、能力発動の妨げとなるんじゃろう」

「それに土を操るより数千の砂を操れる方がカッコ良いではないか。見た目はさして変わらんだろうがな」

 チートは無理でも能力の向上に努めている俺にナナはそう言った。次いでに夜食的な味のしないスープも差し入れてくれる。



「些末なことは気にするでない」


 これはナナの口癖だ。

 ナナは、大らかというか細かい事はあまり気にしない性格で多少の失敗には何も言わない。

 悩んだりしていると何気なく通りすがりのアドバイスをしてくれる。ただ口調や服装を注意すると

「うるさいわっ、可愛いから良いであろう!」

と、少し怒る。


 この2人の生活も意外と悪くないと思った。

 そしてもう一つ、悪くないと思える事がある。

 それは『顔』だ。


 俺は元々そんなにブサイクではなかった。中の中…いや、中の上、いや謙虚にいって中の中。つまり普通なごく一般的な顔立ちだった。

 そりゃクラスのカースト上位には負けるが。


 しかし、『今の顔』はカースト上位にランクイン出来る。

 綺麗目な可愛さのある顔立ちでイケメンだ。少しキツめな目をしている気もするが、男らしいと言っておこう。正直薄い紫ピンク?な髪色は好きじゃないがナナ曰く、


「魔王の第一部下になるのじゃぞ?美しくなくてどうするのじゃ。髪も赤寄りでお揃いじゃぞ。あ、でも私より目立つのはダメじゃからな。薄めにしておいた!」

とのことだ。


 掃除に疲れた時は自分の顔を見て癒され、歯を枝のささくれた部分で磨いている時は鏡を見てニヤリとする。身長も前より伸びており、そこもポイントの一つだ。



「さてさて」


 朝食のくたくたスープを飲み干してナナは言った。

「始めるかの」

「?なんの事だ?」

「忘れたのか、私は魔王になるもの」

「そういえそうだったな」

「生活にも慣れたようだし、そろそろ部下に活躍してもらおうかとな」

 確かに、今まで普通に生活していたが、ナナは魔王になるとか言ってたな。

「具体的には、何をするんだ?」

 俺もスープを飲み干す。ナナは水を飲みながらふふふとほくそ笑む。

「侵略だよ。制圧するのじゃ」

「は?」

 スープの器を落としそうになる。

「魔王たるもの町の一つや二つ、支配せねばなるまい」


 おいおい、まじかよ。

「部下のお主には、映えある一つ目の町を侵略する事を命じるぞ!!」

 ででーん、て感じだ。


 ナナは得意げにこちらを見る。

「・・・・いや、無理だろ。砂もそんなに操れないし。第一魔王なんだから、ナナが行けよ」

 俺のそんな言葉に「はー、やれやれ」と大袈裟に首を振りため息をつく。

「何を言うのじゃ。たかが町の一つに魔王自ら支配しに出向くわけなかろう。

 それともなんじゃ?リュウジのRPG世界では町を支配するためにわざわざ毎回魔王が出向くのか?違うじゃろう。それは手下の仕事じゃろ?」

「えー」

「これはアレじゃ、えーと。『働くもの食うべからず!』じゃな」

 なんか、前より俺の世界のこと詳しくなってない?

「待ってくれよ。能力も対してないのにどうやって支配するんだ?暴力は嫌だぞ」


「そうじゃなぁ」

 うーん、と考えるナナ。目立つのは嫌だ。痛いのも嫌だ。何か妙案が見つかれば良いが。


「まぁアレじゃ。」


 ナナは楽しそうに笑顔を見せる。

「『臨機応変』じゃ!」

「マジかよ…」

 俺はがくりと頭を下げずにはいられなかった。

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